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成長・発展・展開
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学校と言う場所は奇特な所である。
世の中に好き好んで二月の寒空の下、校庭でサッカーをしたい奴なんていないだろう。体操着の上にジャージ着てても寒いわ。
ボーッと突っ立ってるのがいけないのだろうか。少しは身体を動かせば温かくなるかな?
コロコロコロと丁度良くボールが俺の前に転がり込んできた。
「げっ! 工藤だ! 工藤に渡ったぞ! 全員退避!」
クラスメイトの一人の号令で、ボールを追っていたクラスメイトたちが一斉に俺から離れていく。なんだこの扱い。
そう思いながら俺は味方のペナルティーエリアから、敵ゴールに向かってボールを蹴り出した。
ボールは一直線に敵ゴールポストに向かい、既にキーパーも退避済みのゴールに突き刺さる。
「やべえ……! 人間じゃねえよアイツ」
失敬だな。人間だよ。……人間だよね?
『変なところで自信を失くしておるな』
「そりゃあねえ。失った足が生えてきようものなら、自分が人間なのか疑いたくもなるって」
学校で周りから恐れられながら一日を過ごし、帰宅した俺は今日も穴掘りをしていた。異世界でレベルアップをした俺の肉体は、どうやら地球では規格外になってきているようだ。
そんな俺が学校であまり目立っていないのは、タカシのハーレムが派手で衆目を集めているからだろう。
『ふむ。地球人と言うのは、魔物などを倒してレベルアップした時に、傷や欠損部位が回復したりしないのか?』
「そもそも地球に魔物はいないから。動物殺してレベルアップした。なんて話も聞いた事ないし」
『ふむ。傷の回復を人間の自然治癒力に任せるとなると、随分と生き難い世の中なのだな。文明はかなり発達しているように見えたのだがな』
「う~ん、どうだろう? 地球であっても国や地域によっても文明レベルは違うしなあ。アニンだって長い事眠ってたんだ。もしかしたらこっちの世界だって文明レベルが上がってるかもよ?」
『ふむ。確かにそれはあり得るな』
文明云々と言うと、テレビやネットで見る限りでは、桂木翔真によって組織された異世界調査隊は、異世界の現地人とそれなりに上手く交流しているようだ。
特番だった番組は、既に週一放送に切り替わっており、地球人類未踏の異世界の映像に、全世界の人たちが注目し始めていた。
番組に出てくる異世界人は見た目俺たちとあまり変わりなく、ただ髪色や瞳の色が違うだけのように見える。ピンクや青い髪とか、異世界では普通らしい。
生活は素朴で、魔法、魔法陣や魔石に依拠した暮らしのようだ。ただ、生活圏の外には人間より強い魔物なども多く存在するようで、地球のように人間の生活圏を広く取れていないので、文明レベルが高いようには見えなかった。困っているようにも見えなかったけど。
アニンが変化した真っ黒なツルハシでサクサク穴を掘り、掘って出た岩くれを、またもやアニンを変化させたスコップで一輪車に載せる。そしてそれを地下墓地を通って崖下まで運んでいくのだ。この運ぶ作業が面倒臭い。
穴掘り自体はアニンのお陰でサクサク進むようになったのだが、お陰様でトンネルの道程が長くなり過ぎ、一輪車の往復が一苦労だ。まあ、これは嬉しい悲鳴と言う事にしておこう。
「ふう」
崖下で岩くれを一輪車から降ろすと、一息吐いて天を仰ぐ。見えるのは狭い狭い空の景色だ。ああ、あの空をもっと広い場所でのんびり眺めたいものだ。
などと思いを巡らせていると、何かが岩壁を這う気配を感じ取った。視線をそちらに向けると、トカゲだ。なんだろう? 今まで見なかったのに、この時期に立て続けに見ると言う事は、崖の外でトカゲが繁殖した。と言う事なのか? それとも今が繁殖期で、エサを求めてここまで下ってきたのだろうか?
まあ、どちらでもいいか。殺すだけだ。俺は腕輪形態だったアニンを、剣へと変えた。
黒剣は見た目は普通の直剣だ。刀身は一メートルはないだろう。俺はそれを両手で握り、正眼に構える。俺は生まれてこの方剣なんて扱った事がない。なのでこんな感じで構えるのかなってところだ。
トカゲと対峙すると、この間の事を思い出して背中を冷や汗が流れる。
『大丈夫だ。あんなトカゲに負けはせん』
そう言ってくれるアニンが心強い。
ふう、ふう、と浅くなる息を整えているうちに、トカゲがこちらへ猛突進してきた。
俺は剣を振り上げ、大口開けて俺を飲み込もうとするトカゲと交錯する直前、黒剣を振り下ろした。
すると、ザシュッと黒い刃の波動が黒剣からトカゲに向かって迸り、五メートル以上あるトカゲは、一刀両断されたのだった。
真っ二つになったトカゲを見下ろしながら、そう言えば地下墓地で戦ったトカゲも、こんな感じに真っ二つになっていたなあ。と思い出す。
なんと言うか、剣の技量は要らなかったな。
『言ったであろう。トカゲなんぞに負けはせんと』
確かに、トカゲ程度ならどうにかなるが、今後アニンの扱い方に関して気を使う事になりそうだ。
地下墓地からトンネルを掘り進めて一週間。俺の感覚がざわついている。外が近い気がするのだ。間違いないだろう。
なのでツルハシを振るうのに気合いが入る。掘り起こされた岩くれを運び出すのも煩わしく、それらはそこら辺に放置してどんどん掘り進める。そして、
ザクッ、ガラガラッ!
と眼前の岩が砕け落ち。外から眩しい光が差し込んできた。そう、光だ。今度こそ本当に外に出られたのだ。と穴を拡張して、俺は外に飛び出した。
確かにそこは外だった。眼前は林で、木々が鬱蒼と生い茂っている。その向こうに微かに見える太陽が、真っ赤に染まって見えるので、今は夕暮れなのだろう。
「外に、出たんだな」
『うむ。そうだな』
はあ~、と俺はその場に大の字になって倒れ伏した。見上げる空は暗くなり始め、星がチラチラ瞬き始めている。
大きく息を吸い込むと、崖下からここまでのトンネルの中とは違い、新鮮な空気の匂いがする。美味しい。
トンネルを掘り進める事約半年。やっと、やっと外に出られた。嬉しい。凄い達成感が心の底から沸き起こる。俺は成し遂げたのだ!
……いやいやいや。何を言っとるんだ俺は。成し遂げたって、トンネル開通させただけじゃねえか。ここから、広い異世界を冒険するんだろうが。
そう、ここからがメイン。今までのは前菜だ。……前菜だけで結構お腹いっぱいだな俺。
はあ、今後の事はまた今度考えるとして、今はこの達成感に浸るとしよう。そう思い直し、俺は空の星々を再度見上げるのだった。
世の中に好き好んで二月の寒空の下、校庭でサッカーをしたい奴なんていないだろう。体操着の上にジャージ着てても寒いわ。
ボーッと突っ立ってるのがいけないのだろうか。少しは身体を動かせば温かくなるかな?
コロコロコロと丁度良くボールが俺の前に転がり込んできた。
「げっ! 工藤だ! 工藤に渡ったぞ! 全員退避!」
クラスメイトの一人の号令で、ボールを追っていたクラスメイトたちが一斉に俺から離れていく。なんだこの扱い。
そう思いながら俺は味方のペナルティーエリアから、敵ゴールに向かってボールを蹴り出した。
ボールは一直線に敵ゴールポストに向かい、既にキーパーも退避済みのゴールに突き刺さる。
「やべえ……! 人間じゃねえよアイツ」
失敬だな。人間だよ。……人間だよね?
『変なところで自信を失くしておるな』
「そりゃあねえ。失った足が生えてきようものなら、自分が人間なのか疑いたくもなるって」
学校で周りから恐れられながら一日を過ごし、帰宅した俺は今日も穴掘りをしていた。異世界でレベルアップをした俺の肉体は、どうやら地球では規格外になってきているようだ。
そんな俺が学校であまり目立っていないのは、タカシのハーレムが派手で衆目を集めているからだろう。
『ふむ。地球人と言うのは、魔物などを倒してレベルアップした時に、傷や欠損部位が回復したりしないのか?』
「そもそも地球に魔物はいないから。動物殺してレベルアップした。なんて話も聞いた事ないし」
『ふむ。傷の回復を人間の自然治癒力に任せるとなると、随分と生き難い世の中なのだな。文明はかなり発達しているように見えたのだがな』
「う~ん、どうだろう? 地球であっても国や地域によっても文明レベルは違うしなあ。アニンだって長い事眠ってたんだ。もしかしたらこっちの世界だって文明レベルが上がってるかもよ?」
『ふむ。確かにそれはあり得るな』
文明云々と言うと、テレビやネットで見る限りでは、桂木翔真によって組織された異世界調査隊は、異世界の現地人とそれなりに上手く交流しているようだ。
特番だった番組は、既に週一放送に切り替わっており、地球人類未踏の異世界の映像に、全世界の人たちが注目し始めていた。
番組に出てくる異世界人は見た目俺たちとあまり変わりなく、ただ髪色や瞳の色が違うだけのように見える。ピンクや青い髪とか、異世界では普通らしい。
生活は素朴で、魔法、魔法陣や魔石に依拠した暮らしのようだ。ただ、生活圏の外には人間より強い魔物なども多く存在するようで、地球のように人間の生活圏を広く取れていないので、文明レベルが高いようには見えなかった。困っているようにも見えなかったけど。
アニンが変化した真っ黒なツルハシでサクサク穴を掘り、掘って出た岩くれを、またもやアニンを変化させたスコップで一輪車に載せる。そしてそれを地下墓地を通って崖下まで運んでいくのだ。この運ぶ作業が面倒臭い。
穴掘り自体はアニンのお陰でサクサク進むようになったのだが、お陰様でトンネルの道程が長くなり過ぎ、一輪車の往復が一苦労だ。まあ、これは嬉しい悲鳴と言う事にしておこう。
「ふう」
崖下で岩くれを一輪車から降ろすと、一息吐いて天を仰ぐ。見えるのは狭い狭い空の景色だ。ああ、あの空をもっと広い場所でのんびり眺めたいものだ。
などと思いを巡らせていると、何かが岩壁を這う気配を感じ取った。視線をそちらに向けると、トカゲだ。なんだろう? 今まで見なかったのに、この時期に立て続けに見ると言う事は、崖の外でトカゲが繁殖した。と言う事なのか? それとも今が繁殖期で、エサを求めてここまで下ってきたのだろうか?
まあ、どちらでもいいか。殺すだけだ。俺は腕輪形態だったアニンを、剣へと変えた。
黒剣は見た目は普通の直剣だ。刀身は一メートルはないだろう。俺はそれを両手で握り、正眼に構える。俺は生まれてこの方剣なんて扱った事がない。なのでこんな感じで構えるのかなってところだ。
トカゲと対峙すると、この間の事を思い出して背中を冷や汗が流れる。
『大丈夫だ。あんなトカゲに負けはせん』
そう言ってくれるアニンが心強い。
ふう、ふう、と浅くなる息を整えているうちに、トカゲがこちらへ猛突進してきた。
俺は剣を振り上げ、大口開けて俺を飲み込もうとするトカゲと交錯する直前、黒剣を振り下ろした。
すると、ザシュッと黒い刃の波動が黒剣からトカゲに向かって迸り、五メートル以上あるトカゲは、一刀両断されたのだった。
真っ二つになったトカゲを見下ろしながら、そう言えば地下墓地で戦ったトカゲも、こんな感じに真っ二つになっていたなあ。と思い出す。
なんと言うか、剣の技量は要らなかったな。
『言ったであろう。トカゲなんぞに負けはせんと』
確かに、トカゲ程度ならどうにかなるが、今後アニンの扱い方に関して気を使う事になりそうだ。
地下墓地からトンネルを掘り進めて一週間。俺の感覚がざわついている。外が近い気がするのだ。間違いないだろう。
なのでツルハシを振るうのに気合いが入る。掘り起こされた岩くれを運び出すのも煩わしく、それらはそこら辺に放置してどんどん掘り進める。そして、
ザクッ、ガラガラッ!
と眼前の岩が砕け落ち。外から眩しい光が差し込んできた。そう、光だ。今度こそ本当に外に出られたのだ。と穴を拡張して、俺は外に飛び出した。
確かにそこは外だった。眼前は林で、木々が鬱蒼と生い茂っている。その向こうに微かに見える太陽が、真っ赤に染まって見えるので、今は夕暮れなのだろう。
「外に、出たんだな」
『うむ。そうだな』
はあ~、と俺はその場に大の字になって倒れ伏した。見上げる空は暗くなり始め、星がチラチラ瞬き始めている。
大きく息を吸い込むと、崖下からここまでのトンネルの中とは違い、新鮮な空気の匂いがする。美味しい。
トンネルを掘り進める事約半年。やっと、やっと外に出られた。嬉しい。凄い達成感が心の底から沸き起こる。俺は成し遂げたのだ!
……いやいやいや。何を言っとるんだ俺は。成し遂げたって、トンネル開通させただけじゃねえか。ここから、広い異世界を冒険するんだろうが。
そう、ここからがメイン。今までのは前菜だ。……前菜だけで結構お腹いっぱいだな俺。
はあ、今後の事はまた今度考えるとして、今はこの達成感に浸るとしよう。そう思い直し、俺は空の星々を再度見上げるのだった。
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