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その後のお話③オリビアの結婚

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 どこまでも高く広がる清々しい青い空。
 それを飾り付けたようにふわふわといくつも広がっている真っ白な雲さえも、まるで今日という日を天が祝福してくれているかのように思える。

「……本当に綺麗よ。惚れ惚れしちゃうわ」

 花嫁の控室。目の前で椅子に座り悠然と微笑む義妹の姿に、私はもう何度目かのため息を漏らした。

「ふふ。お義姉さまったら。もう何度も聞いたわよ。でもね、お義姉さまのウェディングドレス姿だって、それはもう本当に美しかったんだから。今でも皆言っているわよ。あの日のロゼッタ様は神々しいほどだったって。私もお義姉さまのあの姿を見て、絶対に同じようなドレスにするんだって心に決めたんだから!……まぁ、結局全然違うドレスになっちゃったけど」
「ふふふ……。そのドレスも本当に素敵よ。あなたの愛らしさを存分に引き立ててくれてるわ」

 私の言葉に満面の笑みを浮かべたオリビア嬢は、まるで精巧に作られた高価なお人形のよう。純白のプリンセスラインのドレスはシルクで、彼女の艷やかな栗色の髪と澄んだ青い瞳の美しさをますます際立たせている。
 もうすぐオリビア嬢とカートライト侯爵令息の結婚式が始まる。

「……さぁ、そろそろ行きましょうか。もう列席者の皆様もお揃いよ。ライリー様もあなたの晴れ姿を楽しみにしているわ。……ふふ。きっとカートライト侯爵令息は、あなたの美しさに腰を抜かしてしまうわね」

 義妹にメロメロのカートライト侯爵令息が息を呑む姿が目に浮かぶようだ。おお、僕のリビー、君は天界から舞い降りた天使だ天女だとか何とか言いながら、オリビア嬢を褒め称えまくる彼の姿が、もうはっきりと見える気さえする。

「……ね、待ってお義姉さま」

 控室のドアを開けに行こうとした私の手を、オリビア嬢がそっと引く。

「?……どうしたの?」
「あのね、お義姉さま。こんなこと改まって言えるのって、今日しかない気がするの。だから……、」

 声が少し震えている。そこまで言うとオリビア嬢は一旦顔を伏せ、私の手を握ったまま深く息を吸った。ゆっくりと呼吸をして顔を上げた時、その瞳が潤んでいるのに気付いた。

「っ?オ、オリビアさん?」
「お義姉さま、初めて会った日のこと、覚えてる?あの頃、お義姉さまだって辛い目に遭って、ひどく傷付いていたはずなのに、……あの日、お義姉さまは私の身の上話を真摯に聞いてくださった。母親がいない寂しさ、……父が亡くなって、親しかった侍女が辞めていって、だけど忙しい兄に甘えることもできなくて……、その上病弱だった私はベッドに横になっているばかりで、孤独で……。そんな私の弱音を、お義姉さまはただ受け止めてくださったわよね。そして言ってくれたの。もし自分がアクストン家の侍女になれなかったとしても、お手紙をやり取りしたり、時々は会ってお喋りしたりしましょうって。私が、どれほど嬉しかったか……」
「や……、やめてよ……」

 ちょっと……、泣いちゃうじゃないの。

「あれからお義姉さまは、いつも私のそばにいてくれた。あの日から誰よりも、お義姉さまは私にとって心の拠り所だったわ。毎日お喋りして笑いあったり、お勉強を見てもらったり、お兄様のお誕生日のクッキー作りを手伝ってくれたり……。お義姉さまが里帰りしていて屋敷にいないたった数日間が、何だかとても寂しくて、早く会いたくてたまらなかったわ。それから、あのお茶会では命も救ってもらった……。……ね、私たちの関係って、お互いの人生の中ではまだまだ短い時間のものかもしれないけれど、とても濃密で大切な思い出ばかりよね」
「……ええ。そうね、オリビアさん」

 繋いだ手はとても温かくて、彼女が心を込めて一生懸命私に思いを伝えようとしてくれているのが分かる。そのか細い手をしっかりと握りしめ、私は微笑んだ。

「……ありがとう、お義姉さま。あなたは私の大切な家族よ。たとえ血は繋がっていなくても、私にとって、たった一人の、かけがえのないお姉様なの。いつも感謝してるわ。これからも、ずっと一緒にいてね」

 オリビア嬢の瞳から涙が零れ落ちるのと同時に、私の瞳からもまた同じように涙の粒が流れた。

「……当たり前じゃないの。わ……、私にとっても、あなたはたった一人の大切な妹なんだから……。お互い人妻になっても、母親になっても、ずっと変わらないわ」

 もっと余裕を持って、穏やかに応えてあげたいのに、感極まって涙は零れるわ声は震えるわ。姉の包容力も威厳もあったものじゃない。
 それでもオリビア嬢は嬉しそうに笑ってくれた。

「ふふ。私も母になる日が来るのかしら。全然ピンと来ないわ。……早くルティアに会いたいでしょう?お義姉さま」
「ううん、別に。優秀な乳母や侍女たちが見ていてくれるもの。半日くらい離れたって平気よ」

 本当は生まれて一月足らずの娘のことは常に頭から離れないし、こうしている今も気になって気になって仕方ないのだけれど、大切な今日の主役の前ではそういうことにしておいた。

「さ、行きましょう。皆があなたを待ってるわ」
「ええ!」

 私は義妹の頬を柔らかなハンカチでそっと押さえ、その手を繋いだまま式場へと向かった。






 大勢の列席者たちに見守られながら、式は厳かに進んでいった。
 永遠の愛を誓いあい、互いの手を取りあう若い二人。その姿を見守りながら、ライリー様が静かな声で呟く。

「これでようやく一安心だな」
「ふふ……。少し寂しいんじゃありませんか?お兄様としては」
「いや、そうでもない。これまでのことを思うと、よくここまで立派に成長してくれたものだとしみじみするがな。……私は君さえ隣にいてくれればいいのだから」
「ま、またそんなことを……」

 さらりと気持ちを伝えられ、顔が赤らむ。ライリー様はそっと私の手を握った。

「ルティアはいい子にしているだろうか」
「きっと大丈夫ですわ」

 この人も娘のことが頭から離れないのだなと思うと、何だか嬉しくて頬が緩む。夫婦で同じ思いを共有している。ルティアは私たちにとって何ものにも代えがたい宝物だ。

(次は男の子が産まれたらいいな……)

 やはりアクストン公爵家の当主の妻として、後継ぎとなる男子を産んでさしあげたい。ライリー様もきっと安心するだろうし。ルティアが産まれた後、私がつい、男の子でなくてごめんなさいと言ったら、珍しくきつい声で怒られた。

『馬鹿なことを言うな。そんなことはどちらでもいい。私は君さえ無事ならそれでいいのだから。……君と、産まれてきた子どもさえ無事なら』

 その言葉がどれほど私の心を満たしてくれたか。この人の妻になれて本当によかったと、心から思った瞬間だった。

 可愛い妹ができて、愛おしい娘が産まれて。
 私を心底愛してくれる優しい人に手を握られたまま、私は大切な家族が増えていく喜びを噛みしめていた。






「ただいま。いい子にしていたか?ルティア」

 式と結婚披露パーティーが滞りなく終わり、屋敷に戻ってくるやいなや、ライリー様はいそいそと娘の部屋に向かった。

(ふふ。すっかり夢中になっちゃって)

 上着を脱いですぐさま娘を抱き上げる子煩悩な夫の姿に、笑みが漏れる。まだ首も据わっていないルティアのことを、ライリー様は壊れ物を扱うようにそっと腕の中に抱き、その健やかな寝顔をまじまじと見つめている。乳母がその様子を見てニコニコしながら小声で言った。

「今日もルティアお嬢様は、とてもお利口にしていらっしゃいましたよ。途中何度かミルクを飲まれた以外は、本当によくお眠りで」
「そうか。……見ろ、ロゼッタ。この愛らしさを」
「ふふ。はい。見ております」
「……きっと君の赤ん坊の頃は、この子にそっくりだったのだろうな」
「そうでしょうか」

 ルティアは金髪に翠色の瞳で、私の色をそのまま受け継いでいる。だからますます愛おしいのだなどと、ライリー様は言ってくれるのだけど。

 私たちは寄り添いながら、しばらくの間娘の寝顔を見つめていた。






「お疲れになったでしょう?四六時中ご挨拶の波が途切れませんでしたものね」

 その夜。夫婦の寝室に入ってきた湯上がりのライリー様に、私はそう声をかけた。結婚披露パーティーでは、列席者の方々がひっきりなしに花嫁の兄であるライリー様に祝福の言葉をかけてくださっていて、彼は食事をする暇さえないほどだった。

「私は大丈夫だ。君の方こそ、産後の体で無理をしたな。今夜はゆっくり休まねば。……ほら、おいで」

 彼はいつものようにソファーに腰掛けワインを楽しむことも、就寝前の読書をすることもなく、ベッドに入り私を呼び寄せた。その言葉に私も大人しく従う。
 隣に行くと、彼は私を腕の中に抱きしめ、小さな子どもにするように私の頭を優しく撫でた。……気持ちいい。その唇が私の額にそっと触れた途端、まるで魔法にかかったように瞼が重くなる。……私もわりと疲れていたみたい。

 うとうとしていると、ライリー様の静かな声がすぐそばで聞こえる。

「……君と結婚し、ルティアが生まれ、オリビアは嫁いだ。私たちはまた新たな子に恵まれる日が来るかもしれない。オリビアとグレイソン君との間にも……。これからも家族の形は、どんどん変わっていくのだろうな」
「……。……ええ……、そうですね……」

 愛しい人の低く穏やかな声が心地いい。意識は半分夢の世界に入りかけながらも、私はどうにか返事をする。ふいに、私を抱きしめていたライリー様の両手に、ぎゅっと力がこもった。守るようにしっかりと抱きすくめられ、だけど決して苦しくはない。気持ちよくて、体が蕩けていきそう。

「いつかは我が子も自分たちの家庭を持つ日が来るのだろう。私たちは親として、新たな道に踏み出す子どもを見送ることになるのだろうな。月日は流れていくし、皆それぞれの人生を歩んでいく。……だがロゼッタ、君だけは別だ。大切な者たちが皆、自分の幸せを求めそれぞれの道を進んでいくのを、君は私と共に、ここでずっと見守っていてほしい。こうしてずっと、私の隣で……」

 ライリー様の静かな声に込められた切なる想いが、私の中に淀みなく流れ込んでくる。分かっています、あなたの気持ち。私も、あなたと同じだから。

 彼の腕の中にすっぽりと包まれ安心しきって微睡まどろんでいた私は、精一杯腕を伸ばして彼の広い背中を抱きしめた。その首筋に顔をうずめながら、私は何度も頷いた。

「……はい、ライリー様。私たちは、ずっと一緒です……。人生の、最後の時まで、ずっと……」

 だから安心してください。
 あなたが私に与えてくれる愛を、私もずっと返していくから。

 髪に、額に、頬に触れる優しい感触に身を委ね、私は今度こそ甘い夢の世界に落ちていったのだった──────





   ーーーーー end ーーーーー




   

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