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０１９『手紙』

本当に些細なことで第三次世界大戦が勃発した。
ネットインフラ、SNSの発達によりさまざまな情報戦が行われた。
外国で開発されたサービスの使用が限定され始め、そのうち使用が禁止になった。
この国は今まで海外の通信サービスに依存しすぎていた。

国産のインフラで安定して連絡が取れるものは電話回線だった。
しかし、ネットでのチャットやメッセンジャーが主流だったので電話回線は縮小の方向で進んでいたため、すぐに回線はパンクした。
さらに、電話を使う人々が少なくなっていたため、電話料金はオプションであることが多く、１０分も通話すると料金は驚くほど課金されていった。

戦況は悪化し、多くの国民に徴兵がかかった。
離れて暮らす我が子の状況を確認したいが、電話はなかなか繋がらない。
そんな時に『手紙』での連絡が見直されていた。
いつ繋がるかわからないチャットや、メッセンジャー、電話よりは確実に連絡が取れる手紙を使う人が増えていった。
国もネットインフラの整備も進めながらも、郵便のインフラの強化にも力を入れた。

息子からハガキが届いた。

『召集令状がきました。もちろん断ることもできますが、僕はこの国を・・いや、彼女や、母さん、父さんのことを守りたいと思っています。いつ戦場に行くことになるかわかりませんが、戦ってくると思います。今の状況、電話もチャットもメッセージもなかなか届かないと思います。手紙は出せる時に出しますがなかなか出せないと思います『便りが無いのは良い便り』と思って、連絡がなくても心配しないでください』

胸が張り裂けるようだった。
しかし、息子が決めたこと・・・息子の言うことに従うことにした。

１ヶ月後、ハガキが届いた。

『ご子息の戦地での死亡を確認したことをご連絡いたします、お悔やみ申し上げます』

便りが無いのは良い便り・・・・

こんな便りは欲しくなかった。