45 / 93
45 生徒会室にお邪魔します!
しおりを挟む「エメちゃん本当に行く感じ?」
ミミアちゃんはわたしの様子を伺うように訪ねてきます。
「あの後、ゲオルグさんがどうなったか気になりませんか?」
「いや、ならないよ。あんなキモ男」
「あ、なるほど……」
ミミアちゃんにとっては異様に絡んできた嫌な先輩ですもんね……。
会いたくない方が自然かもしれません。
「むしろもう見たくないみたいな?」
「し、辛辣です……」
でも確かにそれだけのことをしてしまったのも間違いありません。
「ですがゲオルグさんも魔法士として強くなりたい気持ちはあったと思うんですよね」
「まあ……順位とかにはこだわり持ってそうだったよね」
「そのプライドがあの人をおかしくさせたと思うんです」
「だからってゲヘナってのちょっと……」
「はい、彼の行いを肯定するつもりはありません。でもそこまでする人が自分から学園を辞めたりしますかね?」
「んー。あれじゃない?生徒会……というかセリーヌ様の圧力でも掛かったんじゃない?」
「そう、わたしはその違和感が嫌なんです」
間違いを犯すのはいけない事ですが、人は間違いを犯す者。
更生の機会を失ったまま一方的な圧力が働くような学園だとは思いたくないのです。
「エメちゃん意外に熱血?正義の人?」
「そういうわけじゃないですけど……憧れの場所なので。子供っぽいかもしれませんけど、正しい場所であって欲しいなって思うんです」
「ふえー……知らなかった。エメちゃんここに憧れあるんだ?なんで?」
「えっと、それは……」
わたしとシャルの師匠であるイリーネが学んだ学園だから、と言いかけた所で足が止まります。
生徒会室の扉の前に辿り着いたからです。
「エメちゃん本当に入るの?」
「え?生徒会って入ったりしたらダメな場所なんですか?」
「いや、ダメではないと思うんだけどちょっと敷居高いって言うか、恐れ多いと言うか……」
あのどんな人の輪の中にも溶け込んでいくミミアちゃんが敷居が高いと言う場所……。
「……やめます?」
「いきなり弱気になった!?」
「いえ、ミミアちゃん見てたらわたしも怖くなってきました……」
勢いとテンションでここまで来てしまいましたが、冷静になれわたし。
相手は生徒会執行部で先輩でステラのセリーヌさん。
後輩でラピスのわたしでは天と地、この前は仲良く話してくれましたけど……。
今回の件でこいつ失礼なラピスだな、なんて思われたりしたら……。
『貴女とても生意気ですので退学です』
とか、有り得るのでは……?!
「わたし、退学にはなりたくないので引き返したくなってきました」
「そんなに悪いことしたの!?」
何事かと慌てるミミアちゃんをよそに、わたしの気持ちはしゅるしゅると萎れてしまうのでした。
「君たち、そこで何をしているの?」
「へ……?」
声の方に振り返ると、そこには目鼻立ちがはっきりとした黒髪ショートの美形がいたのです。
背は高く、すらっとした肢体。
中世的な顔立ちですが、スラックスを履いているので男の子でしょう。
そうでもしないと判別できないくらい中性的です。これは男女どっちにもモテそうだな……、なんてことを考えてしまいます。
「こ、これはクロード様!」
ん……?
ミミアちゃんがまた畏まっています。
「ミミアちゃん、この方は……?」
「クロード・カルメル様……!2学年、第2位のステラ!生徒会執行部副会長よ!」
「な、なんですって……!?」
こんな美形男子がステラで副会長……。
天は二物を与えずって言葉はどこに行ったのでしょう。
あ、でもそれ言ったら1学年のステラの方々もそうでした。
「それで生徒会の前で何してたの、可愛い後輩諸君?」
背が高いクロードさんは少し腰を折ってわたしたちと目線を合わせてくれます。
「はい、ここにいるエメさんがどうしても生徒会の皆様に話を伺いたいと」
「ミミアちゃん!?」
お互いに気持ちが折れかけていたのにどうしてっ!?
「はっ!ご、ごめんなさい……。クロード様に話し掛けられたらつい……!」
ミミアちゃんが急に乙女の顔に……。
そうですか、クロードさんの色香にやられましたか。
「あ、そうなんだ。ちょうどボクも生徒会室に行くところ、タイミング良かったね。入りなよ」
そうしてクロードさんは扉を開けて先へと案内してくれるのです。
紳士……。
「失礼します」
恐る恐る生徒会室に足を踏み入れます。
部屋の広さは教室くらいはあるでしょうか。
「お待ちなさい」
ぴしゃっ、と張り詰めるような声。
声の主は訝しるような視線をストレートにぶつけてきます。
「え、えっとですね……!」
「ここは生徒会室、下級生が来る所ではありませんよ」
その少女は眼鏡を掛け、少し赤みがかった髪を三つ編みのおさげに下ろしていました。
書類を小脇に抱えている姿も相まって、優等生オーラが半端じゃありません。
「ボクが声を掛けたんだ。聞きたいことがあるんだってさ」
さりげなく話を通してくれるクロードさん。
優しい……。
「会長がお忙しいことは存じているはずですのに、何の用件かも聞かずに生徒会に通すだなんて殊勝な心掛けですね?クロード」
おお……何やら冷たい言い回し。
ちょっと怖いのです。
「み、ミミアちゃん。この方は……?」
「モニカ・ブランシャールさん。2学年の第3位、書記よ……」
ヒソヒソと話して情報収集。生徒会役員の皆様って全員ステラなんですね……。
ですが鋭い剣幕のモニカさんにクロードさんは物ともしていない様子。
「あはは、照れるな」
「そのまま受け取る方がいますか……」
「え?ダメなの?」
「皮肉です、お気づきなさいな」
「ん?どこが?モニカはいつも分かりにくいんだよ」
「そちらの理解力の問題です」
ぷんぷんしているモニカさんを華麗に流しているクロードさん。
さすが副会長さんです……。
「――クロードにモニカ、そこまでにしなさい。お二人が困っていますよ」
その一言でシンと空気が静まり返ります。
部屋の奥、大きな窓を背に堅牢な作りのテーブルを前に座っているのは白い少女、セリーヌさんです。
「会長、よろしいのですか?」
ぱたぱた、とモニカさんはセリーヌさんの元へ駆け寄ります。
「よろしいも何もせっかく用があって来てくれたのだから、追い返すなんて出来ないでしょう?」
「ですが、進級試験を前にして生徒会の仕事を滞りなく行うだけでも大変だと言うのにそんな時間を使っては……」
「はい、モニカ。お静かに」
するとセリーヌさんは人差し指をモニカさんの唇に当てるのです。
その行動は口を閉じて、という意味でしょうが唇に触れるとはまた大胆です……。
「私なら大丈夫ですから、心配は要りません」
「はは、はいっ……!」
どこかを憂いを帯びたようなセリーヌさんの流し目。
こちらまで見惚れてしまう様な美しさですが、それを向けられている張本人のモニカさんはボッと真っ赤に染まるのです。
「それで、今日はどうされました?」
ここまで来たらもう聞くしかありません。
「ゲオルグさんの事なのですが、自主退学というのは本当ですか?」
セリーヌさんは首を傾げます。
「あら、その話はまだ秘密のはずですが……」
ふとその視線はミミアちゃんの方へ。
「ああ……流石は御三家と呼ばれる方の情報網、といったところでしょうか?」
「え、いや、そのっ……!」
びくっと背筋を正して震えるミミアちゃん。
そ、そうですよね……こうなるとミミアちゃんが情報を横流したのだと思われても仕方ありません……。ごめんなさいなのです。
「冗談です。人の口に戸は立てられませんからね、漏れてしまうのは自然なことです」
「は、はあ……」
安堵するミミアちゃん。
「質問に答えましょう。ゲオルグさんは確かに自主退学されましたよ?」
「あ、そうなんですね……」
「それとも私が実力行使で辞めさせたとでも?」
――ズキン!
何か芯を喰われたような悪寒が走ります。
「い、いえっ、まさかそこまでは考えてませんよ……!ただ、どうしてそんなことになったのかと気になりまして……!」
「そうでしたか。どうしてと問われれば、それは自然なことです。」
セリーヌさんは手を組んで、わたしの方に視線を向けます。
「彼は魔法士として機能しない体になっていましたから」
そして、そんな怖い言葉を告げたのです。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが
アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。
右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。
青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。
そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。
青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。
三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。
【登場人物紹介】
マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。
ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。
クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。
ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。
デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。
ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。
ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。
【お知らせ】
◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。
◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。
◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。
◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。
◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。
◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。
◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。
※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる