13 / 30
紅の騎士トロクス
しおりを挟む
口紅の騎士トロクス
テーマ 経済は、時間、知が買え、いいことだ。
アンチテーゼ 経済は、知の平等化、流通、移動の速さがあり、悪いことだ。
因習は、隠される知、死が追いかけてくる。
また、集落が、自動車で襲われたと、いう事件が。
輸送馬車隊を、武装自動車隊が襲う事件が。
同じ職員だと、思っていた者を、とあることより、詰問してみたら、全く別の国の人だった。
王宮。
薄暗い視聴覚室の一室。
旧ハインリヒ島は、タンクを世界で、一番最初に開発した国だ。
ハインリヒ島の玄関、ランド=ベケデの使者が、ルクス王に、兵器の購買の話を持ちかける。
プロジェクターで、演習模様が放映される。
自動車を進行封鎖する、タンク。
「おお、これが、タンクか‥」
自動車から降りた、盗賊が、銃を乱射する。
「ああ、機関銃を武装している」
厚い装甲で、すべての弾丸を弾く、タンク。
慌てて、自動車に乗りこむ、盗賊。
自動車を下敷きにするタンク。
プロジェクターの放映は終了する。
「‥なるほど」
「これが、ドラゴンを模したと言う、タンクか‥」
「一台、一体いくらするんですか?」
「100万G」
「100万G! そんなに‥」
「しかし、機関銃を弾く、装甲。 欲しい‥」
「数日欲しい」
「はい、陛下」
「今日の商談は、ここまでにします、また後日改めて、お伺いしますので」
キャスト
人間 カール=ザルツバーグ
エルフ ソフィア=ゴールドバーク
ドワーフ アラゴー=マブ=ライルデン
図書館
エルフとドワーフは、本を選んでいる。
ドワーフ「まえまえから、読みたい本があったんじゃ」
「福祉、福祉」
点字ブロックの本を、同時に二人が取ろうとする。
騎士「あ」
ドワーフ「うにゃ」
「騎士さん」
騎士「ドワーフさん?」
騎士「一冊しかありませんね」
ドワーフ「わしは、またで、いいですぞ」
騎士「ありがとうございます」
「私、ランド=ダデムの近衛騎士団長。トロクスと言います」
「私の妻は、目が不自由なのです」
「それを知ってか」
「ロッドセスでの売り上げの一部で、遊歩道に、点字ブロックを作ってくれました」
「ホントの、ルクス王は心の優しいお方です」
ドワーフ「トロッ? クス?」
エルフ「ぷっ」
「なにか、面白い人ね」
トロクス「ハハハ、よく言われます」
ドワーフ「ルクス王陛下、ご機嫌いかがかな?」
トロクス「舞踏会、来られていたんですか?」
ドワーフ「うむ。すごい剣戟じゃった」
トロクス「ハハハ、陛下は、昔は凄みはなかったのですが、いまでは」
ドワーフ「うむぅ。それで、その本か?」
トロクス、照れながら。
「はい」
トロクス「私、見ての通り、武道は得てなのですが、勉強の方はからっきしで」
カール「?!」
カール「近衛騎士団長が?」
トロクス「はい、武で取り上げられまして」
ドワーフ「そうか。どうりで」
ドワーフ「わしは、見ての通り、ドワーフ」
「道路へ、ブロックを埋め込むなんぞ、時代の寵児じゃ」
トロクス「陛下ですね」
「昔の陛下が、思い起こされます」
トロクス「それにしても」
図書館のカウンターの方を見る、トロクスと冒険者たち。
カウンター前で、一人の男を取り囲んで、たくさんの女性がいる。
笑うトロクス。
エルフ「すごい人気」
図書館に来ている、今や、時代の寵児、ヴォルフガング=ピーター氏。
今度、本を出版するとかで。
スーツの似合う、長身のイケメンだ。
ヴォルフガングの周りに、多くのファンの女性が取り囲んでいる。
ドワーフ「あれじゃな、経済とか」
トロクス「はい」
トロクス「現在の陛下が、もって信奉しております」
ドワーフ「軍術、武術より、経済という風潮にながれつつある」
トロクス「時代の流れですね」
トロクスとドワーフの話に熱が入ってくる。
トロクス「ルクス王の話は、わかります」
「私は、馬には乗れますが、自動車はダメで、昔の軍術で果たしてやれるかどうか」
「ルクス王が、経済と軍備の話にのめりこむのも解るのですが、お嬢様など放っておかれて」
「また、昔のように、皆さんで正教会へ馬車で向かうあたたかい、お人に戻って欲しい」
ドワーフ「それは、無理じゃろう。
「聞いた話では、盗賊団は、機関銃をつかうそうでは、ないか」
トロクス「‥、はい、そうなんです」
「我が、ルクス国も、最新の軍備を導入したいと、考えているのですが、如何せん、金額が高い」
ドワーフ「そんなもんじゃ」
「それは、そうじゃろう」
トロクス「お金が欲しいんです」
ドワーフ「うむ~」
盲目の老女「ヒヒヒ、もうすぐ、あの方がくるよ」
「?!」
長身にスーツで身を包んだ、男がやってくる。
スーツの男「聞こえましたよ、お金が欲しい」
ドワーフ「なんじゃ、おぬしは?」
スーツの男「失礼、わたくしは、ランド=ゴードーの、新興株式結社。代表取締役、ヴォルフガング=ピーターというものです」
名刺をだす、ヴォルフガング=ピーター氏。
ドワーフ「なんじゃ、紙切れくれるのか?」
エルフ「ふーん、今流行りの、ビジネスマンね」
ヴォルフガング「ハハハ、話がはやい」
「見た所、あなたは、近衛騎士の団長といった所でしょうか?」
トロクス「!! ああ、いかにも」
「トロクス」
ルクス国王が、その場にやってくる。
エルフ「ご機嫌麗しゅう、陛下」
ドワーフ「ご機嫌麗しゅう」
陛下が、ヴォルフガング=ピーターに、少し、頭をさげる。
「それでは」
話を続ける、ヴォルフガング=ピーター。
「物騒な世の中だ、お金が欲しいのは当然」
「私は、経済の話を、国々を回って、しているものです」
トロクス「はふぅー、経済の話を」
ルクス王「聞いておくのがよかろう」
ヴォルフガング「よろしかったら、わかりやすくお教えしましょう」
「無料で」
エルフ「無料で?」
ドワーフ「わしらは、冒険者じゃぞい」
一瞥する、ヴォルフガング。
ヴォルフガング「よろしかったら、冒険者のみなさまも、お聞き願えますか?」
ドワーフ「うむぅ、そこまで、丁寧に言われたら」
ヴォルフガング
「お金をもうけるには、まず、企業することです」
「会社をつくることです」
「会社をつくり、より良い、商品や製品の生産。食べ物、サービスを販売供給することです」
「資本に準じて、銀行から融資がおり、返さなければなりません」
「毎年決算時、経営がプラスなら、銀行から融資がおります」
「利益から支出をと経費を引き、社員数で割ったものが、だいたいの給料の試算になります」
トロクス「け、決戦時! 利益? 死本」
「ふむぅーまるで、軍術のような恐ろしい世界ですな」
「はふぅー陛下がまた一段と男らしい世界に行ってしまわれた」
「陛下、勘違いを、お許しを」
ルクス王「いや、いいんだ」
「お前が、まえまえから、心配していてくれるのは、わかっていた」
「どうだ、トロクス。よく解らない言葉で一杯だろう」
トロクス「お許しを、陛下」
ドワーフ「わしらは、まだ、冒険をして、どこぞかの国に、家を持つ前ですのじゃ」
「世の中の、話は、まだ先ですぞ」
ヴォルフガング「まあ、そう言わずに」
「今日より、4日後の、11月14日」
「ショッピングセンターサードで、私の本の出版記念のサイン会があります」
「『わかりやすい経済学』と言う本です」
「もし、よろしかったら、冒険者の皆さんも、来られませんか?」
ドワーフ「うむ」
エルフ「いいわね」
ヴォルフガング「ぜひ」
固く握手を交わす、ヴォルフガング=ピーターと冒険者。
透明な虚空は、まるで落ちてくるように、深い。
ショッピングセンターサード前の大通り。
冷たい風がふいている。
大通りの両脇には、遊歩道があり、街路樹が立っている。
風が吹く。
風に舞う落ち葉。
通りをサイン会場まで歩く、冒険者。
エルフ「さむいわね」
「それにしてもその格好」
ドワーフ「いいんじゃ、わしの好きに」
カール「おニューの盾だね」
ドワーフ「話を聞けば、聞くほど、物騒じゃから」
「ハ、ハックショイ!!」
けたたましい、クラクションと、エンジン音。
騎士隊抜かれました。
騎士「ダメだ、間に合わない」
サイン会。
サイン会場。
ヴォルフガング=ピーターの前に、数百人の列。
一冊ずつ、サインを書いていく、ピーター。
購入した本を、嬉しそうに、持って去っていく人々。
エルフ耳を尖らせる。
カール見て!
カール「あれ~」
ドワーフ「なんじゃ?」
エルフ「もしかして、昨今の、野盗じゃ?」
カール「えーー!?」
小さな点は、どんどん大きくなっていく。
武装自動車だ。
けたたましい、クラクションと、エンジン音とともに、武装自動車隊が
突っ込んでくる。
うわあー。
数人の、野盗が、銃を片手に、車から降りる。
野盗が、機関銃を乱射してくる。
とっさにシールドを立てるドワーフ。
銃弾の雨あられが。
「こりゃ、かなわんわ」
「なんぼなんでも」
「シールドに隠れさせて」
「なんとか、ならないのかエルフ」
「立ってないと、呪文の詠唱ができないの」
「待たれよー!」
騎馬で参上するトロクス。
民間人に機関銃を乱射する、野盗。
威嚇射撃に、民間人、数名巻き込まれる。
怒るトロクス。
トロクス「遊歩道を血で汚すなー」
シールドを構え、突っ込むトロクス。
数名の集中砲火を受けて、シールドが吹き飛ぶ。
トロクスに、全弾命中する。
「うわっわわわー」
目をつむる冒険者たち。
ディーゼルエンジン音が鳴り響く。
「トロクスーー」
戦車隊がやってくる。
ルクス王「砲撃準備!」
旋回する砲塔。
逃げる、野党。
戦車から、降りる、ルクス王。
トロクスの側まで、走り寄って、抱きかかえる。
トロクス
「ルクス王」
「買ったんですね」
「高かったでしょう」
「これで、我が国、ランド=ダデムは安泰だ」
「無駄使いしないでくださいね」
「最後に、また、お姫様と正教会へ一緒に」
吐血して、死ぬトロクス。
ルクス王「トロクスーー」
カール「いいやつだったな」
「でも、なんで、トロクスが、近衛騎士団長をやっていたんだろう」
ドワーフ「それはな、昔、戦場で、騎馬で戦っていたころ」
「やられそうになった、若きルクス王を、身を呈して守ったことがあったんじゃとか」
秋終の空。
佇む、冒険者たち。
Fin.
テーマ 経済は、時間、知が買え、いいことだ。
アンチテーゼ 経済は、知の平等化、流通、移動の速さがあり、悪いことだ。
因習は、隠される知、死が追いかけてくる。
また、集落が、自動車で襲われたと、いう事件が。
輸送馬車隊を、武装自動車隊が襲う事件が。
同じ職員だと、思っていた者を、とあることより、詰問してみたら、全く別の国の人だった。
王宮。
薄暗い視聴覚室の一室。
旧ハインリヒ島は、タンクを世界で、一番最初に開発した国だ。
ハインリヒ島の玄関、ランド=ベケデの使者が、ルクス王に、兵器の購買の話を持ちかける。
プロジェクターで、演習模様が放映される。
自動車を進行封鎖する、タンク。
「おお、これが、タンクか‥」
自動車から降りた、盗賊が、銃を乱射する。
「ああ、機関銃を武装している」
厚い装甲で、すべての弾丸を弾く、タンク。
慌てて、自動車に乗りこむ、盗賊。
自動車を下敷きにするタンク。
プロジェクターの放映は終了する。
「‥なるほど」
「これが、ドラゴンを模したと言う、タンクか‥」
「一台、一体いくらするんですか?」
「100万G」
「100万G! そんなに‥」
「しかし、機関銃を弾く、装甲。 欲しい‥」
「数日欲しい」
「はい、陛下」
「今日の商談は、ここまでにします、また後日改めて、お伺いしますので」
キャスト
人間 カール=ザルツバーグ
エルフ ソフィア=ゴールドバーク
ドワーフ アラゴー=マブ=ライルデン
図書館
エルフとドワーフは、本を選んでいる。
ドワーフ「まえまえから、読みたい本があったんじゃ」
「福祉、福祉」
点字ブロックの本を、同時に二人が取ろうとする。
騎士「あ」
ドワーフ「うにゃ」
「騎士さん」
騎士「ドワーフさん?」
騎士「一冊しかありませんね」
ドワーフ「わしは、またで、いいですぞ」
騎士「ありがとうございます」
「私、ランド=ダデムの近衛騎士団長。トロクスと言います」
「私の妻は、目が不自由なのです」
「それを知ってか」
「ロッドセスでの売り上げの一部で、遊歩道に、点字ブロックを作ってくれました」
「ホントの、ルクス王は心の優しいお方です」
ドワーフ「トロッ? クス?」
エルフ「ぷっ」
「なにか、面白い人ね」
トロクス「ハハハ、よく言われます」
ドワーフ「ルクス王陛下、ご機嫌いかがかな?」
トロクス「舞踏会、来られていたんですか?」
ドワーフ「うむ。すごい剣戟じゃった」
トロクス「ハハハ、陛下は、昔は凄みはなかったのですが、いまでは」
ドワーフ「うむぅ。それで、その本か?」
トロクス、照れながら。
「はい」
トロクス「私、見ての通り、武道は得てなのですが、勉強の方はからっきしで」
カール「?!」
カール「近衛騎士団長が?」
トロクス「はい、武で取り上げられまして」
ドワーフ「そうか。どうりで」
ドワーフ「わしは、見ての通り、ドワーフ」
「道路へ、ブロックを埋め込むなんぞ、時代の寵児じゃ」
トロクス「陛下ですね」
「昔の陛下が、思い起こされます」
トロクス「それにしても」
図書館のカウンターの方を見る、トロクスと冒険者たち。
カウンター前で、一人の男を取り囲んで、たくさんの女性がいる。
笑うトロクス。
エルフ「すごい人気」
図書館に来ている、今や、時代の寵児、ヴォルフガング=ピーター氏。
今度、本を出版するとかで。
スーツの似合う、長身のイケメンだ。
ヴォルフガングの周りに、多くのファンの女性が取り囲んでいる。
ドワーフ「あれじゃな、経済とか」
トロクス「はい」
トロクス「現在の陛下が、もって信奉しております」
ドワーフ「軍術、武術より、経済という風潮にながれつつある」
トロクス「時代の流れですね」
トロクスとドワーフの話に熱が入ってくる。
トロクス「ルクス王の話は、わかります」
「私は、馬には乗れますが、自動車はダメで、昔の軍術で果たしてやれるかどうか」
「ルクス王が、経済と軍備の話にのめりこむのも解るのですが、お嬢様など放っておかれて」
「また、昔のように、皆さんで正教会へ馬車で向かうあたたかい、お人に戻って欲しい」
ドワーフ「それは、無理じゃろう。
「聞いた話では、盗賊団は、機関銃をつかうそうでは、ないか」
トロクス「‥、はい、そうなんです」
「我が、ルクス国も、最新の軍備を導入したいと、考えているのですが、如何せん、金額が高い」
ドワーフ「そんなもんじゃ」
「それは、そうじゃろう」
トロクス「お金が欲しいんです」
ドワーフ「うむ~」
盲目の老女「ヒヒヒ、もうすぐ、あの方がくるよ」
「?!」
長身にスーツで身を包んだ、男がやってくる。
スーツの男「聞こえましたよ、お金が欲しい」
ドワーフ「なんじゃ、おぬしは?」
スーツの男「失礼、わたくしは、ランド=ゴードーの、新興株式結社。代表取締役、ヴォルフガング=ピーターというものです」
名刺をだす、ヴォルフガング=ピーター氏。
ドワーフ「なんじゃ、紙切れくれるのか?」
エルフ「ふーん、今流行りの、ビジネスマンね」
ヴォルフガング「ハハハ、話がはやい」
「見た所、あなたは、近衛騎士の団長といった所でしょうか?」
トロクス「!! ああ、いかにも」
「トロクス」
ルクス国王が、その場にやってくる。
エルフ「ご機嫌麗しゅう、陛下」
ドワーフ「ご機嫌麗しゅう」
陛下が、ヴォルフガング=ピーターに、少し、頭をさげる。
「それでは」
話を続ける、ヴォルフガング=ピーター。
「物騒な世の中だ、お金が欲しいのは当然」
「私は、経済の話を、国々を回って、しているものです」
トロクス「はふぅー、経済の話を」
ルクス王「聞いておくのがよかろう」
ヴォルフガング「よろしかったら、わかりやすくお教えしましょう」
「無料で」
エルフ「無料で?」
ドワーフ「わしらは、冒険者じゃぞい」
一瞥する、ヴォルフガング。
ヴォルフガング「よろしかったら、冒険者のみなさまも、お聞き願えますか?」
ドワーフ「うむぅ、そこまで、丁寧に言われたら」
ヴォルフガング
「お金をもうけるには、まず、企業することです」
「会社をつくることです」
「会社をつくり、より良い、商品や製品の生産。食べ物、サービスを販売供給することです」
「資本に準じて、銀行から融資がおり、返さなければなりません」
「毎年決算時、経営がプラスなら、銀行から融資がおります」
「利益から支出をと経費を引き、社員数で割ったものが、だいたいの給料の試算になります」
トロクス「け、決戦時! 利益? 死本」
「ふむぅーまるで、軍術のような恐ろしい世界ですな」
「はふぅー陛下がまた一段と男らしい世界に行ってしまわれた」
「陛下、勘違いを、お許しを」
ルクス王「いや、いいんだ」
「お前が、まえまえから、心配していてくれるのは、わかっていた」
「どうだ、トロクス。よく解らない言葉で一杯だろう」
トロクス「お許しを、陛下」
ドワーフ「わしらは、まだ、冒険をして、どこぞかの国に、家を持つ前ですのじゃ」
「世の中の、話は、まだ先ですぞ」
ヴォルフガング「まあ、そう言わずに」
「今日より、4日後の、11月14日」
「ショッピングセンターサードで、私の本の出版記念のサイン会があります」
「『わかりやすい経済学』と言う本です」
「もし、よろしかったら、冒険者の皆さんも、来られませんか?」
ドワーフ「うむ」
エルフ「いいわね」
ヴォルフガング「ぜひ」
固く握手を交わす、ヴォルフガング=ピーターと冒険者。
透明な虚空は、まるで落ちてくるように、深い。
ショッピングセンターサード前の大通り。
冷たい風がふいている。
大通りの両脇には、遊歩道があり、街路樹が立っている。
風が吹く。
風に舞う落ち葉。
通りをサイン会場まで歩く、冒険者。
エルフ「さむいわね」
「それにしてもその格好」
ドワーフ「いいんじゃ、わしの好きに」
カール「おニューの盾だね」
ドワーフ「話を聞けば、聞くほど、物騒じゃから」
「ハ、ハックショイ!!」
けたたましい、クラクションと、エンジン音。
騎士隊抜かれました。
騎士「ダメだ、間に合わない」
サイン会。
サイン会場。
ヴォルフガング=ピーターの前に、数百人の列。
一冊ずつ、サインを書いていく、ピーター。
購入した本を、嬉しそうに、持って去っていく人々。
エルフ耳を尖らせる。
カール見て!
カール「あれ~」
ドワーフ「なんじゃ?」
エルフ「もしかして、昨今の、野盗じゃ?」
カール「えーー!?」
小さな点は、どんどん大きくなっていく。
武装自動車だ。
けたたましい、クラクションと、エンジン音とともに、武装自動車隊が
突っ込んでくる。
うわあー。
数人の、野盗が、銃を片手に、車から降りる。
野盗が、機関銃を乱射してくる。
とっさにシールドを立てるドワーフ。
銃弾の雨あられが。
「こりゃ、かなわんわ」
「なんぼなんでも」
「シールドに隠れさせて」
「なんとか、ならないのかエルフ」
「立ってないと、呪文の詠唱ができないの」
「待たれよー!」
騎馬で参上するトロクス。
民間人に機関銃を乱射する、野盗。
威嚇射撃に、民間人、数名巻き込まれる。
怒るトロクス。
トロクス「遊歩道を血で汚すなー」
シールドを構え、突っ込むトロクス。
数名の集中砲火を受けて、シールドが吹き飛ぶ。
トロクスに、全弾命中する。
「うわっわわわー」
目をつむる冒険者たち。
ディーゼルエンジン音が鳴り響く。
「トロクスーー」
戦車隊がやってくる。
ルクス王「砲撃準備!」
旋回する砲塔。
逃げる、野党。
戦車から、降りる、ルクス王。
トロクスの側まで、走り寄って、抱きかかえる。
トロクス
「ルクス王」
「買ったんですね」
「高かったでしょう」
「これで、我が国、ランド=ダデムは安泰だ」
「無駄使いしないでくださいね」
「最後に、また、お姫様と正教会へ一緒に」
吐血して、死ぬトロクス。
ルクス王「トロクスーー」
カール「いいやつだったな」
「でも、なんで、トロクスが、近衛騎士団長をやっていたんだろう」
ドワーフ「それはな、昔、戦場で、騎馬で戦っていたころ」
「やられそうになった、若きルクス王を、身を呈して守ったことがあったんじゃとか」
秋終の空。
佇む、冒険者たち。
Fin.
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる