パティシエ探偵

大和 真

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パティシエ探偵 後編

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 週末の土曜日から発売を始めた紀州梅ロールは健三の予想以上に好評だった。土曜の午前中に八本のロールケーキを作ったが、お昼過ぎに完売。午後からも六本を作ったが夕方までに完売した。最初は物珍しさもあって、購入してくれる方が多いのが、洋菓子業界の
常で、最初に良く売れて自然消滅が新商品には良くある。新商品でその後も好調に販売を続け今も人気なのはパイシュークリームと和栗をたっぷり使った和栗のモンブラン。タルト台に刻みマロン入りのクリームを乗せ、和栗を使ったクリームをタルト台が隠れるほど絞った人気の定番商品だ。最初は秋限定で売り出したが、お客様からの問い合わせが多いので定番レギュラー商品になった。紀州梅ロールも定番になって欲しいと願いながらロールケーキを巻いた。
 前日の仕込みでロール生地を前日の二倍仕込んで、日曜日の午前に十六本の紀州梅ロールを作った。これで午後二時に健三が抜けても、則子とアルバイトの海老名さんは嫌な顔をしないだろうと考えた健三の思惑は甘かった。午前中から紀州梅ロールの売れ行きが良すぎて、お昼前までに十本売れた。売り切れを避けたい健三は、一本千五百円のロールを四分割し、一切れ四百円にした。これで六本を4分割の二十四カットの紀州梅ロールが出来た。時間は二時過ぎ、急いで健三は着替えてうららを出た。
「誠君、美里ちゃんお待たせ。仕事が重なっちゃって遅くなってごめん」
「こちらこそ忙しいのに来ていただいてありがとうございます。美里も僕も、権田さんが居るので安心してます」
「権田さん、今日はお仕事の時間に来ていただいてありがとうございます。これが文房具のセットです。森山さんが千円で買ってくれました」
 新品のように見えるペンケース、ボールペン、エンピツ等が詰めあわされていた。健三には千円が高いのか安いのか判別しかねた。
「まだ時間が早いから、前の喫茶店に入ろう。喫茶店からだったら待ち合わせ場所は見えるよね?」
「はい。いつも自販機が並んでいる横のスペースで渡します。喫茶店からだと、森山さんが前を過ぎるのも見えるはずです」
 三人は涼しい喫茶店に入り、店の内側の席に座った。
「ここからだったら前を通っても見えないよね」
 健三はアイスコーヒーを飲みながら美里に尋ねた。
「いつも、駅からこの前を通ってスーパーまで来るのでここなら見えないはずです」
 いつもの取引の様子を健三は尋ねた。
「いつも交わす言葉も少なくて、何に使うとかの話もしないで商品を渡して、お金は封筒に入れてるのを貰います。前回は兄も一緒でも良いですか?と訊ねたら、一人で知らないおじさんと会って商品を渡すのも不安だよね。いつでもお兄ちゃんと来てくれて良いよと言ってくれました」
「いつもは美里ちゃんと森山さんはどっちが来るのが早いの?」
「それは色々です。私が待つときもあるし、森山さんが待ってくれている時もあります」
「連絡は直接じゃなくて、ネットの販売サイトのやり取りだけなんだよね?連絡先を聞かれた事もないの?」
「はい。連絡先を直接聞かれたら怖いのですぐにブロックするつもりだったけど、そんな感じでもないし、商品を買ってくれてお金も稼げるから」
 健三はアイスコーヒー、誠と美里はメロンクリームソーダを頼んだ。昔ながらの純喫茶風でベロアのふかふかの椅子が懐かしさもあり、ゆったり寛げる。
「誠君と美里ちゃんはクラブ活動はしているの?」
「はい、僕がサッカーで美里はブラスバンドをしています」
「最初に誠君に会った時に太ももを見てサッカーしてるのかなって思ってたんだよ。ポジションは?」
「リベロです。基本は守るけど攻めるチャンスがあれば上がれるじゃないですか。店を取ることも出来るし、自由にチームの為に動けるのでリベロが僕に合ってます。美里はブラスバンドでサックスを担当してます」
「かっこいいね。音楽の事は良く分からないけどサックスとトランペットは知ってるよ」
「今度、学校の体育館でコンサートがあるので聞きに来て下さい。コンクールじゃないので知ってる曲が多いですよ」
「それは楽しみだね」
 三人で他愛のない会話をし、健三がアイスコーヒーを飲みほした時に、
「あ。森山さんだ。森山さんが通りました」
 健三は空席だったので窓際の席に行き、森山の姿を見たが後ろ姿が見えただけだ。シャツをはだけさせ、ジーンズにスニーカーを履き、野球帽を被っている後ろ姿は確認出来た。少し間をおいてから三人は喫茶店を出た。
 打ち合わせでは、自動販売機の横に森山が立つはずなので、美里と誠が一緒に森山に近づき、少し遅れて健三は自動販売機で飲み物を買うために真横へ行く。何を買おうか迷っているふりをしながら会話を聞く。会話を多く引き出すために誠が森山に話しかける。健三が喫茶店の支払いをしている間に、美里と誠は先に出て森山の待つ自動販売機横に向かった。
 喫茶店を出た健三は三人の姿を確認した。遠めなのではっきりとは分からないが、森山と言う男の姿に見覚えがあった。誠は五十代と言っていたが、年齢は健三と同じぐらいの三十代後半から四十代前半に見える。歩を進めると三人がはっきりと見えてきた。
「あっ……」
 健三は森山の姿を見て気がついた。同じ高校だった男だ。名前は……名前……。
「芝、芝、上芝だ」
 森山と名乗っている男は、健三の同級生の上芝だった。当時は生徒数も多く、一学年で十クラスもあったので話した事はほとんどないが、間違いなく同級生の上芝だ。健三は頭が混乱してきた。森山が上芝で、健三と同級生、美里のネット販売商品を買い漁る、兄の誠も同伴でも良い。
 自動販売機で飲み物を迷うふりをし、三人の会話に耳をそばだてた。
「お兄ちゃんは高校でサッカーやってるんだ。スパイクとかも出品してくれたら買わせてもらうよ」
 こんな会話が健三には聞こえた。
「それじゃ、また」
 森山が言って立ち去った。ここで謎が解けていなければ、健三は森山の後を追い、美里と誠には帰るように伝えていた。森山が駅のホームに入り、四番線方面に向かった。どこまで乗るのか分からない健三は、券売機で入場券を買って、降りる時に運賃を払うことにした。ホームに上がる階段を上ると直ぐに森山なのか上芝なのか分からない男が立っていた。
「権田?やっぱり権田だよな。俺だよ。上芝だよ。俺の事覚えてるか?」
 健三は、やはり上芝だったと思うと同時に、この状況をどう切り抜けたら良いのか考えを巡らせた。
「やっぱり上芝だったのか。面影があると思ってたけどそうだったんだ。久しぶりだな。二十年以上会ってないよな」
 健三は思い出した。自分と上芝には接点がないと思い込んでいたが間違いだった。高校一年の時に同じクラスだった。中学が違うので最初は同じ中学同士で集まっていた。数週間を経てクラス内が打ち解けて来た頃に初めて上芝と話をした。当時流行っていたロック歌手をお互いが好きだったのでその話を良くした。一緒にコンサートに行けたら良いなと話をしていたが、二年に上がる時にクラスが離れそのまま疎遠になっていた。
 帽子を脱いだ自称森山は健三の知る上芝だったのだ。
「待ち合わせ場所の近くの喫茶店に三人で居たよな?美里と誠と一緒だったから気がついたんだ」
 健三は上芝の洞察力に驚いたと同時に見られていた事を悔いた。考えを逡巡させ正直に話す事にした。
「上芝、久しぶりだな。良く俺だって分かったな。こそこそと後を付けてすまない」
 健三は上芝に深く頭を下げ、駅のホームの人々が興味本位でじろじろ見ていた。
「おいおい権田、こんな所で頭を下げないでくれよ。どうせ、変な人がいつも商品を手渡しして欲しいって言われるので調べてくれって頼まれたんだろ」
 綾が頼んだのか?と上芝は付け加えた。さらに健三の頭はこんがらがって来たので、三人の話を聞くときに自動販売機で買ったコーヒーを一本上芝に渡し、健三もプルトップを開けた。二本買っていて良かったとこの状況に合わない考えをしながら飲んだ。冷えた缶コーヒーを二口ほど飲んで考えが落ち着いてきた。
「綾と言うのは美里ちゃんと誠君のお母さんなのか?」
 健三の問いに、上芝が綾は関係ないのか?と質問を返された。
 健三は段々と話の筋が読めて来た。美里と誠の母親は綾、目の前にいる上芝は綾の別れた元旦那で、美里と誠の父なのだと推理した。偽名を使うのは、綾からはお父さんは亡くなった事にする、と言われて別れたのだろう。商品の手渡しは、振り込みの際の名前が森山に出来ないからだ。偽名では振り込みが出来ない。上芝の名前で振り込むと、綾に気づかれるかも知れない。そして、手渡しにすれば少しでも美里と誠に会う事が出来る。少なくてもお金を支払う事で小遣いにはなるだろう。
上芝も、妻とは別れたと言っても、二人は自分の子供なのだ。この推理を上芝に話すと飲みかけの缶コーヒーをこぼすほど驚いた。全てが当たっていた。健三も美里と誠に頼まれていたことを話し、元奥さんは無関係だと説明した。
「そっか、綾が知らなくて助かった。離婚は俺のギャンブルが原因だし、子供達には絶対会わないと約束させられたんだ。金もなかったから養育費も払えなかったしさ。綾の言い分を全て認めての離婚だったんだ」
 二人は駅のホームのベンチに座り、お互いに今回の件を詳しく説明した。
 上芝は子供たちと綾には言わないで欲しい、と頼み込んだ。もちろん健三も、全てを話すつもりはなかったのだが、こうなると美里と誠への説明が難しい。正直に話すのは上芝にも申し訳ない。かと言って、何も分かりませんでしたと美里と誠に話すもの申し訳ない。尾行で分かったことがあれば連絡すると言っているので、名案はないかと考え抜いて双方が納得出来そうな答えが浮かんだ。
「上芝は森山のままで居よう。森山は亡くなった美里ちゃんと誠君のお父さんの友達、いや親友だった。離婚して、二人の子供を遺して病気で亡くなったんだ。森山は親友の子供が小遣いを稼ぐためにネットで出品していることに気がつき、定期的に買って、親友への手向けになればと購入を続けていた」
「凄いよ権田。それで完璧だ。綾には知られずに、誠と美里も俺の事を変に思わない。今後も購入して二人を支援出来る。でも、その情報をどこで知ったことにするんだ?」
「それは名案が浮かばないんだ。正直に駅で森山に話しかけられた事にでもするよ」
 これで辻褄の合う話に持って行けそうで、二人は近況を話し合った。健三がスイーツショップをしている事を知った上芝は今度寄らせてもらうと言ってくれた。上芝はギャンブルでの借金で自分の家族が離れて暮らすことになった事でギャンブルは止めた。離婚を機に借金の事も両親に話、肩代わりをしてもらい今も毎月の給料から両親に返済をしている。
「美里ちゃんと誠君は、森山の年齢を聞くと、五十代ぐらいって言ってたぞ。帽子を深く被っていてはっきりしないと言ってたけどな」
 健三は少しだけ同い年なのに五十代と思われた同級生にフォローを入れた。二人は連絡先を交換してそれぞれ家路についた。
「ただいま。何となく解決出来そうになってきたよ」
 健三は制服に着かえて、則子と海老名さんに伝えた。時刻は午後六時になろうとしていた。海老名さんは六時までなので良いタイミングだ。新発売の紀州梅ロールのカット販売も好調で、残りは二つになっていた。
 閉店後、入浴を先に済ませ、夕飯の支度をしている則子が、
「紀州梅ロールは予想以上に好評だったね。明日も作るんだろ?」
「もちろん。ってまさか今日の好調ぶりはビックリだよな。明日は定休日前の月曜だし、ほどほどに作るよ」
「ところで今日の件はどうだったの?」
 健三は則子に話した。同級生の上芝だった事は何となく話さないでいた。結果報告を誠に送るために食後は自室に入った。
【こんばんは。権田です。森山さんを尾行し、駅に入ってから気づかれました。詳細を話すと、森山さんも詳細を話してくれました。森山さんはあなた方兄弟のお父さんの親友で、少しでも助けになればと思って購入してくれているそうです。これからもどんどん出品して下さい。沢山買いますので、心配しないでお小遣いを稼いでくださいと仰ってました】
 この内容だったら上芝も納得するだろうと思い、送信を押した。
【こんばんは。お忙しい中で僕たちの事を助けてくれてありがとうございます。僕も美里も森山さんが亡くなった父の親友だと知ってびっくりしています。もっと出品しても買ってくれるんだったら美里と頑張って小遣いを稼いで、お母さんに何かプレゼントします。プレゼントは権田さんのケーキが良いですね。今度森山さんに会った時はお父さんの事も聞きたいです。お世話になりました。ありがとうございます。またお店にもケーキを買いに行きます】
 上芝にお父さんの事を聞くのは面白いな。その場に立ち会ってみたいなと微笑みながらスマホを置いた。
 梅雨明けを今か、今かと皆が待ち望んでいる七月初旬の日曜日、上芝が誠君と美里ちゃんを連れて来店してくれた。話を聞くと、今回は商品の受け渡しをうららに上芝が指定してくれたそうだ。健三は間違って上芝と呼ばないように気を付けた。
「森山さんが来てくれるなんて嬉しいよ」
「良い店だな、権田。これは全部自分で考えて作っているのか?」
「母親からの受け継ぎのマニュアルもあるし、全てが自分で考えた訳じゃないんだ。半々ってところかな」
「誠君と美里ちゃんにプレゼントのケーキを買いに来たんだ。権田スペシャルなおススメを買いたい」
 スペシャルと言われても、と健三は少し考えた。
「森山さん、以前に白桃のタルトを食べたけど、すっごく美味しかったですよ」
 美里が先日買ってくれたタルトを勧めてくれた。
「紀州梅ロールも新発売で人気なんだ。他は暑い時期には向いてないけど、アマンドショコラもチョコ好きに好評だよ。アーモンドとチョコを合わせたチョコクリームなんだ」
「よし、その三点にするよ」
 カットした紀州梅ロールも、定番商品として陳列ケースを賑わしていた。
「一つはお母さんに食べてもらって。このケーキは君たちがお金を出し合って買ったことにして」
 兄弟二人は森山さんありがとう、と声を揃えた。奇妙な親子関係だけど、誰もが不幸せになる事じゃないからこのまま秘密で居た方が良いなと健三は三人を見送った。
「権田さんこんにちは、野中と申します」
 誠と美里、上芝が一緒に買いに来てくれた日から十日後の午後。年齢は健三より若く見える。会社の事務服で、気の強そうな目をしていたが、予想以上に丁寧に丁寧に話し出した。誠と美里の母で上芝の元妻の綾だと自己紹介された。上芝と子供達を引き合わせたことで怒られるのかと健三は身構えた。
「権田さん、この度は誠と美里と上芝の事でご迷惑をおかけしました。ありがとうございます。ケーキも美味しかったです」
 健三が返答に窮していると綾が続けた。
「あれから上芝から連絡がありました。誠と美里の事も話をして、ネット販売の事も聞きました。上芝が子供たちの小遣いにでもなればと思って買ってくれてたんですね。ギャンブルを止めた事も聞きました。全て権田さんのおかげで出来た事だとも言ってました」
 未だに綾の来店の意図が読めない健三は返答に窮している。
「すみません。私の言い方が悪かったですね。権田さんに上芝とやり直す事をご報告に来たんです。誠と美里にお父さんは生きていたんだよ、と正直に話して上芝も実は森山は偽名で二人を応援したくてネットで商品を買っていた事。ギャンブルを止めた事」
 健三の心は少し落ち着いた。これで怒られることはなさそうだと。
「上芝に聞いたんですか?綾さんには秘密にしておくような事を言ってたけど」
「彼はこれからの子供達の事、私との約束もあって隠し事はダメだと言って、正直に話してくれました。私に電話で権田さんの事も含めて全て正直に語ってくれました。私が嫌ならもう落札もしないし、金輪際子供達の顔も見ないと言ってました」
 綾には離婚の原因となったギャンブルでの借金でウソをついていたことを、心から反省しているとも言っていたそうだ。心を入れ替え、正直に話をしてくれる上芝に綾は感心し、連絡を取り合うようになった事、子供達にも上芝が、自分の口で全てを正直に話した事を説明してくれた。
「それで綾さんは上芝を許したと言う事ですね」
「許すとかじゃないけど、彼は本当に心を入れ替えてくれたんだなって思いはあります」
「それは上芝にとっても良い事ですね」
 綾はうららでパイシュークリームを四個買って帰った。健三は四個目が上芝の分だと思ったが言わないでいた。
 七月半ばの土曜日。今年は空梅雨だと天気予報で言っていた。雨で困る人も居るだろうなと思いながらも健三には有難い。やはり雨の日は客足が遠のく商売だ。昨夜からの雨が午前中に止み、蒸し暑さも襲ってくる午後は良く冷えたゼリーが人気だ。季節のフルーツをふんだんに使うゼリーも人気だったが、健三自慢の水出しコーヒーを使ったコーヒーゼリーが大人気。ゼリーを柔らかく固めた上にシャンテリークリームを絞った夏の定番商品だ。水出しコーヒーも売って欲しいと何人にも言われるのだが、水出しコーヒーは権田家でだけ味わうアイスコーヒーと決めている。夜の寝つきが悪いコーヒー好きの健三は、カフェインレスになる水出しコーヒーを好んだ。豆の配合などを調整し、季節で豆の配合を変えているほどの拘りだった。
「いらっしゃいませって上芝じゃないか。それに誠君と美里ちゃんと綾さんまで」
「権田さんに真っ先に報告に来ました」
 ここで上芝が綾を遮り、俺たち籍を入れてまたやり直すことにしたんだ。権田にあの時駅で会ってから全てが良い方向に動いたんだ、と言う上芝が健三に右手を差し握手を求めた。
「それを言うなら美里ちゃんの出品を上芝が落札した時からだよ」
 確かにな、と上芝は幸せそうに笑った。
「誠君、美里ちゃん、駅での事はウソを言ってごめんね」
「権田さんは悪くないです。世の中には良いウソもあるんだなって知りました」
 夏休み明けには籍を入れので、姓が野中から上芝に戻ります、と元気に二人は声を揃えた。上芝は照れながらケーキを選び出した。
「夏バテとか、熱中症に良いスイーツも考えといてよ」
 上芝の無理っぽいリクエストを受けた健三の脳内には、梅ロールが完成した時に浮かんだ新スイーツの案が頭の中にあった。
「わかった、良いスイーツが何となく浮かんでるよ。次に来てくれた時にはケースに並べるように頑張るよ」
お買い上げのケーキに結婚おめでとうと書いたプレートをこっそり健三は乗せた。
 誠と美里は上芝と綾と四人で笑い合いながら自宅方面に歩いて行った。、健三は上芝との会話でリクエストされた夏の新作スイーツ案をメモに書いた。新しいスイーはまた次回のお話で。
                 「了」
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