44 / 75
44. 感謝の贈り物
しおりを挟む
無断で王宮内に立ち入り、私に手を上げ強引に連れ出そうとしたヴィントは、あの後数週間身柄を拘束され厳しい取り調べを受けたそうだ。ウィリス侯爵令嬢から話を持ちかけられ言われたとおりにしただけだと主張していたらしいが、ハセルタイン伯爵家には罰金刑が処され、また今後永久に王宮への立ち入り、催事への参加などを禁止されるという厳しい処罰が下った。あとはもうブリジットと二人でどうにかやっていくしかないだろう。資産を売却して現金を作り、それで罰金でも支払うのだろうか。その後の貧乏生活に、あの人とブリジットが耐えられるとはとても思えないけれど。領地経営が破綻し、やがては爵位まで失う未来はもう見えている気がした。
ウィリス侯爵令嬢もまた、ヴィントに罪をなすりつけるような言い訳を繰り返していたらしい。私はあんな真似までしろとは一言も言っていない、ただ、妻が黙って屋敷を出て行き話し合いもできずに困っていると言っていたものだから、互いに行き違いがあるのかもしれないから、自分の立ち会いのもと話をさせてあげようと思っただけだとか、いくら何でもそれは無理があるだろうというような発言を繰り返していたそう。結果、ウィリス侯爵令嬢は不審者を王宮内に招き入れた失態により、王太子殿下の婚約者候補から外されることとなった。王宮内で重職に就いている父君のウィリス侯爵にも、一定期間の減給処分が下ったらしい。
「……本当に助かりましたわ。アリューシャ様のおかげで、私は今ここにいられるのですから」
数日間は私も事情説明などでバタバタしていたけれど、後日落ち着いた頃にアリューシャ王女に会い、ようやくお礼を言うことができた。
「本当によかったわミラベルさん!あなたがあの男に強引にここを連れ出されてしまっていたら、今頃私寝込んでたかもしれない。……ううん。また王宮を飛び出して、あなたを取り戻しにいったかも……、うん。絶対そっちよ。そうしてたと思うわ」
「そ、そんなことにならなくて本当によかったです……」
「あの女が急にあんなにしおらしくなって、なんかおかしいと思ったのよね。女の勘って外れないわね!嫌な予感がして、あのあとそぉーっとドアを開けてあなたたちの様子を伺ってたのよ。そしたらあの女が庭園に行きましょうなんて言っている声が聞こえたものだから……。すぐさまお兄様に知らせに行ったのも良い判断だったでしょ?ふふっ」
「ふふふ。ええ、本当に」
得意げに微笑むアリューシャ王女のお顔を見て、私もつい笑みが溢れた。
「でも、あなたを無傷で助け出せなかったのが悔しいわ。……もう痛まない?頬や手首は大丈夫?」
「ええ、もう全然平気です。まだ手首に少し痣は残ってますが、もう痛みはすっかり治まりましたわ。……あの、アリューシャ様、……これを」
優しく気遣ってくれるアリューシャ王女の言葉にそう返事をすると、私は用意してきたものをそっと彼女に差し出した。
「?……なぁに?これ」
「私からのほんの気持ちです。今回のことに対する感謝の気持ちと、いつも私と仲良くしてくださっていることへのお礼も込めて。受け取ってくださいませ」
「……ミラベルさん……っ」
私の言葉に目をキラキラと輝かせた彼女は、おそるおそる私からその小箱を受け取ると、開けてみてもいい?と尋ね、慎重にリボンを外しはじめた。
「……まぁ……っ!可愛い……っ!」
中を見たアリューシャ王女の頬が紅潮し、その赤い瞳はますます輝きを増した。昨日ひそかに街へ行き選んできた、小さなルビーのイヤリング。アリューシャ王女の瞳の色と同じだから、きっとよく似合うと思ったのだ。
「お気に召していただけましたか?アリューシャ様はきっとこれよりも素敵なものをたくさんお持ちだとは思ったのですが……」
「ううん!そんなことない!これすごく素敵だもの!とっても気に入ったわ!……嬉しい……。ミラベルさん、ありがとう。私一生大事にするから……っ」
私の言葉を遮るようにそう言うと、アリューシャ王女は瞳を潤ませ、イヤリングの小箱をギュッと抱きしめた。あまりにも健気なその仕草に胸がキュンとして、思わず頭を撫でてあげたくなってしまう。
「アリューシャ様……。こちらこそ、ありがとうございます。そんなに喜んでいただけると私も嬉しくなっちゃいます」
「ふふ。ね、ミラベルさん、私これ、来月のお兄様の誕生パーティーの時に着けるわね」
アリューシャ王女のその言葉で思い出した。私も昨日伝えられたばかりだった。来月はセレオン殿下の誕生日を祝うパーティーが、この王宮の大広間で開催されるらしい。私もぜひ出席してほしいと殿下が仰っていると、昨日ジーンさんから伝えられた。
「まぁ、そんな大事な場に着けていっていただけるんですか?ふふ。嬉しいです。アリューシャ様の美しい瞳の色と同じですから、とてもよく似合うと思いますわ」
「ええ!そうよね。……ね、これって、あなたが持っているあのルビーのネックレスとも同じ色ね」
「あ、ええ。たしかに、そうですね。……覚えていらっしゃったんですね、私のあのネックレスのこと」
私とアリューシャ王女が出会った時のこと。私がいつの間にか地面に落としてしまっていた母の形見のルビーのネックレスを、アリューシャ王女が拾って私に手渡してくれたんだった。
今となってはあのネックレスは、母とだけでなくアリューシャ王女との思い出の品にもなった。
「もちろん覚えてるわよ!とても素敵だったもの。……ね、ミラベルさん。お兄様の誕生パーティーに、あのネックレス着ける?」
「……そうですね……」
そうか。こんな時こそあれの出番かしら。
大切にしすぎて、ほとんどずっとケースに入れてしまい込んだままだった。せっかくの華やかなパーティーだもの、着けていくのもいいかもしれない。……でも。
「私があのルビーのネックレスを着けていってもよろしいのですか?アリューシャ様のこのイヤリングと色味が被ってしまいますが……、お嫌ではないですか?」
「まさか!嫌なはずないじゃない!むしろ嬉しいわ、ミラベルさんとお揃いなんて」
「ま、ふふ。アリューシャ様がそう言ってくださるなら、当日はあのネックレスを着けますわね。私も嬉しいです、お揃いの色のアクセサリー」
よかった。同じ色の宝石を着けていることは少しも嫌じゃないみたい。
私がそう答えると、なぜかアリューシャ王女の方が少し不安そうに私に言った。
「……あなたは、その、……嫌じゃないの?私と、……お母様の形見の大切なネックレスが、その、被ってしまっても」
「まぁ、まさか。少しも嫌じゃありませんわ。むしろ嬉しいです。まるで姉妹みたいで。ふふ。さすがに厚かましい発言ですわね。申し訳ありません」
「ううん!……本当に、嫌じゃない?たとえば……、このイヤリングよりもっと、すごくデザインが似てるアクセサリーを、私が着けていたとしても……?」
「いいえ、全然。嫌なはずがありませんわ。まぁ、王女様とアクセサリーが被れば、恐縮はしますが。……なぜですか?」
「……ううん!なんでもないの。ふふ。楽しみね、お兄様の誕生パーティー」
「ええ」
私たちは顔を見合わせてクスクスと笑った。
ウィリス侯爵令嬢もまた、ヴィントに罪をなすりつけるような言い訳を繰り返していたらしい。私はあんな真似までしろとは一言も言っていない、ただ、妻が黙って屋敷を出て行き話し合いもできずに困っていると言っていたものだから、互いに行き違いがあるのかもしれないから、自分の立ち会いのもと話をさせてあげようと思っただけだとか、いくら何でもそれは無理があるだろうというような発言を繰り返していたそう。結果、ウィリス侯爵令嬢は不審者を王宮内に招き入れた失態により、王太子殿下の婚約者候補から外されることとなった。王宮内で重職に就いている父君のウィリス侯爵にも、一定期間の減給処分が下ったらしい。
「……本当に助かりましたわ。アリューシャ様のおかげで、私は今ここにいられるのですから」
数日間は私も事情説明などでバタバタしていたけれど、後日落ち着いた頃にアリューシャ王女に会い、ようやくお礼を言うことができた。
「本当によかったわミラベルさん!あなたがあの男に強引にここを連れ出されてしまっていたら、今頃私寝込んでたかもしれない。……ううん。また王宮を飛び出して、あなたを取り戻しにいったかも……、うん。絶対そっちよ。そうしてたと思うわ」
「そ、そんなことにならなくて本当によかったです……」
「あの女が急にあんなにしおらしくなって、なんかおかしいと思ったのよね。女の勘って外れないわね!嫌な予感がして、あのあとそぉーっとドアを開けてあなたたちの様子を伺ってたのよ。そしたらあの女が庭園に行きましょうなんて言っている声が聞こえたものだから……。すぐさまお兄様に知らせに行ったのも良い判断だったでしょ?ふふっ」
「ふふふ。ええ、本当に」
得意げに微笑むアリューシャ王女のお顔を見て、私もつい笑みが溢れた。
「でも、あなたを無傷で助け出せなかったのが悔しいわ。……もう痛まない?頬や手首は大丈夫?」
「ええ、もう全然平気です。まだ手首に少し痣は残ってますが、もう痛みはすっかり治まりましたわ。……あの、アリューシャ様、……これを」
優しく気遣ってくれるアリューシャ王女の言葉にそう返事をすると、私は用意してきたものをそっと彼女に差し出した。
「?……なぁに?これ」
「私からのほんの気持ちです。今回のことに対する感謝の気持ちと、いつも私と仲良くしてくださっていることへのお礼も込めて。受け取ってくださいませ」
「……ミラベルさん……っ」
私の言葉に目をキラキラと輝かせた彼女は、おそるおそる私からその小箱を受け取ると、開けてみてもいい?と尋ね、慎重にリボンを外しはじめた。
「……まぁ……っ!可愛い……っ!」
中を見たアリューシャ王女の頬が紅潮し、その赤い瞳はますます輝きを増した。昨日ひそかに街へ行き選んできた、小さなルビーのイヤリング。アリューシャ王女の瞳の色と同じだから、きっとよく似合うと思ったのだ。
「お気に召していただけましたか?アリューシャ様はきっとこれよりも素敵なものをたくさんお持ちだとは思ったのですが……」
「ううん!そんなことない!これすごく素敵だもの!とっても気に入ったわ!……嬉しい……。ミラベルさん、ありがとう。私一生大事にするから……っ」
私の言葉を遮るようにそう言うと、アリューシャ王女は瞳を潤ませ、イヤリングの小箱をギュッと抱きしめた。あまりにも健気なその仕草に胸がキュンとして、思わず頭を撫でてあげたくなってしまう。
「アリューシャ様……。こちらこそ、ありがとうございます。そんなに喜んでいただけると私も嬉しくなっちゃいます」
「ふふ。ね、ミラベルさん、私これ、来月のお兄様の誕生パーティーの時に着けるわね」
アリューシャ王女のその言葉で思い出した。私も昨日伝えられたばかりだった。来月はセレオン殿下の誕生日を祝うパーティーが、この王宮の大広間で開催されるらしい。私もぜひ出席してほしいと殿下が仰っていると、昨日ジーンさんから伝えられた。
「まぁ、そんな大事な場に着けていっていただけるんですか?ふふ。嬉しいです。アリューシャ様の美しい瞳の色と同じですから、とてもよく似合うと思いますわ」
「ええ!そうよね。……ね、これって、あなたが持っているあのルビーのネックレスとも同じ色ね」
「あ、ええ。たしかに、そうですね。……覚えていらっしゃったんですね、私のあのネックレスのこと」
私とアリューシャ王女が出会った時のこと。私がいつの間にか地面に落としてしまっていた母の形見のルビーのネックレスを、アリューシャ王女が拾って私に手渡してくれたんだった。
今となってはあのネックレスは、母とだけでなくアリューシャ王女との思い出の品にもなった。
「もちろん覚えてるわよ!とても素敵だったもの。……ね、ミラベルさん。お兄様の誕生パーティーに、あのネックレス着ける?」
「……そうですね……」
そうか。こんな時こそあれの出番かしら。
大切にしすぎて、ほとんどずっとケースに入れてしまい込んだままだった。せっかくの華やかなパーティーだもの、着けていくのもいいかもしれない。……でも。
「私があのルビーのネックレスを着けていってもよろしいのですか?アリューシャ様のこのイヤリングと色味が被ってしまいますが……、お嫌ではないですか?」
「まさか!嫌なはずないじゃない!むしろ嬉しいわ、ミラベルさんとお揃いなんて」
「ま、ふふ。アリューシャ様がそう言ってくださるなら、当日はあのネックレスを着けますわね。私も嬉しいです、お揃いの色のアクセサリー」
よかった。同じ色の宝石を着けていることは少しも嫌じゃないみたい。
私がそう答えると、なぜかアリューシャ王女の方が少し不安そうに私に言った。
「……あなたは、その、……嫌じゃないの?私と、……お母様の形見の大切なネックレスが、その、被ってしまっても」
「まぁ、まさか。少しも嫌じゃありませんわ。むしろ嬉しいです。まるで姉妹みたいで。ふふ。さすがに厚かましい発言ですわね。申し訳ありません」
「ううん!……本当に、嫌じゃない?たとえば……、このイヤリングよりもっと、すごくデザインが似てるアクセサリーを、私が着けていたとしても……?」
「いいえ、全然。嫌なはずがありませんわ。まぁ、王女様とアクセサリーが被れば、恐縮はしますが。……なぜですか?」
「……ううん!なんでもないの。ふふ。楽しみね、お兄様の誕生パーティー」
「ええ」
私たちは顔を見合わせてクスクスと笑った。
1,470
お気に入りに追加
3,518
あなたにおすすめの小説
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる