異世界の剣聖女子

みくもっち

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第1部 剣聖 羽鳴由佳

39 切り札

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 ミリアムはここでようやくモンスターカードを出す。
 モンスターはグリフォン。おお、なんか強そうだ。藤田が叫ぶ。

「ま、まてまて。グリフォンはスーパーレアカード。召喚するにはまだポイントが足りないはず……はっ、まさか!」

 「そう、モンスターはスキルを持ち、バトルゾーンに出すことで効果を発揮する者がいる。このグリフォンは失われたシールドの分、コストを下げることが可能。そして──」

 ミリアムがカードを横向きにする。
 たしか、出したばかりのカードは動けないはずだが……。

「グリフォンはさらに速攻のスキルも持つ。場に出したと同時に攻撃。しかもダブルアタッカー」

 藤田のシールドが二枚同時に破壊された。
 藤田の顔がひきつる。
 劣勢だったのに、互角以上まで持ち直した。

 藤田の番だ。藤田は新たにレアカードのミノタウロスを出してターンを終了した。
 
 ミリアムのターン。ミリアムは新たにノーマルカードのハーピーを一体召喚。
 パワーは弱いが、これも速攻のスキルを持つ。場に出たと同時にシールドを一枚破壊。そしてグリフォンも攻撃。とうとう藤田はシールドを全て失った。

「ここでわたくしのターンは終了。次に何か手を打たなければ、あなたの負けですね」

 追い詰めるようなミリアムの言葉に、藤田はダン、と台を叩きながらうなだれる。
 お、あきらめたのか? いや、笑っている。なんだ、気持ち悪い。

「フ、フフフ、たしかにピンチだ。だが、この逆境をはね返してこそ真のデュエリストだ。おれはやる、引いてみせるぞ、切り札を……」

 藤田の背景ががらっと変わった。
 暗雲が立ち込め、稲光がほとばしる。またはじまった、過剰演出が。

「俺はこのドローにかける! たとえこの命、削られようともっ、むむむむむむぅ~っ!」

 山札の一番上のカードに触れながらプルプル震えている。いいから早く引け。
 
 ズガァ~ン、と背後で落雷の音。
 同時に藤田がカードを引き、天に掲げて叫んだ。

「きたあ~っ! 俺の切り札っ! レジェンドカードの豪天っ!」

 ずばし、とカードを台に叩きつける。

「ふふふ、グリフォンだけだと思うなよ。シールドを失った分、この豪天もコスト軽減で出せるのだ」

 なるほど、パワー16000の強力なカードだが、ここから逆転可能なのだろうか。
 出したばかりのカードは攻撃できないし、豪天に速攻のスキルはない。すでに出してあるミノタウロスが攻撃しても、シールドが一枚破壊されるだけだ。

「カードには属性がある。この豪天は地の属性。そしてここからがレジェンドカードの本領発揮だ」

 藤田は続けて豪天のスキルを読み上げる。

「このカードが召喚されたとき、同じ地属性の破壊されたモンスターを二体復活させることができるのだ」

「なんですって……」

 これはミリアムにも予想外の展開。たしかにわたしも属性なんかは気にしていなかった。
 藤田はニヤリと笑う。
 
「そう、さっきのゴブリンだ。地属性なんだよっ! そして復活したモンスターは即攻撃できる!」

 復活した二体のゴブリンが攻撃。ミリアムの残りのシールドが全て破壊された。
 そして──ミノタウロスのトドメの一撃。
 カードから斧を振りかざしたミノタウロスの幻影が飛び出し、ミリアムに斬りつけた。

「ミリアムッ!」

 肉体的にダメージは無いようだが、ぼわんと煙に包まれ、ミリアムは一枚のカードに変化してしまった。

「ふはははは、見たか! この俺の見事な逆転勝利をっ。次は貴様の番だ!」

 わたしはミリアムのカードを拾い上げる。

「いいだろう。わたしが勝って、みんなを元に戻す」

 台の前に立ち、今までミリアムが使っていたカードを集め、シャッフルする。
 
 所定の位置にカードを並べ直し、藤田とジャンケン。わたしが先行だ。



 三ターン経過。
 わたしは五枚シールドを保っている。モンスターは人狼ワーウルフ一体。

 藤田はシールド三枚。モンスターはゴブリンとリザードマンの二体。

 二ターン目で出したハーピーはゴブリンに破壊されてしまったが、わたしがまだ有利か。

 四ターン目。カードを引くと、スーパーレアの大サソリが出た。しかし、召喚コストが2足りない。
 
 仕方なく、人狼ワーウルフで攻撃。わたしのシールドはまだ余裕あるので、モンスターではなく相手のシールドを攻撃。
 藤田のシールドは二枚になった。

 藤田は慌てない。不気味な笑みを浮かべながらドローし、召喚ポイントを貯める。
 そして一枚のカードを出した。
 あれは──魔法カードだ。一度使えば捨てなければならないが、その分効果が高いものが多い。藤田がカードを読み上げる。

「ギガオーガの地響き……今持っている手札を一枚、見ないで捨てるんだ」

 わたしは舌打ちしながら、適当なカードを一枚捨てる。その後自分の手札を見て、あちゃ、と呟いた。
 捨てたのはスーパーレアの大サソリだ。せっかく引いたのに……。

「クックック……どうやらいいカードを捨ててしまったようだな。ツキは俺にある。さあ、反撃開始だ」

 ゴブリンとリザードマンの攻撃。わたしのシールドが二枚破壊された。
 
「くそ、勝負はまだこれからだ」

 わたしが負ければ全滅だ。絶対にこの勝負、勝ってみせる。

 
 
 
 
 

 
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