47 / 67
第47話
しおりを挟む
バッティングセンターでホームランを
打った翔太の景品の受け取りをしている
ところに星矢のスマホが鳴った。
今は翔太と2人きりで気持ちは
ホクホクしていたが、別な悩みが出てきた。
星矢のスマホの画面には『颯人』の文字が
浮かぶ。
星矢は翔太の目を盗んで、
お店の影に移動して電話を出た。
「もしもし…」
『星矢? ごめん、仕事中だったかな…。
ゴホゴホ…。」
「あ、ううん。大丈夫。
颯人、どうかした?」
『忙しいなら別なときと思って…。
星矢の忘れ物あったみたいで…
うさぎのキーホルダー?
この間、ガシャポンした時の。ゴホゴホ…。』
「あー、あれ。ごめん。
ずっと置きっぱなしだったね。
颯人、風邪ひいてる?」
『ううん。大したことない。すぐ治るから。
そしたら、預かっておくから連絡ちょうだい。』
星矢はなんとなく、颯人の様子が気になった。風邪引いてる声でわざわざ電話くれたことに胸が締め付けられる。
「わかった。ありがとう。お大事にね。」
星矢は、スマホの通話終了ボタンを
タップした。
「……。」
翔太は、ホームランで
当たった景品のswitchをしっかりと抱えて、 星矢をじっと眺めていた。
「あ、ごめんなさい。先輩。もう行きますよね。」
「電話?誰から?」
「え、いや、友達で。
忘れ物預かるからってそれだけの内容…。」
「ふーん。」
「すいません。次どこ行きます?」
「……俺、用事思い出したから。
帰るわ。」
「え?」
「ごめんな。また連絡するから。」
「……はい。あ、それじゃあ。」
星矢は、何となく、
急に突き放された感じがして、寂しくなった。
翔太も振り向かずにささっとその場を立ち去った。本当は1日中一緒に過ごしたかったが、ぐっと我慢した。
さっきの電話の内容を少し後ろから聞いていた翔太は、遠慮していた。
翔太がいなくなったことに心がぽっかり空いた星矢は、颯人の様子が気になって、近くのドラッグストアに駆け出した。
風邪の時に必要だと思われるものを次々とかごに入れ込んだ。
ふと、熱さまシートや、おかゆパウチ、
ゼリー状の栄養ドリンクを持った瞬間に、
なにをしているんだろうと自分の行動に
疑問を感じた。
颯人の風邪の状態を聞いていないし、
もしかしたら、彼女がいるかもしれない。
でも、自分に電話をくれたのは、もしかしたら助けてほしいからなのかもしれない。
いろんなことを妄想した。
でも、なぜか今は無心に買い物をし続ける。
少し血迷ったが、結局は颯人のアパートに
向かうことに決めた。
電話をせずにとりあえず、颯人のアパートの
チャイムを鳴らす。
星矢の左手には、ビニールの買い物袋に
たくさんの風邪には必需品が入っていた。
「はーい。あれ?」
ハンコを持った颯人がやってきた。
宅配便と勘違いしたらしい。
顔を赤くして、フラフラしている。
「こんにちは。」
星矢が声をかけると、
颯人は嬉しそうな顔をして喜んでいた。
「星矢、なんだ、来たの?」
「大丈夫?電話で、咳してたみたいだから、
ドラックストアで色々買ってきたよ。」
袋を持ち上げた瞬間、颯人は星矢に
もたれかかってきた。
めまいがして、立ってるのもやっとのことだったようだ。颯人の額に触れるとものすごく
熱くなっていた。
「うわ、高熱じゃん。
あー、もう。なにやってるのさ。」
そう言いながら、星矢は、か細い体で
颯人の体をヨイショと力を入れて部屋の中に
運んでいた。本人は何をされているかわからないくらい意識が飛んでいる。
お酒で酔ったみたいになっていた。
ソファの上に寝かせて、
そっと毛布をかけてあげた。
早速、ドラックストアで買ってきた額に貼る冷えるシートをペタッとつけるとよほど冷たかったのか、ハッと目が覚めたようだ。
「あ?!冷たい!!
え、あれ、星矢、いたの?」
「……全然大丈夫じゃないじゃん。
かなり高熱だよ。解熱剤飲んだ?」
「……へ?ううん。
飲んでないよ。買い物行けてないから。」
「ほら、スポーツドリンクでも飲んで
水分補給!!」
星矢は袋からスポーツドリンクの
ペットボトルを渡した。
「さ、さんきゅ。」
颯人は言われるがまま、飲み始めた。
星矢の優しさに素直に嬉しかった。
「ご、ごめんな。風邪引いているのうつったら。」
「別に、気にしないよ。
いいから、治すことに専念して。」
「あ、ああ。」
「本当はソファじゃなくて、
しっかりベッドで寝た方がいいと思うけど。」
「確かにそうだな。移動するよ。」
颯人はフラフラな体をゆっくりとかたつむりのように移動した。見かねた星矢は肩を貸して、ベッドの方まで誘導した。
「わ、悪いな。助かるよ。」
「しっかり寝て治して。
ここに飲み物と薬置いておくよ?」
「ありがとう。」
そう言って、颯人は、
薬と飲み物を飲むと目を
ゆっくりと閉じて眠り始めた。
星矢は、颯人をしっかりと見届けて、
リビングのソファに移動した。
なぜか颯人のそばにいる。
星矢は、それで少しホッとする。
翔太と一緒にいたはずなのに、
颯人と過ごしていいのかとほんの少し
罪悪感を感じてしまう。
マグカップにコーヒーを入れて、
心を落ち着かせていた。
静かな部屋の中では
時計の秒針の音が響いていた。
打った翔太の景品の受け取りをしている
ところに星矢のスマホが鳴った。
今は翔太と2人きりで気持ちは
ホクホクしていたが、別な悩みが出てきた。
星矢のスマホの画面には『颯人』の文字が
浮かぶ。
星矢は翔太の目を盗んで、
お店の影に移動して電話を出た。
「もしもし…」
『星矢? ごめん、仕事中だったかな…。
ゴホゴホ…。」
「あ、ううん。大丈夫。
颯人、どうかした?」
『忙しいなら別なときと思って…。
星矢の忘れ物あったみたいで…
うさぎのキーホルダー?
この間、ガシャポンした時の。ゴホゴホ…。』
「あー、あれ。ごめん。
ずっと置きっぱなしだったね。
颯人、風邪ひいてる?」
『ううん。大したことない。すぐ治るから。
そしたら、預かっておくから連絡ちょうだい。』
星矢はなんとなく、颯人の様子が気になった。風邪引いてる声でわざわざ電話くれたことに胸が締め付けられる。
「わかった。ありがとう。お大事にね。」
星矢は、スマホの通話終了ボタンを
タップした。
「……。」
翔太は、ホームランで
当たった景品のswitchをしっかりと抱えて、 星矢をじっと眺めていた。
「あ、ごめんなさい。先輩。もう行きますよね。」
「電話?誰から?」
「え、いや、友達で。
忘れ物預かるからってそれだけの内容…。」
「ふーん。」
「すいません。次どこ行きます?」
「……俺、用事思い出したから。
帰るわ。」
「え?」
「ごめんな。また連絡するから。」
「……はい。あ、それじゃあ。」
星矢は、何となく、
急に突き放された感じがして、寂しくなった。
翔太も振り向かずにささっとその場を立ち去った。本当は1日中一緒に過ごしたかったが、ぐっと我慢した。
さっきの電話の内容を少し後ろから聞いていた翔太は、遠慮していた。
翔太がいなくなったことに心がぽっかり空いた星矢は、颯人の様子が気になって、近くのドラッグストアに駆け出した。
風邪の時に必要だと思われるものを次々とかごに入れ込んだ。
ふと、熱さまシートや、おかゆパウチ、
ゼリー状の栄養ドリンクを持った瞬間に、
なにをしているんだろうと自分の行動に
疑問を感じた。
颯人の風邪の状態を聞いていないし、
もしかしたら、彼女がいるかもしれない。
でも、自分に電話をくれたのは、もしかしたら助けてほしいからなのかもしれない。
いろんなことを妄想した。
でも、なぜか今は無心に買い物をし続ける。
少し血迷ったが、結局は颯人のアパートに
向かうことに決めた。
電話をせずにとりあえず、颯人のアパートの
チャイムを鳴らす。
星矢の左手には、ビニールの買い物袋に
たくさんの風邪には必需品が入っていた。
「はーい。あれ?」
ハンコを持った颯人がやってきた。
宅配便と勘違いしたらしい。
顔を赤くして、フラフラしている。
「こんにちは。」
星矢が声をかけると、
颯人は嬉しそうな顔をして喜んでいた。
「星矢、なんだ、来たの?」
「大丈夫?電話で、咳してたみたいだから、
ドラックストアで色々買ってきたよ。」
袋を持ち上げた瞬間、颯人は星矢に
もたれかかってきた。
めまいがして、立ってるのもやっとのことだったようだ。颯人の額に触れるとものすごく
熱くなっていた。
「うわ、高熱じゃん。
あー、もう。なにやってるのさ。」
そう言いながら、星矢は、か細い体で
颯人の体をヨイショと力を入れて部屋の中に
運んでいた。本人は何をされているかわからないくらい意識が飛んでいる。
お酒で酔ったみたいになっていた。
ソファの上に寝かせて、
そっと毛布をかけてあげた。
早速、ドラックストアで買ってきた額に貼る冷えるシートをペタッとつけるとよほど冷たかったのか、ハッと目が覚めたようだ。
「あ?!冷たい!!
え、あれ、星矢、いたの?」
「……全然大丈夫じゃないじゃん。
かなり高熱だよ。解熱剤飲んだ?」
「……へ?ううん。
飲んでないよ。買い物行けてないから。」
「ほら、スポーツドリンクでも飲んで
水分補給!!」
星矢は袋からスポーツドリンクの
ペットボトルを渡した。
「さ、さんきゅ。」
颯人は言われるがまま、飲み始めた。
星矢の優しさに素直に嬉しかった。
「ご、ごめんな。風邪引いているのうつったら。」
「別に、気にしないよ。
いいから、治すことに専念して。」
「あ、ああ。」
「本当はソファじゃなくて、
しっかりベッドで寝た方がいいと思うけど。」
「確かにそうだな。移動するよ。」
颯人はフラフラな体をゆっくりとかたつむりのように移動した。見かねた星矢は肩を貸して、ベッドの方まで誘導した。
「わ、悪いな。助かるよ。」
「しっかり寝て治して。
ここに飲み物と薬置いておくよ?」
「ありがとう。」
そう言って、颯人は、
薬と飲み物を飲むと目を
ゆっくりと閉じて眠り始めた。
星矢は、颯人をしっかりと見届けて、
リビングのソファに移動した。
なぜか颯人のそばにいる。
星矢は、それで少しホッとする。
翔太と一緒にいたはずなのに、
颯人と過ごしていいのかとほんの少し
罪悪感を感じてしまう。
マグカップにコーヒーを入れて、
心を落ち着かせていた。
静かな部屋の中では
時計の秒針の音が響いていた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる