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30 ついにきた嵐
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ぐーは不安を打ち消すようにラジオのスイッチを入れました。
この時間は好きな音楽番組がはじまっているはずです。
でも流れてきたのは緊急避難を呼びかける声でした。
ラジオでは嵐のことを言っています。観測史上最大の嵐が近づいていること、街の住民はただちに避難所へ移動すること、海には決して近づかないこと。
コタローの言っていたことは本当でした。
ぐーは頭からシーツをかぶり、うずくまります。
コタローは本当に心配してくれていたのです。なのにあんなことを言ってしまって──。
ぐーはひどく後悔しました。
ガタガタ、グラグラと家が揺れはじめます。風がどんどん強くなっているのです。バチバチと雨の音もひどくなってきました。まるで石をぶつけられているようです。
ガシャッ、バラバラと外で大きな音がしました。
あれはたぶん、畑の柵が飛んで家にぶつかった音です。
次にバシャアーッ、と水が打ちつけられる音。そして家の揺れ。
大きな波が家を飲み込むように押し寄せているのです。
ぐーは生きた心地がしませんでした。チカチカと天井のライトが点滅しています。
電気系統になにか異常が起きたのかもしれません。
こんなときに電気が切れたらたいへんだ、とぐーはベッドから飛びおりました。
物置の発電機を用意するつもりです。燃料は入ったままだと記憶してます。
ですがその直後にドバアッ、と激しい音。
窓が破れたのです。家の中にビュウビュウと雨風が入ってきます。
「た、たいへんだ」
ぐーは窓をふさごうとそちらに向かいましたが、今度は大砲でも打ち込まれたようにドアがふっとびました。
ドドドド、と大量の海水が流れこんできます。
海水に足をとられ、ぐーは転びます。
もう体じゅう、ずぶ濡れです。
メキ、メキメキとイヤな音が聞こえてきます。
見ると、壁に亀裂が入っています。
「あ、ああっ──」
天井からもです。メキメキバリバリと音がして──バガアッ、と突然真っ暗な空が頭上に広がりました。
「ああっ! うわぁーーっ!」
ぐーは悲鳴をあげます。家の屋根がふっとんでいってしまったのです。
むき出しになった家の中はすぐにむちゃくちゃになりました。
痛いほど打ちつける雨に、目もまともに開けられません。
ぐーはそれでも這うように水槽に近づきました。
水槽はまだ無事です。ぐーは足元に転がっているバケツにミラをなんとか移しました。
でもこれ以上は動けそうにありません。
バケツにおおいかぶさって、打ちつける風と雨、波から守るぐらいしかできませんでした。
バケツの中からなにか聞こえてきます。
「バカッ、バカ猫! こんなときになにやってんの! あたしなんかほっといてさっさと逃げなさいよっ!」
ミラの声です。バチャバチャと必死に水をかけてきます。
「ミラ、しゃべれるようになったんだね」
「こんなときに黙ってられるかっての! あんた、このままじゃ死んじゃうわよ!」
でも、もう力が入りません。寒いし、痛いし……。
このまま目を閉じたほうが楽になるんじゃないかとぐーは思いました。
この時間は好きな音楽番組がはじまっているはずです。
でも流れてきたのは緊急避難を呼びかける声でした。
ラジオでは嵐のことを言っています。観測史上最大の嵐が近づいていること、街の住民はただちに避難所へ移動すること、海には決して近づかないこと。
コタローの言っていたことは本当でした。
ぐーは頭からシーツをかぶり、うずくまります。
コタローは本当に心配してくれていたのです。なのにあんなことを言ってしまって──。
ぐーはひどく後悔しました。
ガタガタ、グラグラと家が揺れはじめます。風がどんどん強くなっているのです。バチバチと雨の音もひどくなってきました。まるで石をぶつけられているようです。
ガシャッ、バラバラと外で大きな音がしました。
あれはたぶん、畑の柵が飛んで家にぶつかった音です。
次にバシャアーッ、と水が打ちつけられる音。そして家の揺れ。
大きな波が家を飲み込むように押し寄せているのです。
ぐーは生きた心地がしませんでした。チカチカと天井のライトが点滅しています。
電気系統になにか異常が起きたのかもしれません。
こんなときに電気が切れたらたいへんだ、とぐーはベッドから飛びおりました。
物置の発電機を用意するつもりです。燃料は入ったままだと記憶してます。
ですがその直後にドバアッ、と激しい音。
窓が破れたのです。家の中にビュウビュウと雨風が入ってきます。
「た、たいへんだ」
ぐーは窓をふさごうとそちらに向かいましたが、今度は大砲でも打ち込まれたようにドアがふっとびました。
ドドドド、と大量の海水が流れこんできます。
海水に足をとられ、ぐーは転びます。
もう体じゅう、ずぶ濡れです。
メキ、メキメキとイヤな音が聞こえてきます。
見ると、壁に亀裂が入っています。
「あ、ああっ──」
天井からもです。メキメキバリバリと音がして──バガアッ、と突然真っ暗な空が頭上に広がりました。
「ああっ! うわぁーーっ!」
ぐーは悲鳴をあげます。家の屋根がふっとんでいってしまったのです。
むき出しになった家の中はすぐにむちゃくちゃになりました。
痛いほど打ちつける雨に、目もまともに開けられません。
ぐーはそれでも這うように水槽に近づきました。
水槽はまだ無事です。ぐーは足元に転がっているバケツにミラをなんとか移しました。
でもこれ以上は動けそうにありません。
バケツにおおいかぶさって、打ちつける風と雨、波から守るぐらいしかできませんでした。
バケツの中からなにか聞こえてきます。
「バカッ、バカ猫! こんなときになにやってんの! あたしなんかほっといてさっさと逃げなさいよっ!」
ミラの声です。バチャバチャと必死に水をかけてきます。
「ミラ、しゃべれるようになったんだね」
「こんなときに黙ってられるかっての! あんた、このままじゃ死んじゃうわよ!」
でも、もう力が入りません。寒いし、痛いし……。
このまま目を閉じたほうが楽になるんじゃないかとぐーは思いました。
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