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21 やっと魔法を教わります!

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【ミミア視点】

 あ~あ、エメちゃんの秘密を暴くのもうちょっとだったのになぁ。

 ちょうどいい所にセシルちゃんの邪魔が入るんだもん、悪運強いよね。

 ただ、魔力を吸収したのはやりすぎだったかな?

 悪気はなかったんだけどね。力が抜けて倒れる人は初めて見たから、ミミアもビックリしたし。

 もちろん、総量のほんの一部を吸い取ったに過ぎないから休憩すればすぐに動けるはず。

「……ううっ」

 と、思っていたら急に体に重く……?

 全身に怖気が走るような異物感に苛まれる。

「なにコレ、もしかしてエメちゃんの魔力……?」

 今、ミミアの体内の一部にはエメちゃんの魔力が混在している。

 全然溶け合う事のない魔力は、ミミアの体を蝕むように蠢いている。

 これが彼女の魔力だっていうの……?あまりに異質。

「ちょっと、このままだとキツイかも……浄化《クリア》」

 異常状態の回復魔法を使用する。

 ミミアの異常を治すというより、魔法を使うことで魔力を消費することが目的。

 エメちゃんから吸い取った魔力を体から排出してしまう。

 途端に体は軽くなった。

「まいったな、全然理解できないや。やっぱりエメちゃんには何か秘密があるんだね…?」

 ミミアの疑問は増えるばかりだ。

        ◇◇◇

【エメ視点】

 ミミアさんとの絡みで一時はどうなるかと思いましたがセシルさんの登場によって救われました。

「ありがとうございます、セシルさん」

「……私、邪魔しただけ」

「してませんって!」

 微妙にセシルさんと会話が噛み合いませんが、結果オーライで良しとしましょう。

 セシルさんは自分の机に向かうと、魔法教本を取り出すのでした。

「それを取りに来たんですか?」

「そう、忘れた」

 さすが勤勉なセシルさんです。きっと家に帰っても魔法の勉強をしているのでしょう。

 ……いや、ちょっと待ってください。

 放課後でセシルさんと二人きり……これはチャンスではないでしょうか?

「セシルさん、お願いがあるんですが」

「嫌」

 相変わらずの即答です!

「ま、まだ何も言ってませんよ……!?」

「あまり、いいことじゃない気がして……」

「そんな勘で拒否しないで下さいよ」

「……それで、何?」

 おおっ、セシルさんが話を聞いてくれそうな雰囲気を出してくれています。

「魔法を教えてくれませんか?」

「……他の人にしたら?」

 あ、やんわり嫌がられてます。

「そこを何とか!わたしに魔法の伝授を!」

「私、口下手だし教えるの向いてない」

「いやいやっ!セシルさんの魔法はとても効率的で無駄がありませんっ。論理的に構築されているのは明らかです。そんな方の魔法が教えるのに向いてないワケがありませんっ!」

「えっ、そうかな……」

 もじもじするセシルさん。脈ありでは!?

 お願いしますっ!とわたしは頭を下げます。

「……す、少しだけなら」

「本当ですかっ!?」

 何とオーケーを出してくれたのでした。




 場所は第三演習室をお借りすることになりました。

 先生からの許可は得ています。

「……なんで魔法が使えないの?」

「それがわたしにも分からなくてですね……」

「……才能ゼロ?」

「元も子もありません!」

 魔術なら使えるので、可能性がゼロということはないと思うのですが……。

「とりあえず、やってみて」

「は、はい」

 “魔力の抽出”、“魔力と五代元素の混合”、そしてわたしにとって鬼門“魔法の展開”へ……!

フレイム!!」

 ――ぽふっ

 秒で鎮火、煙が上がります。

「……けむり魔法?」

「そんな魔法ありませんっ!」

 んー、とセシルさんは首を傾げます。

「魔力を体内から外界に放出した時にエラーが生じている……」

「はい、何かアドバイスありますか?」

 きっと魔法の構築に秀でているセシルさんなら有用な情報が頂けるはず……。

「……ない」

「へ?」

「ない」

 ああ、何度聞いても悲しい現実です。

「魔力を一切放出できないのなら改善の余地はある。けれど、あなたは曲がりなりにも煙は出た。かなり不完全だけど、それは言ってしまえば魔法」

「……そうなんですね」

 もはやこれは魔法ではないと思っていましたが、確かに現象としては起きてはいるのです。全く使えないレベルというだけで。

「たくさん練習した?」

「はい、幼い頃から」

「うん、手に負えない」

 サラッと傷つくこと言われました!!

「だって……原因が分からない。疑うなら第二工程の“魔力と五大元素の混合”だけど、出来ているんでしょ?」

「はい、それはとある魔法士の方からも問題ないと言われています」

 イリーネには、そこまではよく出来ていると太鼓判を押されています。

「うん、あなたの魔術の成熟度を見ればそこで失敗しているとは思えない。その魔法士は第三工程については何て言っていたの?」

「“出来ないもんは仕方ない、諦めろ”って……」

「……それが答え」

「でもそれだと魔法士になれないんですっ!」

 何か他の方法はないでしょうか?

「魔法は諦めて、魔術に専念したら?」

 やっぱり見捨てられました!

「……自分で言うのもなんですが、魔術に関してはもうやり尽くしているんですよ」

「そうなの?」

「ええ、その魔法士にも“今できる魔術を極めろ”と言われたのでほとんどそっちに専念してきましたから。他に魔術を極めようとする人なんていないので、これ以上やりようもないですし……」

「確かに、あなたの魔術を超える人はそうはいないと思う」

 ぽん、とセシルさんはわたしの肩に手を置きました。

「だから、それで満足……しよ?」

 うおお、セシルさんがもう完全に放棄していますぅ……!

 やる気を失ってるのが手に取るように分かりますよぉ……!

「――っと、ここにいたあっ!見つけたよ、お二人さんっ!」

 すると、ミミアちゃんが再登場してきました。

 心なしか顔色が優れません。

「ミミアちゃん!?どうしてここに?」

「それはミミアの台詞、二人でこんな所で何してるの?」

 なにって、魔法の練習を……。

「あなたたちに比べれば、大したことしてない」

 いやいや、セシルさんっ!やはり誤解したままですねっ!?

「魔法の練習ですっ!セシルさんに教わっていたんです!」

「魔法……?あ、ちょうどいいや。それならミミアも混ぜてよ」

 何がちょうどいいのか分かりません、が……協力してくれるのなら……ミミアちゃんは怪しい所はありますが、背に腹は代えられません。

「でも、セシルちゃんに教えてもらってるならミミア要らない子だったり?」

「いや、全然。お手上げ」

「ちょっとはやる気出してくださいよ!?」

 と、いうわけで状況を説明しました。

「――へえ。じゃあ、ミミアがエメちゃんの魔法をモニタリングしてあげようか?」

「モニタリング……?」

「うん、内部で魔力がどういう工程を踏んでいるのか確認してあげる」

「そんなこと可能なんですか?」

「出来るよ?回復魔法は他者を助ける技だからね、対象の状態を把握する能力にも優れてるんだよ」

 それは初耳でした。

 するとミミアさんはぴたりとわたしにくっつきます。

「あら……」

 そしてなぜか頬を染めるセシルさん。

「ミミアさんっ!何を……!?」

「体の内部のことだからね。こうやって密着しないと分からないんだよ」

「そ、そういうことでしたか……」

「うん、これでさっきも魔力を吸……」

「魔力をす……?」

「っ、す……スキャンすれば良かったね!?」

 なるほど、ミミアさんにお願いしていれば良かったと言いたいんですね?

 でもちょっと慌てているのは何故でしょう。

「はいっ!じゃあ、どうぞっ!」

「あ、はいっ!」

 もう一度、魔法を展開します。

 ――ぽしゅ。

 以下同文。

「……ああ、これはこれは……」

 ミミアさんは何やら深刻そうな顔で顎をさすっています。

「何か分かりましたか?」

「うん、エメちゃんの魔法ね。第三工程で分解が起きちゃってるね」

「分解……?」

「うん、分解。魔法を展開しようとした瞬間、魔力と五大元素がまた分かれちゃって元通りって感じ。そんな状態じゃムリだよね?」

「ど、どうしてそんなことになるんですか?」

 ごくり。

 わたしはミミアさんの言葉を待ちます。

「分かんない。そんな人いないもん」

「え……」

 やはりミミアさんでも、そこは不明……。

「才能、かな……」

 セシルさん、そんな投げやりに終わらせないで下さい。
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