アオイナツ物語

伊藤 苺

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マコトの野望①

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合宿初日の朝がやって来た。


今朝母親から僕の知らない先輩情報をしっかりと仕入れて来たので合宿の準備は万端だ。

先輩とは昨日の夕方まで一緒だったし夜電話もしたので少しは平常心を保てるかと思ったが僕の心臓はさしずめ高地トレーニングに匹敵する位バクバクが止まらない。


そこに更に負荷を課する人物が現れて先の方で

「遅ーよ。走れ!」

と僕を急かす。

「おはよーございます。
先輩早いじゃないですか。」

今はもう以前の様な
「あざーす」
的な挨拶で済まされる仲ではない。

先日はお世話になりました…なんてオバチャンっぽくかしこまるのは変なのでここは正直な気持ちを伝えよう。

「一昨日からの全てが楽しかったです。」

「そっか、良かった。
スミコさんが絶対にまた泊まりに来てって伝えろって。」


「伝わりましたので是非またお邪魔します。」


平常心の欠片もなく挙動不審に陥っていると


「おーい、サッサと支度しろー!」

グランドで待つマコトにも急かされた。



久しぶりに練習着に袖を通すと

「あれっ?ハヤタお前身長伸びたんじゃねぇ?」

先輩が肩、腕、腹筋そしてお尻をパンパンと音をさせ筋肉を確認する様に触れてきたので更に負荷は重くなった。


「ひゃっ!」

最後にお尻をキュッとつねられたので変な声を出してしまうと

「ふふっ」

と笑う先輩。
このやり取りなんなんですか?





着替えを済ませてグランドに集合すると早速紅白戦の組み分けが発表された。


紅チームは2年プラス1年数名。
白チームは先輩達引退組プラス1年数名。

「これは紅チーム有利なんじゃないか?」

引退組の不満にマコトが答える。

「この夏僕は主将として秋の大会を見据えて1年生を自ら特訓して参りました。

引退して久しぶりに運動をする先輩方の不安を払拭するには十分な戦力ですのでどうか本気でぶつかって来てください!

それでは両チームの守備を発表いたします。」

配られたメンバー表を見て僕は自分の目を疑った。










(投)櫻井隼太


はぁ?(投)って?



「いきなり動いて靭帯切ったりしてら大変なので、とりあえず
各自ウォーミングアップしてくださーい。」


「マコトちょっと…」




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