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56. 二人だけのメヌエット
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そうして迎えた、ダンスパーティー当日。
長期休暇に入る前の最後のイベント。ボールルームに集まった生徒たちは皆思いきり着飾り、それぞれ楽しそうに談笑している。普段とは全然違う学園の雰囲気に、私も気持ちが浮き立っていた。
「メレディア様……!とても素敵ですわ!こんなに華やかな中でも一際輝いていらっしゃいますわね。すぐに見つけられましたわ」
「マーゴットさん……。ふふ、ありがとう。あなたもとても素敵だわ」
ボールルームに到着した私のところへ、いち早くマーゴット嬢がやって来てくれた。濃い水色のオーガンジーのドレスを着た私とは対照的に、マーゴット嬢は目の覚めるような真紅のドレス姿だ。一見大人しく淑やかな彼女には秘めた強さがあることを知った今、その華やかなドレスがすごく似合って見える。
その後レティ嬢やフィオナ嬢もやって来て、私たちは互いのドレスやアクセサリーを褒めあいながら楽しいひとときを過ごしていた。
しばらくすると、ふいに背後から心地良い声が聞こえた。
「失礼、お嬢さん方。メレディアを借りてもいいかな」
私の前にいた三人がハッと目を丸くして私の頭の上辺りを見ている。振り返ると、そこにはいつもより数倍輝いているトラヴィス殿下の姿があった。
「殿下……」
「綺麗だ、メレディア」
優しくそう言って微笑む殿下こそ、めまいがするほどの眩しさだった。明るいクリーム色の正装にはところどころ濃い水色のラインや刺繍が入り、まるで私のドレスと合わせてくれたかのような出で立ちだ。
「トッ、トラヴィス殿下……!今日は、ほ、本当に一段と素敵でいらっしゃいますわ!」
「ええ!ほ、ほ、本当に……!」
「はは。ありがとう。君たちもとても美しいよ。見惚れてしまうな」
殿下の笑顔とその言葉に、レティ嬢とフィオナ嬢がきゃあっと色めき立っている。そんな二人とにこやかに見守ってくれているマーゴット嬢に見送られながら、私は殿下に手を引かれてその場を離れた。
「……皆が見てますわ、殿下」
「見せつけてやればいい」
すぐにそんなことを言うんだから……。
私の手を引いてボールルームの端を歩く殿下を、会場中の生徒たちが見ている。やがて殿下は正面ではない隅の扉から裏口に出ると、私の左手首を軽く握った。
「遅くなったな。今日に間に合ってよかった」
「え……?……あ……」
いつの間にかトラヴィス殿下の手にはあの水色の宝石が輝くブレスレットが握られていた。それを私の手首に優しく着けてくださる。
「どうだ?前のチェーンよりもこの方が丈夫そうだろう」
「……ええ……。それに……」
繊細なデザインのチェーンは二重になっていて、等間隔に小さなダイアモンドまであしらわれている。以前のものよりゴージャスだ。な、なんだか……お値段もバージョンアップしてそうな……。
「……いただいて、よろしいのですか……?」
「当たり前だ。これは君だけのものだ。俺の気持ちは、この宝石の中に全て詰まっているよ」
「……殿下……」
中央に輝く美しい海の色の宝石をそっと撫でながら、トラヴィス殿下は真摯な瞳で私を見つめてそう言った。
その時、会場の中からピアノや弦楽器たちの美しく優美な音楽が流れてきた。
「……おいで、メレディア。今日の君は俺だけのものだ」
そう言う殿下に手を引かれながら、私は素直に頷いた。
「……はい、殿下」
手を取り合ってボールルームに戻る私たち。私の瞳にはもうトラヴィス殿下しか映っていない。ずっと目の前の大好きな人だけを見つめていたかった。
その殿下の瞳の中に私の姿だけが映っていることにこの上ない喜びを感じながら、私たちはフロアの中央で何曲も一緒に踊った。
休憩している間でさえも、殿下は私を片時もそばから離さなかった。後日マーゴット嬢に聞いた話によると、今年度の記念に絶対にトラヴィス殿下に踊ってもらうわ!と意気込んでいたご令嬢方も、私と殿下の雰囲気を見て「……あのお二人の間には、とても入り込めないわね……」と渋々諦めていたらしい。逆に、メレディア嬢に一曲踊ってほしいと申し込むつもりだ!と言っていた男子生徒たちも、トラヴィス殿下の近寄るなオーラに気圧されて声をかけられなかったとしょんぼりしていたそう。
「すごかったですもの、トラヴィス殿下の独占欲丸出しの、周囲に対するあの威圧感。お二人だけの世界を誰も邪魔してはいけない雰囲気でしたわ。ふふ。あの人当たりの良いトラヴィス殿下がああまでムキになられるなんて……。トラヴィス殿下は本当に、メレディア様に夢中でいらっしゃいますのね」
マーゴット嬢にそう言われた時には、顔から火が出そうだった。
長期休暇に入る前の最後のイベント。ボールルームに集まった生徒たちは皆思いきり着飾り、それぞれ楽しそうに談笑している。普段とは全然違う学園の雰囲気に、私も気持ちが浮き立っていた。
「メレディア様……!とても素敵ですわ!こんなに華やかな中でも一際輝いていらっしゃいますわね。すぐに見つけられましたわ」
「マーゴットさん……。ふふ、ありがとう。あなたもとても素敵だわ」
ボールルームに到着した私のところへ、いち早くマーゴット嬢がやって来てくれた。濃い水色のオーガンジーのドレスを着た私とは対照的に、マーゴット嬢は目の覚めるような真紅のドレス姿だ。一見大人しく淑やかな彼女には秘めた強さがあることを知った今、その華やかなドレスがすごく似合って見える。
その後レティ嬢やフィオナ嬢もやって来て、私たちは互いのドレスやアクセサリーを褒めあいながら楽しいひとときを過ごしていた。
しばらくすると、ふいに背後から心地良い声が聞こえた。
「失礼、お嬢さん方。メレディアを借りてもいいかな」
私の前にいた三人がハッと目を丸くして私の頭の上辺りを見ている。振り返ると、そこにはいつもより数倍輝いているトラヴィス殿下の姿があった。
「殿下……」
「綺麗だ、メレディア」
優しくそう言って微笑む殿下こそ、めまいがするほどの眩しさだった。明るいクリーム色の正装にはところどころ濃い水色のラインや刺繍が入り、まるで私のドレスと合わせてくれたかのような出で立ちだ。
「トッ、トラヴィス殿下……!今日は、ほ、本当に一段と素敵でいらっしゃいますわ!」
「ええ!ほ、ほ、本当に……!」
「はは。ありがとう。君たちもとても美しいよ。見惚れてしまうな」
殿下の笑顔とその言葉に、レティ嬢とフィオナ嬢がきゃあっと色めき立っている。そんな二人とにこやかに見守ってくれているマーゴット嬢に見送られながら、私は殿下に手を引かれてその場を離れた。
「……皆が見てますわ、殿下」
「見せつけてやればいい」
すぐにそんなことを言うんだから……。
私の手を引いてボールルームの端を歩く殿下を、会場中の生徒たちが見ている。やがて殿下は正面ではない隅の扉から裏口に出ると、私の左手首を軽く握った。
「遅くなったな。今日に間に合ってよかった」
「え……?……あ……」
いつの間にかトラヴィス殿下の手にはあの水色の宝石が輝くブレスレットが握られていた。それを私の手首に優しく着けてくださる。
「どうだ?前のチェーンよりもこの方が丈夫そうだろう」
「……ええ……。それに……」
繊細なデザインのチェーンは二重になっていて、等間隔に小さなダイアモンドまであしらわれている。以前のものよりゴージャスだ。な、なんだか……お値段もバージョンアップしてそうな……。
「……いただいて、よろしいのですか……?」
「当たり前だ。これは君だけのものだ。俺の気持ちは、この宝石の中に全て詰まっているよ」
「……殿下……」
中央に輝く美しい海の色の宝石をそっと撫でながら、トラヴィス殿下は真摯な瞳で私を見つめてそう言った。
その時、会場の中からピアノや弦楽器たちの美しく優美な音楽が流れてきた。
「……おいで、メレディア。今日の君は俺だけのものだ」
そう言う殿下に手を引かれながら、私は素直に頷いた。
「……はい、殿下」
手を取り合ってボールルームに戻る私たち。私の瞳にはもうトラヴィス殿下しか映っていない。ずっと目の前の大好きな人だけを見つめていたかった。
その殿下の瞳の中に私の姿だけが映っていることにこの上ない喜びを感じながら、私たちはフロアの中央で何曲も一緒に踊った。
休憩している間でさえも、殿下は私を片時もそばから離さなかった。後日マーゴット嬢に聞いた話によると、今年度の記念に絶対にトラヴィス殿下に踊ってもらうわ!と意気込んでいたご令嬢方も、私と殿下の雰囲気を見て「……あのお二人の間には、とても入り込めないわね……」と渋々諦めていたらしい。逆に、メレディア嬢に一曲踊ってほしいと申し込むつもりだ!と言っていた男子生徒たちも、トラヴィス殿下の近寄るなオーラに気圧されて声をかけられなかったとしょんぼりしていたそう。
「すごかったですもの、トラヴィス殿下の独占欲丸出しの、周囲に対するあの威圧感。お二人だけの世界を誰も邪魔してはいけない雰囲気でしたわ。ふふ。あの人当たりの良いトラヴィス殿下がああまでムキになられるなんて……。トラヴィス殿下は本当に、メレディア様に夢中でいらっしゃいますのね」
マーゴット嬢にそう言われた時には、顔から火が出そうだった。
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