ブレーメン

もちっぱち

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ここは別世界

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歓声が響く会場にアシェルが率いる
ブレーメンのメンバーは、
ステージにそれぞれ楽器を持ちながら、
定位置に着いた。

他の出演者の演奏が無事に終わっていた。
それまでの曲や点数、
投票数なんてまともに見ることが
できなかった。

相手がどんな曲だったかなんて、
自分の中で甲乙をつけてしまうかも
しれない。

あえて、アシェルは、ヘッドホンをつけて
自分の歌を何度も聴いて練習していた。

そして、集中力を増して、
今、ギターを持って、ステージに立つ。
マイクスタンドの前に佇んだ。

 様々な動物や妖精たちがたくさん
 ならんでこちらを見ている。
 うちわやペンライトを持って盛り上げて 
 くれてる観客もいる。

 今日演奏するのは、
 初めて公に披露する歌だった。

 アシェルは後ろにいるメンバーのそれぞれ
 目を見て、頷いた。

 緊張度が高まる。
 深呼吸して、最初の歌の声を発してすぐに
 オリヴァのドラムの音が響く。
 
 アシェルの歌声とギター、ボスのベース、
 リアムのキーボード、クレアのフルートが
 会場に 響き渡った。

【♩ 君の声は 届いているか
  言いたいことは 言えているか
  
 我慢し続けて 辛かったら
 逃げれば いい

 必ず 自分の居場所は あるはずだから
 過去に 振り回されるな
 未来を 見続けよう
 君にしか できないこと
 やり続けよう

 君の声は 届いているか
 言いたいことは 言えているか
 
 不満を ため続けて
 爆発するなら
 吐き出せば いい

 周りの 言葉に 敏感に
 なっていたら
 疲れている 証拠
 
 自分が 自分を
 好きに なれないなんて
 誰も 好きになっては くれない

 明日は 君のために やってくる

 嫌なことが おきたら
 もういいことしか おきないんだ

 wow wow wow・・・・・】

 歌いおえると、オリヴァのたたいた
 シンバルが心地よく聞こえた。
 
 一瞬しずかになり、
 これはまずかったのかと不安になったが、
 想像以上の盛り上がりで
 歓声が響く。

 観客のテンションはMAXだった。
 口笛を吹く音が聞こえた。

 花火がステージの両脇で打ち上げられた。

 それをステージ下で
 見ていたジョーカーのメンバーの
 ロックは舌打ちをして、
 面白くない顔をしては楽屋に入って
 行った。
 

「ブレーメンのみなさん、お疲れ様でした。
 最上級の盛り上がりでした。
 トリを飾っていただいただけ
 ありますね。観客のみなさんも
 楽しんでいただけたことでしょう。
 さてさて、
 会場のみなさんももちろんのこと、
 今、ご覧になっている視聴者のみなさん。
 いよいよ、投票のお時間です。
 ただいま、Bブロックの戦いでした。
 【シブカキーズ】
 【温泉シスターズ】
 【異世界ブラザーズ】
 【チョークは食べ物じゃない】
 【ブレーメン】の
 5組のメンバーの中から1組を選んで、
 投票ボタンを押してください!
 さぁ、どうぞ。」

 軽快なリズムとともに
 投票数がどんどん上がっていく。
 グラフが表示されて
 上がって下がってを繰り返していた。

 すると画面が真っ暗になり、
 どれが1位かわからなくなった。

「発表します!」

 司会者の声と同時に
 画面に大きく投票数の文字が表示された。

【ブレーメン 23152】
【シブカキーズ 2596】
【チョークは食べ物じゃない 2328】
【異世界ブラザーズ 1924】

「なんと、ブレーメンが
 13152票を
 獲得しました!!
 おめでとうございます!!
 Aブロックは【ジョーカー】でしたので、
 Bブロックは【ブレーメン】となります。
 この後、直接対決となります。
 準備までみなさましばらく
 お待ちくださいませ。」

「ちょっと、アシェル!?
 聞いた?
 わたしたち決勝戦出場だね。
 すごいね、やったね。」

「とりあえず、最初の関門突破したな。」
 
 ボスがほっと肩を撫で下ろした。

「マジで…。
 信じられない。
 夢じゃないよね。」

 ルークはオリヴァの頬をつねった。

「うん、夢じゃない。」

「まさか、ここで勝てるなんて
 思わなかった…。」

 アシェルは、着ていたシャツを
 ぎゅっと握った。

「やった、やったんだよ。
 俺たち。
 できるんだ。
 今までのコツコツ取り組んできた練習は
 無駄じゃなかったよな、な?」

「そうですよ。
 アシェルさん。もっと自信持って。
 仲間を信じる気持ちも!!
 チームブレーメンさらにてっぺん
 目指しましょう!!」

 ルークは、アシェルの横に立ち、
 みなに声をかけた。
 
 円陣を組んで、気合いを入れた。


「それは、どうかなぁ。」

 壁によりかかり、ジェマンドは、
 腕を組んでこちらに歩み寄ってくる。

「ジェマンド!?」

 ボスは血相を変えて、ジェマンドのそばに
 行った。

「やぁ、シルバー。久しぶりだなぁ。
 まさか、こんなところで会えるなんてね。
 同業者になってるなんて夢にも
 思わないさ。」

 ボスの本名である名前を呼んだ。

「ああ、そうだなぁ。
 俺も、お前にはバレないようにと
 過ごしてきたが、
 さすがにバンドメンバーに入ってしまうと
 バレないようにするのは
 難しくてね。」

「なんで、私たちに近づくのか
 検討がつかないけど、
 この戦いは負けられないから。
 指くわえて見ておくといい。」

 ジェマンドは楽屋の方に
 降りて行こうとする。

「お前の悪事には気づいているんだぞ!!
 まさか、この戦いは絶対譲らない。
 なんとしてでもてっぺん
 取ってやるんだ!!」

 シルバーの名前を持つボスは、
 威嚇しながらジェマンドに叫んだ。

「何のことを言ってるのか
 全然わかりません。
 望むところです。」

 歯を食いしばってギリギリ音を出すボス。

「あのさ、ボスってシルバーって
 いうんだな。」

「そうなんですね。
 実は。
 みなさんには教えてなかったですけど。」

 ルークとアシェルがボソボソと話す。

「みんな!!」
 ボスが叫ぶ。

「この戦い、絶対優勝だぞ!!」

「おーーー。」

気合いがいつもより入った。
ボスの目が地走って充血していた。

クレアはアシェルのシャツの後ろの裾を
少し触って元気をもらっていた。

「何かした?」

「ううん。なんでもない。」

クレアは、ごまかしては、
楽屋の方にすたこらさっさと移動した。


「なんだよぉ。」

そう言いながらもちょっかいかけられて
嬉しいそうだった。
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