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原始・古代

食事で人間変わる

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11月27日(火) 朝 曇り


 寝る前に日課の日記を書き、その内容を布団の中で反芻して気付いてしまった。
 綺麗なお姉さんの大豊さんとは確実に食べているものも生活も丸っきり違う、でもそれ以前に身内のみーちとも普段食べているものが全然違うことに。
 1週間ちょいもそれに気付かずにのうのうと生きていたなんてっ……。
 目の前で美味しそうに鮭マヨチーズトーストを頬張ってる専業主婦に顔向けなんて出来ないよ。

 いや、プラスに考えよう。
 今回気付けた事で、これからみーちにストレスの無い充実した日々を送ってもらうことが出来るんだと。

 そうと決まれば行動あるのみっ!

 泣き出す15秒前くらいの、ほんの少し目を潤ませた表情を事前に俯いて作ってから顔を上げ、ライフスタイルが異なる女性に語りかけた。

 「みーち……気付かなくてごめんねっ…!」
 「え、何に?」

 緑茶を飲みつつ、(うわっ…またなんか始まったよ……)って目だけで語りながら雑に返された。
 こうなった敗因は目の潤い不足だったのだろう。
 瞬きを何回やっても水分が出て来なかったもの。でもね、こういうのは形から入るものだから。困り眉のまま続けますよ。

 「約1週間みーちは朝以外はうちと全く同じものを食べたでしょ?」
 「そうだね」
 「それがストレスだったんじゃないかって気付いたの」
 「ん?どゆこと?」

 当人なのに察しが悪いな。
 ここまで言っても分からないなんて。
 ううん、違う……うちに気を遣って本音を隠しているんだ!
 みーち、いつの間に奥ゆかしくなってしまったの?ある程度の我儘なら受け止めてみせる所存なのに。

 「好きなものをうちを気にせず食べて良いんだよってこと!」

 心の中では綺麗にウィンクをキメながら言えた。
 現実では弾ける笑顔しか出来なかった。……なんでウィンクではなく睫毛を瞼に挟むスキルを神様はくれたんだろうか。
 思考が少し脱線してしまっていたが、みーちの返事は完全に線路から車輪が外れたものだった。

 「私の好きなものって何?」

 真顔で小首を傾げて記憶喪失かのように言ってきた。
 心理学や脳神経外科やらの専門知識は皆無なので、普通に告げるしかない。

 「だ・か・ら~っ!カップ焼きそばや冷凍スパを食べて良いよって言いたいの!みーちいつもお昼に食べてたでしょ?それを我慢しないで好きなときに食べてもOKだよってこと!」

 テーブルをペシペシ叩きながら些かヒートアップして言ってしまった。
 でもこれもみーちが遠慮するから故。
 みーち、この提案に喜んでくれるかな?と思いつつ改めて顔を見つめると、

 「馬鹿にしてんの?」

と、冷凍焼けしそうな声と親の敵を睨むかのような凍てつく視線で言われた。
 ど、どうして……。

 「え?だって毎週のように食べてたじゃん。好きなんでしょ?」

 毎日ほぼ欠かさずに話題の一環として、監視員バリにみーちの昼食と夕食を何か聞いてきたんだから、リサーチに誤りはないはず。
 …これで「嫌いだけどなんか食べてた」って言われたら、どうリアクションするか迷うな。
 そんなうちの心の戸惑いを断ち切るかのように、みーちは1つ溜め息を強めに吐いてから発言した。

 「あのねー…そりゃ食べてたけど、それは1人だったから作るより買った方が安いし、何より自分1人のために料理する気にはならないからで、誰か一緒に居るなら普通に何か作るから!つまり、この家でカップ麺や冷凍スパを食べるとしたら、あーちが居ない時だからね」
 「みーち……」

 どうしよう妹が格好良い。
 世間からしたら、「高々ジャンキーな昼食1つで何言い合ってんだ」って思うかもしれないけど、食事って大事だから。
 況してや過去に来ちゃってるから。
 精神安定のためにも、みーちには1食1食を大切にして欲しいと、30歳の神隠し回避希望者は思ったのです。
 でも、なんか余計なお世話だったみたい。
 そして毎食作ってくれるみたい。朗報ですな。
 しかし、一言だけみーちの発言の内容を訂正しなくては。

 「んー…でもみーちがこの家で1人になる事は無いんじゃない?」
 「どうして?」

 お互いに疑問符を至近距離でぶつけ合った。今日はとことん噛み合いませんな。

 「だってうちが留守にするとしたら1人で図書館に行くときくらいじゃない?それも短時間だし。どっちかって言ったらみーちが買い物やお茶とか散歩で出掛けたり、『毎日同じ顔だけ見て暮らすの飽きたわ!』って家出して、うちが家に残る確率の方が遥かに高いよ?」
 「その家出の理由何…?てか、私が家を去る前提なんだ」

 本気で驚いていますって顔をされた。
 それに対して驚きますって顔を返しつつ言葉を重ねる。

 「だってうちは日本史やらないとだし、特にストレス溜めない人間だから」
 「知ってるー?良い大人は相手にストレスが溜まらないように立ち回るんだよ?」
 「ふへ?…その言い方から察するに、進行形でみーちイラついちゃってるの?」
 「今はイラつく12秒前って感じ」
 「わっおー…」

 たった12秒しか残ってないならもう諦めるしか無いわ。
 早速家出してしまうのかしら?
 今日は暖かくなるから外出日和だけどね。ちゃんと日付が変わる前に帰って来てくれたら何も言うまい。

 「(帰ってきたら)手洗いとうがい、忘れずにね」
 「は?」

 12秒と経たずにイラつかせる事に見事成功して、足早に朝は過ぎていった。

 
 ちなみにみーちは外出をしなかったし、お昼は釜揚げうどんを作ってくれました。
 さらに驚くべき事に、友好の証に山椒を手渡ししてくれました。
 なので、遠慮なく「ハァハァ」しました。はぁはぁ…。


*****

夕方と言うより夜目前  晴れ


 「しまったぁぁぁっ!」
 「わぁぁぁぁっ…!」
 「やばやばやば……」
 「うぉぉぉぉー…!」


………

 
 「か、完成したっ…!」

 無い頭で考え、考え抜き過ぎた結果、危うく高校日本史のかなりガチなまとめになるとこだった。
 テストで90点台を本気で狙うレベルの…。
 なんとか軌道修正出来た今は、「お、今日は結構早く終わりそう♪」って言いながら、嬉々として大量の文章を打ち込んでいた、おやつ時の自分を叱ってから投げ飛ばしたい気持ちでいっぱい。
 そんでもって、苦悩で叫んだ時にみーちに何度も冷たい視線を刺されまくって心もいっぱいいっぱい。…現に今も、こっちを向いている目が怖い。

 「お、お願いします…」
 「ん」


【わたにほ】
《弥生時代part1》 もちワイドショー風で♪

●弥生文化をザックリ分けてみる● あくまでも目安!※1

1.早期[紀元前約1千年前~紀元前約8百年前]
2.前期[紀元前約8百年前~紀元前約4百年前]
3.中期[紀元前約4百年前~約1世紀]
4.後期[約1世紀~約3世紀]


□『弥生』のはじまり□

 1884(明治17)年に、東京府本郷区弥生町(現:文京区弥生)にあった向ヶ岡貝塚から壷形の土器が出土したことが由来。


□弥生土器□

・縄文土器よりも焼成温度が約1200℃と高く、色は赤褐色で薄くて丈夫。
・文様はシンプルで実用性重視!ろくろを使ったから大量生産可能になった☆
・米の貯蔵に利用した大型の〈壷形土器〉/煮炊きに使用した〈甕形土器〉/物を盛る〈高杯たかつき土器〉や〈鉢形土器〉をセットで用いた。


●麻来的!~環濠集落が出来るまで~● 注:流れ重視!

① 渡来人がやって来た!
 縄文晩期から、水田稲作農耕を行う渡来系弥生人達が中国や朝鮮半島から北部九州に渡来。

② 広がる!
 渡来系弥生人は在来縄文人と混血を繰り返しながら、日本列島に広がっていった。

③ 広まった! *1
 前期のうちに稲作は九州南部~東北まで達した!←弥生人凄い。

④ 青銅器・鉄器が来た! *2
 前期末になると青銅器が、そこから少し遅れて鉄器が渡来人と一緒に日本に入って来た。

⑤ 農耕の効率がアップ! 
 木製農具・鉄製農具の登場により、生産効率が格段に上がる。

⑥ 格差・階層化が出てくる!
 生産物・収穫物などの富を蓄える者が現れるようになり、他の集団との格差、はたまた集団内においては身分の階層化が進展する。

⑦ 環濠集落の完成っ! 
 紀元前5世紀頃から、まわりを濠(壕)や柵で囲んだ、外的に備えたムラを形成。


〔弥生前期の注目遺跡はコレっ!〕

◎板付遺跡 @福岡県 ←空港のスグそば

・日本最古級の環濠集落。
・幅6mほどのV字の環濠が東西に約80m、南北に約110m掘られた楕円形の集落!
あぜで区画された水田には用水路も備わっている!
くわや水田の表面をならす〈えぶり〉、石包丁や貯蔵穴も見つかった! めっちゃ発達してる☆


〔農具紹介〕

・〈石包丁〉:細長い半月状の形の石。稲の収穫の時に穂先だけを摘み取る時に使用。[穂首刈り]
・〈すき〉:深く耕せることが可能になった。木製、しばらくすると先端が鉄製になる。
竪杵たてぎね木臼きうす:臼に収穫した稲を入れ、杵でついて籾を取った。[脱穀]


■この頃世界では…■

・紀元前432年、パルテノン神殿完成!
・紀元前400年頃、マヤ文明開花!
・紀元前221年、秦の始皇帝が中国を統一!

○まとめ○

・縄文でもない、須恵器すえきでもない、その間の時代の土器が発見されたのが、日本の弥生時代のはじまり。
・渡来人をきっかけに採集社会から農耕社会になり、ほぼ皆平等社会から階層社会になっていった。
・集団が徐々に大きくなり、集落→ムラへと進化!

  ~つまり、お米が歴史を変えたのです!~


*1:南西諸島では本土の縄文文化と平行して存在した〈貝塚文化〉、北海道では縄文文化を継承した〈続縄文文化〉が続いていた。水稲耕作は行わず、漁労や食料採取を行っていた。

*2:青銅器は銅とすずの合金。ブロンズ。
(1264字)

☆諸説あり!
☆あくまで個人の意見です!

※1:ここでは縄文晩期から弥生時代へと移り変わる年代を弥生時代早期とした。書籍やインターネットのサイトによっては、弥生時代の開始を紀元前5世紀~、または紀元前3世紀~とするものもある。よって、文化区分は本当に目安であり、正確なものではない。

To be continued...



 「絶対質問あるでしょ?どーぞどーぞっ!」

 気になる人はどーしても気になっちゃう、疑問がモヤっと残るまとめ方にしたから、細かい所につい目がいってしまう実々ちゃんは聞きたくて仕方が無いはず。
 目を爛々と輝かせて待つこと暫し…

 「質問……日本に来た渡来人は帰らなかったの?」

と、全く予想だにしなかったクエスチョンがうちを襲って来た。
 最早細かい云々以前の問題だった。目の付け所が家電ブランドだった。
 それに、

 「うーん…その答えはみーちが知っているんじゃない?」
 「潮の流れと船のクオリティ的に大陸に帰れなかったとか?」
 「えっ…?」
 「ん…?」
 「……うちの言い方が悪かったみたい。中国や朝鮮半島の情勢の悪化で、彼らは日本列島に逃れて来たみたいだよ」
 「そう…」

 アレだね、『答えは君の心の中にあるよ』的な、スピリチュアルな言い方をしちゃ駄目だったね。
 『それについては、うちよりみーちの方が詳しいんじゃない?』って言えば、『あ!中国の戦国時代か!』ってなったのにね。以後気を付けます。うっかり苦い顔で答えてしまったのも含めて気を付けます。

 「あとはー…平均寿命は?」
 「分からないし、他にもっと考えるべき大事な事がこの時代にはあるんだよ…」
 「ふーん」

 顎に人差し指を添えて聞いてこられても困るよ。
 それに毎度毎度質問して来るけど、そんなに平均寿命って気になちゃうもんなの?
 でもその割には、『ふーん』の3文字で簡単に引き下がってくれるんだね。
 そして、肝心の聞いて欲しい質問は結局してくれなかった。
 そっちがその気なら此方から聞くまでのこと。1つ「コホン」と咳払いをしてから問いかける。

 「何で環濠集落を作ってまで外敵から備えなきゃだったでしょうか?あと、集落内の格差はどうやって生まれたでしょうか?」

 ちちちちちちちちちちっ……!カンカンカンッ!(脳内での音)

 「はい、外敵に良い土地や田畑を奪われないようにするため。集落内の格差は、山間部とか河川の近くかとかで、収穫量の差がジワジワ出てきたり、リーダーの有能さでかな?」
 「真面目か」

 挙手をしながら丁寧に答えてくれた。
 回答も用意していた答えと遠からずのものだったので、正直どうしたものかと思っている。
 満点では無いけど、マイナス1点減点の素晴らしいもの。一色さん、これからも頑張って下さい。

 「みーちの2つの答えを合体させたのが、環濠集落の模範解答かな?集落のある場所によって、日当たりやら土の質やらで収穫量に差が出来る。かといって1から新しい土地を耕すのも労力と時間の無駄。そこで…、『田畑も貯蔵している食料も、他所の集落から奪っちゃった方が手っ取り早いわ!ついでに労働力の人も拐って奴隷にしちゃおーぜ!』ってなったから、環濠集落を作りました」
 「わー…」

 少々熱を入れて演じすぎたみたい。
 もっと言うなれば、倫理委員会に目を付けられてもおかしくないくらい、人道に反した発言をした自負がある。
 しかし、これが歴史の真実だから。考えたの弥生人だから。
 よって、ドン引きした顔で姉を見てはいけません。

 「2つ目の集落内部での階層化は、稲作は大人数でやるものでしょ?だからそれを仕切る指導者が生まれたことで、身分の差が出てきたの。使う者と、使われる者って」
 「ふむ」
 
 今日は今までになく勉強したって感じがするね。 みーちの脳の皺も1本増えたかもね。確かめようが無いけども。
 達成感でニヘニヘ笑っていたら、立ち上がった奥さまに声を掛けられた。

 「夕飯は鶏のさっぱり煮でしょ?」
 「そうだよー!サッパリサッパリッ♪よっ!サッパリサッパリッ♪はっ!」
 「……ちっ!」

 たった今綺麗な舌打ちを聞いた気がしたのと、お昼に山椒を手渡してくれたのがあったので、夕食のお米はうちの理想のシャッキリの水位から2mm上に設定して炊いてあげました。ツヤツヤもっちり。

 明日は意志疎通がスムーズに出来ますように。



11/27(Tue)

 今日から弥生時代です。
 旧石器・縄文と比べて、圧倒的に文献の記述量が増えたので、ついつい詳しくやりたくなってしまいました。でも、あくまでこれは初心者向けのまとめ。それを忘れちゃアカンのです。どんとふぉげっと。

 みーちに朝、『私が家を出る前提なんだ』って言われた時にふと数年前を思い出しました。
 親友の麻乃ちゃんからLINEの返事がいっこうに来なくて、なんとか連絡がついて実際に会った時に、『お葬式までこのまま会えないかと思ったー!』っと言ったのに対して、『え!?あたしが先に死ぬ前提なの?』って言われて、『本当だ!無意識にうちの方が長生きすると決め込んでた!』って言ったのも含めてハッキリと。

 あと、お米をめぐって争う弥生人とみーちが少しダブると思ったことは、お墓まで持って行かないとな、と思いました。

         おわり
[字数 7852+1264=9116]
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