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昼休み
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うちの学校に学食はない。なのでいつも昼は購買だ。校舎一階の奥にある購買で、大体アンパン、クリームパン、カレーパン、焼きそばパンのうちのどれか二種類を買って、教室に戻っては一人で食べている。タカシは女子と食べるのが恒例になっているからだ。
「よう、工藤」
購買でクリームパンとカレーパン、ココアを買い、ココアを飲みながら教室に戻っていると、声を掛けられた。祖父江兄妹だ。話があるそうだ。この前の続きだろう。
こう言う時、ラノベやマンガだと屋上で話したりするものだが、学校に屋上はあるが、普通に出入り禁止だ。なので教室から遠い、特別教室などがある側の階段で、昼食を摂りながら話をする事になった。
「結果から言えば、俺たち異世界調査隊は祝福の儀を受けられない、と言う事が分かった」
と祖父江兄。ほう、そうなのか。
「祝福の儀は神からの祝福を授ける神聖な儀式らしく、他の宗教に入っている俺たち地球人に、神聖な儀式を受けさせたくないそうだ」
まあ、そう言う事もあるか。俺も裏技的に祝福の儀を受けたしな。
「俺たちがデウサリウス教に改宗するなら考えるらしいが」
「え? デウサリウス教なの?」
思わず声に出してしまった。
「ああ。それか何か?」
「いや、俺が祝福の儀を受けたのもデウサリウス様だったから」
二人に、それはそうだろう。と言う顔をされてしまった。デウサリウス様は異世界ではメジャーな神様だったらしい。
「それで異世界調査隊の中には信仰心の厚い人間も多くてな、いくら異世界の調査の為とは言え、改宗は出来ないってのが仲間の半数を超えている」
そう言えばカナが今や異世界調査隊は、世界中から人が集まる一大プロジェクトだって言ってたな。日本人だけのプロジェクトチームだったら、多分改宗と言う意見も通っていたかも知れないが、世界となるとそうもいかないんだな。
「デウサリウス様以外の神様なら、どうにかなったりするんじゃないか?」
「は?」
「え?」
二人に驚かれてしまった。
「どう言う事だ?」
と祖父江兄に詰め寄られる。
「あれ? モーハルドはデウサリウス様の一神教オンリーなのか? 俺が祝福の儀を受けたクーヨンでは、一神教と多神教が混在していたぞ?」
なんか二人が頭抱えているな。まあ、一神教の国でだけ生活していれば、世界に神様は一柱だけ。と思い込んでしまうのも分かるな。
「モーハルドはデウサリウス教が国教でな。他にも神様がいるなんて話、耳に入ってこなかった」
「あいつら、わざと情報隠してたんじゃないの?」
祖父江兄妹が苦々しげに呟く。情報収集を得意とする忍者なら、色々調べておきたかっただろうが、相手が異世界である上に、言葉も通じないだろうから、情報収集も難儀しているのだろう。
「まあ、祝福の儀でスキルが手に入らなくても、スキル屋から買えば良いんだし。どうにかなるんじゃないか?」
「スキル屋って、やっぱり存在するんだな」
嘆息する祖父江兄。
「あれ? 桂木さんたちが滞在する町、デミスだっけ? にはスキル屋がないのか?」
「と言うか、スキルの売買自体禁止されているよ」
マジか?
「桂木さんもどうにかならないか考えてな。他者からの譲渡や売買なんかでどうにかならないか、と向こうに訴えたんだが、何でもスキルは神デウサリウスがお与え下さった神聖なもの。って考え方らしくてな。取り付く島もなかったよ」
モーハルド、意外とガッチガチの宗教国家なのかもなあ。それだけガッチガチだともっと排他的になって、他宗教の異世界人なんて迫害や追放されてもおかしくないのに。桂木の『魅了』のお陰かも知れないが、バレたら余計に立場を悪くしそうだよなあ。
「いっそモーハルドから出たらどうだ?」
「いや、それはどうだろうな」
渋る祖父江兄。
「今、モーハルドとの間で共同研究なんかも始まっているからな。結構な金が掛かっているし、物資の往来もそれなりの量になっている。今から他国に行きます。って言うのも難しいだろう」
金掛かっているなら仕方ないか。それにモーハルドとしても桂木たちを有用だと思っているって事だろうから、邪険には扱わないか。
金かあ。そうだ。俺も活動資金稼がないとなあ。
「小太郎くん」
「何だよ。初めて名前で呼ばれたな」
そうだったっけ?
「桂木さんに両替頼めないかな?」
「両替?」
「向こうの金をいくらか持っているんだけど、こっちじゃ両替も出来ないだろう? 俺も活動資金が欲しくてね」
下手にこっちの質屋にでも持ち込んだら、足がついて俺と言う存在が世間にバレる可能性があるからな。慎重にいきたい。
「いや、それなら工藤から対価を払う必要はないよ」
ん? どう言う事?
「桂木さんから情報料を渡すように言われているからな」
そう言ってスマホを取り出す祖父江兄。これで電子マネーのやり取りをするつもりらしい。
「……! こんなに!?」
情報料は十万円だった。情報が結構な値段になったな。
「それは前回の情報分だ。今回の情報も持ち帰って明日にでも払う」
おお! 桂木翔真気風が良いな!
「じゃあ、情報ありがとな」
「バイバイ」
と祖父江兄妹は自身の教室に戻っていった。俺はスマホに入った十万円と言う大金で、何を買おうか考えていたら、午後の授業に遅れてしまった。
「よう、工藤」
購買でクリームパンとカレーパン、ココアを買い、ココアを飲みながら教室に戻っていると、声を掛けられた。祖父江兄妹だ。話があるそうだ。この前の続きだろう。
こう言う時、ラノベやマンガだと屋上で話したりするものだが、学校に屋上はあるが、普通に出入り禁止だ。なので教室から遠い、特別教室などがある側の階段で、昼食を摂りながら話をする事になった。
「結果から言えば、俺たち異世界調査隊は祝福の儀を受けられない、と言う事が分かった」
と祖父江兄。ほう、そうなのか。
「祝福の儀は神からの祝福を授ける神聖な儀式らしく、他の宗教に入っている俺たち地球人に、神聖な儀式を受けさせたくないそうだ」
まあ、そう言う事もあるか。俺も裏技的に祝福の儀を受けたしな。
「俺たちがデウサリウス教に改宗するなら考えるらしいが」
「え? デウサリウス教なの?」
思わず声に出してしまった。
「ああ。それか何か?」
「いや、俺が祝福の儀を受けたのもデウサリウス様だったから」
二人に、それはそうだろう。と言う顔をされてしまった。デウサリウス様は異世界ではメジャーな神様だったらしい。
「それで異世界調査隊の中には信仰心の厚い人間も多くてな、いくら異世界の調査の為とは言え、改宗は出来ないってのが仲間の半数を超えている」
そう言えばカナが今や異世界調査隊は、世界中から人が集まる一大プロジェクトだって言ってたな。日本人だけのプロジェクトチームだったら、多分改宗と言う意見も通っていたかも知れないが、世界となるとそうもいかないんだな。
「デウサリウス様以外の神様なら、どうにかなったりするんじゃないか?」
「は?」
「え?」
二人に驚かれてしまった。
「どう言う事だ?」
と祖父江兄に詰め寄られる。
「あれ? モーハルドはデウサリウス様の一神教オンリーなのか? 俺が祝福の儀を受けたクーヨンでは、一神教と多神教が混在していたぞ?」
なんか二人が頭抱えているな。まあ、一神教の国でだけ生活していれば、世界に神様は一柱だけ。と思い込んでしまうのも分かるな。
「モーハルドはデウサリウス教が国教でな。他にも神様がいるなんて話、耳に入ってこなかった」
「あいつら、わざと情報隠してたんじゃないの?」
祖父江兄妹が苦々しげに呟く。情報収集を得意とする忍者なら、色々調べておきたかっただろうが、相手が異世界である上に、言葉も通じないだろうから、情報収集も難儀しているのだろう。
「まあ、祝福の儀でスキルが手に入らなくても、スキル屋から買えば良いんだし。どうにかなるんじゃないか?」
「スキル屋って、やっぱり存在するんだな」
嘆息する祖父江兄。
「あれ? 桂木さんたちが滞在する町、デミスだっけ? にはスキル屋がないのか?」
「と言うか、スキルの売買自体禁止されているよ」
マジか?
「桂木さんもどうにかならないか考えてな。他者からの譲渡や売買なんかでどうにかならないか、と向こうに訴えたんだが、何でもスキルは神デウサリウスがお与え下さった神聖なもの。って考え方らしくてな。取り付く島もなかったよ」
モーハルド、意外とガッチガチの宗教国家なのかもなあ。それだけガッチガチだともっと排他的になって、他宗教の異世界人なんて迫害や追放されてもおかしくないのに。桂木の『魅了』のお陰かも知れないが、バレたら余計に立場を悪くしそうだよなあ。
「いっそモーハルドから出たらどうだ?」
「いや、それはどうだろうな」
渋る祖父江兄。
「今、モーハルドとの間で共同研究なんかも始まっているからな。結構な金が掛かっているし、物資の往来もそれなりの量になっている。今から他国に行きます。って言うのも難しいだろう」
金掛かっているなら仕方ないか。それにモーハルドとしても桂木たちを有用だと思っているって事だろうから、邪険には扱わないか。
金かあ。そうだ。俺も活動資金稼がないとなあ。
「小太郎くん」
「何だよ。初めて名前で呼ばれたな」
そうだったっけ?
「桂木さんに両替頼めないかな?」
「両替?」
「向こうの金をいくらか持っているんだけど、こっちじゃ両替も出来ないだろう? 俺も活動資金が欲しくてね」
下手にこっちの質屋にでも持ち込んだら、足がついて俺と言う存在が世間にバレる可能性があるからな。慎重にいきたい。
「いや、それなら工藤から対価を払う必要はないよ」
ん? どう言う事?
「桂木さんから情報料を渡すように言われているからな」
そう言ってスマホを取り出す祖父江兄。これで電子マネーのやり取りをするつもりらしい。
「……! こんなに!?」
情報料は十万円だった。情報が結構な値段になったな。
「それは前回の情報分だ。今回の情報も持ち帰って明日にでも払う」
おお! 桂木翔真気風が良いな!
「じゃあ、情報ありがとな」
「バイバイ」
と祖父江兄妹は自身の教室に戻っていった。俺はスマホに入った十万円と言う大金で、何を買おうか考えていたら、午後の授業に遅れてしまった。
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