ブレーメン

もちっぱち

文字の大きさ
上 下
35 / 44

何をしているのか

しおりを挟む
異色のメンバーが砂浜で対決している。

狼のアシェル、亀のオリヴァ、
うさぎのリアム、妖精のクレア。

なんだかんだで、殺気だった目をしながら、
ひよこのルークに言われた通り、
暑い砂の上に立ち、柔らかいピンクの
ビーチボールを使って対決していた。

暑いけれど、スライディングしながら、
ボールを受け止めて、楽しんでいた。

初めは、なんでロックバンドがこんなことしないといけないのかと思いながら、ブツブツ文句を言い合っていたが、集中すると、案外楽しんでいる。

クレアが取れなかった時
「バック。」と叫び、オリヴァが受け止める。

アシェルがネットギリギリで
ブロックをしようとしたら、
ボールが弾いて危なく、
コートの外につきそうになったが、
リアムがフォローに入って、
ボールをグーで受け止めた。

いつも楽器演奏する時は、楽器しか見ていなかったが、視線が変わり、周りの景色も眺めながら、メンバーの行動を注意深く見るようになった。

外の世界を知ることで、活性化する。

脳がフル活動している。

あれしないとこれしないという
フラストレーションが湧き起こる。

ボールを追いかけるというミッションが
自動的に発生することで、
メンバーとのコミュニケーションが増えた。

楽器ばかり歌を歌うことばかり
見てはいけないとなんとなく、
感じた4人だった。

相手が今、何をしたいか。
どんな曲を作り上げたいか。
どんな歌声でどんな楽器の加減で
演奏するか。

熱中症になるくらいの勢いだったが、
すごく為になる時間を設けた気がした。

ビーチボールをやり終えたあとは、
4人でスコップを準備して
ルークを砂浜に埋めた。

胸の大きい女の人の砂の彫刻のように
当てはめた。

「やーめーてーー。
 僕は女じゃない!
 ひよこですーー。」


「良い出来合えだね。」

「やるじゃん。」

「任せて。私、こういうの得意なの。」

 クレアは自信満々に言う。

「かき氷食べたいなぁ。」

4人はルークをそっちのけに、
海の家に行き、
オリヴァは、ブルーハワイのかき氷、
リアムは、焼きとうもろこし、
アシェルは、ラムネをそれぞれ注文した。

「クレアは何にするんだ?」

「私は、レインボーかき氷がいいな。」

「え、そういうのあるの?」

アシェルは聞き返す。
クレアは足元にある看板を指差す。

「あ、本当だ。
 えっと、いちご、レモン、メロン、
 ブルーハワイ、もも、オレンジ、
 グレープ味が全部入ってますだって。
 げっ、800円もするぞ。
 あ、でも、会計は、
 ルークがしてくれるだろうから、
 大丈夫だろ。」

「やったぁー。おごりなのね。」

「ちょっとーーー、
 聞いてませんよ!!
 確認してから注文してくださいよ。
 まったくもう。仕方ないんだから。」

 サングラスをかけながら、
 砂浜に埋まるルーク。
 意外にも通行人に写真を撮られて、
 ノリノリのルークは、遠くから叫ぶ。

 クレアは、レインボーかき氷に
 目をキラキラさせながら、
 ストロースプーンで頬張った。

「超、美味しい!」
 
 頬を両手で押さえながら、
 その場を羽根でパタパタと飛ぶ。
 アシェルは羨ましそうにみる。

「え、食べてみたいな。
 一口ちょうだい。」

 クレアが使っていたスプーンを自然と
 奪い、一口を食べた。
 ドキッとするクレア。

 (それ、私が使ってたスプーン…。)

「あ、うまい。
 俺も、それ食べようかな。」

 アシェルは、注文しようとすると、
 ルークが砂浜から抜け出して、
 近くに飛んでくる。

「予算…そんなにありませんよ。
 さっき注文した分で僕の財布は空っぽ
 ですよ!」

 ルークは財布を逆さまにして見せた。

「えーーー、かき氷食べたかったのに。」

「アシェルさん、ラムネ飲んだでしょう。
 ほら、ビー玉もおまけにつくんだから、
 わがまま言わないの。
 子どもじゃないんだから。」

「むーーー。
 クレアのかき氷美味しかったから。」

「アシェル、残りのかき氷食べていいよ?」

「え、まじで?!」

(一度口につけたスプーンは、もうたべられないなんて言えない…。)

 極度の潔癖症のクレアは笑顔でかき氷を
 譲った。

「どうぞ。」

「よっしゃー。クレア最高。
 大好きだ。」

 ノリで言うアシェルに、
 クレアは本気にして頬を赤らめる。
 それを気にせずにパクパクとかき氷を
 頬張った。

(アシェルさん、誤解を招く発言は
 やめて欲しいなぁ…。)

 横目でルークはクレアを見る。
 目がキラキラしてるのが見える。
 
 アシェルは終始笑顔でかき氷を
 食べていた。

 その近くのベンチでは
 オリヴァとリアムが黙々と
 焼きとうもろこしとブルーハワイの
 かき氷を食していた。

 お店の出入り口付近では、
 氷と書かれたのれんがかけられていた。

 どこからか、風鈴の音も聞こえてくる。

 波がザザーーンと迫ってくる。

 かもめたちが空を優雅に飛んでいた。

 ずっと建物の中にこもっていた
 メンバーにとっては最高の気分転換に
 なっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...