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第31話 石ころが転がる通学路

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放課後の帰り道、いつの間にか
咲夜は、毎日琉偉に警護を頼む形になった。

悠がストーカーしてこないかと
後ろや左右を確認しながら進む。
咲夜からべったりと離れない。
そこまでくっつけとは言ってない。
不意に腕が胸にあたる。

「ちょ、ちょっと!!
 今のわざとでしょう!!」

「ち、ちげーよ。
 ま、間違って当たったに決まってるだろ。
 ったく、せっかく咲夜の
 ガードマンしてるのに失敬なやつだな」

「いや、あのね、琉偉くん。
 守ってくれるのは嬉しいんだけど、
 君がストーカー以上に嫌がることしたら
 元も子もないんだからね!
 わかってる?」

「てか、さっきから琉偉って…
 先輩って呼べや。
 まったく、どこでお育ちに
 なったんだか」

 むつけて、ズボンのポケットに
 手をつっこんで、咲夜を追い抜いて
 行ってしまう。

「ちょ、ちょっと、ガードマンが先に
 行ってどうするのよ」

「ガードマンは閉店です。
 ガラガラーーー」

 琉偉は目の前にシャッターがある
 そぶりをした。

「え?!
 なんでそうなるのよ!?」

「てかさ、そもそも交際?してたやつ
 なんだろ?俺は認めないけど、
 男女じゃない交際は。
 でもさ、なんで信じてあげないわけ?
 確かに尾行するのは、ちょっとって
 思ったけどさ」

「え、琉偉からそういうこと言われると
 思わなかった」

「あ、今のなし。
 やっぱなし。
 だよな、そいつ、
 すごいひどいやつだよな。
 尾行はするし、盗聴器やGPS勝手に
 登録するしなぁ。困ったやつだ」

 駅の方に歩きながら、言う琉偉。
 咲夜は仕方なしに後ろをついていく。
 はたからみたら、2人で歩いていたら、
 付き合ってるんじゃないかと疑われるなと
 今頃になってドキドキしてきた。

 不意に、琉偉は振り返って
 近くにあった電柱に
 手をついて咲夜を壁ドンならぬ、
 電柱どんをした。
 目の前に顔がある。
 シトラスの制汗剤の匂いが漂った。
 男子のくせに良い匂いがする。
 自分は臭くないか気になってしまった。

「あんま、俺のこと、考えないって
 よくないと思うけど?!」

「え……それってどういうこと?
 んっ!!」

 顎をおさえながら、琉偉は、口付けた。
 何も言わせなかった。
 目を大きく見開いて、驚く咲夜。
 幼馴染といえど、恋愛対象として一切
 考えてなかった咲夜にとって、
 驚きでしかないし、気持ちをどのように
 しておけばわからなくなった。

 「⚪︎△▫︎…」

 言葉にならない言葉が出た。

「……」

 キスをした後の琉偉の顔は
 どこか寂しそうだった。
 何も言わずに立ち去った。

 咲夜は、下唇を人差し指と親指で
 つかんだ。
 リップクリームもリップグロスも
 何もつけてない素肌の唇は
 少しだけカサカサしていた。
 ぷにぷにと触っていると
 無意識に頬を涙が伝う。

 こうなりたかったわけじゃない。

 好きな人は琉偉じゃない。

 全然嬉しくなかった。
 
 日が長い空には白い月が浮かんでいた。
 

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