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硬い岩盤を抜けるとそこは……
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俺の前には壁がある。異世界の崖下を掘り進めた先にぶち当たった岩壁だ。俺は今日それをぶち破る。
俺の手には大型文房具店で入手したA0サイズの巨大な紙。そこには一筆書きで、円の中に五芒星、その中に逆五芒星がデカデカと描かれている。
A0サイズと言えば、A4サイズの十六倍の大きさだ。それだけ大きければ一筆書きでもっと細かな文様を描く事も可能だと思われるが、そうはいかない。
何故なら、インクがそれ程長持ちしないからだ。つけペンに含ませられるインクの量が少ない為に、複雑な文様を一筆書きで描こうとすると、途中でかすれてしまうのだ。
なので、描く大きさは大きく出来たが、魔法陣自体は凡庸なものになってしまった。ここら辺は今後要改良だな。
だがまずは目の前の壁だ。こいつを突破させて貰う。
俺は眼前の岩壁にA0の魔法陣を貼ると、その魔法陣に両手を添えて意識を岩壁に集中させる。
「岩壁よ! 砂となれ!」
集中力が極限まで高まったところで、魔法陣を通して岩壁に命令する。
するとどうだろう。魔法陣が淡く光りだしたかと思うと、あれほど硬く、ツルハシさえ通じなかった岩壁が、さらさらと砂になっていく。
「おおっ、やった!」
俺は思わず歓喜の声を漏らしていた。しかし喜びもすぐに落胆に変わった。魔法陣の描かれたA0の紙までもが、砂となって消えてしまったからだ。
「マジか~……」
まあ、これは予想出来ていた事だけどね。自室でノートに魔法陣を描いてみた結果、魔法発動後二つの現象が見られた。
魔法陣は残るが、魔法が発動しなくなるか、魔法陣が描かれたノートの紙が、今回同様砂となって使い物にならなくなるかだ。
前者は小さな魔法の時によく現れる現象で、後者は大きな魔法の時によく現れたが、必ずしもそうと決まっている訳じゃない。小さな魔法の時にも魔法陣が砂になる事があれば、大きな魔法でも魔法陣が残る事があった。
前者であれば、再度魔法を行使する事が可能だが、後者の場合は当然それっきりだ。
何度か描いて試した結果、これはインクの性能が不安定である為に起こる事が分かった。どうやらインクに魔石の粉が均一に混ざってない為に起こっている現象であるらしい。
まあ、素人仕事だからなあ。
なのでインク内の魔石粉の均一性を上げる為に、インクに入れる魔石粉の量を徐々に増やしていき、均一性を上げていったのだが、魔石粉の量を増やしていくと、インクの粘性や粉っぽさが上がっていき、つけペンでは描けなくなってしまうのだ。
ならば筆で、と思うが、それだと均一に線を引く事が難しく、やはり粘性が高く粉っぽいインクでは線を引いてる途中でかすれてしまう。
今回A0の紙に魔法陣を描いたインクは、ここ最近で一番のインクで描いたものだったのだが、やはり岩盤を壊しきるには至らなかったようだ。
俺は砂になった岩盤をスコップと一輪車トンネルの外まで運び出す。結果、どうやら一メートル程掘り進められたようだ。
また同じようにA0の魔法陣を貼って掘り進めるべきだろうか? まあ、普通はこれの繰り返しだろう。俺も魔法陣のストックをあと四枚持ち合わせており、トンネルの入口に置いてある。
が、俺としては別案を試してみたい。それが、改良版ツルハシだ。
改良版ツルハシは、持ち手に魔石インクで魔法陣を描いてツルハシ自体の強化を施したものだ。更に桂木翔真がしていたように、俺も手袋の手のひらに魔法陣を描かせて貰った。この魔法によるダブル強化で硬い岩盤を力任せに掘り進むのが別案だ。
ここまでツルハシで掘り進めてきたのだ。やはりツルハシ掘削は捨て難い。
俺は岩盤の前まで来ると、魔法陣の描かれた手袋をピチッと両手に填め、ツルハシを握る。
「よし! 強化!」
そう口にしただけで、なんだか身体の奥底から力が湧いてくる気がする。ツルハシと手袋の魔法陣は、まだ砂になっていない。
「よっしゃあ!」
俺は気合いを入れてツルハシを振り上げると、岩盤に思いっきり叩きつける。
ギイインッ! と甲高い音がトンネル内にこだまする。そして手に跳ね返ってくる強烈な衝撃。それで岩盤はどうなったかと言うと、痺れる程の衝撃を返してきた部分が、ボコッと剥がれ落ちた。
「痛ってええ! でも掘り進められそうだ」
俺は手をぷるぷる振りながら何とか岩盤を剥がす事に成功した部分を起点に、トンネルを掘り進めていく。
しかしやっぱり硬い。少し掘り進めては休憩をとり、少し掘り進めては休憩をとる。トンネル掘削の進捗は大幅に遅れ、穴掘り作業は年を越したが、まだまだ先は見えてこなかった。
と、俺は思っていたのだが……。
二月の頭の事だった。ボコッと硬い岩盤が崩れ落ちる。とその先が空洞になっていた。まさか!? とうとう外に出たのか!? と必死になって人ひとり通れる程の穴を開けて、トンネルを突破する。
崖下やトンネル内と同じように真っ暗闇の出口で、俺はガシャンと何かを踏んだ。なんだろう? とヘッドライトとともに頭を下に向ける。
俺が踏んだのは、人骨だった。
俺の手には大型文房具店で入手したA0サイズの巨大な紙。そこには一筆書きで、円の中に五芒星、その中に逆五芒星がデカデカと描かれている。
A0サイズと言えば、A4サイズの十六倍の大きさだ。それだけ大きければ一筆書きでもっと細かな文様を描く事も可能だと思われるが、そうはいかない。
何故なら、インクがそれ程長持ちしないからだ。つけペンに含ませられるインクの量が少ない為に、複雑な文様を一筆書きで描こうとすると、途中でかすれてしまうのだ。
なので、描く大きさは大きく出来たが、魔法陣自体は凡庸なものになってしまった。ここら辺は今後要改良だな。
だがまずは目の前の壁だ。こいつを突破させて貰う。
俺は眼前の岩壁にA0の魔法陣を貼ると、その魔法陣に両手を添えて意識を岩壁に集中させる。
「岩壁よ! 砂となれ!」
集中力が極限まで高まったところで、魔法陣を通して岩壁に命令する。
するとどうだろう。魔法陣が淡く光りだしたかと思うと、あれほど硬く、ツルハシさえ通じなかった岩壁が、さらさらと砂になっていく。
「おおっ、やった!」
俺は思わず歓喜の声を漏らしていた。しかし喜びもすぐに落胆に変わった。魔法陣の描かれたA0の紙までもが、砂となって消えてしまったからだ。
「マジか~……」
まあ、これは予想出来ていた事だけどね。自室でノートに魔法陣を描いてみた結果、魔法発動後二つの現象が見られた。
魔法陣は残るが、魔法が発動しなくなるか、魔法陣が描かれたノートの紙が、今回同様砂となって使い物にならなくなるかだ。
前者は小さな魔法の時によく現れる現象で、後者は大きな魔法の時によく現れたが、必ずしもそうと決まっている訳じゃない。小さな魔法の時にも魔法陣が砂になる事があれば、大きな魔法でも魔法陣が残る事があった。
前者であれば、再度魔法を行使する事が可能だが、後者の場合は当然それっきりだ。
何度か描いて試した結果、これはインクの性能が不安定である為に起こる事が分かった。どうやらインクに魔石の粉が均一に混ざってない為に起こっている現象であるらしい。
まあ、素人仕事だからなあ。
なのでインク内の魔石粉の均一性を上げる為に、インクに入れる魔石粉の量を徐々に増やしていき、均一性を上げていったのだが、魔石粉の量を増やしていくと、インクの粘性や粉っぽさが上がっていき、つけペンでは描けなくなってしまうのだ。
ならば筆で、と思うが、それだと均一に線を引く事が難しく、やはり粘性が高く粉っぽいインクでは線を引いてる途中でかすれてしまう。
今回A0の紙に魔法陣を描いたインクは、ここ最近で一番のインクで描いたものだったのだが、やはり岩盤を壊しきるには至らなかったようだ。
俺は砂になった岩盤をスコップと一輪車トンネルの外まで運び出す。結果、どうやら一メートル程掘り進められたようだ。
また同じようにA0の魔法陣を貼って掘り進めるべきだろうか? まあ、普通はこれの繰り返しだろう。俺も魔法陣のストックをあと四枚持ち合わせており、トンネルの入口に置いてある。
が、俺としては別案を試してみたい。それが、改良版ツルハシだ。
改良版ツルハシは、持ち手に魔石インクで魔法陣を描いてツルハシ自体の強化を施したものだ。更に桂木翔真がしていたように、俺も手袋の手のひらに魔法陣を描かせて貰った。この魔法によるダブル強化で硬い岩盤を力任せに掘り進むのが別案だ。
ここまでツルハシで掘り進めてきたのだ。やはりツルハシ掘削は捨て難い。
俺は岩盤の前まで来ると、魔法陣の描かれた手袋をピチッと両手に填め、ツルハシを握る。
「よし! 強化!」
そう口にしただけで、なんだか身体の奥底から力が湧いてくる気がする。ツルハシと手袋の魔法陣は、まだ砂になっていない。
「よっしゃあ!」
俺は気合いを入れてツルハシを振り上げると、岩盤に思いっきり叩きつける。
ギイインッ! と甲高い音がトンネル内にこだまする。そして手に跳ね返ってくる強烈な衝撃。それで岩盤はどうなったかと言うと、痺れる程の衝撃を返してきた部分が、ボコッと剥がれ落ちた。
「痛ってええ! でも掘り進められそうだ」
俺は手をぷるぷる振りながら何とか岩盤を剥がす事に成功した部分を起点に、トンネルを掘り進めていく。
しかしやっぱり硬い。少し掘り進めては休憩をとり、少し掘り進めては休憩をとる。トンネル掘削の進捗は大幅に遅れ、穴掘り作業は年を越したが、まだまだ先は見えてこなかった。
と、俺は思っていたのだが……。
二月の頭の事だった。ボコッと硬い岩盤が崩れ落ちる。とその先が空洞になっていた。まさか!? とうとう外に出たのか!? と必死になって人ひとり通れる程の穴を開けて、トンネルを突破する。
崖下やトンネル内と同じように真っ暗闇の出口で、俺はガシャンと何かを踏んだ。なんだろう? とヘッドライトとともに頭を下に向ける。
俺が踏んだのは、人骨だった。
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