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真夏の幻影編
メメント・モリ2
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伊奈子が深く頷きながら納得した様子で立ち上がり、手についた土を落とす。
そして玲愛が今朝、登校中に一に打ち明けた一連の
「そう言うことね、玲愛ちゃんも結構敏感だったんだ…」
「まぁ、うん…気にしてた。私何か無意識に変な事とか嫌な事してたらごめんなさいって」
一と伊奈子の目線の先にはつるの伸び始めたスイカの苗があった。
暑さも強まり、いよいよこれからグングンと成長して花を付けやがてみのるであろうその姿に胸を膨らませる。
同時に一はふと湧き出た疑問が口から溢れた。
「玲愛ちゃんのお母さんの事?」
伊奈子は少しの間押し黙っていたが、しゃがみ込んで花が咲いたオクラの葉に付いたアブラムシにに向けてハバネロスプレーをかけつつ、自分の感情を誤魔化すように言いにくそうに話を始める。
「星君がね、玲愛ちゃんと中のいい友達と委員会が同じで、活動中になんとなしに聞いたんだって…」
———回想
「あ、そうだ。玲愛ちゃんと仲良いよね」
新刊の本をパソコンに登録してラベルを張っていく作業、一人でやっていたらおそらく星は途中で居眠りをするか手元の漫画を登録せずに読み耽って居ただろう。
二人一組での登録作業になったおかげで飽きる事なく続けていたが、彼は脳内で日頃の情景を回想しながら引っかかりを思い出してそれを口に出した。
「え?あぁ仲良いよっていうか腐れ縁?幼稚園から一緒なんだよね」
一目でわかる運動部所属感、星の質問に答えた彼女は褐色に焼けた肌によく似合うベリーショートの髪に加え横を少し刈り上げている。
蒸し暑い季節には通気性を確保できて最高の髪型、雰囲気からして玲愛と連みそうには見えないけれど、彼女の言った通り、昔からの縁で繋がっている仲なのだ。
「ちょっとこの前さ、玲愛ちゃんと話しててひっかかたんだけどよ…お母さん何かあった?」
本のタイトルを入力していた彼女の手が止まり、視線を真っ直ぐ画面に向けたまま「ちょっと、休憩」と言いながら立ち上がり、星の袖をちょんちょんと引っ張って図書室の外に連れ出した。
「ねぇ、桃野君…それ直接玲愛に聞いたりしてないよね?」
「そ、そりゃもちろんですよ織瀬さん…聞きそうにはなったけども」
彼女の放つプレッシャーが一層強まり、彼の胸ぐらを掴んで壁にめり込ませそうな圧を放っている。
星もたじたじになりながらさらに踏み込んだ。
「それで…今後俺みたいなバカが地雷を踏まないように聞いておきたいんだ。何があったか…」
周囲を確認して誰も居ないと分かってから織瀬は星に一歩近づき、耳元で言った。
「一昨年、蒸発したの」
「まじか…超最近じゃねぇかよ」
そして玲愛が今朝、登校中に一に打ち明けた一連の
「そう言うことね、玲愛ちゃんも結構敏感だったんだ…」
「まぁ、うん…気にしてた。私何か無意識に変な事とか嫌な事してたらごめんなさいって」
一と伊奈子の目線の先にはつるの伸び始めたスイカの苗があった。
暑さも強まり、いよいよこれからグングンと成長して花を付けやがてみのるであろうその姿に胸を膨らませる。
同時に一はふと湧き出た疑問が口から溢れた。
「玲愛ちゃんのお母さんの事?」
伊奈子は少しの間押し黙っていたが、しゃがみ込んで花が咲いたオクラの葉に付いたアブラムシにに向けてハバネロスプレーをかけつつ、自分の感情を誤魔化すように言いにくそうに話を始める。
「星君がね、玲愛ちゃんと中のいい友達と委員会が同じで、活動中になんとなしに聞いたんだって…」
———回想
「あ、そうだ。玲愛ちゃんと仲良いよね」
新刊の本をパソコンに登録してラベルを張っていく作業、一人でやっていたらおそらく星は途中で居眠りをするか手元の漫画を登録せずに読み耽って居ただろう。
二人一組での登録作業になったおかげで飽きる事なく続けていたが、彼は脳内で日頃の情景を回想しながら引っかかりを思い出してそれを口に出した。
「え?あぁ仲良いよっていうか腐れ縁?幼稚園から一緒なんだよね」
一目でわかる運動部所属感、星の質問に答えた彼女は褐色に焼けた肌によく似合うベリーショートの髪に加え横を少し刈り上げている。
蒸し暑い季節には通気性を確保できて最高の髪型、雰囲気からして玲愛と連みそうには見えないけれど、彼女の言った通り、昔からの縁で繋がっている仲なのだ。
「ちょっとこの前さ、玲愛ちゃんと話しててひっかかたんだけどよ…お母さん何かあった?」
本のタイトルを入力していた彼女の手が止まり、視線を真っ直ぐ画面に向けたまま「ちょっと、休憩」と言いながら立ち上がり、星の袖をちょんちょんと引っ張って図書室の外に連れ出した。
「ねぇ、桃野君…それ直接玲愛に聞いたりしてないよね?」
「そ、そりゃもちろんですよ織瀬さん…聞きそうにはなったけども」
彼女の放つプレッシャーが一層強まり、彼の胸ぐらを掴んで壁にめり込ませそうな圧を放っている。
星もたじたじになりながらさらに踏み込んだ。
「それで…今後俺みたいなバカが地雷を踏まないように聞いておきたいんだ。何があったか…」
周囲を確認して誰も居ないと分かってから織瀬は星に一歩近づき、耳元で言った。
「一昨年、蒸発したの」
「まじか…超最近じゃねぇかよ」
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