上 下
58 / 62

51

しおりを挟む
とりあえず、ポトツキー伯爵夫人の行方は気になるわ。
私はフランツに会うため、執務室をゾフィー皇太后と共に訪れることにした。

「扉を開けてちょうだい」

私がそう言うと

「誰もお通ししないように言われてまして」  

そう侍従が私に答える。

「わかりましたわ」

私は侍従を扇でぶん殴り倒すと、扉を強引に開けた。

「シシィ!!」

私が入るとフランツが私を見つめて声を上げた。

「フランツ……」

フランツの側にいたのは美しく優しげな貴婦人、
おそらくポトツキー伯爵夫人だろう。

「お義母様、事件解決ですわ、私の読み通りです」

「あなたの読みはともかく、フランツ!! 新婚早々になんですか」

ゾフィー皇太后は鬼婆のように怒り狂いそうなのがよくわかる。
熱気が伝わってくるのよね。
大丈夫かしら?血圧とか心配になってしまうわ。

「シシィ、誤解だ」

「いや、私は別に何も思ってないからいいのよ、ただ、ポトツキー伯爵夫人が行方不明になり、ポーランドに向かっていないなら、知り合いで一番頼りになる人、つまりフランツの元に行くだろうと考えただけよ」

「シシィは僕を信じてくれるんだね?」

「信じるも何もないわ、別にポトツキー伯爵夫人とラブラブしたいならスキャンダルにならない範囲でどうぞ、昔の恋が燃え上がるなんて良くあることよ」

「シシィ、誤解だ、盛大な誤解だ」

「フランツ!なんですか、シシィは頑張って皇后らしく振る舞っているのにあなたは不倫をするなんて!! スキャンダルになったらどうするんです? 退位することにも今の状態では成りかねないのですよ、世論はエリザベートの見方なんですからあなたが悪く思われるのです」

ゾフィー皇太后はオペラ座の舞台で演じるようなでかい声で怒鳴るので私は片耳を扇で塞いだ。

「皆さま、落ちつきましょう、フランツが何をどうしようかは大した問題じゃありません、美女に弱いだけなので仕方ないでしょう、問題はポトツキー伯爵夫人が失踪して、フランツに助けを求めにきた理由です」

私は話を仕切り直すとポトツキー伯爵夫人の方を向いた。
なるほど、黒髪に優しげな目元、少し垂れ目気味ね。
肌も白く美しい、私には負けるけど。

「あの…… 私…… 」

「パッと見たところによると、アダム・ヨゼフ・ポトツキーに何かあったのでしょうね、あなたの服は皇帝に会うには略式すぎるし、色仕掛けにしては色気のない服、つまり普段着のままいらしたのね、ご自慢の髪も少し乱れてらっしゃるわ、急いでいらしたのね、ただ、旦那様が捜索を出されてるとなると考えられるのは旦那様から逃げ出したい何があったから、なのかしら?」

「皇后陛下……なぜおわかりになるのですか?」

私は呆気に取られているポトツキー伯爵夫人を
見つめてこう言った。

「いつの時代も良くある話だからよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉ちゃん今回も我慢してくれる?

あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」 「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」 「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」 私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。 代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。 お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。 ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい? お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!

天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。 焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。 一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。 コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。 メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。 男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。 トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。 弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。 ※変な話です。(笑)

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

卒業後に円満解消の予定だったのに卒業パーティーで婚約破棄なんてするから激怒した小父さまに変態前伯爵に売られるんですのよ。自業自得ですわ

竹井ゴールド
恋愛
 卒業パーティーで婚約者に婚約破棄を言い渡された男爵令嬢は驚いていた。  何故なら2人の婚約は卒業後に婚約者の浮気が有責による円満解消の予定だったからだ。  婚約者は罪を捏造して断罪こそ始めなかったが、浮気相手への真実の愛を得意げに述べ始める。  卒業パーティーでの下位貴族同士の婚約破棄に、上位貴族が出てきて仲裁した為に、事は予想以上に大きくなり・・・ 【2022/9/18、出版申請、10/5、慰めメール】 【2022/9/19、24hポイント1万1300pt突破】 【2024/9/16、出版申請(2回目)】

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

処理中です...