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第1部 剣聖 羽鳴由佳
57 レッサーパンダラー
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「チームナギサ、《魔揃鬼手》レオニード・ザハロフ!」
こちらの先鋒はレオニード。良かった。志求磨だったら、メロメロのヘロヘロで戦いにならなかっただろう。
「うへ、イケメン同士の戦いだ。かぶりつきで見なきゃ」
もぞもぞとローブの中で動きながら、黒由佳が舞台際まで近づく。志求磨と並んでキャッキャッ言っている。
わたしのコピーのクセして、男性の好みがまるで違う。あんなチャラいヤツと、爽やかだが弱そうなヤツのどこがいいんだ。
舞台上で対峙する間宮京一とレオニード。
間宮京一に何か小動物っぽいものがトトト、と近づく。あれは──自立型レッサーパンダスマホ、嵐太くんだ!
スマホのようにコンパクトで多機能。しかも超高性能AIを搭載し、みずからの意志で喋ったり、行動できる、ハイテクかつ可愛らしいメカなのだ。
それがピョン、とジャンプして間宮京一の右手に収まる。
間宮京一はピピピ、と軽快に操作してから呟く。
「……装着」
間宮京一の左腕にはメカニックなホルダーが付けられている。そこに嵐太くんを差し込むと、その可愛らしい見た目とは裏腹に渋い声で「システムオールグリーン。スタンバイ・OK」と喋る。そしてヤツの全身が光った。
眩い光が収まり、プシュー、と蒸気を排出しながら現れたのは──レッサーパンダをモチーフとした色彩のパワードスーツ。赤茶色と黒のコントラストが美しく光沢を放っている。
マスクの耳、眉、口先、頬には白い模様。近未来を感じさせるシャープな形状だ。
あの《アライグマッスル》と違い、生身っぽい感じは全くない。準決勝で戦った《カイカンマン》に近いメカっぽい姿だ。
左腕の嵐太くんがまた渋い声でしゃべる。「チェンジ・レッサーパンダラー」
か、かっこいい……。
そう、わたしも一時的に元の世界へ戻ったときにTVで見たことある。
あの人気の特撮番組マスクド・アニマルシリーズの最新作は、あの爽やかイケメン俳優の間宮京一が主役だった。
まさかそれが願望者として、そして餓狼衆としてわたし達の前に立ちはだかるとは。
「たまげたな。あのアライグマおっさんの親戚かよ」
レオニードが半ば呆れたような感じでこぼすと、間宮京一はそのマスクの中から嫌悪感を露にした声を出す。
「あんな時代遅れの恥ずかしい中年と一緒にしないでほしいな。この《レッサーパンダラー》は子供だけでなく、若い女性にも人気なんだぜ」
あらら、ひどい言われようだ。わたしとしては世代を超えた二大ヒーロー共演、みたいなのを期待していたのだが……そういえばあの中年は今頃どうしているのだろう。
試合開始の太鼓の音。レオニードが飛びずさりながら矢をつがえた──同時に二本。
ギャッ、と放たれた二本の矢が《レッサーパンダラー》を襲う。
《レッサーパンダラー》はかわさない。素手で簡単に叩き落としながら接近。速い。距離を取りたいレオニードに、もう追いついた。
拳による突き。レオニードはバキバキと硬質化した手で打ち合う。
相討ち──同時に胸に拳打が入った。
お互い怯んだが、先に動いたのはレオニード。やはり飛び退きながらの弓射。
ドドドッ、と三本もの矢が《レッサーパンダラー》の胴体に突き立ったが、その装甲を貫くことは出来ない。
ボロボロッ、と地面に落ちる。
《レッサーパンダラー》は左腕の嵐太くんを操作。「ガンモード」の渋い声。
縞模様のシッポを引き抜くと、それはすぐにカシャカシャと変形、銃の形となった。
銃口から赤い光線がバシュン、バシュン、と飛び出す。
「ちいっ」
レオニードは横っ飛びにかわし、今度ははぐぐぐ、と溜めてから矢を放つ。
が、銃はすでに剣に変形。その矢を叩き斬った。
「ソードモード」嵐太くんの渋い声。
《アライグマッスル》は周りを無理矢理、特撮番組のような演出でお互いにケガしないようにしてしまうが……この《レッサーパンダラー》は違うようだ。ガチでダメージを与えようとしている。
次々放たれる矢を斬り払いながら近づく《レッサーパンダラー》。
ついにレオニードは舞台端まで追い詰められる。
レオニードに向けて、赤く光る剣身が迫る。
しかし、剣の勢いが緩くなった。
弓で受け止め、レオニードは蹴りで《レッサーパンダラー》を中央付近まで吹き飛ばした。
「くっ、これは……俺に何をした……!」
胸を押さえ、苦しそうに膝をつく《レッサーパンダラー》。
レオニードが矢をつがえながら願望の力を高める。
「俺が何発射ったと思ってんだ。命中しなかった矢でも触れただけで効果がある。ご丁寧に斬り落としたやつも空気中に散布される」
嵐太くんが警戒音とともに渋い声を出した。「マスター、身体に状態異常確認。神経性の毒。早急に対処しなければ、生命維持に支障をきたします」
忘れていた。レオニードは状態異常攻撃の名手、病の将だった。無駄に何本も矢を放っていたわけではなかったのか。
「ギブアップをオススメするぜ。じゃなけりゃあ、コイツでキメさせてもらう」
孔雀緑色のオーラを立ち昇らせ、レオニードがギブアップを勧める。ギリギリと引き絞られた矢は今にも放たれそうだ。
こちらの先鋒はレオニード。良かった。志求磨だったら、メロメロのヘロヘロで戦いにならなかっただろう。
「うへ、イケメン同士の戦いだ。かぶりつきで見なきゃ」
もぞもぞとローブの中で動きながら、黒由佳が舞台際まで近づく。志求磨と並んでキャッキャッ言っている。
わたしのコピーのクセして、男性の好みがまるで違う。あんなチャラいヤツと、爽やかだが弱そうなヤツのどこがいいんだ。
舞台上で対峙する間宮京一とレオニード。
間宮京一に何か小動物っぽいものがトトト、と近づく。あれは──自立型レッサーパンダスマホ、嵐太くんだ!
スマホのようにコンパクトで多機能。しかも超高性能AIを搭載し、みずからの意志で喋ったり、行動できる、ハイテクかつ可愛らしいメカなのだ。
それがピョン、とジャンプして間宮京一の右手に収まる。
間宮京一はピピピ、と軽快に操作してから呟く。
「……装着」
間宮京一の左腕にはメカニックなホルダーが付けられている。そこに嵐太くんを差し込むと、その可愛らしい見た目とは裏腹に渋い声で「システムオールグリーン。スタンバイ・OK」と喋る。そしてヤツの全身が光った。
眩い光が収まり、プシュー、と蒸気を排出しながら現れたのは──レッサーパンダをモチーフとした色彩のパワードスーツ。赤茶色と黒のコントラストが美しく光沢を放っている。
マスクの耳、眉、口先、頬には白い模様。近未来を感じさせるシャープな形状だ。
あの《アライグマッスル》と違い、生身っぽい感じは全くない。準決勝で戦った《カイカンマン》に近いメカっぽい姿だ。
左腕の嵐太くんがまた渋い声でしゃべる。「チェンジ・レッサーパンダラー」
か、かっこいい……。
そう、わたしも一時的に元の世界へ戻ったときにTVで見たことある。
あの人気の特撮番組マスクド・アニマルシリーズの最新作は、あの爽やかイケメン俳優の間宮京一が主役だった。
まさかそれが願望者として、そして餓狼衆としてわたし達の前に立ちはだかるとは。
「たまげたな。あのアライグマおっさんの親戚かよ」
レオニードが半ば呆れたような感じでこぼすと、間宮京一はそのマスクの中から嫌悪感を露にした声を出す。
「あんな時代遅れの恥ずかしい中年と一緒にしないでほしいな。この《レッサーパンダラー》は子供だけでなく、若い女性にも人気なんだぜ」
あらら、ひどい言われようだ。わたしとしては世代を超えた二大ヒーロー共演、みたいなのを期待していたのだが……そういえばあの中年は今頃どうしているのだろう。
試合開始の太鼓の音。レオニードが飛びずさりながら矢をつがえた──同時に二本。
ギャッ、と放たれた二本の矢が《レッサーパンダラー》を襲う。
《レッサーパンダラー》はかわさない。素手で簡単に叩き落としながら接近。速い。距離を取りたいレオニードに、もう追いついた。
拳による突き。レオニードはバキバキと硬質化した手で打ち合う。
相討ち──同時に胸に拳打が入った。
お互い怯んだが、先に動いたのはレオニード。やはり飛び退きながらの弓射。
ドドドッ、と三本もの矢が《レッサーパンダラー》の胴体に突き立ったが、その装甲を貫くことは出来ない。
ボロボロッ、と地面に落ちる。
《レッサーパンダラー》は左腕の嵐太くんを操作。「ガンモード」の渋い声。
縞模様のシッポを引き抜くと、それはすぐにカシャカシャと変形、銃の形となった。
銃口から赤い光線がバシュン、バシュン、と飛び出す。
「ちいっ」
レオニードは横っ飛びにかわし、今度ははぐぐぐ、と溜めてから矢を放つ。
が、銃はすでに剣に変形。その矢を叩き斬った。
「ソードモード」嵐太くんの渋い声。
《アライグマッスル》は周りを無理矢理、特撮番組のような演出でお互いにケガしないようにしてしまうが……この《レッサーパンダラー》は違うようだ。ガチでダメージを与えようとしている。
次々放たれる矢を斬り払いながら近づく《レッサーパンダラー》。
ついにレオニードは舞台端まで追い詰められる。
レオニードに向けて、赤く光る剣身が迫る。
しかし、剣の勢いが緩くなった。
弓で受け止め、レオニードは蹴りで《レッサーパンダラー》を中央付近まで吹き飛ばした。
「くっ、これは……俺に何をした……!」
胸を押さえ、苦しそうに膝をつく《レッサーパンダラー》。
レオニードが矢をつがえながら願望の力を高める。
「俺が何発射ったと思ってんだ。命中しなかった矢でも触れただけで効果がある。ご丁寧に斬り落としたやつも空気中に散布される」
嵐太くんが警戒音とともに渋い声を出した。「マスター、身体に状態異常確認。神経性の毒。早急に対処しなければ、生命維持に支障をきたします」
忘れていた。レオニードは状態異常攻撃の名手、病の将だった。無駄に何本も矢を放っていたわけではなかったのか。
「ギブアップをオススメするぜ。じゃなけりゃあ、コイツでキメさせてもらう」
孔雀緑色のオーラを立ち昇らせ、レオニードがギブアップを勧める。ギリギリと引き絞られた矢は今にも放たれそうだ。
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