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48 聖騎士
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「勇者よ……貴様の実力は知っているつもりだ。あの超級魔物を倒したのだからな。だが、わたしはむざむざ負けるつもりはない」
マックスが見下ろしながら圧力をかけてくる。俺は負けじと睨み返す。
「こっちも成り行きとはいえ、負けるつもりはねえっスよ。加減はしないつもりっス」
とは言ったものの、柵に囲まれた決闘場の範囲はそれほど広くない。
ボクシングのリングをやや広くした程度か。
しかも観客が周りに大勢いる。派手な魔法をブッ放すのは無理だろう。
ミリアムが用意、と言った。周りがしん、と静まり返る。しばらく静寂が続き──。
「はじめっっ!」
開始の合図。まず仕掛けたのは──マックス。
大型の盾をゴッ、と突き出してきた。
片手で受け止める。衝撃はたいしたことない。
盾の陰からボッ、と剣が飛び出す。それも素手で弾き、拳打で反撃。
ガインッ、と盾で防がれた。
そしてまた盾を突き出してくる。これは避けられず、顔面に喰らった。
ややふらついたが、問題ない。
剣が振り下ろされる。後ろへ飛び退いてかわしたが──背中にがしゃんと柵が当たる。
盾を前面に出したマックスの突進。
横に転がってかわす。追ってきたマックスの剣先が迫る。蹴りで軌道を変え、かろうじてかわした。
重装備ながら素早い。それに、この決闘場の戦いに慣れているようだ。スキルを使う暇も与えないつもりか。
だが──。さらに盾の一撃。今度は横凪ぎに盾の縁で殴りつけてきた。
がしっ、と片手で掴む。マックスの驚いた表情。
力任せに奪い取り、メキメキメキと造作もなく折り曲げた。
「バカなっ、超級との戦いでも破壊されなかった我が盾が──」
へし折った盾を投げつける。マックスは剣で弾き飛ばした。その隙に懐へ潜り込み、下からゴゴゴゴッ、と連続拳打。重装備のマックスが宙に浮いた。
跳躍。宙に浮いたマックスに両手を組んだ一撃を振り下ろす。
ドゴオッ、と地面へ激突するマックス。これはやりすぎたか。
いや、動いている。ダメージはあまりなさそうだ。そういえば防御に特化した能力の持ち主だと伊能が言っていた。これならこっちも剣を使っても問題なさそうだ。
剣を抜き、接近。まだ体勢を立て直していないマックスに斬撃を叩き込む。
一度目は剣で防がれたが、二度目、三度目の斬撃は肩と腕に命中。鎧ごしではあるが、骨ぐらいは簡単に砕ける。
バキイッ、と折れたのは──俺の剣だった。
まさかここまで硬いとは。この剣が折れるのは千景との戦いを含めて二度目だ。
相手の願望の力によって強化されている防御力。それを打ち破るには物理攻撃ではキビシイようだ。だからといって炎弾や電撃を使えば観客にも被害が及ぶ。
観客は危険を承知で見に来ているのだから、巻き添えで何人死のうと知ったことではないが……シエラとイルネージュがいるので無茶は出来ない。
俺が魔法攻撃が出来ないと知ってか、笑みを浮かべたマックスの反撃。
光輝く剣を両手で構え、刺突。
「ぐっ……!」
胸にまともに入った。一瞬、息が詰まる。野郎……調子に乗りやがって。
魔法の力。何も派手にブッ放すだけとは限らない。範囲を限定して効果を発揮させる事も可能だ。
折れた剣に属性付与。炎の魔法力を込めた。これで魔法攻撃の代わりになる。
マックスのさらなる攻撃をかわし、折れた剣を突き出す。鎧の中心に命中、ビキビキと亀裂が入る。やはり魔法防御力は低い。このまま貫く──いや、カッ、と光る壁のようなものに弾かれた。これは一体……。
「チートスキル、魔法無効だっ! 溢忌、そいつに魔法は効かないぞっ!」
シエラの声。なるほど、このマックスの自信はチートスキルを持っていた為か。しかし、これは困った。
強靭な物理防御力に、完璧な魔法無効。コイツにダメージを与える方法はあるのか。
あるとすれば、飛び抜けた物理攻撃力。超級魔物並みの一撃を喰らわせる必要がある。
「どうした、勇者よ! もはや打つ手無しかっ!」
剣の柄で殴られ、そこから袈裟懸けに斬られる。よろめいたところに、コオオオッ、と光属性の突き。
俺の身体は吹き飛び、柵に叩きつけられる。
マズイな……ダメージはないが、たしかこの決闘には時間制限があると説明を聞いた。
タイムアップでまだ両方が立っていた場合は判定になるとの事だが……今の一撃は不利になるだろう。
俺は剣を捨てた。お互いに倒す決め手が無いとはいえ、このまま判定に持ち込むつもりはない。
願望の力をかなり使うが……右手にグググと力を込める。
マックスがさらに攻撃を仕掛けてくるが、それをかわしながら集中。
ゲームやアニメでは、何も無い所からぽっと武器やらアイテムが簡単に出てくるが、願望の叶う世界とはいえ、それはかなり難しい。
空間転移の一種。願望者でもごく一部の者しか使えないようだ。
俺の右手に現れたのは──柄と剣身に青い模様のある剣。
この剣は超級魔物ギガオーガから剥ぎ取った素材を使い、神器練精で作った長剣。
「今さらそのような剣を出してもムダだっ! わたしを貫くことなど出来ないっ!」
マックスの打ち下ろしをその剣で軽々と受け止める。
「いやあ、超級魔物の素材にチートスキルまで使ってんスから。通じてもらわないと困るっスね。この剣……前にやってたゲームから取ってガラティーンって名前にするっス」
マックスが見下ろしながら圧力をかけてくる。俺は負けじと睨み返す。
「こっちも成り行きとはいえ、負けるつもりはねえっスよ。加減はしないつもりっス」
とは言ったものの、柵に囲まれた決闘場の範囲はそれほど広くない。
ボクシングのリングをやや広くした程度か。
しかも観客が周りに大勢いる。派手な魔法をブッ放すのは無理だろう。
ミリアムが用意、と言った。周りがしん、と静まり返る。しばらく静寂が続き──。
「はじめっっ!」
開始の合図。まず仕掛けたのは──マックス。
大型の盾をゴッ、と突き出してきた。
片手で受け止める。衝撃はたいしたことない。
盾の陰からボッ、と剣が飛び出す。それも素手で弾き、拳打で反撃。
ガインッ、と盾で防がれた。
そしてまた盾を突き出してくる。これは避けられず、顔面に喰らった。
ややふらついたが、問題ない。
剣が振り下ろされる。後ろへ飛び退いてかわしたが──背中にがしゃんと柵が当たる。
盾を前面に出したマックスの突進。
横に転がってかわす。追ってきたマックスの剣先が迫る。蹴りで軌道を変え、かろうじてかわした。
重装備ながら素早い。それに、この決闘場の戦いに慣れているようだ。スキルを使う暇も与えないつもりか。
だが──。さらに盾の一撃。今度は横凪ぎに盾の縁で殴りつけてきた。
がしっ、と片手で掴む。マックスの驚いた表情。
力任せに奪い取り、メキメキメキと造作もなく折り曲げた。
「バカなっ、超級との戦いでも破壊されなかった我が盾が──」
へし折った盾を投げつける。マックスは剣で弾き飛ばした。その隙に懐へ潜り込み、下からゴゴゴゴッ、と連続拳打。重装備のマックスが宙に浮いた。
跳躍。宙に浮いたマックスに両手を組んだ一撃を振り下ろす。
ドゴオッ、と地面へ激突するマックス。これはやりすぎたか。
いや、動いている。ダメージはあまりなさそうだ。そういえば防御に特化した能力の持ち主だと伊能が言っていた。これならこっちも剣を使っても問題なさそうだ。
剣を抜き、接近。まだ体勢を立て直していないマックスに斬撃を叩き込む。
一度目は剣で防がれたが、二度目、三度目の斬撃は肩と腕に命中。鎧ごしではあるが、骨ぐらいは簡単に砕ける。
バキイッ、と折れたのは──俺の剣だった。
まさかここまで硬いとは。この剣が折れるのは千景との戦いを含めて二度目だ。
相手の願望の力によって強化されている防御力。それを打ち破るには物理攻撃ではキビシイようだ。だからといって炎弾や電撃を使えば観客にも被害が及ぶ。
観客は危険を承知で見に来ているのだから、巻き添えで何人死のうと知ったことではないが……シエラとイルネージュがいるので無茶は出来ない。
俺が魔法攻撃が出来ないと知ってか、笑みを浮かべたマックスの反撃。
光輝く剣を両手で構え、刺突。
「ぐっ……!」
胸にまともに入った。一瞬、息が詰まる。野郎……調子に乗りやがって。
魔法の力。何も派手にブッ放すだけとは限らない。範囲を限定して効果を発揮させる事も可能だ。
折れた剣に属性付与。炎の魔法力を込めた。これで魔法攻撃の代わりになる。
マックスのさらなる攻撃をかわし、折れた剣を突き出す。鎧の中心に命中、ビキビキと亀裂が入る。やはり魔法防御力は低い。このまま貫く──いや、カッ、と光る壁のようなものに弾かれた。これは一体……。
「チートスキル、魔法無効だっ! 溢忌、そいつに魔法は効かないぞっ!」
シエラの声。なるほど、このマックスの自信はチートスキルを持っていた為か。しかし、これは困った。
強靭な物理防御力に、完璧な魔法無効。コイツにダメージを与える方法はあるのか。
あるとすれば、飛び抜けた物理攻撃力。超級魔物並みの一撃を喰らわせる必要がある。
「どうした、勇者よ! もはや打つ手無しかっ!」
剣の柄で殴られ、そこから袈裟懸けに斬られる。よろめいたところに、コオオオッ、と光属性の突き。
俺の身体は吹き飛び、柵に叩きつけられる。
マズイな……ダメージはないが、たしかこの決闘には時間制限があると説明を聞いた。
タイムアップでまだ両方が立っていた場合は判定になるとの事だが……今の一撃は不利になるだろう。
俺は剣を捨てた。お互いに倒す決め手が無いとはいえ、このまま判定に持ち込むつもりはない。
願望の力をかなり使うが……右手にグググと力を込める。
マックスがさらに攻撃を仕掛けてくるが、それをかわしながら集中。
ゲームやアニメでは、何も無い所からぽっと武器やらアイテムが簡単に出てくるが、願望の叶う世界とはいえ、それはかなり難しい。
空間転移の一種。願望者でもごく一部の者しか使えないようだ。
俺の右手に現れたのは──柄と剣身に青い模様のある剣。
この剣は超級魔物ギガオーガから剥ぎ取った素材を使い、神器練精で作った長剣。
「今さらそのような剣を出してもムダだっ! わたしを貫くことなど出来ないっ!」
マックスの打ち下ろしをその剣で軽々と受け止める。
「いやあ、超級魔物の素材にチートスキルまで使ってんスから。通じてもらわないと困るっスね。この剣……前にやってたゲームから取ってガラティーンって名前にするっス」
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