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人生に懊悩するフリ(後編)
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「くっ!」
ポーションで回復しようしたティカだったが、それを黙って見ていてやる程、俺は優しくない。『闇命の鎧』の手甲で強化された腕力でもって、ティカを守る目玉たちの『結界』をまたぶち破り、攻撃を加える。
「さっきまで『結界』で防げていたのに!」
ティカが言葉を吐き捨てる。『結界』が破られるとは思っていなかったのか、ティカは俺から更に距離を取って、目玉たちを増やして『結界』を強化しようとするが、そうはさせない。
俺は『闇命の鎧』の位置を腕から足へと移動させて、脚力を強化して機動力を上げ、『結界』が張られる前に攻撃を仕掛ける。
が、それは魔物たちによって防がれてしまった。流石は『完全魅了』で魅了されているだけに、ご主人様が危なくなったら、何を差し置いてもティカは守ろうとするのか。
魔物たちが俺の攻撃を防いでいる間に、ティカはポーションを飲みながら、『結界』を厚くする。これを確認した魔物たちが、攻勢に転じたので、今度は俺がティカから距離を取る事になった。
う~ん、『闇命の鎧』を部分使用する事で、魔力の消費を抑えつつ、継戦を維持していられるけど、やっぱりレベルアップしないとジリ貧なのは変わらないか。そんな事を思いながら、俺は襲い来る魔物たちを捌いていく。
宇宙人のグレイのようなゴブリンたちが瞬間移動で俺を取り囲むと、回転しながら両腕の黒刃で真っ二つに切り裂き、突進してくる巨大なオークを、跳躍で躱してその背に飛び乗ると、後頭部へ黒槍で一撃。そこへ凍血鬼が凍結魔法で俺を氷漬けにしようとするのを、寸でで転がりながら脱出して、地面に着地するのと同時に、闇命の足甲で脚力を強化して凍血鬼に近付き、黒剣でその首を刎ねる。
「キシャーッ!!」
そこへ一つ目のムカデが四方から襲い掛かってくるが、闇命の手甲で強化した手で持った黒剣で、一匹を縦に両断しながら、その場から脱出、返す刀で後方から追い迫る一つ目ムカデの首を断ち切り、跳躍すると、その更に後方から追いすがる二匹を、両掌から出した黒槍を伸長させて刺し貫く。
「何やっているのよ!」
思い通りに事が運ばない焦れったさから、癇癪を起こすティカの姿が目の端に入り、思わず口角が上がったところで、
バガンッ!!
と一つ目巨人に思いっ切り地面に叩き落された。
「がはッ!!」
気を抜くものじゃないな。打ちどころが悪く、上半身は起こせたものの、見れば両足があらぬ方向を向いている。ポーションで直ぐ様回復しなければ、と『空間庫』に手を突っ込んだところで、オーガに蹴りを入れられふっ飛ばされる。
飛ばされた先には八つ目サイが待ち受けており、その凶悪な角でかち上げられ、空中へ打ち上げられた俺を待っていたのは、空を翔ける魔物の王者、飛竜だ。口中に火炎をたらふく蓄えた飛竜は、俺と目が合った瞬間にその目を微笑ませて、竜の火炎をぶち撒けてきたのだった。
アニンを盾にするのも間に合わず、熱さとその勢いによって地面に打ち付けられた俺は、全身を覆う炎で息が出来ず、その炎を消す為にその場で横回転を何度も繰り返す。
消火が終わったところで、一つ目巨人に持ち上げられた俺は、『空間庫』が使用出来ないように両腕を折られると、ティカの前まで連れていかれた。
「はあ。なんだか可哀想ね、あなた」
自分の前に放り出された俺の姿を見て、ティカが溜息をこぼす。
「こんなになっても誰も助けに来ないなんて、使い捨てってこう言う人間の事を言うのね」
言われればその通りだ。ここまでボロボロにされているのだから、流石に誰か助けに来てくれても良いのじゃなかろうか? それともあれかな? 皆、次階への階段探しに夢中で、俺の状態なんて把握出来ていないのかな? それじゃあ仕方ないか。などと思いながらも涙が止まらないよ。
『意外と余裕があるじゃないか』
くそったれのアニンめ!
『私は糞なんて出さないがな』
ああ! もう! 身体中ボロボロで魔力もなし! 逆転の一手も思い付かないんですけど!?
「あなたを使い捨てにするお仲間さんの気が知れないけれど、私の仕事はあなたを殺す事だから、恨まないでね」
そう言って片手を上げるティカ。それを合図に魔物たちが俺を攻撃してくる。世界がスローモーションになる中、せめて一太刀浴びせてやろうと、俺は背中からアニンの黒刃を出して、一匹だけ何か魔物を仕留めてやった。その後襲い来る衝撃が俺の身体をグチャグチャにしていくのを感じ、何度目かの攻撃で、俺の意識は途絶えた。
パチンと目を覚ませば、すっきりしている。身体を起こして正座する。周囲を見渡せば、ティカを始め、魔物たちが驚いた目で俺を見ていた。
「成程、上手い具合にレベルアップ出来たみたいだな」
どうやら武田さんの作戦は成功だったらしい。ギリギリだったけど。
『ハルアキなら、もっと上手くやるとあの男も、他の仲間も思っていただろうな』
俺にそんな事を期待されても困る。俺はどこまで行ったって凡人だぞ。
「なんで今なのよ!?」
「そう言われてもな。運が良かった。としか言えないな」
ティカからしたら、運が悪かったのかな。同情はしないけど。さてと。
スパン。
俺は魔物たちに命令を下そうとしていたティカより早く、その首を刎ねていた。地に落ちたティカは驚いたような顔をしていたが、全てを悟った後、彼女は幸せそうな笑顔で亡くなった。その訳知り顔が何故か強く印象に残った。
俺はと言えば、手には闇命の手甲、足には闇命の足甲。それだけだ。『闇命の鎧』を全身鎧として装着するのではなく、部分使用する。全身鎧を着た時の変な高揚感は薄く、それでいて攻撃力と機動力は上がっている。これは俺に向いているかも。
いずれは全身鎧を装着出来るようになる必要があるだろうけど、とりあえず今は、この型で行けるところまで行こう。
「となれば」
俺は周囲を取り囲む魔物たちを見渡す。ティカを殺した事で『完全魅了』から解放された魔物たちは、次に何をすれば良いのか分からず、戸惑っていた。さて、今の内に、この新しい型の実験台として死んでくれ。
「おお! ハルアキ! どうやら無事にレベル四十になれたみたいだな!」
ドゴッ
「何故、腹を殴る」
「全然無事じゃあなかったし。何なら死にかけたし」
俺の痛みをこの一発だけでチャラにしようと言うのだ。ありがたく受け取ってくれ。
俺はうずくまる武田さんを尻目に、戻ってきた皆を見遣る。
「それで、戻ってきたって事は、上階への階段は見付かったんですね?」
「ええ」
若干引いているラズゥさんを始め、皆が首肯する。では次の階層へと向かいますか。
ポーションで回復しようしたティカだったが、それを黙って見ていてやる程、俺は優しくない。『闇命の鎧』の手甲で強化された腕力でもって、ティカを守る目玉たちの『結界』をまたぶち破り、攻撃を加える。
「さっきまで『結界』で防げていたのに!」
ティカが言葉を吐き捨てる。『結界』が破られるとは思っていなかったのか、ティカは俺から更に距離を取って、目玉たちを増やして『結界』を強化しようとするが、そうはさせない。
俺は『闇命の鎧』の位置を腕から足へと移動させて、脚力を強化して機動力を上げ、『結界』が張られる前に攻撃を仕掛ける。
が、それは魔物たちによって防がれてしまった。流石は『完全魅了』で魅了されているだけに、ご主人様が危なくなったら、何を差し置いてもティカは守ろうとするのか。
魔物たちが俺の攻撃を防いでいる間に、ティカはポーションを飲みながら、『結界』を厚くする。これを確認した魔物たちが、攻勢に転じたので、今度は俺がティカから距離を取る事になった。
う~ん、『闇命の鎧』を部分使用する事で、魔力の消費を抑えつつ、継戦を維持していられるけど、やっぱりレベルアップしないとジリ貧なのは変わらないか。そんな事を思いながら、俺は襲い来る魔物たちを捌いていく。
宇宙人のグレイのようなゴブリンたちが瞬間移動で俺を取り囲むと、回転しながら両腕の黒刃で真っ二つに切り裂き、突進してくる巨大なオークを、跳躍で躱してその背に飛び乗ると、後頭部へ黒槍で一撃。そこへ凍血鬼が凍結魔法で俺を氷漬けにしようとするのを、寸でで転がりながら脱出して、地面に着地するのと同時に、闇命の足甲で脚力を強化して凍血鬼に近付き、黒剣でその首を刎ねる。
「キシャーッ!!」
そこへ一つ目のムカデが四方から襲い掛かってくるが、闇命の手甲で強化した手で持った黒剣で、一匹を縦に両断しながら、その場から脱出、返す刀で後方から追い迫る一つ目ムカデの首を断ち切り、跳躍すると、その更に後方から追いすがる二匹を、両掌から出した黒槍を伸長させて刺し貫く。
「何やっているのよ!」
思い通りに事が運ばない焦れったさから、癇癪を起こすティカの姿が目の端に入り、思わず口角が上がったところで、
バガンッ!!
と一つ目巨人に思いっ切り地面に叩き落された。
「がはッ!!」
気を抜くものじゃないな。打ちどころが悪く、上半身は起こせたものの、見れば両足があらぬ方向を向いている。ポーションで直ぐ様回復しなければ、と『空間庫』に手を突っ込んだところで、オーガに蹴りを入れられふっ飛ばされる。
飛ばされた先には八つ目サイが待ち受けており、その凶悪な角でかち上げられ、空中へ打ち上げられた俺を待っていたのは、空を翔ける魔物の王者、飛竜だ。口中に火炎をたらふく蓄えた飛竜は、俺と目が合った瞬間にその目を微笑ませて、竜の火炎をぶち撒けてきたのだった。
アニンを盾にするのも間に合わず、熱さとその勢いによって地面に打ち付けられた俺は、全身を覆う炎で息が出来ず、その炎を消す為にその場で横回転を何度も繰り返す。
消火が終わったところで、一つ目巨人に持ち上げられた俺は、『空間庫』が使用出来ないように両腕を折られると、ティカの前まで連れていかれた。
「はあ。なんだか可哀想ね、あなた」
自分の前に放り出された俺の姿を見て、ティカが溜息をこぼす。
「こんなになっても誰も助けに来ないなんて、使い捨てってこう言う人間の事を言うのね」
言われればその通りだ。ここまでボロボロにされているのだから、流石に誰か助けに来てくれても良いのじゃなかろうか? それともあれかな? 皆、次階への階段探しに夢中で、俺の状態なんて把握出来ていないのかな? それじゃあ仕方ないか。などと思いながらも涙が止まらないよ。
『意外と余裕があるじゃないか』
くそったれのアニンめ!
『私は糞なんて出さないがな』
ああ! もう! 身体中ボロボロで魔力もなし! 逆転の一手も思い付かないんですけど!?
「あなたを使い捨てにするお仲間さんの気が知れないけれど、私の仕事はあなたを殺す事だから、恨まないでね」
そう言って片手を上げるティカ。それを合図に魔物たちが俺を攻撃してくる。世界がスローモーションになる中、せめて一太刀浴びせてやろうと、俺は背中からアニンの黒刃を出して、一匹だけ何か魔物を仕留めてやった。その後襲い来る衝撃が俺の身体をグチャグチャにしていくのを感じ、何度目かの攻撃で、俺の意識は途絶えた。
パチンと目を覚ませば、すっきりしている。身体を起こして正座する。周囲を見渡せば、ティカを始め、魔物たちが驚いた目で俺を見ていた。
「成程、上手い具合にレベルアップ出来たみたいだな」
どうやら武田さんの作戦は成功だったらしい。ギリギリだったけど。
『ハルアキなら、もっと上手くやるとあの男も、他の仲間も思っていただろうな』
俺にそんな事を期待されても困る。俺はどこまで行ったって凡人だぞ。
「なんで今なのよ!?」
「そう言われてもな。運が良かった。としか言えないな」
ティカからしたら、運が悪かったのかな。同情はしないけど。さてと。
スパン。
俺は魔物たちに命令を下そうとしていたティカより早く、その首を刎ねていた。地に落ちたティカは驚いたような顔をしていたが、全てを悟った後、彼女は幸せそうな笑顔で亡くなった。その訳知り顔が何故か強く印象に残った。
俺はと言えば、手には闇命の手甲、足には闇命の足甲。それだけだ。『闇命の鎧』を全身鎧として装着するのではなく、部分使用する。全身鎧を着た時の変な高揚感は薄く、それでいて攻撃力と機動力は上がっている。これは俺に向いているかも。
いずれは全身鎧を装着出来るようになる必要があるだろうけど、とりあえず今は、この型で行けるところまで行こう。
「となれば」
俺は周囲を取り囲む魔物たちを見渡す。ティカを殺した事で『完全魅了』から解放された魔物たちは、次に何をすれば良いのか分からず、戸惑っていた。さて、今の内に、この新しい型の実験台として死んでくれ。
「おお! ハルアキ! どうやら無事にレベル四十になれたみたいだな!」
ドゴッ
「何故、腹を殴る」
「全然無事じゃあなかったし。何なら死にかけたし」
俺の痛みをこの一発だけでチャラにしようと言うのだ。ありがたく受け取ってくれ。
俺はうずくまる武田さんを尻目に、戻ってきた皆を見遣る。
「それで、戻ってきたって事は、上階への階段は見付かったんですね?」
「ええ」
若干引いているラズゥさんを始め、皆が首肯する。では次の階層へと向かいますか。
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