世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
上 下
52 / 642

昼休み

しおりを挟む
 うちの学校に学食はない。なのでいつも昼は購買だ。校舎一階の奥にある購買で、大体アンパン、クリームパン、カレーパン、焼きそばパンのうちのどれか二種類を買って、教室に戻っては一人で食べている。タカシは女子と食べるのが恒例になっているからだ。


「よう、工藤」


 購買でクリームパンとカレーパン、ココアを買い、ココアを飲みながら教室に戻っていると、声を掛けられた。祖父江兄妹だ。話があるそうだ。この前の続きだろう。


 こう言う時、ラノベやマンガだと屋上で話したりするものだが、学校に屋上はあるが、普通に出入り禁止だ。なので教室から遠い、特別教室などがある側の階段で、昼食を摂りながら話をする事になった。


「結果から言えば、俺たち異世界調査隊は祝福の儀を受けられない、と言う事が分かった」


 と祖父江兄。ほう、そうなのか。


「祝福の儀は神からの祝福を授ける神聖な儀式らしく、他の宗教に入っている俺たち地球人に、神聖な儀式を受けさせたくないそうだ」


 まあ、そう言う事もあるか。俺も裏技的に祝福の儀を受けたしな。


「俺たちがデウサリウス教に改宗するなら考えるらしいが」


「え? デウサリウス教なの?」


 思わず声に出してしまった。


「ああ。それか何か?」


「いや、俺が祝福の儀を受けたのもデウサリウス様だったから」


 二人に、それはそうだろう。と言う顔をされてしまった。デウサリウス様は異世界ではメジャーな神様だったらしい。


「それで異世界調査隊の中には信仰心の厚い人間も多くてな、いくら異世界の調査の為とは言え、改宗は出来ないってのが仲間の半数を超えている」


 そう言えばカナが今や異世界調査隊は、世界中から人が集まる一大プロジェクトだって言ってたな。日本人だけのプロジェクトチームだったら、多分改宗と言う意見も通っていたかも知れないが、世界となるとそうもいかないんだな。


「デウサリウス様以外の神様なら、どうにかなったりするんじゃないか?」


「は?」


「え?」


 二人に驚かれてしまった。


「どう言う事だ?」


 と祖父江兄に詰め寄られる。


「あれ? モーハルドはデウサリウス様の一神教オンリーなのか? 俺が祝福の儀を受けたクーヨンでは、一神教と多神教が混在していたぞ?」


 なんか二人が頭抱えているな。まあ、一神教の国でだけ生活していれば、世界に神様は一柱だけ。と思い込んでしまうのも分かるな。


「モーハルドはデウサリウス教が国教でな。他にも神様がいるなんて話、耳に入ってこなかった」


「あいつら、わざと情報隠してたんじゃないの?」


 祖父江兄妹が苦々しげに呟く。情報収集を得意とする忍者なら、色々調べておきたかっただろうが、相手が異世界である上に、言葉も通じないだろうから、情報収集も難儀しているのだろう。


「まあ、祝福の儀でスキルが手に入らなくても、スキル屋から買えば良いんだし。どうにかなるんじゃないか?」


「スキル屋って、やっぱり存在するんだな」


 嘆息する祖父江兄。


「あれ? 桂木さんたちが滞在する町、デミスだっけ? にはスキル屋がないのか?」


「と言うか、スキルの売買自体禁止されているよ」


 マジか?


「桂木さんもどうにかならないか考えてな。他者からの譲渡や売買なんかでどうにかならないか、と向こうに訴えたんだが、何でもスキルは神デウサリウスがお与え下さった神聖なもの。って考え方らしくてな。取り付く島もなかったよ」


 モーハルド、意外とガッチガチの宗教国家なのかもなあ。それだけガッチガチだともっと排他的になって、他宗教の異世界人なんて迫害や追放されてもおかしくないのに。桂木の『魅了』のお陰かも知れないが、バレたら余計に立場を悪くしそうだよなあ。


「いっそモーハルドから出たらどうだ?」


「いや、それはどうだろうな」


 渋る祖父江兄。


「今、モーハルドとの間で共同研究なんかも始まっているからな。結構な金が掛かっているし、物資の往来もそれなりの量になっている。今から他国に行きます。って言うのも難しいだろう」


 金掛かっているなら仕方ないか。それにモーハルドとしても桂木たちを有用だと思っているって事だろうから、邪険には扱わないか。


 金かあ。そうだ。俺も活動資金稼がないとなあ。


「小太郎くん」


「何だよ。初めて名前で呼ばれたな」


 そうだったっけ?


「桂木さんに両替頼めないかな?」


「両替?」


「向こうの金をいくらか持っているんだけど、こっちじゃ両替も出来ないだろう? 俺も活動資金が欲しくてね」


 下手にこっちの質屋にでも持ち込んだら、足がついて俺と言う存在が世間にバレる可能性があるからな。慎重にいきたい。


「いや、それなら工藤から対価を払う必要はないよ」


 ん? どう言う事?


「桂木さんから情報料を渡すように言われているからな」


 そう言ってスマホを取り出す祖父江兄。これで電子マネーのやり取りをするつもりらしい。


「……! こんなに!?」


 情報料は十万円だった。情報が結構な値段になったな。


「それは前回の情報分だ。今回の情報も持ち帰って明日にでも払う」


 おお! 桂木翔真気風きっぷが良いな!


「じゃあ、情報ありがとな」


「バイバイ」


 と祖父江兄妹は自身の教室に戻っていった。俺はスマホに入った十万円と言う大金で、何を買おうか考えていたら、午後の授業に遅れてしまった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...