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センチメンタルジャーニー③
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試合の翌日になってもマコトのハヤタへの怒りは収まらず
加えてユウスケが気掛かりでしょうがなく朝から彼の家へ向かった。
案の定ユウスケは落ち込んでいた。
それはそうだ。
一緒に頑張って来た仲間に
「お前のせいで負けた。」
なんて言われたら普通にしてなんかいられない。
それにユウスケはもう直ぐ引っ越してしまうので
マコトはこのままハヤタとユウスケ、2人の仲を放っておく事は出来なかった。
「見られちゃったね。
うちの両親離婚するんだ。
もうちょっとしたら母さんの実家に引っ越しするんだ。
田舎だから妹は行きたくないとか行ってるけど。」
試合の帰り道、家まで付いてきたマコトにユウスケは段ボール箱の積まれた室内を指差して寂しげにマコトに打ち明けた。
「うっ、いつ?」
「離婚は前から決まってたけど引っ越しは僕らが夏休みの間にって。
新学期から新しい学校だよ。」
「じゃあもう今日が最後だったんじゃないか!中学は別でも近所だからまた遊べると思ってたのに。」
「黙っててごめんね。
でも今日は大事な試合だっし
。」
「そんな…」
こんなのだめだ。
分かっていてもユウスケに掛ける言葉が見付からない未熟な自分に苛立ちながらマコトは重い気持ちを引きずって家に帰り付いた。
翌日会いに行ってはみたものの、やはりなんて声を掛けたら良いのか分からずにマコトは戸惑った。
(このままじゃ後味が悪すぎる)
「ユウスケ、大丈夫か?」
やっと絞り出した言葉に
「僕は大丈夫だよ。
それよりマコチャンは大丈夫なの?
ハヤタとケンカしちゃったんじゃない?」
人の心配をするユウスケに思わず詰め寄ってしまった。
「ユウスケ、お前はあんな事言われて腹立たないのか?」
「腹は…立ってないよ。けど…」
「けど?」
「けど、こんなに辛い夏休みは初めてだ。」
「ユウスケ…」
マコトは思わずユウスケを抱きしめた。
「ちょっ、マコチャン。」
「絶対にハヤタに謝らせるから心配するな。」
「そうだね、マコチャンに任せておけばいいんだよね。
でもこう言う事は時間が解決してくれる、みたいな要素もあるじゃない。
だから今じゃなくてもいつかで大丈夫だよ。
それより僕はマコチャンが心配だよ。」
「何が?」
「全国大会へ行かれなくなったから野球推薦がどうなっちゃうか。」
「そんなの、心配ないよ。」
あの時は落ち込んでいるユウスケの手前ああ言ったけれど
本当は不安で仕方なかった。
野球推薦に付いては何校からか誘いはあったけれど本命の強豪校からは何の音沙汰もない。
だから全国大会に出場して
もっとアピールしたかった。
子供の頃から行きたかった高校はマコトに野球を教えてくれた父親の母校で父親は主将を努めた年に捕手として甲子園に出場した。
父親はマトコの本命の強豪校の出身だ。
甲子園で優勝には手が届かなかったけれど卒業後は社会人野球でやはり捕手として活躍した。
今でも父親への尊敬の念は変わらない。
そしてそんな父親の恩恵は
「織田さんの息子」
と言う形でにスカウトに何らかの影響をあたえるのではないかと過信していたのも本当の所だ。
それからしばらくするとマコトの予告通り本命の強豪校はマコトに興味を示してくれた。
但し捕手としてではなく打者として。
しかし捕手に強い拘りを持つマコトは困惑した。
自分が頂点に近い場所にいると信じていただけに今更外野手に転向前提で強豪校へ行く気にはなれなかったし、自分が2番手処か3番手にも挙げられていない事に絶望して、憧れのユニホームに袖を通す夢はマコト自身が手放した。
他校からも誘いは受けたけれど1度失った自信はそう簡単には戻ってこない。
初めて向き合った野球をやる気がない自分。
その時ふと思い出したのがユウスケとの約束。
それとまだ消えていなかったハヤタへの怒り。
ハヤタに野球を続けさせてやる。
ハヤタのやつ野球やらないって、高校は何処へ行く気なんだ?
加えてユウスケが気掛かりでしょうがなく朝から彼の家へ向かった。
案の定ユウスケは落ち込んでいた。
それはそうだ。
一緒に頑張って来た仲間に
「お前のせいで負けた。」
なんて言われたら普通にしてなんかいられない。
それにユウスケはもう直ぐ引っ越してしまうので
マコトはこのままハヤタとユウスケ、2人の仲を放っておく事は出来なかった。
「見られちゃったね。
うちの両親離婚するんだ。
もうちょっとしたら母さんの実家に引っ越しするんだ。
田舎だから妹は行きたくないとか行ってるけど。」
試合の帰り道、家まで付いてきたマコトにユウスケは段ボール箱の積まれた室内を指差して寂しげにマコトに打ち明けた。
「うっ、いつ?」
「離婚は前から決まってたけど引っ越しは僕らが夏休みの間にって。
新学期から新しい学校だよ。」
「じゃあもう今日が最後だったんじゃないか!中学は別でも近所だからまた遊べると思ってたのに。」
「黙っててごめんね。
でも今日は大事な試合だっし
。」
「そんな…」
こんなのだめだ。
分かっていてもユウスケに掛ける言葉が見付からない未熟な自分に苛立ちながらマコトは重い気持ちを引きずって家に帰り付いた。
翌日会いに行ってはみたものの、やはりなんて声を掛けたら良いのか分からずにマコトは戸惑った。
(このままじゃ後味が悪すぎる)
「ユウスケ、大丈夫か?」
やっと絞り出した言葉に
「僕は大丈夫だよ。
それよりマコチャンは大丈夫なの?
ハヤタとケンカしちゃったんじゃない?」
人の心配をするユウスケに思わず詰め寄ってしまった。
「ユウスケ、お前はあんな事言われて腹立たないのか?」
「腹は…立ってないよ。けど…」
「けど?」
「けど、こんなに辛い夏休みは初めてだ。」
「ユウスケ…」
マコトは思わずユウスケを抱きしめた。
「ちょっ、マコチャン。」
「絶対にハヤタに謝らせるから心配するな。」
「そうだね、マコチャンに任せておけばいいんだよね。
でもこう言う事は時間が解決してくれる、みたいな要素もあるじゃない。
だから今じゃなくてもいつかで大丈夫だよ。
それより僕はマコチャンが心配だよ。」
「何が?」
「全国大会へ行かれなくなったから野球推薦がどうなっちゃうか。」
「そんなの、心配ないよ。」
あの時は落ち込んでいるユウスケの手前ああ言ったけれど
本当は不安で仕方なかった。
野球推薦に付いては何校からか誘いはあったけれど本命の強豪校からは何の音沙汰もない。
だから全国大会に出場して
もっとアピールしたかった。
子供の頃から行きたかった高校はマコトに野球を教えてくれた父親の母校で父親は主将を努めた年に捕手として甲子園に出場した。
父親はマトコの本命の強豪校の出身だ。
甲子園で優勝には手が届かなかったけれど卒業後は社会人野球でやはり捕手として活躍した。
今でも父親への尊敬の念は変わらない。
そしてそんな父親の恩恵は
「織田さんの息子」
と言う形でにスカウトに何らかの影響をあたえるのではないかと過信していたのも本当の所だ。
それからしばらくするとマコトの予告通り本命の強豪校はマコトに興味を示してくれた。
但し捕手としてではなく打者として。
しかし捕手に強い拘りを持つマコトは困惑した。
自分が頂点に近い場所にいると信じていただけに今更外野手に転向前提で強豪校へ行く気にはなれなかったし、自分が2番手処か3番手にも挙げられていない事に絶望して、憧れのユニホームに袖を通す夢はマコト自身が手放した。
他校からも誘いは受けたけれど1度失った自信はそう簡単には戻ってこない。
初めて向き合った野球をやる気がない自分。
その時ふと思い出したのがユウスケとの約束。
それとまだ消えていなかったハヤタへの怒り。
ハヤタに野球を続けさせてやる。
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