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シーラの夫ジョン
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シーラの夫ジョンは、どこでもいる中年の男だった。
厳格な家で育ったジョンは、父親の言いつけの元、子供の頃から勉強ばかりさせられていた。
猛勉強の甲斐あり名門の寄宿学校に入ることができ、安定した役所の仕事にもありつけた。
しかし、ジョンの心の中にはずっと不満が燻っていた。
ジョンは物心ついた時からずっと男が好きだった。
街を歩いていても、目で追うのは男ばかり。
しかし、その事実を父親に知られるわけにはいかなかった。罵倒されるのは確実で、臆病なジョンは父親から叱られることを酷く恐れた。
それでも、ジョンは男との恋愛を諦められない。
役所に就職し、実家を出たジョンはゲイの出会いの場を歩いて回った。
だが、ジョンはゲイ達にモテなかった。
元々ゲイは受け身であるネコあまりで、タチが少ない。
ジョンは二十代の時点で髪が薄くなっていて、運動が嫌いな彼は太っていた。ネコで見た目が冴えないジョンは、出会いの場に行っても相手にされなかったのだ。
そんなジョンは二十七歳の時、父親の紹介でシーラと結婚した。
本当は女と結婚なんかしたくなかったが、父親の命令には逆らえない。
しぶしぶシーラと一緒になったジョンだったが、彼女は優しく快活な女性だった。
ジョンは男が好きな男であったので、シーラに恋愛感情を抱くことはなかったが、それでも一人の人として彼女に好感を抱いた。
夜の生活も最初こそ上手くいなかったものの、一人息子ヨエルを授かった。
妻子との結婚生活は幸せそのもので、ジョンはこの人生で満足しようと考えていたが……。
三ヶ月前、ゲイの出会いの場を回っていた時代に出会った知人と再会した。
知人はチェスができる会員制のカフェを教えてくれた。チェスができる……というのは建前で、ここもゲイの出会いの場だということはすぐに分かった。
ジョンは当初、行くつもりはなかった。
家族を裏切りたくないという理性が、まだこの時の彼には残っていたのだ。
しかし、知人の言葉がジョンの理性を砕いた。
『このチェスカフェには、誰とでも寝るタチがいる』──と。
ジョンの胸がどくんと跳ねる。
誰とでも寝るということは、誰にも相手にされなかった自分とも寝てくれるかもしれない。
ジョンは夢見ていた。ベッドの上で、男から女のように愛されたいとずっと願っていたのだ。
ジョンがチェスカフェに行くと、そこにはひょろりと背の高いワンレングスの髪の男がいた。
サングラスの蔓を掴み、前にずらしながら、にこやかな表情を浮かべる男。
彼の名はジェイムス。
知人曰く、このチェスカフェの常連らしい。
ジェイムスはジョンが望んでいた言葉を次々にかけてくれた。
『可愛い』『セクシーだ』『惚れたよ』……と。
チェスカフェの二階は休憩室になっていた。
ジェイムスはジョンの太い腰に腕を回しながら、二階に誘った。
ジョンは頭の奥が痛くなるほど顔を真っ赤にしながら、階段を一段一段上がった。
この日、チェスカフェの二階で、ジョンの積年の願いは叶った。
厳格な家で育ったジョンは、父親の言いつけの元、子供の頃から勉強ばかりさせられていた。
猛勉強の甲斐あり名門の寄宿学校に入ることができ、安定した役所の仕事にもありつけた。
しかし、ジョンの心の中にはずっと不満が燻っていた。
ジョンは物心ついた時からずっと男が好きだった。
街を歩いていても、目で追うのは男ばかり。
しかし、その事実を父親に知られるわけにはいかなかった。罵倒されるのは確実で、臆病なジョンは父親から叱られることを酷く恐れた。
それでも、ジョンは男との恋愛を諦められない。
役所に就職し、実家を出たジョンはゲイの出会いの場を歩いて回った。
だが、ジョンはゲイ達にモテなかった。
元々ゲイは受け身であるネコあまりで、タチが少ない。
ジョンは二十代の時点で髪が薄くなっていて、運動が嫌いな彼は太っていた。ネコで見た目が冴えないジョンは、出会いの場に行っても相手にされなかったのだ。
そんなジョンは二十七歳の時、父親の紹介でシーラと結婚した。
本当は女と結婚なんかしたくなかったが、父親の命令には逆らえない。
しぶしぶシーラと一緒になったジョンだったが、彼女は優しく快活な女性だった。
ジョンは男が好きな男であったので、シーラに恋愛感情を抱くことはなかったが、それでも一人の人として彼女に好感を抱いた。
夜の生活も最初こそ上手くいなかったものの、一人息子ヨエルを授かった。
妻子との結婚生活は幸せそのもので、ジョンはこの人生で満足しようと考えていたが……。
三ヶ月前、ゲイの出会いの場を回っていた時代に出会った知人と再会した。
知人はチェスができる会員制のカフェを教えてくれた。チェスができる……というのは建前で、ここもゲイの出会いの場だということはすぐに分かった。
ジョンは当初、行くつもりはなかった。
家族を裏切りたくないという理性が、まだこの時の彼には残っていたのだ。
しかし、知人の言葉がジョンの理性を砕いた。
『このチェスカフェには、誰とでも寝るタチがいる』──と。
ジョンの胸がどくんと跳ねる。
誰とでも寝るということは、誰にも相手にされなかった自分とも寝てくれるかもしれない。
ジョンは夢見ていた。ベッドの上で、男から女のように愛されたいとずっと願っていたのだ。
ジョンがチェスカフェに行くと、そこにはひょろりと背の高いワンレングスの髪の男がいた。
サングラスの蔓を掴み、前にずらしながら、にこやかな表情を浮かべる男。
彼の名はジェイムス。
知人曰く、このチェスカフェの常連らしい。
ジェイムスはジョンが望んでいた言葉を次々にかけてくれた。
『可愛い』『セクシーだ』『惚れたよ』……と。
チェスカフェの二階は休憩室になっていた。
ジェイムスはジョンの太い腰に腕を回しながら、二階に誘った。
ジョンは頭の奥が痛くなるほど顔を真っ赤にしながら、階段を一段一段上がった。
この日、チェスカフェの二階で、ジョンの積年の願いは叶った。
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