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第61話
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翔太と一緒に暮らし始めて、
星矢は初めて黙って、
颯人の家に泊まることにした。
ルームシェアして、家賃も半分になるし
一緒にいて心も落ち着くと思っていた。
不安な気持ちから解放されると思っていた。
結局、思い通りになっているのは
翔太だけのようで、星矢はあまり良いことは
なかった。
いつもご飯作りは帰りの早い星矢の方。
結局帰りも早いから家事もやってしまうし、
料理も準備してご飯もすぐ食べられる。
新婚の嫁のような状態でエプロンして
待っていても、帰ってくるのは
決まって午後10時。
残業だとか、
上司と一緒に飲みに行っていたという。
今の営業職に転職してから、
元婚約者の莉華と離れることができた
翔太だったが、それ以上にべったりと
くっついてくる上司がいた。
愚痴を何度もこぼすのを飲みながら
付き合っているのに、
帰ってからも電話をかけてくる。
何だか男なのに女々しい上司だった。
莉華と接しているときよりも
かなり面倒な人間関係になっている。
翔太の後輩は全然仕事はできないというし、
踏んだり蹴ったりだ。
一緒に住んでどんなメリットがあると
言うのか。
星矢は不満ばかり増えていく。
それを翔太は知っているのかと
ボイコットをしてみようと作戦を立ててみた。
これは星矢1人で考えているため、
颯人はわからない。
「ごめんね、ちょっと散らかっているけど。」
乱雑にカップ麺の食べ残しや、
飲み残しのペットボトル、
お惣菜のパックや仕事の道具だろうか
分厚いファイルや書類。
ごたごたしたテーブルの真ん中に
ノートパソコンが置いてある。
颯人は星矢が部屋に入って、
これはまずいと慌てて、ゴミ袋を広げて、
ゴミを片付け始めた。
「忙しかったの?」
星矢は一緒になって、
あらゆるゴミをを片付けていく。
「うん、ちょっとね。
先週夜勤が連続してあってさ。
掃除する暇なかったんだ。」
ガサガサとビニールの音が響く。
「そっか。お疲れ様だね。
でも、夜勤ってことは
昼間は家にいるんだもんね。」
「そ、そりゃぁね。
ほぼ、寝てること多いけど。
ほら、ゲームしながらとかね。
画面つけっぱなしで…。」
「あ、PS5買ったんだ。
僕、まだ無い。」
「だってさ、発売したじゃん。
見たくてさ、FF7。」
「リアルだもんね。
映像が。声も入ってるんでしょう。」
「そうそう、声優さんね。」
「映像みたいな。」
「おう、見る?
ちょうど、次、ボス戦だったんだよね。
セフィロスって…。」
「あーーー。懐かしいな。」
颯人は、部屋の掃除をそっちのけに
ゲームを起動した。
星矢はソファに座って、
テレビ画面を凝視した。
少し散らかったリビング。
2人でゲームに夢中になった。
ただ何気ないこの空間が好きだった。
ぼんやりと過ごすこの瞬間が
翔太といるときはなかったなと
振り返る。
一方、その頃、
真っ暗な部屋に帰ってきた翔太は、
テーブルに家の鍵を置いた。
今日の上司の課長との付き合いは、
次から次と飲まされて、
顔を真っ赤になり、
意識もぼーっとしていた。
どさっとソファに倒れ込んだ。
何のために仕事をしていて、
何のためにここにいるのだろうか。
部下のミスを代わりに
顧客へペコペコと謝罪に行き、
取引先の会社にもミスをお詫びに
菓子折り持って、走り回って、
最後には、課長との愚痴を
聞きながらの飲みに行く。
楽しい話でこちらのプライベートのことも
気にしてくれるなら、救いようがあった。
ずっとエンドレスで会社で嫌だったことの
繰り返しを耳にタコができるくらい言われて
一日が終わる。
何が楽しいんだ。
課長の話を延々と聞いて、
自分の楽しいこともできずにふとんに入る。
星矢との関係も悪化するに決まっている。
優しすぎる自分が悪いんだと自分自身を
責めた。
真っ暗なリビング。
酔っ払った翔太は、
スーツ姿のままいびきをかいて、
ソファで熟睡をしていた。
外は土砂降りの雨が降り続けていた。
星矢は初めて黙って、
颯人の家に泊まることにした。
ルームシェアして、家賃も半分になるし
一緒にいて心も落ち着くと思っていた。
不安な気持ちから解放されると思っていた。
結局、思い通りになっているのは
翔太だけのようで、星矢はあまり良いことは
なかった。
いつもご飯作りは帰りの早い星矢の方。
結局帰りも早いから家事もやってしまうし、
料理も準備してご飯もすぐ食べられる。
新婚の嫁のような状態でエプロンして
待っていても、帰ってくるのは
決まって午後10時。
残業だとか、
上司と一緒に飲みに行っていたという。
今の営業職に転職してから、
元婚約者の莉華と離れることができた
翔太だったが、それ以上にべったりと
くっついてくる上司がいた。
愚痴を何度もこぼすのを飲みながら
付き合っているのに、
帰ってからも電話をかけてくる。
何だか男なのに女々しい上司だった。
莉華と接しているときよりも
かなり面倒な人間関係になっている。
翔太の後輩は全然仕事はできないというし、
踏んだり蹴ったりだ。
一緒に住んでどんなメリットがあると
言うのか。
星矢は不満ばかり増えていく。
それを翔太は知っているのかと
ボイコットをしてみようと作戦を立ててみた。
これは星矢1人で考えているため、
颯人はわからない。
「ごめんね、ちょっと散らかっているけど。」
乱雑にカップ麺の食べ残しや、
飲み残しのペットボトル、
お惣菜のパックや仕事の道具だろうか
分厚いファイルや書類。
ごたごたしたテーブルの真ん中に
ノートパソコンが置いてある。
颯人は星矢が部屋に入って、
これはまずいと慌てて、ゴミ袋を広げて、
ゴミを片付け始めた。
「忙しかったの?」
星矢は一緒になって、
あらゆるゴミをを片付けていく。
「うん、ちょっとね。
先週夜勤が連続してあってさ。
掃除する暇なかったんだ。」
ガサガサとビニールの音が響く。
「そっか。お疲れ様だね。
でも、夜勤ってことは
昼間は家にいるんだもんね。」
「そ、そりゃぁね。
ほぼ、寝てること多いけど。
ほら、ゲームしながらとかね。
画面つけっぱなしで…。」
「あ、PS5買ったんだ。
僕、まだ無い。」
「だってさ、発売したじゃん。
見たくてさ、FF7。」
「リアルだもんね。
映像が。声も入ってるんでしょう。」
「そうそう、声優さんね。」
「映像みたいな。」
「おう、見る?
ちょうど、次、ボス戦だったんだよね。
セフィロスって…。」
「あーーー。懐かしいな。」
颯人は、部屋の掃除をそっちのけに
ゲームを起動した。
星矢はソファに座って、
テレビ画面を凝視した。
少し散らかったリビング。
2人でゲームに夢中になった。
ただ何気ないこの空間が好きだった。
ぼんやりと過ごすこの瞬間が
翔太といるときはなかったなと
振り返る。
一方、その頃、
真っ暗な部屋に帰ってきた翔太は、
テーブルに家の鍵を置いた。
今日の上司の課長との付き合いは、
次から次と飲まされて、
顔を真っ赤になり、
意識もぼーっとしていた。
どさっとソファに倒れ込んだ。
何のために仕事をしていて、
何のためにここにいるのだろうか。
部下のミスを代わりに
顧客へペコペコと謝罪に行き、
取引先の会社にもミスをお詫びに
菓子折り持って、走り回って、
最後には、課長との愚痴を
聞きながらの飲みに行く。
楽しい話でこちらのプライベートのことも
気にしてくれるなら、救いようがあった。
ずっとエンドレスで会社で嫌だったことの
繰り返しを耳にタコができるくらい言われて
一日が終わる。
何が楽しいんだ。
課長の話を延々と聞いて、
自分の楽しいこともできずにふとんに入る。
星矢との関係も悪化するに決まっている。
優しすぎる自分が悪いんだと自分自身を
責めた。
真っ暗なリビング。
酔っ払った翔太は、
スーツ姿のままいびきをかいて、
ソファで熟睡をしていた。
外は土砂降りの雨が降り続けていた。
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