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27 双子の猛攻
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先程上がってきた階段。一階の通路まで降りて突き当たりの扉を開ける。
そこから地下へと続く階段があった。
この世界に電気を使った装置はまだないはずだが、下に降りるにつれ両脇のガラスランプに明かりが灯る。
階段を降りきった場所にまた扉。
そこから中へ入ると──驚いた。まるでドーム球場のような空間が広がっていた。
しかも照明らしきものがないのに全体が明るい。これはあのカーラの力だろうか。
「すごい、地下にこんな場所が……」
イルネージュが感動の声をあげると、背後からカーラの声がした。
「願望者の修練の場だったり、武道大会を開いたり。いざというときはシェルターにもなるわ。わたしの願望の力で強化してるから、思い切り暴れても大丈夫」
振り向くと、上の観客席のほうにカーラが足を組んで座っていた。
「ほら、シエラと……イルネージュちゃんね。あなたもここに来て。一緒に観戦しましょう」
シエラとイルネージュは観客席のほうに上がっていく。カーラは手にした指揮棒でドーム中央をさした。
「あの子達はいつでもいいみたいよ」
ドーム中央──《バーニングサン》ヒューゴと《ファントムムーン》ネヴィアはすでに戦闘体勢。願望の力を高めている。
「それじゃあ、いって来るっス」
中央へ向かい、早足で近づく。
「ソッコーで終わらせてやる。俺たちにかなうヤツなんて先生か副長ぐらいなモンだ。いくぞっ」
ヒューゴ。こちらが近づく途中で、待ちきれずに突っ込んできた。左右の手にトンファーを持っている。なんだ、アレでぶん殴るつもりか。
「くらえっ、フレイムウェイブッ!」
ブンッ、と左のトンファーを打ち下ろす。炎の衝撃波がゴアッ、と飛んできた。
なるほど、炎の使い手か。ここは相手の力量を知る為にもわざと避けないでおこう。
衝撃波を胸に受けながら、俺は前進する。
「っらあ! ガトリングブラストッ!」
左右のトンファーの先をこちらに向ける。先端からドドドドッ、と連続火炎弾。これもまともに全弾受けた。
怯まずにゴッ、と爆煙から姿を現す。
ヒューゴは驚いた顔をしたが、すぐにギリッ、と噛み締めるような表情。
「ネヴィアッ、援護しろっ!」
「もう、やってる……」
イラついた感じのヒューゴにくらべ、ネヴィアは気だるそうな返事。同じ顔でも性格はだいぶ違うようだ。
む、俺の周りにコオオオ、と何か白い霧状のモノがまとわりつく。それは人の顔……いや、ドクロだ。
無数の亡霊が浮遊している。一体が俺の胸の辺りを突き抜けていく。
悪寒が走る──体力を奪っていくようだ。これは並みの物理攻撃よりよほどやっかいだ。
「このっ、消えるっスよ」
ブンブンと殴りつけるが、亡霊たちはすり抜けていく。
「ウフフ、バカみたい。わたしのオバケ達に触れるわけないのに」
ネヴィアが口を押さえてプププ、と笑う。
俺の身体をさらに亡霊が三体、突き抜けていった。
気分が悪くなり、顔を押さえながらふらついた。そこへヒューゴが跳躍──。
「メテオストームッ!」
横向きに回転しながらトンファーを連続で叩きつける。
ゴガガガガッ、とヒットした部分で爆発が起きた。
着地したヒューゴは二本のトンファーを地面に打ちつける。
「ボルケーノフラッシュッ!」
俺の足元から火柱が噴出。凄まじい勢いで打ち上げられ、宙を舞う。
「ネヴィアッ、やるぞ!」
「うん~、了解~」
ネヴィアの操る亡霊たちが集まり、ひとかたまりに。巨大なドクロが形成され、カタカタと歯を鳴らす。
ヒューゴはその後ろからガシン、とトンファーを押し当てる。
「死ねえぇっっ! ッスカルキャノンッッ!」
パゴオォッッ、と炎をまとった巨大ドクロが発射された。
大口開けたドクロに俺の身体は飲み込まれ──爆発。
かなりの威力──また身代わりを使うのを忘れていたが、損傷した身体は超再生ですぐに回復できる。
地面に落ちた俺がすぐに起き上がるのを見て、さすがに双子は動揺しはじめた。
「ウソだろ……アレを喰らって生きやがる」
「信じらんない。オバケより怖いかも」
俺はなに食わぬ顔でパンパンと身体をはたく。
「おや、もう終わりっスかね。こんなもんスか」
わざと悔しがるように言ってやると、ヒューゴはまだだっ、と叫んだ。
「ネヴィア、お前の新しい力だっ! 使えっ!」
「……わかった。使う」
ネヴィアはバッグの中から何やら取り出す。
それはグウンッ、と巨大化。大きな扉の形に。
観客席からシエラの声。
「それはチートスキル、通称どこ○もドア、門だ! ヤツの仲間が出てくるぞ、溢忌! 気をつけろ!」
頑丈そうな鉄の扉がゴゴゴ、と開きはじめる。
「能力で呼び出す仲間だからな、卑怯だとは言わせねーぞ、ざまあみろ」
ヒューゴがビッ、と親指を下に向ける。
はて、それは全然構わないが……一体どんなヤツが出てくるんだ?
バァン、と開け放たれた扉からおっとっと、と出てきたのは──三十代ぐらいの着流し姿の男。
ボサボサの無造作な黒髪。左目に眼帯。アゴ髭。手には杖を持っている。
すぐには状況を理解できていないらしく、周りをキョロキョロと見渡してえ、え、と呟いている。
俺の頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《人斬り》伊能九十朗。
物騒な二つ名だが……こんなとぼけた顔をした男が?
そう思っていたが──男の右目。射抜くような視線がこちらに向けられた。
そこから地下へと続く階段があった。
この世界に電気を使った装置はまだないはずだが、下に降りるにつれ両脇のガラスランプに明かりが灯る。
階段を降りきった場所にまた扉。
そこから中へ入ると──驚いた。まるでドーム球場のような空間が広がっていた。
しかも照明らしきものがないのに全体が明るい。これはあのカーラの力だろうか。
「すごい、地下にこんな場所が……」
イルネージュが感動の声をあげると、背後からカーラの声がした。
「願望者の修練の場だったり、武道大会を開いたり。いざというときはシェルターにもなるわ。わたしの願望の力で強化してるから、思い切り暴れても大丈夫」
振り向くと、上の観客席のほうにカーラが足を組んで座っていた。
「ほら、シエラと……イルネージュちゃんね。あなたもここに来て。一緒に観戦しましょう」
シエラとイルネージュは観客席のほうに上がっていく。カーラは手にした指揮棒でドーム中央をさした。
「あの子達はいつでもいいみたいよ」
ドーム中央──《バーニングサン》ヒューゴと《ファントムムーン》ネヴィアはすでに戦闘体勢。願望の力を高めている。
「それじゃあ、いって来るっス」
中央へ向かい、早足で近づく。
「ソッコーで終わらせてやる。俺たちにかなうヤツなんて先生か副長ぐらいなモンだ。いくぞっ」
ヒューゴ。こちらが近づく途中で、待ちきれずに突っ込んできた。左右の手にトンファーを持っている。なんだ、アレでぶん殴るつもりか。
「くらえっ、フレイムウェイブッ!」
ブンッ、と左のトンファーを打ち下ろす。炎の衝撃波がゴアッ、と飛んできた。
なるほど、炎の使い手か。ここは相手の力量を知る為にもわざと避けないでおこう。
衝撃波を胸に受けながら、俺は前進する。
「っらあ! ガトリングブラストッ!」
左右のトンファーの先をこちらに向ける。先端からドドドドッ、と連続火炎弾。これもまともに全弾受けた。
怯まずにゴッ、と爆煙から姿を現す。
ヒューゴは驚いた顔をしたが、すぐにギリッ、と噛み締めるような表情。
「ネヴィアッ、援護しろっ!」
「もう、やってる……」
イラついた感じのヒューゴにくらべ、ネヴィアは気だるそうな返事。同じ顔でも性格はだいぶ違うようだ。
む、俺の周りにコオオオ、と何か白い霧状のモノがまとわりつく。それは人の顔……いや、ドクロだ。
無数の亡霊が浮遊している。一体が俺の胸の辺りを突き抜けていく。
悪寒が走る──体力を奪っていくようだ。これは並みの物理攻撃よりよほどやっかいだ。
「このっ、消えるっスよ」
ブンブンと殴りつけるが、亡霊たちはすり抜けていく。
「ウフフ、バカみたい。わたしのオバケ達に触れるわけないのに」
ネヴィアが口を押さえてプププ、と笑う。
俺の身体をさらに亡霊が三体、突き抜けていった。
気分が悪くなり、顔を押さえながらふらついた。そこへヒューゴが跳躍──。
「メテオストームッ!」
横向きに回転しながらトンファーを連続で叩きつける。
ゴガガガガッ、とヒットした部分で爆発が起きた。
着地したヒューゴは二本のトンファーを地面に打ちつける。
「ボルケーノフラッシュッ!」
俺の足元から火柱が噴出。凄まじい勢いで打ち上げられ、宙を舞う。
「ネヴィアッ、やるぞ!」
「うん~、了解~」
ネヴィアの操る亡霊たちが集まり、ひとかたまりに。巨大なドクロが形成され、カタカタと歯を鳴らす。
ヒューゴはその後ろからガシン、とトンファーを押し当てる。
「死ねえぇっっ! ッスカルキャノンッッ!」
パゴオォッッ、と炎をまとった巨大ドクロが発射された。
大口開けたドクロに俺の身体は飲み込まれ──爆発。
かなりの威力──また身代わりを使うのを忘れていたが、損傷した身体は超再生ですぐに回復できる。
地面に落ちた俺がすぐに起き上がるのを見て、さすがに双子は動揺しはじめた。
「ウソだろ……アレを喰らって生きやがる」
「信じらんない。オバケより怖いかも」
俺はなに食わぬ顔でパンパンと身体をはたく。
「おや、もう終わりっスかね。こんなもんスか」
わざと悔しがるように言ってやると、ヒューゴはまだだっ、と叫んだ。
「ネヴィア、お前の新しい力だっ! 使えっ!」
「……わかった。使う」
ネヴィアはバッグの中から何やら取り出す。
それはグウンッ、と巨大化。大きな扉の形に。
観客席からシエラの声。
「それはチートスキル、通称どこ○もドア、門だ! ヤツの仲間が出てくるぞ、溢忌! 気をつけろ!」
頑丈そうな鉄の扉がゴゴゴ、と開きはじめる。
「能力で呼び出す仲間だからな、卑怯だとは言わせねーぞ、ざまあみろ」
ヒューゴがビッ、と親指を下に向ける。
はて、それは全然構わないが……一体どんなヤツが出てくるんだ?
バァン、と開け放たれた扉からおっとっと、と出てきたのは──三十代ぐらいの着流し姿の男。
ボサボサの無造作な黒髪。左目に眼帯。アゴ髭。手には杖を持っている。
すぐには状況を理解できていないらしく、周りをキョロキョロと見渡してえ、え、と呟いている。
俺の頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《人斬り》伊能九十朗。
物騒な二つ名だが……こんなとぼけた顔をした男が?
そう思っていたが──男の右目。射抜くような視線がこちらに向けられた。
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