16 / 44
赤ずきんのオーディション
しおりを挟む
雲一つない空から1機の気球が
地上に降りようとしていた。
熱気球操縦士のスカイとともに
クレアがリアルワールドに
足を下ろした。
深呼吸して、空気を感じた。
「はぁ!何年ぶりだろう。
地上に降りるの。」
両手を広げて、空を見上げる。
フロンティアが天高くに存在していた。
良くみると虹が差し掛かっている。
何か良いことがありそうだと
期待しながら、
着慣れない黒のワンピーススカートを
翻した。
「いってらっしゃい!」
「行ってきまーす。」
スカイは、
クレアの家の近所に住んでいた。
顔馴染みのため、
他の乗客には声を掛けないが、
クレアには特別だったようだ。
足取り軽く、オーデイション会場の
スタジオへ向かった。
ちょうど、気球のおりた場所は、駅近くの
広場だったため、歩いていける距離
だった。
午前10時からスタジオCにて
行われる。
シャッターが完全に開いたスタジオに
足を踏み入れると、
たくさんのスタッフで溢れていた。
東の方に白いテントがあった。
何人かの同じ妖精の応募者が並んでいた。
そこには、幼馴染のマージュがいた。
「あれ、クレア。
あなたも受けるの?」
「マージュ、久しぶり。
元気にしてた?
最近、顔見てなかったから
どうしてたかと思って……。」
「私、もう、こっちの世界に
住んでたから。
実家に全然帰ってないのよ。
…忙しくてね。」
金髪のウェーブがかった髪をかきあげて
話す。
鼻のつくような喋り口調だった。
クレアはいつもの調子だと
全然気にしてなかったが、
周りにいた他の妖精たちは、
嫌悪感を示していた。
「えー、そうだったの。
気づかなかったわ。
確かにアドレアおばさまには、
何度か会ってたけど、
マージュの話出てなかったのは、
家にいなかったからなのね。」
「うん。そうね。
私の話題に母さん出さないなんて
よほど清々したわって
ことなのかしら…。」
「そんなことないでしょう。
まぁ、元気で良かったわ。
それより、オーディションだから
ライバルってことね。
負けないわよ。」
手を握りしめて、目を燃えさせた。
「……うん。頑張って。
私はいつもの通りにするだけだから。」
勝ち誇ったかのような顔で話すマージュ。
それをクレアは気にせずにアルパカの
受付に声をかけた。
「おはようございます。
オーディション参加の方は
こちらに記入をお願いします。」
受付のアルパカの女性が
テキパキとバインダーにはさんだ
アンケート用紙を差し出した。
クレアは、ボールペンを握りしめて
アンケートを記入し始めた。
内容は名前などの個人情報の記入と
狼としての希望する出演作品を下から
選び、◯をつけてください。
【ヘンデルとグレーテル】
【ゆきばらとべにばら】
【不思議の国のアリス】
【赤ずきん】
と書かれていた。
もちろん、クレアは募集していた
赤ずきんに◯をつけた。
せっかくに募集してると言って
来ているのに他の作品を選ぶのは
御法度だと思った。
まさか、この◯が重要な選択だとは
思わなかった。
「記入終わりましたので、
これでお願いします。」
「はい、お預かり致しします。」
アルパカ女性は笑顔で受け取ってくれた。
「アンケートのご記入を終えた方は
こちらでお待ちください。」
待合室へ案内された。
そこにはたくさんの童話の絵本が
置かれていた。
女の子が主人公の作品はもちろん、
狼、かめ、うさぎが出てくる絵本が
ところ狭しと並んでいた。
小さな図書館のようだった。
「赤ずきんだから、これかな。」
本棚から真っ赤な背景の
赤ずきんの本を取り出した。
ごくごく普通のストーリーだった。
女の子がおばあちゃんのお見舞いに
行ったら狼だったって言う話だった。
だいぶ省略はされていたが
小さい子が読みやすいようになっていた。
クレアを含めて5人の妖精の女の子が
立ち並んでいた。
それぞれに緊張している。
白線に均等に並ぶよう指示されて
プロデューサーとスタッフ2名は
長テーブルを前にして座っていた。
心臓の音が響くんじゃないかというくらい
静かになった。
そんな状況の中
赤ずきんのオーディションの本番が
はじまった。
地上に降りようとしていた。
熱気球操縦士のスカイとともに
クレアがリアルワールドに
足を下ろした。
深呼吸して、空気を感じた。
「はぁ!何年ぶりだろう。
地上に降りるの。」
両手を広げて、空を見上げる。
フロンティアが天高くに存在していた。
良くみると虹が差し掛かっている。
何か良いことがありそうだと
期待しながら、
着慣れない黒のワンピーススカートを
翻した。
「いってらっしゃい!」
「行ってきまーす。」
スカイは、
クレアの家の近所に住んでいた。
顔馴染みのため、
他の乗客には声を掛けないが、
クレアには特別だったようだ。
足取り軽く、オーデイション会場の
スタジオへ向かった。
ちょうど、気球のおりた場所は、駅近くの
広場だったため、歩いていける距離
だった。
午前10時からスタジオCにて
行われる。
シャッターが完全に開いたスタジオに
足を踏み入れると、
たくさんのスタッフで溢れていた。
東の方に白いテントがあった。
何人かの同じ妖精の応募者が並んでいた。
そこには、幼馴染のマージュがいた。
「あれ、クレア。
あなたも受けるの?」
「マージュ、久しぶり。
元気にしてた?
最近、顔見てなかったから
どうしてたかと思って……。」
「私、もう、こっちの世界に
住んでたから。
実家に全然帰ってないのよ。
…忙しくてね。」
金髪のウェーブがかった髪をかきあげて
話す。
鼻のつくような喋り口調だった。
クレアはいつもの調子だと
全然気にしてなかったが、
周りにいた他の妖精たちは、
嫌悪感を示していた。
「えー、そうだったの。
気づかなかったわ。
確かにアドレアおばさまには、
何度か会ってたけど、
マージュの話出てなかったのは、
家にいなかったからなのね。」
「うん。そうね。
私の話題に母さん出さないなんて
よほど清々したわって
ことなのかしら…。」
「そんなことないでしょう。
まぁ、元気で良かったわ。
それより、オーディションだから
ライバルってことね。
負けないわよ。」
手を握りしめて、目を燃えさせた。
「……うん。頑張って。
私はいつもの通りにするだけだから。」
勝ち誇ったかのような顔で話すマージュ。
それをクレアは気にせずにアルパカの
受付に声をかけた。
「おはようございます。
オーディション参加の方は
こちらに記入をお願いします。」
受付のアルパカの女性が
テキパキとバインダーにはさんだ
アンケート用紙を差し出した。
クレアは、ボールペンを握りしめて
アンケートを記入し始めた。
内容は名前などの個人情報の記入と
狼としての希望する出演作品を下から
選び、◯をつけてください。
【ヘンデルとグレーテル】
【ゆきばらとべにばら】
【不思議の国のアリス】
【赤ずきん】
と書かれていた。
もちろん、クレアは募集していた
赤ずきんに◯をつけた。
せっかくに募集してると言って
来ているのに他の作品を選ぶのは
御法度だと思った。
まさか、この◯が重要な選択だとは
思わなかった。
「記入終わりましたので、
これでお願いします。」
「はい、お預かり致しします。」
アルパカ女性は笑顔で受け取ってくれた。
「アンケートのご記入を終えた方は
こちらでお待ちください。」
待合室へ案内された。
そこにはたくさんの童話の絵本が
置かれていた。
女の子が主人公の作品はもちろん、
狼、かめ、うさぎが出てくる絵本が
ところ狭しと並んでいた。
小さな図書館のようだった。
「赤ずきんだから、これかな。」
本棚から真っ赤な背景の
赤ずきんの本を取り出した。
ごくごく普通のストーリーだった。
女の子がおばあちゃんのお見舞いに
行ったら狼だったって言う話だった。
だいぶ省略はされていたが
小さい子が読みやすいようになっていた。
クレアを含めて5人の妖精の女の子が
立ち並んでいた。
それぞれに緊張している。
白線に均等に並ぶよう指示されて
プロデューサーとスタッフ2名は
長テーブルを前にして座っていた。
心臓の音が響くんじゃないかというくらい
静かになった。
そんな状況の中
赤ずきんのオーディションの本番が
はじまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スパイスカレー洋燈堂 ~裏路地と兎と錆びた階段~
桜あげは
ライト文芸
入社早々に躓く気弱な新入社員の楓は、偶然訪れた店でおいしいカレーに心を奪われる。
彼女のカレー好きに目をつけた店主のお兄さんに「ここで働かない?」と勧誘され、アルバイトとして働き始めることに。
新たな人との出会いや、新たなカレーとの出会い。
一度挫折した楓は再び立ち上がり、様々なことをゆっくり学んでいく。
錆びた階段の先にあるカレー店で、のんびりスパイスライフ。
第3回ライト文芸大賞奨励賞いただきました。ありがとうございます。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる