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一体何事かしら?

「ママちゃんと私、起きて服を着てるわよ」

私は立ち上がりまわってみせた。
何が不服なのかしら?
可愛らしい薄茶色の汚れが目立たないドレスだ。
白いレースの襟や袖が引き立つ。

「ローディ、そんな植木鉢みたな服じゃなくてもっと華やかな公式に着れる服に着替えさせて、皇帝陛下がいらっしゃるわ」

ローディは顔色を変えてクローゼットに直行した。

「こんなことならシシィにもアクセサリーを買っておくべきだったわね」

「ママがまだいらないって言ったのよ」

「私のミスだわ、潔く認めるわ、そんなことより早く脱いで着替えてちょうだい!!」

私はローディとルドヴィカお母さんにバタバタと用意させられるとあっという間にプリンセスらしく仕上げられてしまった。

「お嬢様、本当に綺麗ですわ」

「皇后陛下がシシィを選ぶのも納得ね」

鏡に映る私は確かに可愛らしさと美しさを兼ね備えており、なんとも言えぬ美しさを醸し出していた。
薄い薔薇色のシルクのドレスはフリルがこれでもかとついており、贅沢なレースと組み合わさると芍薬や薔薇を思わせる美しいドレスだ。

「まるで5月に咲く薔薇のようだわ」

ルドヴィカお母さんはそうウットリしたように言うと、サロンに行かなきゃと私をなかば引っ張って連れていき、そこでしばらく待っていた。
その間にもお茶やらお菓子やらが運ばれてきて、少しだけ胸がワクワクした。
ケーキを食べるのはどんな時だって心が踊るもの。
セッティングも終わった頃に皇帝陛下の到着が知らされて、私たちは扉が開くのを待った。

「シシィ、会えて嬉しいよ、体調は大丈夫かい?」

爽やかな笑顔で現れた皇帝陛下は皇太后がいないからか幾分くだけた様子で私に話しかけた。
たしかに、おとぎ話に出てきそうなハンサムな皇帝。
マザコンじゃなきゃね……、ママの言うことをよく聞くお人形みたいな人か、絶対皇帝じゃなかったら結婚したくないわね。
彼が家具職人とか鍛冶屋だったら絶対に拒絶してたわ。
にしてもこの人プロポーズしにきたのかしら?

「今夜の晩餐にぜひ来てほしくてね、母も喜ぶよ、君を褒めていたから」

「え、ゾフィー皇太后陛下が?」

「あぁ、綺麗でかわいいプリンセスだと」

まぁどういう風の吹き回しかしら?
なんだか雨を超えて飴が降りそう。

「本日は晩餐の招待にお越しいただきましたのね、大変な御足労をおかけしました申し訳ありません、そうですわ、お茶を用意いたしましたの、ささやかではございますがおかけいただいて、休憩されてからお戻りなられたらどうでしょうか?お時間が許せばですが」

私は立って喋ってないで、早く座って美味しそうなお菓子が食べたかったので皇帝陛下をお茶に誘った。
お茶が冷めちゃうわ。
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