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ゲラシムのその後
※愚かな男
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「違うんだあああ!!!」
尻穴にずっぽり城主の男根を咥えこんだまま、ゲラシムは身を捩り、泣き叫ぶ。
「この男が……! 無理やり私を犯したんだ‼︎ 私は嫌だと言ったのに‼︎」
「へぇ……。私は貴様が城主殿に口淫するところから見ていたぞ? 『舐め舐めしますから、私にそのチンコを恵んでくださいませんか?』と城主殿に媚びていたのは聞き間違いか? 必死になって城主殿の陽根や玉袋を舐めしゃぶっていたのは幻覚だったと? 貴様が城主殿に孕ませて欲しいと強請ったのは幻聴だったと言いたいのか?」
ユークスは廊下にいた人物に声を掛けると、一枚の紙を受け取り、それをゲラシムに見せつけた。
その紙はコブで流行しているポラロイド写真だった。コブは大国ゆえに他国よりも様々な技術が進んでおり、一瞬で物を写し撮る方法があった。
ポラロイド写真は複数枚あり、どれもゲラシムの痴態が写りこんでいた。
それを見たゲラシムはサッと青ざめる。これを実家の父に見られれば、今度こそ絶縁されてしまう。
ゲラシムは恥も外聞もなく叫ぶ。
「あれは嘘だ‼︎ 嘘‼︎ 私が愛してるのはユークス、お前だけだ‼︎ この男には排泄介助させているだけだ‼︎ な、長旅で溜まってたんだよ‼︎ 尻が疼いて死にそうだったんだ‼︎」
ゲラシムは丸出しになった結合部から精液を垂れ流しながら泣き叫ぶ。顔は涙でぐちょぐちょで、口許も快楽に喘ぎすぎたせいで唾液でべっとり濡れていた。
そんな彼に、ユークスは写真機の丸いレンズを容赦なく向ける。
カシャリッ!
ジー……ジジ……
「あっ……あっ……」
「コブの技術は素晴らしいな。すぐに写真が出てくる」
四角く黒い箱から、出てきた一枚の紙。
ユークスはまたもそれをゲラシムへピッと見せつけた。
ゲラシムの目元に涙が迫り上がる。
「ゆっ、ゆるっ……ゆるしてくれ……!」
「何をだ?」
「ち、父上だけにはそれを見せないでくれ‼︎」
「そうか……。だが、それは無理だな」
「む、む、むり……?」
「ドーズデン伯爵、お入りください」
ユークスが廊下へ向かって声を掛ける。
ゲラシムは目をこれでもかと見開いた。
廊下からのそりと現れた人物。それは実家の父だった。
「あっ、あああ……」
ゲラシムはショックのあまり引き付けを起こしたような声を漏らす。
「ゲラシム、お前はこのままタバーニ男爵に嫁ぎなさい。お前が女性との結婚が無理だということが、よく分かったよ」
ゲラシムの父親ドーズデン伯爵は何の感情も込められてない声で、息子へ絶縁を言い渡す。
ドーズデン伯爵の瞳には、幼児の用足しのようなポーズで男根を咥え込む息子の姿がありありと映っていた。
すぐさま廊下からこの城の家令らしき老齢の男がやってきた。
「支度金ですが……」と何やら金の話をしている。
ゲラシムは即座に、自分が売られることを悟った。
「い、嫌だ‼︎ 私は名門ドーズデン家の男だぞ! 金で売られるなんて……! そんなことあっていいわけない‼︎ 父上! 父上! 待ってください! ちちうえっっ‼︎」
ゲラシムの父親は息子に背を向けると、部屋から出て行ってしまった。
「お可哀想なゲラシム様……。これからは私どもが存分に可愛がって差し上げますからね」
突如耳元で囁かれた地獄のような台詞にゲラシムは戦慄する。私ども、とは……。
「さあ、皆さまお入りくださいませ!!」
揚々とした城主の声を合図に、部屋の反対側にあった扉がバンッと勢いよく開いた。
そこには、見るからに成金趣味をした下卑た中年男達がいた。中にはズボンをすでに脱いでいて、弛んだ腹の下にある雄を手で扱いている者さえいた。
「タバーニさん、おせぇよ」
「いやはや、申し訳ございません」
「自分だけ若い子を喰うなんて……ずるいですぞ?」
「ヒッ、ひっ⁉︎ なんだお前らは⁉︎ わ、私に触るな‼︎」
城主タバーニによってベッドに降ろされたゲラシムは、自分に触ろうとする男達のイヤらしい手を懸命に振り払おうとするも、先ほどがつがつ尻穴を攻めあげられた影響で腰がまったく立たず、腕にも力が入らなかった。
「ああぁぁ───っ‼︎」
あれよあれよと言う間に成金中年男の一人に押さつけられてしまったゲラシムは、ふちが紅くめくれあがった尻穴に剛直を差し込まれてしまった。
成金中年男達もコブ人だった。城主タバーニ程ではないにしろ、彼らも屈強なコブ人。ゲラシムが虫の抵抗をしたところで、彼らを煽るだけだった。
背後から尻穴を穿たれ、身体をがくがく揺さぶられながらゲラシムは叫ぶ。
「いやぁっ、いやだぁっ‼︎ ユークス! ユークス! 助けて……! 愛しているのはお前だけなんだ……!」
カシャ!カチャ! ジー……ジジーー……
「あっ、ああ……」
「貴様の愛など不要だ」
ゲラシムは油ぎった中年男達の隙間からユークスへ向かって懸命に腕を伸ばすも、ユークスはそれを淡々と退ける。この後も、ユークスはゲラシムへ向かって黙々とシャッターを切り続けた。
ゲラシムの瞳から光が、涙が、すうっと消えていく。
「ゲラシム様、反応が無くなってきましたねえ……。お薬でも打ちますかぁ」
城主は引き出しの中から注射器を取り出すと、それを反応を無くしたゲラシムの肩へ突き刺した。
何をしても反応が無くなりつつあったゲラシムだったが、これにはさすがに身を起こそうとした。
「いっ、痛っ! な、何をする……⁉︎」
「もっと行為が楽しくなるお薬ですよ」
「ひっっ⁉︎ い、嫌だ……! 嫌だ……! やめろ……! やめろおおおおおお‼︎」
◆
「ユークス殿、此度は活きの良い花嫁を斡旋してくださいまして誠にありがとうございました」
「気に入って貰えたようで何よりだ」
身繕いをした城主タバーニは、城門前で深々とユークスに腰を折る。
騎士団の人員採用の任に就いているユークスは、コブの貴族との交流があった。騎士団は諸外国からも積極的に兵を採用している。タバーニはそんなユークスの国の元へ私設兵を武者修行代わりに送り出していた縁で、二人は顔見知りだったのだ。
「私が紹介したとはいえ……良かったのですか? あなたの花嫁はゲラシムで。彼は相当な阿呆ですよ」
「阿呆だなんて……。ゲラシム様は二十代半ばでも中性的でお可愛らしい方ですし、私の城へやってくる客人も喜ぶかと。何より、コブ人の男根を易々受け入れられる素晴らしい器の持ち主です。それに少しぐらい頭が足りないほうが躾がいがある……」
「それは良かった」
意味深な笑みを浮かべるタバーニに、ユークスは柔らかく微笑んだ。
ゲラシムの父親は先に船に乗り、すでに自国へ帰ってしまっていた。
ゲラシムの父親ドーズデン伯爵は多額の借金を抱えており、長男へ家督を渡す前になんとかそれを解消しようと形振り構ってはいられなかったようだ。
ゲラシムは中身はクズのゲイだが容姿は悪くなく、ドーズデン伯爵もまた貴族の跡取り娘がいる家へ婿に行かせることを考えていたが、アナルセックスに興じる息子を目の当たりにしてきっぱり諦めたようだ。おとなしく城主タバーニへ息子を引き渡し、支度金を受け取っていた。
支度金の金額は、ドーズデン領の約三年分の運営費と同等だった。今後もタバーニは、ゲラシムの働きに応じてドーズデン領へ送金すると約束している。
ゲラシムは名目上はタバーニの妻だが、役割は客人をもてなす為の家妓だ。
(これでゲラシムが、アルキニナ様と復縁する可能性は完全に無くなっただろう)
この国の貴族家同士の婚姻の場合、約二割の家が離縁しても元の鞘に戻るというデータがある。復縁に至る要因としては諸説あるが、何だかんだ言いつつも初婚相手より勝る家と再婚するのは難しいからだ。
ドーズデン家も、ゲラシムの再婚が難しいと判断したら未だ独身でいるアルキニナに接触したかもしれない。
アルキニナへ降りかかる可能性のある憂いは、何であれ排除したい。彼女を盲目的に想っているユークスは、手段を選ばなかった。
(アルキニナ様……)
ユークスは、故国へ繋がっているであろう遠い空を見上げた。復讐は達成されたはずなのに、彼の表情はどこか浮かない。
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