怪談レポート

久世空気

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№249 古い悪夢

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 小学生の時に怖い夢を見ました。

 夢の中でも私は寝ていました。当時は父と母と川の字で寝ていたので、起きたとき、両側に両親が居なくて不思議に思いました。時計を見ると夜中の2時。私が先に布団に入るのはいつのことで、それでもいつもは12時には二人とも就寝するので何をしているんだろうと気になりました。

 ふすまを開いて隣の居間を覗くと、真っ暗な部屋にテレビだけが付いていました。音が消えていて、ただチカチカ光っていました。

「あ」

 と低い声が聞こえて、そっちを見ると大きな影がありました。テレビの明かりでなんとか「知らない男だ」と言うことは分かったんですが、それと同時にぶわっと異臭を感じました。血のにおいだとその時は分からず、なんでこんなに臭いんだろうと。

 そして男の手には鉈、もう片方の手に何か荷物をぶら下げているように見えました。それが動いて、うめき声を上げました。母です。血だらけの母が私に何かを言おうとしていたんです。

 男は母を床に投げ捨て、私に向かってきました。そして、鉈を振り上げました。

 そこで目が覚めました。汗びっしょりで、布団の中にいるのにガタガタ震えていました。すでに朝で両親が起きていたので、必死で夢の話をしました。二人は最初笑っていましたが、私が話しながら、さらに泣きだしたので、さすがに焦って慰めてくれました。夢だから、大丈夫だよって。

 高校生になって自室を与えられました。その日は期末試験前でちょっと遅くまで勉強していました。そろそろ区切りを付けて寝ようと思ったとき、居間の方から物音がしました。小さな叫び声のようなものも聞こえました。両親も所用で遅くまで起きていたことを知っていたので、虫でも出たのかとスルーしていたんです。ですが、ドタドタとあまり聞かない騒ぎ方だったんで気になって・・・・・・。そっと部屋から居間の方を覗いてみたんです。角度的に入り口しか見えないんですが。

「あ」

 低い声と同時に、血のにおいが迫ってきました。居間の入り口に、母のパジャマのような模様と、それを担ぐ男の背中がありました。母の体が鈍い音を立てて床に投げ出されました。男が片手を上げ、鉈を振り下ろす・・・・・・。

 私は慌ててドアを閉め、電気を消しました。何かに固い物がガツンと当たる音がしました。泣きそうになりながらも、私はスマホで110番しました。

 そうですね、結構冷静に動けたと思います。後で警察の方にも褒められました。両親は大けがでしたが無事で、犯人も逮捕されました。犯人の顔・・・・・・見ましたが、あの夢の男・・・・・・かな? 夢の中でも薄暗くてあんまり分からなかったんですよね。

 ああ、私は直接犯人には会ってませんよ。ニュースで見ただけです。救急の方も心配してくれましたが、本当にこの傷がいつ出来たのか分からないんです。

――美郷さんの額から後頭部に掛けて、古い大きな傷が付いていた。
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