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54 秘密を知りたいです!
しおりを挟む「リアさんは、帝都の裏事情にも精通しているのですか?」
反魔法組織のような危ないものまで把握している学生だなんてビックリです。
「バルシュミューデ家は魔法協会に多額の資金を投じていますから。多少の情報は回ってきますわ」
「でもどうしてその情報をリアさんが知っているんですか?」
ご両親は知っているかもしれませんが、学生であるリアさんが把握しているのは不思議です。
「盗み聞きですわ」
「あ、そうなんですね……」
意外に大胆なリアさん。
そして警備が甘いですよ、ご両親と魔法士の皆さん。
ですが、リアさんが何らかの情報を持っていたのは僥倖です。
「その情報、教えてくれないんですか?」
「教えませんわ」
リアさんははっきりと言い切ります。
これは教えてあげないぞ、という雰囲気が露骨に感じられます。
「エメさんの方こそ、そんな事どうして知りたいのですか?」
「それを教えたらリアさんの持っている情報を教えてくれますか?」
「教えませんわ」
「……」
情報交換、失敗です。
どうしたら教えてくれるのでしょう?
「リアさんお腹空きませんか?」
「少し空いていますが……それがどうかしましたか?」
「わたしのお弁当食べますか?」
すっ、とリアさんの前にわたしのお弁当を差し出します。
――ガタッ!!
ん……?
二人分の物音が急に聞こえてきたんですけど気のせいですよね……?
「用意してある物がありますので結構です……。それに話の流れからして交換条件なのでしょう?」
「はい、ゲヘナの情報と交換です」
「エメさん……結構、図太いですわよね」
「そうですか?」
リアさんは関心しているのか呆れているのか微妙なラインの表情を浮かべていました。
「ちなみにお聞きしますが、そのお弁当を作っているのはシャルロッテさんではなくて?」
あれ、そんなことお話したことないはずですが……。
「そうです。シャルがいつも作ってくれているんです」
「そしてそのお弁当はセシルさんと食べるのですか?」
「いえ……誘う事はありましたけど、一緒に食べるまではしたことないです」
「でしたら、今日がその日になりますわよ」
「ん……?」
どこか達観したような表情のリアさん。
その目線はわたし自身ではなく、背後に向けられている気がしました。
つられてわたしも背後を見ます。
「ちょっとあんたね!人が朝から一生懸命に作ったお弁当を人にあげるんじゃないわよ!」
「エメ、今度から私も一緒にご飯食べるから。あげちゃダメ」
シャルとセシルさんが詰め寄って来ていたのでした。
「ご、ごめんなさい……」
さっきの物音は二人の物だったのですね……。
二人に怒られながらわたしは席へと戻りました。
◇◇◇
ですが、これで諦めるわたしと思ったら大間違いです。
何としてでもリアさんから聞き出さねばなりません。
どうすれば人から情報を引き出せるのか、その方法を聞いてみましょう。
「セシルさん、ちょっといいですか?」
「なに……?」
「わたしがセシルさんの秘密を知りたいとしますよね?」
「え、うん……」
「どういうことをすれば教えてくれますかね?」
「相手はエメなんだよね?」
「はい、わたしです」
セシルさんは目線をキョロキョロと右往左往させた後、うつむいて両方の人差し指を合わせています。
「……私なら何でも教えるけど」
「……なるほど」
すごい嬉しいお言葉です。
ですが、参考にはならないのでした。
「なにか知りたいこと、ある?」
「いえ……今のところは……」
「なんで聞いたの!?」
素直に驚いているセシルさんにわたしはすみませんと何度も頭を下げるのでした。
こういった時の相談事と言えば肉親ですかね。
シャルの元に近づきます。
「シャル、ちょっといい?」
「あんたね、学園では近づかないでって何度も言ってるでしょ?」
「ついさっきシャルから来たよね……?」
「アレはあんたがふざけた行動をするからよ」
若干、理不尽な気がするのはわたしだけでしょうか……?
「すぐ終わるから!ちょっと聞きたいことがあるの!」
「もう……、早く終わらせてよ」
「うん。リアさんが持っている情報を引き出すにはどうしたらいいと思う?」
「情報って……なんの情報かによるでしょ」
ゲヘナの話をするとシャルはまたやめろと止めてくると思われます。
そこは伏せて話しましょう。
「リアさんの個人的な秘密」
「……え、それって、どういう……」
「リアさんしか知らないことを知りたいの」
「……リアにそんなに興味があるの?」
「気になり過ぎて進級試験が手に付かなくなってるくらい」
「そんなに!?」
シャルが声をひっくり返します。
「と言うわけで、それを聞き出すのに有効な手段はあると思う?」
「いや……知りたいなら素直に聞けばいいじゃない」
「さっき完璧に断られたから」
「それでまだ諦めてないの!?」
「そんな簡単に諦められないよ」
「あ……そう……」
なぜでしょう。
シャルの声がどんどん小さく掠れていきます。
「それでシャルならどうするかなって聞いてみたかったの」
シャルは大きくな溜め息を一つは吐きます。
「……嫌がらせして吐かせれば?」
「絶対ダメだよね!?」
しかもリアさん相手に口を割らせるほどの嫌がらせなんてしようものなら、火の海を見る事になってしまいそうです。
こういう時は他人とのコミュニケーションがとっても上手なミミアちゃんでしょう。その極意を聞いてみます。
「ミミアさん、今ちょっとよろしいですか?」
「あ、エメちゃん。さっきのリアさんの件はどうだったの?」
ミミアさんとは情報共有をしているので話が早いのです。
「何か知ってはいるそうですが、教えてはくれませんでした」
「あはは……まあそうだよね。協会とかも絡んでる話だろうし、広めたりしたくないだろうね」
「それでもわたしは知りたいです。リアさんから聞き出すために、どうしたらいいと思いますか?」
「エメちゃんなかなか粘るねえ?……そうだねえ。弱みに付け込めばいいんじゃない?」
シャルと似た、とっても怖い回答が返ってきました!
「弱みを知ってどうするんです……?」
「“黙ってて欲しかったらお前の持っている秘密を教えな!”とかでいいんじゃない?」
「完全に悪者みたいです……」
「手っ取り早いよ?」
怖いです。それをさらっと言っちゃうミミアちゃんが怖いです。
「んー。弱みっていうのはその人が苦手としていることだからね、それを知っておけばリアちゃんが困ってる時に助けてあげることが出来るでしょ?」
「そうですね。ピンチを助けてあげられるかもしれません」
「それで、助けてあげたお礼に秘密おしえて?……って、お願いすれば教えてくれるかもよ?」
「! なるほど、それはアリな作戦かもしれません。……ですが、リアさんの弱みはどうしたら知ることが出来るのでしょうか?」
「そこはもう地道に頑張るんだよエメちゃん」
「地道に……?」
何を頑張ればいいのでしょう。
「ひたすら観察、それとリアちゃんに近しい人に聞き込みをするのもいいかもね?」
なるほど!
なんだかとっても大変そうですが、頑張るしかありません。
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