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20 放課後の教室は何が起こるか分かりません!
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――サッサッサ
ホウキで床を掃く音が教室に響き渡ります。
「……はあ」
そして溜め息一つ。
夕暮れの教室は茜色に染まっていて、両手の中にはホウキがありました。
そうです、掃除当番です。
ちなみに、魔法学園の生徒さんは掃除にホウキなど使用しません。
風や水魔法など駆使して、一瞬で片付けちゃうんですね。
なので掃除用具の場所をヘルマン先生に尋ねてみたのですが……。
『ホウキ……もしかして跨って空飛ぶ気?クラシックな魔法士を目指し始めたとか?』
『いえ……そんなことしません。わたし今週掃除当番なんです』
『ああ……』
『そんな可哀想な目でわたしを見ないでください。とにかく掃除用具が必要なんです』
『話は分かった。でもどこに掃除用具あるのか分からないな』
『先生も分からなくなるくらい皆さん使わないんですねっ!』
という一幕があり、見つかったのは倉庫の中でホコリを被っているこのホウキとバケツとタオルでした。
なので手作業のわたしは、こうして皆が帰った後も黙々と掃除するわけですね……。
いえ、ここまではいいんです。実はそんなに気にしてないんです。
それより謎な出来事が発生したのが問題です。それにわたしは頭を悩ませているのです。
「あっ、エメちゃんこっちの窓は吹いたよー?次どうする?」
ニコニコ笑顔でわたしに可愛らしく手を振ってくるのは、桃色のツインテールが目を惹く女の子。
そうです。何とミミアさんが手伝ってくれているのです。
こんな前時代的な作業をなぜ手伝ってくれているのか?その魂胆が怖いのです。
「ありがとうございます。次は扉の窓をお願いしてもいいですか?」
「りょーかい!」
とても心地よい返事で軽快に動いてくれるミミアさん。……なのですが。
「ミミアさん?あの、手伝ってくれるのは大変嬉しいのですが魔法を使った方が早いんじゃないですか?」
ミミアさんにこんな地味で退屈な作業をさせるのは申し訳ないです。魔法でサクッと終わらせてもらった方がいい気も……。
「でも、これエメちゃんの掃除でしょー?魔法使っちゃうとミミアが掃除したことになるから、それは違うよね?」
「ああ……なるほど」
そういう理由があるのですね。
でもそれなら手伝ってくれるのはアリなんでしょうか……?よく分かりません。
「それにね?」
「えっ、あのっ……!?」
と思えば、ミミアさんが急接近してきましたっ!
思わず後退りしましたが、背後には机があって行く手を塞がれてしまいます。
「こうでもしないと、エメちゃんと二人きりでお話する時間作れないでしょ?」
「いきなりどうしたんですかっ、ミミアさんっ」
「ミミアのことは、“ミミアちゃん”でいいって言ったよね?なんで戻ってるのかなぁ?」
近い、ほんとに近いです……!
吐息が掛かるのではないかと心配になるほどの距離。
「ミミアさんっ、ちょっと体が……」
「ん、なあに?聞こえないよ?」
ああ、イジワルです。
聞こえているでしょうに、イジワルをされています。
「み、ミミア……ちゃん。ちょっと近いと思うんですが……」
「えー、女の子同士ならこれくらい普通じゃない?」
ええっ、そうなんですか?わたしが間違っているのでしょうか。
どんどん密着してきて、ミミアさんの大きなお胸がわたしの胸に押し付けられているのですが、これも普通ですか……?
「でも、わたしと話すような事なんて何もないじゃないですか。ミミアちゃんと違ってわたし劣等生ですし、時間の無駄になっちゃいますよ」
「ううん、ミミアはエメちゃんにすっごい興味があるよ……?」
はうっ!やはりギルバート君のことを聞きに来たのでは!?
それが目的だったのですねっ!!
「ギルバート君のことでしたら、わたしは何もありませんよっ。アレはたまたま居合わせただけですっ!!」
「ん……?ギルバートくんが今どうして関係あるの?」
ミミアさんは首を傾げています。
あれ、それ以外に何の目的が……?
「ラピスのわたしなんかに、ミミアさんが興味を引くようなことはないはずです」
「ん~?そんなことないよ。エメちゃん、とっても不思議だから」
「ふ、不思議……?」
「うん。あんな優秀な妹ちゃんがいて、リアちゃんには一目置かれていて、セシルちゃんの魔法を簡単に破壊したりしちゃって……ほら?不思議でしょ?」
「いえ、普通です。至ってノーマルです」
「いやいや、エメちゃんは普通じゃないよ」
くい、っとミミアちゃんの指先がわたしの顎に触れます。
顔の動きを封じられて、わたしの目はミミアさんの瞳から逃げられなくなります。
キスされそうな距離感なのですが……。
これは普通なんですか!?わたしのことは普通じゃないのに、この状況は普通なんですか!?
普通がゲシュタルト崩壊しそうですっ!!
「は、放してくださっ……!」
――ガクッ
ミミアちゃんから逃れようとした瞬間、足の力が抜けてしまいました。
な、なぜ……?
「あらら、急に動いたりしたら危ないよエメちゃん」
わたしはミミアちゃんに抱えられ、床の上にそっと仰向けになります。
「す、すみません。急に力が抜けて……」
「ううん、いいんだよ気にしないで」
あ、あの……なんで、わたしの上に跨ってるんですかミミアさん……?
「さて、動けなくなったエメちゃんの体に何かあったら大変だから、色々診させてもらうねっ?」
へ……?
な、なぜそうなるのですか……?
どうして制服のボタンに手を掛けているんですか、ミミアちゃん……!?
「ちょ、ちょっと待ってください!こんな所で何を……!?」
――ガラガラ
突如、扉が開く音が聞こえてきました。
助かりました、これでミミアさんの暴走が止まります!
「……」
そこに呆然と立っていたのはセシルさんでした。
わたしたちの状況を言葉一つ発さずに眺めています。
「……そういう関係?」
「違いますっ!!」
何やら良からぬ勘違いをされている気がしますっ!
「ありゃ。結界を張っておいたのに誰が突破したのかと思ったら、セシルちゃんだったか……そりゃ相手が悪かった」
さらりと小声で怖いことを言っているミミアさん。
掃除しているフリをしてそんなことしてたんですか?密室を作り上げてたんですか?
「どうぞお構いなく、続けて……」
「ちょちょっ、セシルさん!?何か勘違いしていませんか?」
「大丈夫、そういうのは理解しているつもり」
「わたしが理解できてないんですがっ!?」
わーわー言っていると、ミミアちゃんは観念したの立ち上がります。
「そうだよセシルちゃん。これはね、掃除をしていたらエメちゃんが急に倒れちゃって、危ないところをミミアが助けたんだよ?」
「……そうなの?」
「そうだよね、エメちゃん?」
そうと言えばそうですが、違うと言えば違うような気もしますが……。
これ以上何か言って話をこじらせたくもありません。
何よりミミアちゃんの手から脱出できそうなのですから、ここは乗るしかありません。
「は、はい。急に力が抜けてしまったんです」
じーっとこちらを見るセシルさん。
「……そういう事にしといてあげる」
え、あれ。
なにか含みがありますね……。
「まっ、掃除も終わったし。エメちゃんも無事だったし良かったよ!それじゃあ、また明日ね!」
そうしてミミアちゃんはいつもの天使の笑みを浮かべて教室を後にしていくのでした。
「お、恐るべし……ミミアちゃん」
「どうかしたの?」
「いえ。正直、何をされているのかさっぱり分かりませんでした」
「……そんなに凄かった?」
え、どうしてそこでセシルさんが頬を染めるんですか?
ホウキで床を掃く音が教室に響き渡ります。
「……はあ」
そして溜め息一つ。
夕暮れの教室は茜色に染まっていて、両手の中にはホウキがありました。
そうです、掃除当番です。
ちなみに、魔法学園の生徒さんは掃除にホウキなど使用しません。
風や水魔法など駆使して、一瞬で片付けちゃうんですね。
なので掃除用具の場所をヘルマン先生に尋ねてみたのですが……。
『ホウキ……もしかして跨って空飛ぶ気?クラシックな魔法士を目指し始めたとか?』
『いえ……そんなことしません。わたし今週掃除当番なんです』
『ああ……』
『そんな可哀想な目でわたしを見ないでください。とにかく掃除用具が必要なんです』
『話は分かった。でもどこに掃除用具あるのか分からないな』
『先生も分からなくなるくらい皆さん使わないんですねっ!』
という一幕があり、見つかったのは倉庫の中でホコリを被っているこのホウキとバケツとタオルでした。
なので手作業のわたしは、こうして皆が帰った後も黙々と掃除するわけですね……。
いえ、ここまではいいんです。実はそんなに気にしてないんです。
それより謎な出来事が発生したのが問題です。それにわたしは頭を悩ませているのです。
「あっ、エメちゃんこっちの窓は吹いたよー?次どうする?」
ニコニコ笑顔でわたしに可愛らしく手を振ってくるのは、桃色のツインテールが目を惹く女の子。
そうです。何とミミアさんが手伝ってくれているのです。
こんな前時代的な作業をなぜ手伝ってくれているのか?その魂胆が怖いのです。
「ありがとうございます。次は扉の窓をお願いしてもいいですか?」
「りょーかい!」
とても心地よい返事で軽快に動いてくれるミミアさん。……なのですが。
「ミミアさん?あの、手伝ってくれるのは大変嬉しいのですが魔法を使った方が早いんじゃないですか?」
ミミアさんにこんな地味で退屈な作業をさせるのは申し訳ないです。魔法でサクッと終わらせてもらった方がいい気も……。
「でも、これエメちゃんの掃除でしょー?魔法使っちゃうとミミアが掃除したことになるから、それは違うよね?」
「ああ……なるほど」
そういう理由があるのですね。
でもそれなら手伝ってくれるのはアリなんでしょうか……?よく分かりません。
「それにね?」
「えっ、あのっ……!?」
と思えば、ミミアさんが急接近してきましたっ!
思わず後退りしましたが、背後には机があって行く手を塞がれてしまいます。
「こうでもしないと、エメちゃんと二人きりでお話する時間作れないでしょ?」
「いきなりどうしたんですかっ、ミミアさんっ」
「ミミアのことは、“ミミアちゃん”でいいって言ったよね?なんで戻ってるのかなぁ?」
近い、ほんとに近いです……!
吐息が掛かるのではないかと心配になるほどの距離。
「ミミアさんっ、ちょっと体が……」
「ん、なあに?聞こえないよ?」
ああ、イジワルです。
聞こえているでしょうに、イジワルをされています。
「み、ミミア……ちゃん。ちょっと近いと思うんですが……」
「えー、女の子同士ならこれくらい普通じゃない?」
ええっ、そうなんですか?わたしが間違っているのでしょうか。
どんどん密着してきて、ミミアさんの大きなお胸がわたしの胸に押し付けられているのですが、これも普通ですか……?
「でも、わたしと話すような事なんて何もないじゃないですか。ミミアちゃんと違ってわたし劣等生ですし、時間の無駄になっちゃいますよ」
「ううん、ミミアはエメちゃんにすっごい興味があるよ……?」
はうっ!やはりギルバート君のことを聞きに来たのでは!?
それが目的だったのですねっ!!
「ギルバート君のことでしたら、わたしは何もありませんよっ。アレはたまたま居合わせただけですっ!!」
「ん……?ギルバートくんが今どうして関係あるの?」
ミミアさんは首を傾げています。
あれ、それ以外に何の目的が……?
「ラピスのわたしなんかに、ミミアさんが興味を引くようなことはないはずです」
「ん~?そんなことないよ。エメちゃん、とっても不思議だから」
「ふ、不思議……?」
「うん。あんな優秀な妹ちゃんがいて、リアちゃんには一目置かれていて、セシルちゃんの魔法を簡単に破壊したりしちゃって……ほら?不思議でしょ?」
「いえ、普通です。至ってノーマルです」
「いやいや、エメちゃんは普通じゃないよ」
くい、っとミミアちゃんの指先がわたしの顎に触れます。
顔の動きを封じられて、わたしの目はミミアさんの瞳から逃げられなくなります。
キスされそうな距離感なのですが……。
これは普通なんですか!?わたしのことは普通じゃないのに、この状況は普通なんですか!?
普通がゲシュタルト崩壊しそうですっ!!
「は、放してくださっ……!」
――ガクッ
ミミアちゃんから逃れようとした瞬間、足の力が抜けてしまいました。
な、なぜ……?
「あらら、急に動いたりしたら危ないよエメちゃん」
わたしはミミアちゃんに抱えられ、床の上にそっと仰向けになります。
「す、すみません。急に力が抜けて……」
「ううん、いいんだよ気にしないで」
あ、あの……なんで、わたしの上に跨ってるんですかミミアさん……?
「さて、動けなくなったエメちゃんの体に何かあったら大変だから、色々診させてもらうねっ?」
へ……?
な、なぜそうなるのですか……?
どうして制服のボタンに手を掛けているんですか、ミミアちゃん……!?
「ちょ、ちょっと待ってください!こんな所で何を……!?」
――ガラガラ
突如、扉が開く音が聞こえてきました。
助かりました、これでミミアさんの暴走が止まります!
「……」
そこに呆然と立っていたのはセシルさんでした。
わたしたちの状況を言葉一つ発さずに眺めています。
「……そういう関係?」
「違いますっ!!」
何やら良からぬ勘違いをされている気がしますっ!
「ありゃ。結界を張っておいたのに誰が突破したのかと思ったら、セシルちゃんだったか……そりゃ相手が悪かった」
さらりと小声で怖いことを言っているミミアさん。
掃除しているフリをしてそんなことしてたんですか?密室を作り上げてたんですか?
「どうぞお構いなく、続けて……」
「ちょちょっ、セシルさん!?何か勘違いしていませんか?」
「大丈夫、そういうのは理解しているつもり」
「わたしが理解できてないんですがっ!?」
わーわー言っていると、ミミアちゃんは観念したの立ち上がります。
「そうだよセシルちゃん。これはね、掃除をしていたらエメちゃんが急に倒れちゃって、危ないところをミミアが助けたんだよ?」
「……そうなの?」
「そうだよね、エメちゃん?」
そうと言えばそうですが、違うと言えば違うような気もしますが……。
これ以上何か言って話をこじらせたくもありません。
何よりミミアちゃんの手から脱出できそうなのですから、ここは乗るしかありません。
「は、はい。急に力が抜けてしまったんです」
じーっとこちらを見るセシルさん。
「……そういう事にしといてあげる」
え、あれ。
なにか含みがありますね……。
「まっ、掃除も終わったし。エメちゃんも無事だったし良かったよ!それじゃあ、また明日ね!」
そうしてミミアちゃんはいつもの天使の笑みを浮かべて教室を後にしていくのでした。
「お、恐るべし……ミミアちゃん」
「どうかしたの?」
「いえ。正直、何をされているのかさっぱり分かりませんでした」
「……そんなに凄かった?」
え、どうしてそこでセシルさんが頬を染めるんですか?
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