7 / 61
第7話
しおりを挟む
昼休みのチャイムが鳴った。
まだ授業が終わっていないのに教室内は
ざわついていた。
黒板の字を書き終えた日本史担当の
木村先生は、チョークを置いた。
「チャイム鳴ったけど、
今日は、ここまで板書するように!
はい、日直挨拶して。」
「起立、注目、礼。」
挨拶を終えると椅子の音が
ガタガタと響いた。
最後まで真面目に板書する人は数少ない。
これからお昼で購買部のパン争いがある
からだ。
スクールカースト制上位の
五十嵐竜次《いがらしりゅうじ》が
黒板にメモ書きを貼り付けた。
『書き終わってないから消さないで!』
「これでよし。
ほら、早坂!購買部行くぞ。」
「はいはい。
俺だって、まだ書き終えてないのに…。
全く、もう。」
バックの中から2つ折り財布を
取り出して、ズボンのポケットに
移動させた。
雪菜もどうにか日本史の内容を
全てノートに書き終えることができた。
「やった、終わった。
緋奈子、購買部行くんでしょう。
売り切れちゃうから、行こうよ。」
「え、待って、あと1行書いたら
終わるよ…。
はい、今、書き終えたよ。
よし、行こう。
さぁ、行こう。
今すぐ行こう。」
慌てて、バックから長財布を取り出して、
行く準備をした緋奈子。
雪菜はすでに財布は手の中にあった。
「緋奈子、大丈夫?
テンション高いね。」
「だって、何か購買部。
楽しいじゃん?
今日は何のパンが売ってるかな?」
「私、最近はあんバターパンが
好きでよく買ってるよ。
あと牛乳瓶もあるじゃない?
フルーツ牛乳が1番好きなんだ。」
「そうなんだ。
私は、チョコクロワッサンが好きだよ。
コーヒー牛乳派かな。
早く行こう。」
緋奈子は、雪菜の背中を押しながら、
廊下を進む。
そのすぐ後ろを凛汰郎がついてきた。
何も言わずに同じ方向へ進んでいる。
雪菜はドキドキしながら、
階段を緋奈子と駆け降りた。
何かするわけでもない。
約束してるわけでもない。
それでも近くにいるだけで
心臓が高鳴る。
緋奈子には見つからないようにと
必死だった。
横目でチラチラと確認しながら、
購買部に並んだ。
ふと、斜め前の列を見ると、
見たことある生徒がいた。
「ちょっと、雪菜!!」
約束していたはずの齋藤雅俊だった。
「あ、あれ。雅俊。
ごめん、何だっけ。」
列に並びながら、少し遠くから叫ぶ。
「今日、昼休みに
購買部って言ってたっしょ?」
「あ、そうだった。
ごめん。
どうすればいい?」
「わかった。そのまま、並んでて。
俺もこのままこっち並ぶから。」
「雪菜、良かったの?
幼馴染だっけ。
話とかあったんじゃないの?」
緋奈子が心配して、声をかけてくれた。
「いいのいいの。
いつも家が近所だから会うし、
忘れてても大した用事じゃないから。」
「そんなわからないじゃん。」
そんな話をしてるうちにいつの間にか、
列に並んで、先に買い物できたらしく、
雅俊が雪菜に近づいてきた。
その後ろのラウンジでは自販機で飲み物を
1人で買う凛汰郎の姿があった。
「はい!雪菜の好きなフルーツ牛乳。
すぐ売り切れるって言ってたろ?
昨日バイトの給料日だったからさ。
受け取って。」
雅俊は、左手で雪菜の手を持ち上げて、
買ってきた牛乳瓶に入ったフルーツ牛乳を
乗せた。
「あー、これを渡すために
わざわざ?」
「そう。いいでしょう。
こういう機会がないと学校で
会えないんだからさ。」
「あ、ありがとう。」
好きな飲み物を手に入れて純粋に
嬉しかった。
なぜか、雅俊の後頭部にささる視線を
感じたが、頭をかいて気にしないふりを
した。
「どういたしまして。」
「う、うん。」
「近々、ウチに遊びに来てよ。
ばぁちゃんが、雪菜の顔見たいって
言ってるからさ。」
「あー、美智子おばあちゃん?
元気にしていたの?」
「超、元気だよ。
今朝もきゅうり取ってくるわって
張り切って農作業してたよ。
俺も、楽しみにしてるからさ。」
軽くポンポンポンと雪菜の肩を叩いては
立ち去っていく。
さらにラウンジの奥の方で飲み物を
買っていた凛汰郎が通り過ぎていく。
雪菜の顔を思いっきり睨みながら
去っていく。
何もしていないのに、
いったい何をしたというのか。
頭を悩ます行動で雪菜は参っていた。
まだ授業が終わっていないのに教室内は
ざわついていた。
黒板の字を書き終えた日本史担当の
木村先生は、チョークを置いた。
「チャイム鳴ったけど、
今日は、ここまで板書するように!
はい、日直挨拶して。」
「起立、注目、礼。」
挨拶を終えると椅子の音が
ガタガタと響いた。
最後まで真面目に板書する人は数少ない。
これからお昼で購買部のパン争いがある
からだ。
スクールカースト制上位の
五十嵐竜次《いがらしりゅうじ》が
黒板にメモ書きを貼り付けた。
『書き終わってないから消さないで!』
「これでよし。
ほら、早坂!購買部行くぞ。」
「はいはい。
俺だって、まだ書き終えてないのに…。
全く、もう。」
バックの中から2つ折り財布を
取り出して、ズボンのポケットに
移動させた。
雪菜もどうにか日本史の内容を
全てノートに書き終えることができた。
「やった、終わった。
緋奈子、購買部行くんでしょう。
売り切れちゃうから、行こうよ。」
「え、待って、あと1行書いたら
終わるよ…。
はい、今、書き終えたよ。
よし、行こう。
さぁ、行こう。
今すぐ行こう。」
慌てて、バックから長財布を取り出して、
行く準備をした緋奈子。
雪菜はすでに財布は手の中にあった。
「緋奈子、大丈夫?
テンション高いね。」
「だって、何か購買部。
楽しいじゃん?
今日は何のパンが売ってるかな?」
「私、最近はあんバターパンが
好きでよく買ってるよ。
あと牛乳瓶もあるじゃない?
フルーツ牛乳が1番好きなんだ。」
「そうなんだ。
私は、チョコクロワッサンが好きだよ。
コーヒー牛乳派かな。
早く行こう。」
緋奈子は、雪菜の背中を押しながら、
廊下を進む。
そのすぐ後ろを凛汰郎がついてきた。
何も言わずに同じ方向へ進んでいる。
雪菜はドキドキしながら、
階段を緋奈子と駆け降りた。
何かするわけでもない。
約束してるわけでもない。
それでも近くにいるだけで
心臓が高鳴る。
緋奈子には見つからないようにと
必死だった。
横目でチラチラと確認しながら、
購買部に並んだ。
ふと、斜め前の列を見ると、
見たことある生徒がいた。
「ちょっと、雪菜!!」
約束していたはずの齋藤雅俊だった。
「あ、あれ。雅俊。
ごめん、何だっけ。」
列に並びながら、少し遠くから叫ぶ。
「今日、昼休みに
購買部って言ってたっしょ?」
「あ、そうだった。
ごめん。
どうすればいい?」
「わかった。そのまま、並んでて。
俺もこのままこっち並ぶから。」
「雪菜、良かったの?
幼馴染だっけ。
話とかあったんじゃないの?」
緋奈子が心配して、声をかけてくれた。
「いいのいいの。
いつも家が近所だから会うし、
忘れてても大した用事じゃないから。」
「そんなわからないじゃん。」
そんな話をしてるうちにいつの間にか、
列に並んで、先に買い物できたらしく、
雅俊が雪菜に近づいてきた。
その後ろのラウンジでは自販機で飲み物を
1人で買う凛汰郎の姿があった。
「はい!雪菜の好きなフルーツ牛乳。
すぐ売り切れるって言ってたろ?
昨日バイトの給料日だったからさ。
受け取って。」
雅俊は、左手で雪菜の手を持ち上げて、
買ってきた牛乳瓶に入ったフルーツ牛乳を
乗せた。
「あー、これを渡すために
わざわざ?」
「そう。いいでしょう。
こういう機会がないと学校で
会えないんだからさ。」
「あ、ありがとう。」
好きな飲み物を手に入れて純粋に
嬉しかった。
なぜか、雅俊の後頭部にささる視線を
感じたが、頭をかいて気にしないふりを
した。
「どういたしまして。」
「う、うん。」
「近々、ウチに遊びに来てよ。
ばぁちゃんが、雪菜の顔見たいって
言ってるからさ。」
「あー、美智子おばあちゃん?
元気にしていたの?」
「超、元気だよ。
今朝もきゅうり取ってくるわって
張り切って農作業してたよ。
俺も、楽しみにしてるからさ。」
軽くポンポンポンと雪菜の肩を叩いては
立ち去っていく。
さらにラウンジの奥の方で飲み物を
買っていた凛汰郎が通り過ぎていく。
雪菜の顔を思いっきり睨みながら
去っていく。
何もしていないのに、
いったい何をしたというのか。
頭を悩ます行動で雪菜は参っていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
愛人がいる夫との政略結婚の行く末は?
しゃーりん
恋愛
子爵令嬢セピアは侯爵令息リースハルトと政略結婚した。
財政難に陥った侯爵家が資産家の子爵家を頼ったことによるもの。
初夜が終わった直後、『愛する人がいる』と告げたリースハルト。
まごうことなき政略結婚。教会で愛を誓ったけれども、もう無効なのね。
好きにしたらいいけど、愛人を囲うお金はあなたの交際費からだからね?
実家の爵位が下でも援助しているのはこちらだからお金を厳しく管理します。
侯爵家がどうなろうと構わないと思っていたけれど、将来の子供のために頑張るセピアのお話です。
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる