傲岸不遜

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傲岸不遜

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 目を覚ましたら異世界だった。何て事になっていたら良いのになあ。とスマホで時間を確認すると、もう出勤してなきゃおかしい時間になっていた。


(遅刻だ!!)


 俺はがばりとベッドから起き上がり、またベッドに倒れ伏す。どうせ遅刻するなら、5分も1時間も変わりゃしねえよ。そう思い直して、もぞもぞとベッドから這い出ると、小便してから顔を洗って髭を剃って、すっきりしたところで、朝食を食べ始める。


 ベーコンエッグを作っている間に、食パンを焼いてバターを塗って、小パックの野菜ジュースを用意したなら、「いただきます」と両手を合わせて食べ始めた。


 スマホが振動しているので確認すると、上司から鬼のようにメッセージが来ているが、これ返信した方が良いのかな? と一瞬考え、『もうすぐ着くと思います』と返信しておいた。


 朝食を終えて食器を片したなら、スーツに着替えて外に出る。外は雲一つ無い青々とした晴天で、何とも心地良い。これは今日は良い1日になりそうだ。


 うきうき気分で駅まで歩いて、電車に乗った所でまたスマホを確認すると、また上司から鬼のようにメッセージが届いていた。はあ。


(『スマホのバッテリーが勿体ないので止めてください』っと。これで良いだろ)


 俺はスマホの電源を落としてビジネスバッグに仕舞うと、ぼーっと電車の車窓から普段とちょっと違って見える街の風景を眺めていた。お陰で会社のある最寄り駅を乗り過ごしてしまった。まあ、こんな日もあるさ。


 最寄り駅に戻って下りると、10分歩いて会社の入っているビルに到着。エレベーターで3階まで上り、オフィスの扉を開けると、社員全員の視線が俺に注がれる。ふふ、注目の的だな。などと考えていると、俺の上司がおいでおいでをしているので、上司の前までゆっくりと歩いていく。


「お前、何を考えているんだ?」


「いやあ、起きた時にはもう遅刻確定だったもので」


「遅刻確定だろうが何だろうが、1分でも1秒でも早く会社に向かおうとするのが、会社員としてやるべき事だろうが! それを今もゆっくり歩いて来やがって!」


 上司が怒りで顔を真っ赤にしている。タコみたいだな。


「まあまあ、そう怒らずに。ズル休みしなかっただけマシじゃないですか?」


「ズル……!? ふざけるな! お前普段からどれだけ会社に迷惑掛けていると思っているんだ!」


 迷惑掛けているのはお前だろ。こっちは無能上司の尻拭いで通常業務にまで支障が出ているんだよ。なんで家に帰ってからまで仕事させられなきゃならないんだ。


「おい! 次やったらクビだからな!」


 正社員をクビにするって結構面倒だと思うけど、この上司なら、そう言う面倒に対してはやる気をみせそうだ。まあ、それも無駄だけど。


「大丈夫です」


「何が大丈夫だ!」


「退職願を持ってきましたので、お手を煩わせる事もないかと」


「へ?」


 俺がバッグから退職願を上司のデスクに置くと、上司が呆然として固まった。


「あ、ちゃんと引き継ぎ業務はしますから、ご心配なく」


 未だ呆然としている上司を尻目に、俺は自分のデスクに着くと、鼻歌交じりに仕事を始めるのだった。

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