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第56話
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数ヶ月が過ぎた。
雪と桜が混じる春休み。
風が強く花粉も飛び交っている。
「雪、見てみて~。」
桜は、自分と同じ花びらを手のひらに
乗せた。この花も、2週間もすれば散っていく。あっという間に終わってしまうのだ。この一瞬の綺麗さに皆魅了されて、足を止める。
「桜が桜持っているね。」
ズボンのポケットに手を入れて、
じっと桜の手を見た。
今日は、2人で公園の桜を見に来ていた。
桜まつりとあって、出店も並んでいた。
今、流行りのキッチンカーも
集まっている。
「それ、面白くないよ?
でも、信じられない。
去年は雪とまだ出会ってなかったから
一緒にお花見なんてできないもんね。
嬉しいな。」
桜は空を見上げて、
風とともに舞い散る桜とシャーベットの
ような雪が降るのを見た。
「今年はまだ寒いんだよな。
雪も一緒に降ってるから。
へんな感じだな。冬と春の共有。」
「そお?
全然変じゃないよ。
私と雪でしょ?ほら。
ここにもいるし。」
「確かに。」
ケタケタと笑いながら、見つめ合う。
「寒い。」
桜は、肩を震わせた。
雪は、ジャケットを脱いで、
かけてあげた。
「いいよ。雪が寒くなるから。」
「俺は平気だよ。」
「え、雪だから?」
「そうそう。そういうことにしとこう。」
寒い中,2人で桜の花を
写真を撮りながら楽しんだ。
ベビーカーに乗せている親子連れ、
杖をついてご高齢の夫婦、公園の遊具で遊ぶ小学生、雪たちと同じようにデートを楽しむ生徒たちがいた。
キッチンカーではピザ、からあげ、モツ煮、
たこやきなど食欲そそるものがたくさん
あった。
雪はフランクフルトを頼み、
桜はりんご飴を注文した。
ベンチに座って、黙々と食べ続けた。
「もうすぐ、新学期始まるよね。
クラス発表どうなるかな。」
「そんなに心配?」
「クラスの人間関係で
天国と地獄感じるかも。」
「そこまで?大丈夫だよ。
違うクラスでも休み時間会えるでしょ?」
「無理にいいよ。友達必要でしょう。
俺も、強くならないとさ。」
「菊地くんと一緒にならないといいね。」
「それは絶対条件だよね。
本当、まじで。
それ以外ならなんとか過ごせそう。」
桜は、食べ終えると、
そっと、雪の手に右手を添えた。
「大丈夫、私いるから。」
「うん。ありがとう。
…でも、それ、
男としてのプライドが…。」
「え?雪にもプライドあったんだね。」
「ひどくない?」
不意打ちに桜は雪の頬にキスした。
桜の花びらは風で舞い散った。
降っていた雪がようやく晴れて
青空が見えた。
「そのままでいいってこと。
雪は雪のままでいて。」
雪は、返事を返すように桜の唇に
口付けた。
2人とも笑顔になって
お互いに頬を赤らめた。
不安と期待の新しいスタートに
自信がついた瞬間だった。
桜の木の上でうぐいすが鳴いていた。
雪と桜が混じる春休み。
風が強く花粉も飛び交っている。
「雪、見てみて~。」
桜は、自分と同じ花びらを手のひらに
乗せた。この花も、2週間もすれば散っていく。あっという間に終わってしまうのだ。この一瞬の綺麗さに皆魅了されて、足を止める。
「桜が桜持っているね。」
ズボンのポケットに手を入れて、
じっと桜の手を見た。
今日は、2人で公園の桜を見に来ていた。
桜まつりとあって、出店も並んでいた。
今、流行りのキッチンカーも
集まっている。
「それ、面白くないよ?
でも、信じられない。
去年は雪とまだ出会ってなかったから
一緒にお花見なんてできないもんね。
嬉しいな。」
桜は空を見上げて、
風とともに舞い散る桜とシャーベットの
ような雪が降るのを見た。
「今年はまだ寒いんだよな。
雪も一緒に降ってるから。
へんな感じだな。冬と春の共有。」
「そお?
全然変じゃないよ。
私と雪でしょ?ほら。
ここにもいるし。」
「確かに。」
ケタケタと笑いながら、見つめ合う。
「寒い。」
桜は、肩を震わせた。
雪は、ジャケットを脱いで、
かけてあげた。
「いいよ。雪が寒くなるから。」
「俺は平気だよ。」
「え、雪だから?」
「そうそう。そういうことにしとこう。」
寒い中,2人で桜の花を
写真を撮りながら楽しんだ。
ベビーカーに乗せている親子連れ、
杖をついてご高齢の夫婦、公園の遊具で遊ぶ小学生、雪たちと同じようにデートを楽しむ生徒たちがいた。
キッチンカーではピザ、からあげ、モツ煮、
たこやきなど食欲そそるものがたくさん
あった。
雪はフランクフルトを頼み、
桜はりんご飴を注文した。
ベンチに座って、黙々と食べ続けた。
「もうすぐ、新学期始まるよね。
クラス発表どうなるかな。」
「そんなに心配?」
「クラスの人間関係で
天国と地獄感じるかも。」
「そこまで?大丈夫だよ。
違うクラスでも休み時間会えるでしょ?」
「無理にいいよ。友達必要でしょう。
俺も、強くならないとさ。」
「菊地くんと一緒にならないといいね。」
「それは絶対条件だよね。
本当、まじで。
それ以外ならなんとか過ごせそう。」
桜は、食べ終えると、
そっと、雪の手に右手を添えた。
「大丈夫、私いるから。」
「うん。ありがとう。
…でも、それ、
男としてのプライドが…。」
「え?雪にもプライドあったんだね。」
「ひどくない?」
不意打ちに桜は雪の頬にキスした。
桜の花びらは風で舞い散った。
降っていた雪がようやく晴れて
青空が見えた。
「そのままでいいってこと。
雪は雪のままでいて。」
雪は、返事を返すように桜の唇に
口付けた。
2人とも笑顔になって
お互いに頬を赤らめた。
不安と期待の新しいスタートに
自信がついた瞬間だった。
桜の木の上でうぐいすが鳴いていた。
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