5 / 93
05 妹がお年頃のようです!
しおりを挟む「な、なんであんなことに……」
結局、セシルさんに対する誤解は解けなかった。
ひたすら怯える彼女にもはや言葉は届かず、諦めてお別れするのでした……。
足取りは重いままに家に帰宅します。
「ただいまー」
玄関先にはシャルの外靴に、居間には光が零れています。
やはり先に帰ってきたようです。
「あ、おかえり。帰ってきたのね」
素っ気ない声で返事をするシャルは制服の上にエプロン姿でお料理中でした。
「シャルー、さっきのはやっぱりマズかったんじゃなーい?」
ここはリアさんとの一件を姉としてガツンと言ってあげないと……。
「はあ?まだ言ってんの?あれはヘルマン先生だって容認してたんだから問題ないのよ」
うぐ……またわたしの反撃しづらい所を突くなあ。
「先生は容認したとしても、世間一般的に」
「魔法士の常識と、世間一般の常識は違うのよ」
「うう……」
食い気味で一蹴されました。
「魔族との戦争で、魔法士は人類の絶大な戦力になっている。言わば兵器なのよ、兵器の価値は威力でしょ」
ここ近年の歴史において魔法士育成機関が乱立するようになったのは魔族との戦争による影響が大きいのです。
強大な力を持つ魔族との戦いで、最も戦果を上げているのが魔法士だと言われています。
だが魔法士の数は絶対的に少なく、前線に不足しているのが実状なのだそうです。
「で、でも協調性がないと戦いにだって……」
「強調性があっても、ラピスのままじゃ魔法士として戦うことも出来ないけど?」
「うぐっ⋯⋯!」
……だ、ダメです。
わたしは妹に成績だけではなく、口でも勝てそうにありません。
姉の威厳なんて遥か彼方。
「ま、あんたはまずその位置から脱却することを考える事ね」
「ふーんだ。ステラホルダーさんは余裕があって羨ましいこと」
わたしは面白くないので口を尖らせて皮肉を言うことしか出来ません。
「まだまだよ、わたしより上がまだ4人もいるんだから」
「え、それで言ったらわたしなんて何人いるのって話になるんだけど……」
「――やるからにはトップを狙うわよ」
あ、わたしの話完全にスルーされました。悲しい。
「トップと言えば、今日新入生代表として挨拶してたイケメンのギルバートさんって人が首席なんでしょ?」
「そうだけど……。え、なに、あんたああいうのが好みなの?」
ん……?シャルが妙な所に食いつきました。
「好みっていうか、単純にカッコいいなとは思ったけどね?アレで成績優秀なんだから完璧だよね」
「ミーハー」
何故か吐き捨てられるように言われました。
「なんか、すごい棘を感じたのは気のせい……?」
「一学年の女子はみんなアイツに熱中しているらしいわよ。フリーなんですって」
「へえ……」
あんなイケメンさんがフリー。
お相手になるような人はどんな方なのでしょうか……、きっと知的で気立てのいいお方なんでしょう。
「え、なに。好きなの?」
ジーッとこちらを見つめてくるシャル。
何か気になっているみたいです。
「好きっていうか、単純に目を惹かれるよねってくらい、かな?」
「へー、そー、ふーん」
何か思わせぶりな口ぶりのシャル。
あ、なるほど……さては。
「そういうシャルこそギルバートさんに気があるんじゃないの!?」
「……はあ!?」
ふふ、驚いてますね。
普段わたしに絡もうとしないくせに、急にギルバートさんの話題で食い付いてくるなんて怪しいと思ってたんですよ。
シャルも早いもので15歳、恋の1つや2つしてない方がおかしいってもんでしょうっ。
それに2人はステラ同士……お似合いなのは誰の目にも明らかです。
「いいよいいよ。お姉ちゃん分かってるから、隠すな隠すな」
「ちっ、ちがっ……!なんでそういう結論になるわけ!?」
「ふっ、甘いわねシャルロッテさん。その驚いている反応が何よりの証拠じゃなくて?」
余裕を見せようとしたら、リアさんみたいな口調になっちゃいました。
「突拍子もなさすぎて驚いてんのよ!」
「何とでも言えますわよ」
「違うし!あんな男じゃないし!あとその喋り方ウザい!」
ふふふふ、ほんとに甘い子ね。
「じゃあ好きな人はいるってことね!?」
「そっ……それはっ……!!」
「わたし、シャルの好きな人なんて聞いたことない!だれっ、誰なのっ!?」
シャルは珍しくあわあわと慌てています。
「別にいいでしょ!放っといてよ!」
ふん!とそっぽを向くシャル。
無視で押し通すつもりですか、そうは行きません。
「えー。じゃあ、ヒント。ヒントちょうだい」
「ヒントって……何よ」
「そうだねえ……あっ、わたしも知ってる人?」
「あ……あんた……」
シャルはわたしの顔をまじまじと見つめてきます。
よっぽどこの手の話題が苦手なのか、顔がみるみる赤くなっていきます。
「ん?」
「あんたも……知ってるけど」
な、ななっ、なんとっ!
そんな身近にいたの!?
「もー。こうなったら教えてよっ!だれっ、だれ?!」
「言わない!絶対に言わないからっ!ていうか近い!」
シャルに引っ付こうとしましたが、容易く剥がされました。
いつの頃からか、シャルはこういうスキンシップも嫌がるようになったのです。
昔はもっと仲良しだったのに、冷たいモノです……。
「もーいいから!はやくご飯食べてよねっ!」
シャルはふんふん言いながら台所に戻ります。
これ以上追求すると本当に怒りだしそうなので、大人しくすることに。
潮時はわきまえているのです。
わたしは言われるがままに食卓テーブルに着きます。
「今日はなにかなー?」
さっきからトマトのいい匂いがしているのは気になってはいたのですが……。
「はい、どうぞ」
シャルはわたしの前にお皿を置きます。
「あ、パスタなんだねっ!」
その他にはサラダにスープが続きます。
「好きでしょ、あんた」
「うん!特にシャルの作ってくれるパスタが大好きっ!」
「はぐっ!」
「ん……?」
急に変な声を出してシャルがまた顔を反らしました。
「どうかした?」
「な、なんでもない……いいから食べて」
「はーい。あ、でも今日がパスタなのは何か理由があるの?」
ちなみにシャルはあまり麺類が好きではないようなので、我が家の食卓に並ぶことは稀なのです。
わたしは何でも好きなので、基本的に料理を作ってくれるシャルの好みに合わせています。
「入学祝い。入りたかったんでしょ、アルマン魔法学園に」
……全くこの子といったらもう。
「可愛いやつめっ!」
妹への愛を示そうとわたしは立ち上がりハグを迫ります。
「な、なにっ!?」
朝は一緒に通うの最悪とか言いながら、やっぱりお祝いしてくれるんだねっ!
わたしは嬉しいよっ!
ハグはひたすら拒否されてるけど、これも照れ隠しなんだろうね。きっと。
「こーなったら明日から一緒に登校しようね!」
「あ、それはムリ。ラピスとの一線はわたし守るから」
……ええ……。
やはり全ての元凶はラピスにあるんだと思うわたしでした。
1
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪魔との100日ー淫獄の果てにー
blueblack
恋愛
―人体実験をしている製薬会社― とある会社を調べていた朝宮蛍は、証拠を掴もうと研究施設に侵入を試み、捕まり、悪魔と呼ばれる女性からのレズ拷問を受ける。 身も凍るような性調教に耐え続ける蛍を待ち受けるのは、どんな運命か。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!
参
恋愛
男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。
ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。
全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?!
※結構ふざけたラブコメです。
恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる