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協力 2
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彼らのボスに爆弾を止めさせるというスバルくんに、わたしはびっくりして一瞬固まってしまった。
「そ、そんなこと本当にできるの? ボスに爆弾を止めさせるなんて……。」
「おそらくね。というより爆弾の種類も数もわからない以上、こういう場合は頭を取った方が早い。二十五分でできることなんてたかが知れてる。」
「なら、放送室に先に向かっちゃった方がいいんじゃ……?」
「いや、ボス、つまりSが、『実は爆弾を遠隔操作で解除できない』というケースも一応頭に入れて、最低限の爆弾は解除する。Sは自分たちが逃げてから爆弾が爆発するように設定してるはずだから、その可能性は普通にありうるよ。……それにどうせ放送室は西棟、東棟のここからじゃ遠すぎる。」
たしかに、そうかも。
わたしたちが通う桜傑学園は北棟、南棟、東棟、西棟、が中央にある中央棟と多目的広場を囲むように位置している。
わたしたち一年生のクラスがあるのは東棟、放送室があるのは西棟。まっすぐ向かっても中央棟か多目的広場を経由しなければならない。
「とりあえずここを移動しよう。あんまり同じ場所に留まっているのはまずいしね。」
「う、うん。」
辺りに人がいないのを確認し、二人で一緒に歩き出す。
わたしはうしろ、スバルくんは前。それぞれ警戒しながら進んでいく。
「それにしてもスバルくん、最低限の爆弾って……?」
「おそらくだけど、爆弾は校内に最低五個仕掛けられているから、そのこと。もちろんそれより多い可能性の方が高いけど、まずはその五個を止める。」
「五個って……もしかして棟の数?」
そう、とスバルくんはうなずいた。
「あいつらが爆弾をしかけた目的はたぶん主に二つ。一つは、オレたちの脅しに使うこと。銃を向けられるのに加えて爆弾の存在を匂わせられれば、普通の人間なら命の危険を強く感じ、正常な判断能力を奪われる。」
「な、なるほど。」
「そして二つ目は、爆発やそれにともなう火事騒ぎによって、逃げた後に駆けつけた警察に自分たちが追われるのを遅らせるため。……校舎を派手に壊し、学校全体に火事が起きやすくなるようにするためには、少なくとも爆弾は、棟の数は必要になる。」
姿勢を低くしながら階段を降りつつ、スバルくんが言う。
命を奪うのは二の次だが、爆発に生徒が巻き込まれてパニックになればもうけもの、そういう考えの可能性が高いらしい。
それはわかった。でも……。
「あと二十数分で、少なくとも五つも爆弾を解除しなきゃいけないなんて……。見回りの人がどこにいるのかもわからないのに。」
「爆弾解除自体はオレがやるから問題ないよ。すぐ終わらせてみせる。」
キッパリ言い切ってみせたスバルくんに、わたしは目を見開く。
すごい。やっぱりそういうこともできるんだ、スバルくんって。
「それに見回りは教室のあるフロアにはあまり来ないと思うしね。」
「え? そうなの?」
たしかに、階段を降りてみて、一階にきても見回りの人はいないみたいだけど。
どうしてなんだろう。
「Sは放送で、『見つけて奪う』って言ってた。つまりあいつらは隠し財産の場所を知らないってことだ。だから、オレたち生徒の脱走を警戒するよりも、財産を見つけることに重きを置いているはず。」
「そっか。教室のある階には、隠し財産なんて置いておけそうな場所はないもんね。」
「そういうこと。……ああ、ほら、あった。これが爆弾だよ。」
足を止めたスバルくんが、下の方を指差す。
するとそこには、デジタル数字が小刻みに動いている黒い物体。
「ほ、ほんとにあった……!」
多目的広場に比較的近い、東棟を支える大きな柱の裏。
目の前には、教室内に木材などがたくさん積まれている金工木工室。
……たしかにここを爆破したら、間違いなく木材に引火してすぐに火事になってしまうだろう。東棟も壊れちゃうかもしれない。
「オレは爆弾の種類を確認する。だから金工木工室から工具取ってきて。」
「う、うん。」
言われるがままに急いで金工木工室に入り、使えそうな工具を探す。
中は散らかっていたけれど、わりとすぐに工具箱らしきものを見つけて、わたしはそれをスバルくんに渡した。
「ど、どう? 解除、できそう?」
「できる。解除したら相手に伝わるようになってるみたいだから、そこを弄るのにちょっとかかるかもしれないけど。三分あれば十分だよ。」
「三分!」
すごい! 予想してたより、ずっと早い。
わたしは驚くとともに、気を引き締める。
……スバルくんが爆弾を解除するなら、わたしは周りを警戒しなくちゃ。こういうことでは役に立てないんだから、少しでもスバルくんが作業に集中できるようにするんだ。
工具を手に解除を始めるスバルくんを横目に、わたしは姿勢を低くしつつ警戒を強める。
スバルくんは迷いなくコードをぱちんぱちんと切っていっていて、その表情は真剣そのものだ。
そんな彼の姿を横目に、わたしは腕時計を確認する。
……定期報告まで、二十分を切りそうだ。
それを伝えようとして顔を上げた、その時。
「っ、スバルくん、敵!」
「そ、そんなこと本当にできるの? ボスに爆弾を止めさせるなんて……。」
「おそらくね。というより爆弾の種類も数もわからない以上、こういう場合は頭を取った方が早い。二十五分でできることなんてたかが知れてる。」
「なら、放送室に先に向かっちゃった方がいいんじゃ……?」
「いや、ボス、つまりSが、『実は爆弾を遠隔操作で解除できない』というケースも一応頭に入れて、最低限の爆弾は解除する。Sは自分たちが逃げてから爆弾が爆発するように設定してるはずだから、その可能性は普通にありうるよ。……それにどうせ放送室は西棟、東棟のここからじゃ遠すぎる。」
たしかに、そうかも。
わたしたちが通う桜傑学園は北棟、南棟、東棟、西棟、が中央にある中央棟と多目的広場を囲むように位置している。
わたしたち一年生のクラスがあるのは東棟、放送室があるのは西棟。まっすぐ向かっても中央棟か多目的広場を経由しなければならない。
「とりあえずここを移動しよう。あんまり同じ場所に留まっているのはまずいしね。」
「う、うん。」
辺りに人がいないのを確認し、二人で一緒に歩き出す。
わたしはうしろ、スバルくんは前。それぞれ警戒しながら進んでいく。
「それにしてもスバルくん、最低限の爆弾って……?」
「おそらくだけど、爆弾は校内に最低五個仕掛けられているから、そのこと。もちろんそれより多い可能性の方が高いけど、まずはその五個を止める。」
「五個って……もしかして棟の数?」
そう、とスバルくんはうなずいた。
「あいつらが爆弾をしかけた目的はたぶん主に二つ。一つは、オレたちの脅しに使うこと。銃を向けられるのに加えて爆弾の存在を匂わせられれば、普通の人間なら命の危険を強く感じ、正常な判断能力を奪われる。」
「な、なるほど。」
「そして二つ目は、爆発やそれにともなう火事騒ぎによって、逃げた後に駆けつけた警察に自分たちが追われるのを遅らせるため。……校舎を派手に壊し、学校全体に火事が起きやすくなるようにするためには、少なくとも爆弾は、棟の数は必要になる。」
姿勢を低くしながら階段を降りつつ、スバルくんが言う。
命を奪うのは二の次だが、爆発に生徒が巻き込まれてパニックになればもうけもの、そういう考えの可能性が高いらしい。
それはわかった。でも……。
「あと二十数分で、少なくとも五つも爆弾を解除しなきゃいけないなんて……。見回りの人がどこにいるのかもわからないのに。」
「爆弾解除自体はオレがやるから問題ないよ。すぐ終わらせてみせる。」
キッパリ言い切ってみせたスバルくんに、わたしは目を見開く。
すごい。やっぱりそういうこともできるんだ、スバルくんって。
「それに見回りは教室のあるフロアにはあまり来ないと思うしね。」
「え? そうなの?」
たしかに、階段を降りてみて、一階にきても見回りの人はいないみたいだけど。
どうしてなんだろう。
「Sは放送で、『見つけて奪う』って言ってた。つまりあいつらは隠し財産の場所を知らないってことだ。だから、オレたち生徒の脱走を警戒するよりも、財産を見つけることに重きを置いているはず。」
「そっか。教室のある階には、隠し財産なんて置いておけそうな場所はないもんね。」
「そういうこと。……ああ、ほら、あった。これが爆弾だよ。」
足を止めたスバルくんが、下の方を指差す。
するとそこには、デジタル数字が小刻みに動いている黒い物体。
「ほ、ほんとにあった……!」
多目的広場に比較的近い、東棟を支える大きな柱の裏。
目の前には、教室内に木材などがたくさん積まれている金工木工室。
……たしかにここを爆破したら、間違いなく木材に引火してすぐに火事になってしまうだろう。東棟も壊れちゃうかもしれない。
「オレは爆弾の種類を確認する。だから金工木工室から工具取ってきて。」
「う、うん。」
言われるがままに急いで金工木工室に入り、使えそうな工具を探す。
中は散らかっていたけれど、わりとすぐに工具箱らしきものを見つけて、わたしはそれをスバルくんに渡した。
「ど、どう? 解除、できそう?」
「できる。解除したら相手に伝わるようになってるみたいだから、そこを弄るのにちょっとかかるかもしれないけど。三分あれば十分だよ。」
「三分!」
すごい! 予想してたより、ずっと早い。
わたしは驚くとともに、気を引き締める。
……スバルくんが爆弾を解除するなら、わたしは周りを警戒しなくちゃ。こういうことでは役に立てないんだから、少しでもスバルくんが作業に集中できるようにするんだ。
工具を手に解除を始めるスバルくんを横目に、わたしは姿勢を低くしつつ警戒を強める。
スバルくんは迷いなくコードをぱちんぱちんと切っていっていて、その表情は真剣そのものだ。
そんな彼の姿を横目に、わたしは腕時計を確認する。
……定期報告まで、二十分を切りそうだ。
それを伝えようとして顔を上げた、その時。
「っ、スバルくん、敵!」
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