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猫らしさ

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ウチの猫達にはどうしても気になる外の世界の支配者がいます。

それはご近所一帯を治めている
多めの白×黒のボス猫で
確認はしていませんが
オスと思われるいかにも強そうな個体です。


何処の飼い猫かとも思いましたが
野性味とボス猫らしい威厳に満ちた様子から
人間とは距離を持って暮らしている様に見受けられます。

そんな彼と出会った際には

「こんにちは」

と声を掛けても

「人間に知り合いなんていないぜ」

と、一度だけギロリとこちらに目を向けると
後は振り返りもせずに
猫としゃべれると思い込んでいる私のプライドに後ろ足で砂を掛け
逞しい体を揺らしてズンズンと
立ち去って行きます。



ウチの庭はどうやら彼の縄張りに属している様で
毎朝だいたい定時に巡回にやって来ます。


その様子を完全室内飼いの
ウチの猫達は窓ガラス越しに
見ているのですが 
女の子猫のスーちゃんはその華奢な体型に似合わない
気の強さを前面に押し出して

「勝手に入ってこないで
ここはアタシんちよ!」

とばかりにシャーシャー威嚇しまくります。


しかしボス猫は

「女は敵に回さない主義」

なのでしょうか。
スーちゃんに見付かったと分かると
目を合わさない様にそそくさと立ち去っていきます。



一方男の子猫のミーちゃんは人間だけでなくどんな猫に対しても温厚でボスの訪問に

「あっ、友達が来た!」

と大喜びでもっと近くでボスを見ようと掛け寄ります。

おそらく自分は家の中で
襲撃されるリスクはないと
分かっているのでしょう。

或いは空気が読めないのか?


ミーちゃんには

「怒っちゃうよ!機能」

が搭載されていない様で
生まれてこの方シャーシャー言った事もなければ
威嚇フェイスを見せた事もありません。


そんなミーちゃんをボス猫は

「人間に魂を売ったヤツ」

と思っているかも知れません。

スーちゃんの時とは対照的に
しばし立ち止まりミーちゃんに視線を向けて行きます。



寒い冬は暖かく
暑い夏は涼しく
苦労しなくてもご飯は出てくるし
モフモフの寝床でフミフミしながら寝落ちしても敵に襲われたりする不安は何もありません。


同じオス猫に生まれたのに
(ミーちゃんは元オス)
境遇はまるで真逆なボスとミーちゃん。




どちらが幸せかと問われれば
私は間違いなく飼い猫のミーちゃんだと思いますが
彼らはお互いの暮らしをどう思っているのでしょう。


たまには外の空気から色々な匂いを嗅ぎ取ったり

ジャングル気分で草をかき分けて歩いてみたり

にわか仕込みでは絶対に届かないけれど
鳥をめがけて空に向かってジャンプしたり

余所のお宅の屋根から屋根へ空中散歩を楽しんで
屋根の上の日向ぼっこでガラス越しではなく直にお日様を感じてみたい


室内飼いの猫はもしかしたらそんな外への憧れも持って外を眺めているのでしょうか。


それとも

「外の猫ってマジ大変そう」

と、思っているのかしら?


安全と自由を猫は小さな頭でどう捉えているのでしょう。





所でそのボス猫は年齢的にはもう7~8歳になると思いますが
ある日ふと
白×黒に長い尻尾はもしかしたら私の2代目飼い猫の
ジャッキーの子孫ではないかしら…と思いました。


強めの気性のジャッキーが
この界隈を制圧しようとしていたのはもうかなり昔の事ですが
何代か経て子孫がボスの座に
着いたのだとしたら


「人間に知り合いはいないって思っているみたいだけど
私は知り合いかもよ」


ご先祖が飼い猫だったと知ったらボスはどんな反応を示すでしょう。























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