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···❆冒険者編❆···
サブギルドマスター
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仕方ないので、紫と碧と遊ぶことにした。しばらくの間、4人で遊んでいると、ようやくミレディアさんが帰ってきた。
「お待たせして申し訳ありません」
「いえ、それよりどうしたんですか。急に部屋を飛び出して……」
「それは、私が説明致します」
私の質問に答えたのは、ミレディアさん……ではなく、その後ろに居たらしい男性だった。
「はじめまして。私はトールメ・レントルと申します。この冒険者ギルド・クラソフィア支部のサブギルドマスターをしております」
「俺はセルンと言う。よろしく頼む」
「ヤヨイです。よろしくお願いします」
サブギルマスだというトールメさんは、灰色の髪を1つに結び、いかにもな見た目の優男だった。まぁ、サブギルマスやってる時点で、それに見合った力はちゃんとあるんだろうけど。
「私がきた訳は、まあ分かるとは思いますが貴方がたの採取してきた薬草についてです」
「薬草がどうかしましたか?」
ま……まさか、間違えて毒草入れてた、とか?
「ああ、いえ。別に毒草が紛れ込んでたとかそういう訳ではないのでご心配なさらなくとも大丈夫です」
「そ、そうですか……」
良かった……。
ホッと息を吐く。どうやらそう思ってたのはセルも一緒らしい。同じように顔に出てたようだ。
「それじゃあ、一体どうしてサブギルドマスターがここに来たんだ?」
「実は、あなた達の採取した薬草が全て得上級のものだったのです」
「得上級?」
何それ?
「得上級というのは、薬草の状態や大きさなどからつけられるその薬草のランクのことです。下から順に下級、中級、上級、得S級、得上級となります。貴方がたの取ってきた薬草はこのランクの最上位、得上級のものでした」
そう言うと、トールメさんはミレディアさんが持ってきたトレイを受け取る。トレイには、2つの薬草が置かれていた。
「私から見て右側の薬草が中級、普段取られる薬草です。左側の薬草は、先程貴方がたに提出してもらった薬草です」
……うん。どう見たって違うね。
中級の方は、1枚の葉の大きさが約5cm程度。それに比べて、私達の取ってきた得上級だという薬草は、何というか全てがキラキラしてる。大体10cm程度で色は濃い緑色、気のせいか葉の表面も凄くツヤツヤとしてる。
……何故だ。
「とまぁ、そんな訳でして。これ程質がいいものはここ数年なかったので、騒ぎになってしまいます」
「俺たちはできるだけ目立ちたくないんだが……」
セルが困ったように眉を顰める。すると、サブギルマスがズズイッと前に乗り出してくる。
「そこで、です!!実は冒険者ギルドには、あまり知られていないのですが特別な制度がありまして。専属受付制度と言って、“凄いことをしてしまったけれど、あまり目立ちたくない”または逆に“目立ってしまって受付が担当になろうと険悪になってしまう”などのお悩みを持つ冒険者の方々のために作られた制度です。これは、そういった冒険者の方々を1人の受付が、その街を出るまでの間ずっと受付を担当してくれる、というものです」
へぇ……そんなのがあるんだ。確かにそんなのがあったら便利かも。
「それで話は戻りますが、セルン様とヤヨイ様もこの制度をご利用いたしませんか?」
「いいのか!?」
「ええ。僭越ながら、セルン様とヤヨイ様は夫婦でいらっしゃるとお見受け致しました。その腕に抱いておられる赤ん坊たちは、お二人のお子様でしょう。でしたら、騒がれないほうがよろしいかと思いまして」
今まで、私たちが夫婦だって分かった人たちはいなかったのに……。しかも、紫たちが私たちの子供だって見抜くなんて……。
そこから、もうサブギルマスが只者でないことが分かる。
「……分かった。よろしく頼む」
「では、専属受付嬢にはミレディアをつけましょう。ここにちょうどいますし、セルン様たちのことも知っている……。これ以上の適任はいないでしょう」
「改めてよろしくお願いします、セルンさんヤヨイさん」
ミレディアさんがにこりと笑う。
はうっ……!!お姉様とお呼びしてもよろしいですか!?
「ヤヨイさん?私の顔をそんなに見つめて、どうかいたしましたか?あ、もしかして何かついてますか?」
「い、いえ!大丈夫です!」
わ、私は一体何を考えてるの……。
「では、私はミレディアの専属手続きをしてきますので」
「サブギルドマスター……!!そんなことは私が致します!!」
サブギルマスがゆっくりと立ち上がると、ミレディアさんが慌てて言った。
「いや、私がしておきます。セルン様とヤヨイ様に会ったのも何かのご縁。これくらいのことはさせてください」
「……分かりました。では、よろしくお願いします」
「もちろんです。私の持てる権力を全て活用してやりますよ」
アッハッハと見た目によらず、豪快な笑い方をするサブギルマス。
こんなことに権力を使わないで欲しい……。
「お待たせして申し訳ありません」
「いえ、それよりどうしたんですか。急に部屋を飛び出して……」
「それは、私が説明致します」
私の質問に答えたのは、ミレディアさん……ではなく、その後ろに居たらしい男性だった。
「はじめまして。私はトールメ・レントルと申します。この冒険者ギルド・クラソフィア支部のサブギルドマスターをしております」
「俺はセルンと言う。よろしく頼む」
「ヤヨイです。よろしくお願いします」
サブギルマスだというトールメさんは、灰色の髪を1つに結び、いかにもな見た目の優男だった。まぁ、サブギルマスやってる時点で、それに見合った力はちゃんとあるんだろうけど。
「私がきた訳は、まあ分かるとは思いますが貴方がたの採取してきた薬草についてです」
「薬草がどうかしましたか?」
ま……まさか、間違えて毒草入れてた、とか?
「ああ、いえ。別に毒草が紛れ込んでたとかそういう訳ではないのでご心配なさらなくとも大丈夫です」
「そ、そうですか……」
良かった……。
ホッと息を吐く。どうやらそう思ってたのはセルも一緒らしい。同じように顔に出てたようだ。
「それじゃあ、一体どうしてサブギルドマスターがここに来たんだ?」
「実は、あなた達の採取した薬草が全て得上級のものだったのです」
「得上級?」
何それ?
「得上級というのは、薬草の状態や大きさなどからつけられるその薬草のランクのことです。下から順に下級、中級、上級、得S級、得上級となります。貴方がたの取ってきた薬草はこのランクの最上位、得上級のものでした」
そう言うと、トールメさんはミレディアさんが持ってきたトレイを受け取る。トレイには、2つの薬草が置かれていた。
「私から見て右側の薬草が中級、普段取られる薬草です。左側の薬草は、先程貴方がたに提出してもらった薬草です」
……うん。どう見たって違うね。
中級の方は、1枚の葉の大きさが約5cm程度。それに比べて、私達の取ってきた得上級だという薬草は、何というか全てがキラキラしてる。大体10cm程度で色は濃い緑色、気のせいか葉の表面も凄くツヤツヤとしてる。
……何故だ。
「とまぁ、そんな訳でして。これ程質がいいものはここ数年なかったので、騒ぎになってしまいます」
「俺たちはできるだけ目立ちたくないんだが……」
セルが困ったように眉を顰める。すると、サブギルマスがズズイッと前に乗り出してくる。
「そこで、です!!実は冒険者ギルドには、あまり知られていないのですが特別な制度がありまして。専属受付制度と言って、“凄いことをしてしまったけれど、あまり目立ちたくない”または逆に“目立ってしまって受付が担当になろうと険悪になってしまう”などのお悩みを持つ冒険者の方々のために作られた制度です。これは、そういった冒険者の方々を1人の受付が、その街を出るまでの間ずっと受付を担当してくれる、というものです」
へぇ……そんなのがあるんだ。確かにそんなのがあったら便利かも。
「それで話は戻りますが、セルン様とヤヨイ様もこの制度をご利用いたしませんか?」
「いいのか!?」
「ええ。僭越ながら、セルン様とヤヨイ様は夫婦でいらっしゃるとお見受け致しました。その腕に抱いておられる赤ん坊たちは、お二人のお子様でしょう。でしたら、騒がれないほうがよろしいかと思いまして」
今まで、私たちが夫婦だって分かった人たちはいなかったのに……。しかも、紫たちが私たちの子供だって見抜くなんて……。
そこから、もうサブギルマスが只者でないことが分かる。
「……分かった。よろしく頼む」
「では、専属受付嬢にはミレディアをつけましょう。ここにちょうどいますし、セルン様たちのことも知っている……。これ以上の適任はいないでしょう」
「改めてよろしくお願いします、セルンさんヤヨイさん」
ミレディアさんがにこりと笑う。
はうっ……!!お姉様とお呼びしてもよろしいですか!?
「ヤヨイさん?私の顔をそんなに見つめて、どうかいたしましたか?あ、もしかして何かついてますか?」
「い、いえ!大丈夫です!」
わ、私は一体何を考えてるの……。
「では、私はミレディアの専属手続きをしてきますので」
「サブギルドマスター……!!そんなことは私が致します!!」
サブギルマスがゆっくりと立ち上がると、ミレディアさんが慌てて言った。
「いや、私がしておきます。セルン様とヤヨイ様に会ったのも何かのご縁。これくらいのことはさせてください」
「……分かりました。では、よろしくお願いします」
「もちろんです。私の持てる権力を全て活用してやりますよ」
アッハッハと見た目によらず、豪快な笑い方をするサブギルマス。
こんなことに権力を使わないで欲しい……。
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