上 下
37 / 51

第37話 喫茶店でクリームソーダ

しおりを挟む
「ねぇ、悠?
 最近さ、
 翼が付き合い悪くて…
 教室でいる時も何か
 避けられている気がしてさ。
 どうすればいいかな?」

 学校帰りの放課後、昔ながらの喫茶店に
 向かい合わせに座りながら、咲夜は
 バニラアイスが乗ったメロンクリーム
 ソーダを飲んでいた。1番上のさくらんぼを
 真っ先に手をつける。

 悠は、甘いのが苦手な方で、
 ホットコーヒーを飲んでいた。

 喫茶店から通りかかる生徒たちが
 悠のことを見て、手を振っていた。
 改めて、女子なのに女子にモテモテだと
 わかる。
 制服も最近、スカートじゃなくて、
 ズボンになっている。

 この人こう見えて女子なんですよと
 ネタバラシを周りにしたいくらいに
 秘密を隠している感覚に陥った。

 黄色い声援が沸く。
 咲夜は、悠に嫉妬した。
 ストローでメロンソーダをズズッと
 飲んだ。ご機嫌ななめに悠の顔を見る。

「な、何?」

 コーヒーを飲んで、
 マグカップをソーサーに乗せた。

「別にぃ、何でもない」

 ふんとため息をつく。

「もしかして、妬いてる?」

「全然…」

 嘘をついた。ごまかすのに必死。
 ポーカーフェイスの顔を作れない咲夜。
 悠は立ち上がり、咲夜の頬をふにっと
 掴んだ。

「え、どこ行くの?」

「トイレ。待ってて」

 悠は気分転換をかねて、トイレに行った。
 喫茶店のトイレは男女混合だったため、
 気にせず入れた。
 
 咲夜は夕日が沈み、移りゆく景色と
 外で行き交う人を眺めていた。
 今はとても落ち着いていた。
 あんなに不安になっていたのが
 嘘のようで、むしろ刺激不足だなと
 感じ始めていた。

 ふと、外を見ていたら、見たことある
 2人が街を並んで歩いていた。

「あれ、あれって…翼?」

 咲夜は窓のギリギリに顔を寄せて、
 外を見る。 
 隣同士歩いているのは、翼と琉偉だった。

 何となく、胸がざわざわした。
 何とも思っていないはずだと思っていた。
 冷たいバニラアイスを食べていたからか、
 今起きている出来事にストレスを感じた
 のか、こめかみが痛かった。

「お待たせ。咲夜、どうした? 
 アイス溶けちゃうよ?」
 
 席に戻ってすぐに味変化させようと
 コーヒーにミルクと砂糖を入れて、
 スプーンでくるくるとまわして、
 白いミルクとコーヒーが混ざる様子を
 じっと見つめていた。

「えっと……。」
(琉偉の事を話したら、
 ヤキモチ妬くだろうなぁ)

 咲夜は、しばし黙っていた。
 悠はコーヒーからカフェオレになった
 マグカップを持ち上げて、
 ずずっと飲んだ。

 首をかしげて、咲夜の首元に手を
 持っていく。
 はっと気づいて、体を後ろに動かした。

「ごめん、びっくりしたよね。
 そこのワイシャツに髪の毛ついてた
 からさ。取ってあげたよ。
 大丈夫」

「よく気がつくね。
 ありがとう」

 悠は、細かいところにすぐ気がついた。
 咲夜は胸あたりを触られるんじゃないかと
 ドキドキした。
 鳥肌がたつのがとまらない。

「今日、うち来てみる?」

 悠が突然話した。
 咲夜は初めてお呼ばれだと思い、
 嬉しかった。
 悠の部屋はどんな感じなのか
 気になった。

 結局のところ、
 咲夜は、琉偉と翼が並んで歩いていた
 話は悠には話せなかった。

「行ってみようかな」

「うん。んじゃ店出ようか」

 悠は自然の流れで
 くるっと丸まった伝票を持って
 会計レジへ行く。
 咲夜は慌てて、自分も出すと
 アピールしたが完全に拒否された。

 紳士的な対応にきゅんとなった。

 喫茶店のドアがガラガラと鳴った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう一度時間を巻き戻せたら

花井美月
青春
中嶋香織は、県内でも屈指の進学校に入学した高校一年生。 香織は七年前、交通事故に遭い、香織を庇って亡くなった命の恩人は、未だ身元が判明していない。 高校の入学式の日に、運命的な出会いがあった。 その人は偶然にも、入部を希望した写真部の先輩だった。 カメラを介して親しくなり、お付き合いが始まった。 そんなある日、幼馴染の友達と一緒に遊んでいる時に、彼女が衝撃的な写真を見つけた。 それは七年前のもので、『現在』の先輩の姿が写り込んでいたのだ。 それも一枚だけではない。 先輩、もしかしてあなたが私の命の恩人なんですか……? だとしたら、先輩は、もうすぐ私を庇って死んでしまうーー 現在進行形で執筆しているため、タイトル変わるかもです。 2024/07/08 連載開始 2024/07/29 完結

私を返せ!〜親友に裏切られ、人生を奪われた私のどん底からの復讐物語〜

天咲 琴葉
青春
――あの日、私は親友に顔も家族も、人生すらも奪い盗られた。 ごく普通の子供だった『私』。 このまま平凡だけど幸せな人生を歩み、大切な幼馴染と将来を共にする――そんな未来を思い描いていた。 でも、そんな私の人生はある少女と親友になってしまったことで一変してしまう。 親友と思っていた少女は、独占欲と執着のモンスターでした。 これは、親友により人生のどん底に叩き落された主人公が、その手で全てを奪い返す復讐の――女同士の凄惨な闘いの物語だ。 ※いじめや虐待、暴力の描写があります。苦手な方はページバックをお願いします。

暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~

雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です 鬼音姫の哉原樹 彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります 親友の白桐優子 優子の謎の失踪から突然の再会 何故彼女は姿を消したのか 私の中学の頃の実話を元にしました

氷の蝶は死神の花の夢をみる

河津田 眞紀
青春
刈磨汰一(かるまたいち)は、生まれながらの不運体質だ。 幼い頃から数々の不運に見舞われ、二週間前にも交通事故に遭ったばかり。 久しぶりに高校へ登校するも、野球ボールが顔面に直撃し昏倒。生死の境を彷徨う。 そんな彼の前に「神」を名乗る怪しいチャラ男が現れ、命を助ける条件としてこんな依頼を突きつけてきた。 「その"厄"を引き寄せる体質を使って、神さまのたまごである"彩岐蝶梨"を護ってくれないか?」 彩岐蝶梨(さいきちより)。 それは、汰一が密かに想いを寄せる少女の名だった。 不運で目立たない汰一と、クール美少女で人気者な蝶梨。 まるで接点のない二人だったが、保健室でのやり取りを機に関係を持ち始める。 一緒に花壇の手入れをしたり、漫画を読んだり、勉強をしたり…… 放課後の逢瀬を重ねる度に見えてくる、蝶梨の隙だらけな素顔。 その可愛さに悶えながら、汰一は想いをさらに強めるが……彼はまだ知らない。 完璧美少女な蝶梨に、本人も無自覚な"危険すぎる願望"があることを…… 蝶梨に迫る、この世ならざる敵との戦い。 そして、次第に暴走し始める彼女の変態性。 その可愛すぎる変態フェイスを独占するため、汰一は神の力を駆使し、今日も闇を狩る。

バス・ドライバー日記

深町珠
青春
愛紗は、18歳で故郷を離れ、バスガイドとして働いていたが 年々不足する路線バスドライバーとして乗務する事を志願。 鉄道運転士への憧れが、どこかにあったのかもしれない。 しかし、過酷な任務。女子であるが故の危険性。会社は 長閑な田舎への転属が適当ではないかと判断する。 複雑な感情を抱き、彼女は一週間の休暇を申し出、帰郷する。 友人達と共に旅しながら、少しづつ、気持ちを開放していく愛紗。 様々な出会いがあり、別れを経験して・・・。 現役路線バスドライバーであった方の手記から、現実を背景に描く セミドキュメンタリードラマ。 日生愛紗(21):バスガイド=>ドライバーへ転身中 藤野友里恵(20):同僚ガイド 青島由香(20):同僚ガイド。友里恵の親友。 石川菜由(21):愛紗の親友。寿退社=>主婦 日光真由美(19):人吉車掌区乗務員。車掌補。 荻恵:21歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 坂倉真由美:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 三芳らら:15歳。立野在住。熊本高校の学生、猫が好き。 鈴木朋恵:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 板倉裕子:20歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 日高パトリシアかずみ:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区、客室乗務員。 坂倉奈緒美:16歳。熊本在住。熊本高校の学生、三芳ららの友達・坂倉真由美の妹。 橋本理沙:25歳。大分在住。国鉄大分機関区、機関士。 三井洋子:21歳。大分在住。国鉄大分車掌区。車掌。 松井文子:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区。客室乗務員。

fruit tarte

天ノ谷 霙
青春
退屈な毎日に抱える悩み。そんな悩みを吹き飛ばしませんか? それと一緒にご注文をどうぞ。 ああっ!ただしご注意、中にはとっても甘い物に紛れて「塩」や「ビターチョコレート」が隠れているかもしれません。 もしかすると、「薬」や「毒」までもを飲み込んでいるかもしれません。 でもご安心を。そんな時は味見をしてすぐにやめれば良いのです。 さぁ、いらっしゃいませ。本日はどのような味をお探しですか?

『私記』

篠崎俊樹
青春
私の43年間の人生について、自伝風に書いていく小説です。ドリーム小説大賞に公募するために、連載形式で書いていきます。どうぞよろしくお願いいたします。なお、読んでくださった方は、投票等をしていただき、出版の後押しになれば、と思っております。よろしくお願いいたします。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...