3 / 632
転移した先は……
しおりを挟む
まず異世界にやって来て思ったのは、『洞窟』だった。
足下はゴツゴツした岩場で、周囲は岩壁に囲われている。肌寒く、懐中電灯がなければ真っ暗。と天井に懐中電灯を向けると、吹き抜けていた。
岩壁がかなりの高さまでそそり立ち、その向こうに空がポツンと見える。どうやら俺が今いる場所は、崖下らしい。崖上からここまで遠すぎて光が届いていなかったのだ。そして吹き抜けの空の形からして、崖にぐるりと囲われた穴の底だと推測出来た。
……え? いや、確かに異世界での転移先は選んでいなかったけど、崖下って……。天使よ、俺にはお前のような翼は無いのだが。
この崖、登れるかな? と手を掛けるが、硬いし引っ掛かりは少ないし、ロッククライミングは難しそうだ。そもそも素人が命綱も無しにやる事じゃないだろう。
となると、他に道を探すべきか。
崖下を探索して分かったのは、どうやらここは体育館程の広さであるらしい事と、湖のようなものがひとつあると言う事だけだ。出口はなかった。
はあ、マジか。いきなり詰んだ。異世界でのちょっとした冒険を期待していたのに。これでは異世界に行けてないのと変わらない。
とりあえず落ち着こう。と岩のひとつに腰掛けて、背負っていたリュックから水を取り出す。
水を一口飲んで一息吐いて考える。ここ本当に異世界なのだろうか? 単純に、地球の別の場所に瞬間移動したと説明されても納得してしまう。異世界らしい部分って、今まで出てきていない気がする。
「う~ん」
ラノベやマンガで出てくる異世界ってどんなだっけ? 少なくとも崖下ではないよな。と考えを巡らせ、ひとつ思い付いたので実行してみる。
「ステータスオープン!」
シーン。何も起こらない。超恥ずかしい! くっ、ラノベやマンガなら、これで自分のステータスが確認出来たりするのに! 呪文が違うのだろうか? いや、そもそもステータスやスキルが存在する世界であるとは限らない訳で。って誰に対して言い訳しているんだ俺は!
「はあ、何してるんだろ」
帰ろうかな。と腰を上げた所で、ちゃぽんと湖の方から音がした。
何事だ!? と俺は直ぐ様湖の方へ懐中電灯を向ける。この崖下に生き物の姿は見掛けなかった。音の出るものなんて存在しないはずだ。
目を凝らして見ると、湖の側に何か落ちている。ドキドキしながら近付いてみると、炭酸のペットボトルだった。多分、俺が異世界にくる前に転移門に投げ込んだペットボトルだろう。
しかし、だから何だ? ペットボトルがひとりでに音を鳴らす訳がない。と言う事は、音を鳴らしたのは他のものであるはずだ。
俺は懐中電灯で周囲をくまなく照らそうとして、後ろに気配を感じた。直ぐ様懐中電灯を後ろに向けると、そこには体高一メートル程のデカい灰色のカエルがいた。
うおッ!? デカッ!? 流石にこんなデカいカエルは地球にはいないはずだ! カエルの大きさとそのヌメヌメテカテカした気持ち悪さに、俺が驚いて固まっていると、カエルがビョンと襲い掛かってきた!
そのカエルには驚く事に鋭い爪があり、口には牙が生えていた。爪に引っ掻き倒され、カエルにのし掛かられる。
「痛って!」
倒されて打った背中と、爪に引っ掻かれた左腕に痛みが走る。しかし悶える暇もない。カエルは牙の生えた大口を開き、今にも俺を頭からかぶりつこうとしているのだ。
俺はカエルと自分の間に足を滑り込ませると、その足でカエルを蹴り飛ばした。何とか離れるカエル。その隙に立ち上がる。懐中電灯を持つ左腕を触ると、血が付いていた。
やってくれたな! カッと頭に血が上る。が直ぐに冷静になった。そして引っ掻かれた左腕から、毒やバイ菌などが侵入していたらどうしよう、と不安が頭をよぎった。
しかしそんな事を考えている暇をカエルは与えてくれない。再びビョンと俺に飛び掛かってくるカエル。ヤバい! 死ぬ? 死にたくない!
俺は包丁で応戦しようと考えるが、包丁は背中のリュックの中だ。こんな事になるなら、包丁はリュックから出しておくんだった。
爪を振り下ろしてくるカエルの一撃を紙一重で躱す俺。がリュックに爪が引っ掛かり、リュックが裂けて中身がぶちまけられた。
ラッキー! 俺はぶちまけられたリュックの中身から包丁を拾い上げると、更に襲ってくるカエルの腹に、包丁を突き刺した。
「ぐえッ!」
と一声鳴くカエルだが、この程度では攻撃をやめてくれる事はなく、包丁を腹に刺したまま手足の爪をブンブン矢鱈目鱈振り回して攻撃してくる。それが顔や腕や脚に傷を付けていくのを感じながら、俺は包丁を持つ手に更に力を入れ、カエルを地面に叩き付けた。
「ぐええッ!」
更に声を上げるカエルにマウントを取ると、俺は包丁を逆手に持って何度となくカエルを突き刺し続けた。カエルが動かなくなるまで。
「はあ……、はあ……、はあ……」
カエルがピクリとも動かなくなったところで、立ち上がってカエルから離れる。フラフラする。初めてこんな大きな生き物を殺した。アドレナリンが大量に出ているのか、身体が興奮しているのが分かった。
「はあ……」
今日はもう戻ろう。俺は転移門を開くと、自室に帰っていった。傷、どうやって家族に説明しようか。
足下はゴツゴツした岩場で、周囲は岩壁に囲われている。肌寒く、懐中電灯がなければ真っ暗。と天井に懐中電灯を向けると、吹き抜けていた。
岩壁がかなりの高さまでそそり立ち、その向こうに空がポツンと見える。どうやら俺が今いる場所は、崖下らしい。崖上からここまで遠すぎて光が届いていなかったのだ。そして吹き抜けの空の形からして、崖にぐるりと囲われた穴の底だと推測出来た。
……え? いや、確かに異世界での転移先は選んでいなかったけど、崖下って……。天使よ、俺にはお前のような翼は無いのだが。
この崖、登れるかな? と手を掛けるが、硬いし引っ掛かりは少ないし、ロッククライミングは難しそうだ。そもそも素人が命綱も無しにやる事じゃないだろう。
となると、他に道を探すべきか。
崖下を探索して分かったのは、どうやらここは体育館程の広さであるらしい事と、湖のようなものがひとつあると言う事だけだ。出口はなかった。
はあ、マジか。いきなり詰んだ。異世界でのちょっとした冒険を期待していたのに。これでは異世界に行けてないのと変わらない。
とりあえず落ち着こう。と岩のひとつに腰掛けて、背負っていたリュックから水を取り出す。
水を一口飲んで一息吐いて考える。ここ本当に異世界なのだろうか? 単純に、地球の別の場所に瞬間移動したと説明されても納得してしまう。異世界らしい部分って、今まで出てきていない気がする。
「う~ん」
ラノベやマンガで出てくる異世界ってどんなだっけ? 少なくとも崖下ではないよな。と考えを巡らせ、ひとつ思い付いたので実行してみる。
「ステータスオープン!」
シーン。何も起こらない。超恥ずかしい! くっ、ラノベやマンガなら、これで自分のステータスが確認出来たりするのに! 呪文が違うのだろうか? いや、そもそもステータスやスキルが存在する世界であるとは限らない訳で。って誰に対して言い訳しているんだ俺は!
「はあ、何してるんだろ」
帰ろうかな。と腰を上げた所で、ちゃぽんと湖の方から音がした。
何事だ!? と俺は直ぐ様湖の方へ懐中電灯を向ける。この崖下に生き物の姿は見掛けなかった。音の出るものなんて存在しないはずだ。
目を凝らして見ると、湖の側に何か落ちている。ドキドキしながら近付いてみると、炭酸のペットボトルだった。多分、俺が異世界にくる前に転移門に投げ込んだペットボトルだろう。
しかし、だから何だ? ペットボトルがひとりでに音を鳴らす訳がない。と言う事は、音を鳴らしたのは他のものであるはずだ。
俺は懐中電灯で周囲をくまなく照らそうとして、後ろに気配を感じた。直ぐ様懐中電灯を後ろに向けると、そこには体高一メートル程のデカい灰色のカエルがいた。
うおッ!? デカッ!? 流石にこんなデカいカエルは地球にはいないはずだ! カエルの大きさとそのヌメヌメテカテカした気持ち悪さに、俺が驚いて固まっていると、カエルがビョンと襲い掛かってきた!
そのカエルには驚く事に鋭い爪があり、口には牙が生えていた。爪に引っ掻き倒され、カエルにのし掛かられる。
「痛って!」
倒されて打った背中と、爪に引っ掻かれた左腕に痛みが走る。しかし悶える暇もない。カエルは牙の生えた大口を開き、今にも俺を頭からかぶりつこうとしているのだ。
俺はカエルと自分の間に足を滑り込ませると、その足でカエルを蹴り飛ばした。何とか離れるカエル。その隙に立ち上がる。懐中電灯を持つ左腕を触ると、血が付いていた。
やってくれたな! カッと頭に血が上る。が直ぐに冷静になった。そして引っ掻かれた左腕から、毒やバイ菌などが侵入していたらどうしよう、と不安が頭をよぎった。
しかしそんな事を考えている暇をカエルは与えてくれない。再びビョンと俺に飛び掛かってくるカエル。ヤバい! 死ぬ? 死にたくない!
俺は包丁で応戦しようと考えるが、包丁は背中のリュックの中だ。こんな事になるなら、包丁はリュックから出しておくんだった。
爪を振り下ろしてくるカエルの一撃を紙一重で躱す俺。がリュックに爪が引っ掛かり、リュックが裂けて中身がぶちまけられた。
ラッキー! 俺はぶちまけられたリュックの中身から包丁を拾い上げると、更に襲ってくるカエルの腹に、包丁を突き刺した。
「ぐえッ!」
と一声鳴くカエルだが、この程度では攻撃をやめてくれる事はなく、包丁を腹に刺したまま手足の爪をブンブン矢鱈目鱈振り回して攻撃してくる。それが顔や腕や脚に傷を付けていくのを感じながら、俺は包丁を持つ手に更に力を入れ、カエルを地面に叩き付けた。
「ぐええッ!」
更に声を上げるカエルにマウントを取ると、俺は包丁を逆手に持って何度となくカエルを突き刺し続けた。カエルが動かなくなるまで。
「はあ……、はあ……、はあ……」
カエルがピクリとも動かなくなったところで、立ち上がってカエルから離れる。フラフラする。初めてこんな大きな生き物を殺した。アドレナリンが大量に出ているのか、身体が興奮しているのが分かった。
「はあ……」
今日はもう戻ろう。俺は転移門を開くと、自室に帰っていった。傷、どうやって家族に説明しようか。
1
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる