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29.ときめきと葛藤
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「素敵なお芝居でしたわ…。お食事も、とても美味しかったです」
「よかった。君に喜んでもらえることが何よりの私の喜びだからね」
「…………っ、」
ま……またそんなことを……。
最近のアーネスト様はこうして私の心を騒がしくさせるような言葉をサラリと仰る。優しさに満ちた言葉たちはとても真っ直ぐで、私のことを温かく包み込んでくれるけれど……、苦しいほどに胸がときめき、息をすることさえ忘れてしまいそう。
レストランで食事をして観劇した後、馬車が待っているところまで並んで歩きながら、もうすぐ今日の幸せな時間が終わってしまうことを思い切なくなる。帰りたくない。それが正直な気持ちだった。
「アーネスト様」
「ん?」
私が呼びかけると、いつもこうして優しい瞳で見つめてくれる。それだけで、こんなにもドキドキしてしまうのだ。
「…今日、屋敷で……ありがとうございました。ダミアン様に、言ってくださったこと……」
「…ああ、それはもちろん、当然のことだよ。君があらぬ誤解を受けてあの男に叱られてしまったら可哀相だからね。それに…、言ったことは私の本心だよ」
「……え?」
馬車の前に着いた時、アーネスト様は立ち止まって私を真っ直ぐに見つめて言った。
「君の評判を汚すわけにはいかない。……大切にしなくてはと思っているよ」
「…………っ、……あ…………ありがとう……ございます……」
こんな言葉の一つ一つが、アーネスト様の眼差しが、目まいがするほどに私を高揚させる。
私はもう、自分の気持ちを誤魔化すことができなかった。
「さあ、手を」
「は、はい」
アーネスト様が差し出してくれた手を握り、私は馬車に乗り込んだ。
「……。…………っ?」
あ…………あれ…………?
ア…、アーネスト様……っ?
何故だかアーネスト様は私の手を握りしめたまま馬車に乗り込み、そのまま私の隣に座った。
…………て……手が、…は、離れないのですが……っ!
「出してくれ」
「はい」
「………………っ、」
御者に指示を出すと、まるでそれが当たり前であるかのようにアーネスト様は私の手を優しく握ったまま静かに座っている。
……い…………息が…………苦しいです…………。
緊張とはまた違ったドキドキで胸がどうにかなってしまいそう。アーネスト様は時折私の手を撫でるように、優しくスリ…、と指を動かす。
「~~~~~~っ!」
耳まで真っ赤になっているのを見られたくない。恥ずかしくて恥ずかしくて、消えてしまいたい。だけど、苦しくても、恥ずかしくても、……この手をずっと、離さないでほしい……。
「……嘘もついたけどね」
…………え?
アーネスト様がふいに呟いたその言葉の意味が、ぼうっとする頭には理解できずにしばらく考えを巡らせる。……嘘?
「ただの良き友人だとか、誓って妙な真似はしないとか。……私の本心には反している」
「…………っ!」
ようやく意味を理解した私の心臓が痛いほどに大きく跳ねた。
ア……アーネスト様…………っ!
きゅ、と手を強く握られる。アーネスト様が私を見ているのが分かった。けれどもうこんなみっともない顔を上げられない。耳も首も熱くてたまらなくて、困り果てた私の瞳には涙が滲んだ。何一つ声さえ出せずに、少しでもこの真っ赤な顔を隠したくて私は俯いたままあらぬ方向を向いていた。
馬車が屋敷に着くまで、アーネスト様は私の手を離さなかった。
行きであんなことがあったからか、アーネスト様は気遣って少し屋敷から離れたところで馬車を停めてくれた。手を繋がれたままアーネスト様にエスコートされて私はついに馬車を降りた。
……ああ、この手が離れてしまう……。
「……あ……ありがとうございました、…アーネスト様……」
幸せな時間でした。次はいつお会いできますか。……私も、あなたをただの友人だなんて、もう思えません……。
決して言ってはいけない言葉たちが私の体の中をぐるぐると巡っている。言ってはいけない。だけど、少しでも伝わればいい。……そう願いを込めて、私はアーネスト様を見つめた。目が合うと、彼はハッとしたような顔をして、困ったように微笑んだ。
「…そんな可愛い顔をされたら、もう帰したくなくなってしまう」
「……っ!」
そう言うと、アーネスト様は私の手の甲にそっとキスをした。
「…君が中に入るまで、ここで見守っているから。大丈夫だよ、クラウディア。……また会おう、近いうちに」
アーネスト様の優しさと彼への愛おしさで、もう何も言えなかった。胸が張り裂けそう。こんなのはダメだ。こんなにも愛おしくなってしまったら、私はもう戻れなくなってしまう。
私たちの逢瀬は、もうとっくにただの気分転換なんかじゃなかった。
屋敷の玄関前に着いた時振り返ると、遠くにまだ馬車が停まっていた。アーネスト様は私をじっと見つめていた。
「……っ、」
今すぐ戻りたい。彼のところへ走って行って、その腕の中に飛び込みたい。そうできたらどんなに幸せだろう。切なくて辛くて、涙が込み上げてくる。
(もうダメだ。……終わりにしなくては)
こんなことを思うようになってしまったら、もうダメだ。私には夫がいるのに。たとえ私を愛してくれない夫だとしても、私は妻なのだから。
夫にも、世間にも、自分の心にも後ろめたいような関係になってしまってはいけない。アーネスト様との楽しい日々まで、思い出すのが苦しい過去になってしまうから。
終わりにしなくては。
零れ落ちそうになる涙を堪え、私は屋敷の中に入り後ろを振り返らずに扉を閉めた。
「よかった。君に喜んでもらえることが何よりの私の喜びだからね」
「…………っ、」
ま……またそんなことを……。
最近のアーネスト様はこうして私の心を騒がしくさせるような言葉をサラリと仰る。優しさに満ちた言葉たちはとても真っ直ぐで、私のことを温かく包み込んでくれるけれど……、苦しいほどに胸がときめき、息をすることさえ忘れてしまいそう。
レストランで食事をして観劇した後、馬車が待っているところまで並んで歩きながら、もうすぐ今日の幸せな時間が終わってしまうことを思い切なくなる。帰りたくない。それが正直な気持ちだった。
「アーネスト様」
「ん?」
私が呼びかけると、いつもこうして優しい瞳で見つめてくれる。それだけで、こんなにもドキドキしてしまうのだ。
「…今日、屋敷で……ありがとうございました。ダミアン様に、言ってくださったこと……」
「…ああ、それはもちろん、当然のことだよ。君があらぬ誤解を受けてあの男に叱られてしまったら可哀相だからね。それに…、言ったことは私の本心だよ」
「……え?」
馬車の前に着いた時、アーネスト様は立ち止まって私を真っ直ぐに見つめて言った。
「君の評判を汚すわけにはいかない。……大切にしなくてはと思っているよ」
「…………っ、……あ…………ありがとう……ございます……」
こんな言葉の一つ一つが、アーネスト様の眼差しが、目まいがするほどに私を高揚させる。
私はもう、自分の気持ちを誤魔化すことができなかった。
「さあ、手を」
「は、はい」
アーネスト様が差し出してくれた手を握り、私は馬車に乗り込んだ。
「……。…………っ?」
あ…………あれ…………?
ア…、アーネスト様……っ?
何故だかアーネスト様は私の手を握りしめたまま馬車に乗り込み、そのまま私の隣に座った。
…………て……手が、…は、離れないのですが……っ!
「出してくれ」
「はい」
「………………っ、」
御者に指示を出すと、まるでそれが当たり前であるかのようにアーネスト様は私の手を優しく握ったまま静かに座っている。
……い…………息が…………苦しいです…………。
緊張とはまた違ったドキドキで胸がどうにかなってしまいそう。アーネスト様は時折私の手を撫でるように、優しくスリ…、と指を動かす。
「~~~~~~っ!」
耳まで真っ赤になっているのを見られたくない。恥ずかしくて恥ずかしくて、消えてしまいたい。だけど、苦しくても、恥ずかしくても、……この手をずっと、離さないでほしい……。
「……嘘もついたけどね」
…………え?
アーネスト様がふいに呟いたその言葉の意味が、ぼうっとする頭には理解できずにしばらく考えを巡らせる。……嘘?
「ただの良き友人だとか、誓って妙な真似はしないとか。……私の本心には反している」
「…………っ!」
ようやく意味を理解した私の心臓が痛いほどに大きく跳ねた。
ア……アーネスト様…………っ!
きゅ、と手を強く握られる。アーネスト様が私を見ているのが分かった。けれどもうこんなみっともない顔を上げられない。耳も首も熱くてたまらなくて、困り果てた私の瞳には涙が滲んだ。何一つ声さえ出せずに、少しでもこの真っ赤な顔を隠したくて私は俯いたままあらぬ方向を向いていた。
馬車が屋敷に着くまで、アーネスト様は私の手を離さなかった。
行きであんなことがあったからか、アーネスト様は気遣って少し屋敷から離れたところで馬車を停めてくれた。手を繋がれたままアーネスト様にエスコートされて私はついに馬車を降りた。
……ああ、この手が離れてしまう……。
「……あ……ありがとうございました、…アーネスト様……」
幸せな時間でした。次はいつお会いできますか。……私も、あなたをただの友人だなんて、もう思えません……。
決して言ってはいけない言葉たちが私の体の中をぐるぐると巡っている。言ってはいけない。だけど、少しでも伝わればいい。……そう願いを込めて、私はアーネスト様を見つめた。目が合うと、彼はハッとしたような顔をして、困ったように微笑んだ。
「…そんな可愛い顔をされたら、もう帰したくなくなってしまう」
「……っ!」
そう言うと、アーネスト様は私の手の甲にそっとキスをした。
「…君が中に入るまで、ここで見守っているから。大丈夫だよ、クラウディア。……また会おう、近いうちに」
アーネスト様の優しさと彼への愛おしさで、もう何も言えなかった。胸が張り裂けそう。こんなのはダメだ。こんなにも愛おしくなってしまったら、私はもう戻れなくなってしまう。
私たちの逢瀬は、もうとっくにただの気分転換なんかじゃなかった。
屋敷の玄関前に着いた時振り返ると、遠くにまだ馬車が停まっていた。アーネスト様は私をじっと見つめていた。
「……っ、」
今すぐ戻りたい。彼のところへ走って行って、その腕の中に飛び込みたい。そうできたらどんなに幸せだろう。切なくて辛くて、涙が込み上げてくる。
(もうダメだ。……終わりにしなくては)
こんなことを思うようになってしまったら、もうダメだ。私には夫がいるのに。たとえ私を愛してくれない夫だとしても、私は妻なのだから。
夫にも、世間にも、自分の心にも後ろめたいような関係になってしまってはいけない。アーネスト様との楽しい日々まで、思い出すのが苦しい過去になってしまうから。
終わりにしなくては。
零れ落ちそうになる涙を堪え、私は屋敷の中に入り後ろを振り返らずに扉を閉めた。
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