怪談レポート

久世空気

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№184 悪人

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――枝橋さんは現在、大学生だといった。しかし見た目は驚くほど老けて見えた。

 彼女のことは1年生の時からすでに噂で知っていました。曰く「単位のために教授と寝まくってる」と。良くある下品なネタだと思っていました。彼女は顔はそれほどだったんですが、なかなかスタイルが良くて、そう言うところが噂になりやすかったのかなって。ほら、美人だと笑ってるだけでもいいけど、ブスなら体張らないと・・・・・・すみません、話を続けます。

 その日、たまたま時間があったので教授に借りた本を返しに行ったんです。貴重な本と聞いていたからできるだけ早く返したかったので、読み終わったのは夕方だったんですが研究室にいたらいいなくらいのつもりで。そこで見ちゃったんですよ、彼女と教授がキスしてるの。噂が本当だったこととスキャンダルを見た興奮で、思わず写真を撮っちゃったんです。

 僕は教授に本を返すのをやめて、彼女がキャンパスから出てくるのを待ち、出てきたところでスマホで撮った写真を見せました。その時はじめてしゃべったんです。
「これ、知られたらヤバいよね。先生、既婚者だよね」
 って。彼女は僕が話しかけたことには驚いていました。写真については「ああ、そう」みたいな反応でしたが、かまわず一人暮らしの部屋に連れ込んで・・・・・・。本当に、どうかしてたんです。事の真相を偶然知って気が大きくなっていたというか、尻軽女を見つけて遊んでみたくなったというか。

 その日から、彼女は僕の部屋に住みつくようになりました。家事をしてくれるから恋人になったつもりかと、それ以上のことは特に考えませんでした。数週間後、例の教授が自殺しました。理由は「奥さんに、学生に手を出してたことばれたからね」と彼女が教えてくれました。彼女は特に悲しそうでも残念そうでもなく、淡々としていました。

 そのあたりから、僕の部屋に異変が起こり始めたんです。男のうなり声がしたり、誰も居ないところからペタペタ歩く音がしたり、寝ているときに誰かが乗ってくる感覚がして金縛りになったり。
 一度、目を開けてみたら、教授だったんです。叫んで起きたら彼女も起き出しました。教授は消えました。教授がいたといったら、やっぱりねって。どうも彼女に近づいた男は自殺したり、自殺に近い感じで事故死するそうなんです。

「昔、霊感がある人にそういう男が全部憑いてるよって言われたんだよね。私は見えないけど」

 と彼女はあっけらかんと言いました。教授が死んでも動揺しなかったのは慣れていたからだそうです。

 彼女と別れたいです。何で彼女が取り憑かれているのに僕が苦しまなきゃいけないのか。でもなかなか出て行ってくれないんですよ。土下座して頼んでも、怒鳴って酷いことを言っても、平気なんですよ。叩き出してもふらっと帰ってくるんです。もう・・・・・・死にたい。きっと僕が死んでも彼女はなんとも思わず他の男を引っかけるんでしょうね。

 彼女に取り憑く男たちの気持ちがちょっと分かります。
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