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うさぎのオーディション
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ビルとビルの間の
空に1つの青い風船が飛んでいく。
今日は街の小さなお祭りをやっていた。
露店が何店舗が並ぶ。
小さなリスの男の子がもらったばかりの
青い風船の紐を離してしまった。
悲しくて涙を流す。
横にいた母親は頭を撫でて慰める。
その脇を自転車でリアムは通り過ぎる。
子どものうちは、母親の存在は大きい。
辛いとき、そばにいてくれるだけで
安心する。
風船を飛ばしたことは悲しいかもしれないが、横にいる母のことをそれ以上に
大事にしろとリアムは思った。
うさぎのリアムは、幼少期の頃から
母親の記憶がない。
不治の病で亡くなった。
祖父母に育てられ、悲しみを忘れるようにと
あてがわれた小さな赤いピアノに
なぜか没頭していた。
どんなに辛く、悲しくても、
ピアノを弾けば、心落ち着いた。
特に教室に通うわけでもなく、
独学で弾いていた。
パソコンで調べて、弾き方を調べたりして
どんな音を出せば心地よいとか
悲しい曲、楽しい曲かを何度も弾いて
学んだ。
指にまめを何度も作った。
友達という友達がいなかった。
学校には通っていたが、
帰ってきてからのピアノが友達のような
気持ちだった。
ピアノは裏切らない。
今は、大人になり、1人暮らしして
都会に住んでいるが、
ピアノで生計を立てるのは厳しいと
多少、断念しているところもあった。
自分じゃない誰かになることは
いつも得意としていた。
そうならば、この性格を仕事にできるなと
俳優という道の選択肢もあるなと
バイトをしながら養成所に通っていた。
そんな中でのオーディションだった。
今日は、いよいよ舞台【うさぎとかめ】の
うさぎ役のオーディション。
午前10時から東駅のスタジオBにて
行われる。
黒のスーツでビシッと決めたリアム。
シャッターが完全に開いたスタジオに
足を踏み入れると、
たくさんのスタッフで溢れていた。
「おはようございます。
オーディション参加の方は
こちらに記入をお願いします。」
受付のメガネをしたアルパカの女性が
バインダーを差し出した。
リアムは、深呼吸をして
ボールペンを持ち
アンケートを記入する。
内容は名前などの個人情報の記入と
うさぎとしての希望する出演作品を
下から選び
◯をつけてください。
【うさぎとかめ】
【いなばのしろうさぎ】
【不思議の国のアリス】
【かちかち山】
と書かれていた。
即決してリアムは
うさぎとかめ に◯をつけた。
まさか、この◯が重要な選択だとは
思わなかった。
「…記入、終わりました。
お願いします。」
「はい、お預かりします。」
アルパカ女性は笑顔で受け取ってくれた。
「アンケートのご記入を終えた方は
こちらでお待ちください。」
待合室へ案内された。
そこにはたくさんの童話の絵本が
置かれていた。
うさぎの作品はもちろん、狼、かめなどの
作品がところ狭しと並んでいた。
小さな図書館のようだった。
「うさぎだから…。」
本棚からうさぎとかめの本を取り出した。
ごくごく普通のストーリーだった。
うさぎとかめが
ゴールを目指して競うもので
うさぎが休憩してる間に
かめがゴールする話だった。
うさぎはそのうさぎの配役を望む。
そもそも応募しているメンバーは全て
それを目指して来ているはず。
リアムを含めて5人のうさぎが
立ち並んでいた。
それぞれ緊張している。
白線に均等に並ぶよう指示されて
プロデューサーとスタッフ2名は
長テーブルを前にして座っていた。
心臓が高鳴る雰囲気で
オーディションの本番がはじまった。
空に1つの青い風船が飛んでいく。
今日は街の小さなお祭りをやっていた。
露店が何店舗が並ぶ。
小さなリスの男の子がもらったばかりの
青い風船の紐を離してしまった。
悲しくて涙を流す。
横にいた母親は頭を撫でて慰める。
その脇を自転車でリアムは通り過ぎる。
子どものうちは、母親の存在は大きい。
辛いとき、そばにいてくれるだけで
安心する。
風船を飛ばしたことは悲しいかもしれないが、横にいる母のことをそれ以上に
大事にしろとリアムは思った。
うさぎのリアムは、幼少期の頃から
母親の記憶がない。
不治の病で亡くなった。
祖父母に育てられ、悲しみを忘れるようにと
あてがわれた小さな赤いピアノに
なぜか没頭していた。
どんなに辛く、悲しくても、
ピアノを弾けば、心落ち着いた。
特に教室に通うわけでもなく、
独学で弾いていた。
パソコンで調べて、弾き方を調べたりして
どんな音を出せば心地よいとか
悲しい曲、楽しい曲かを何度も弾いて
学んだ。
指にまめを何度も作った。
友達という友達がいなかった。
学校には通っていたが、
帰ってきてからのピアノが友達のような
気持ちだった。
ピアノは裏切らない。
今は、大人になり、1人暮らしして
都会に住んでいるが、
ピアノで生計を立てるのは厳しいと
多少、断念しているところもあった。
自分じゃない誰かになることは
いつも得意としていた。
そうならば、この性格を仕事にできるなと
俳優という道の選択肢もあるなと
バイトをしながら養成所に通っていた。
そんな中でのオーディションだった。
今日は、いよいよ舞台【うさぎとかめ】の
うさぎ役のオーディション。
午前10時から東駅のスタジオBにて
行われる。
黒のスーツでビシッと決めたリアム。
シャッターが完全に開いたスタジオに
足を踏み入れると、
たくさんのスタッフで溢れていた。
「おはようございます。
オーディション参加の方は
こちらに記入をお願いします。」
受付のメガネをしたアルパカの女性が
バインダーを差し出した。
リアムは、深呼吸をして
ボールペンを持ち
アンケートを記入する。
内容は名前などの個人情報の記入と
うさぎとしての希望する出演作品を
下から選び
◯をつけてください。
【うさぎとかめ】
【いなばのしろうさぎ】
【不思議の国のアリス】
【かちかち山】
と書かれていた。
即決してリアムは
うさぎとかめ に◯をつけた。
まさか、この◯が重要な選択だとは
思わなかった。
「…記入、終わりました。
お願いします。」
「はい、お預かりします。」
アルパカ女性は笑顔で受け取ってくれた。
「アンケートのご記入を終えた方は
こちらでお待ちください。」
待合室へ案内された。
そこにはたくさんの童話の絵本が
置かれていた。
うさぎの作品はもちろん、狼、かめなどの
作品がところ狭しと並んでいた。
小さな図書館のようだった。
「うさぎだから…。」
本棚からうさぎとかめの本を取り出した。
ごくごく普通のストーリーだった。
うさぎとかめが
ゴールを目指して競うもので
うさぎが休憩してる間に
かめがゴールする話だった。
うさぎはそのうさぎの配役を望む。
そもそも応募しているメンバーは全て
それを目指して来ているはず。
リアムを含めて5人のうさぎが
立ち並んでいた。
それぞれ緊張している。
白線に均等に並ぶよう指示されて
プロデューサーとスタッフ2名は
長テーブルを前にして座っていた。
心臓が高鳴る雰囲気で
オーディションの本番がはじまった。
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