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※この道しかない

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※ヒロインが攻め手に回る表現あり



 マイヤが王立騎士団特務部隊の戸を叩いた五日後、彼女は王都のとある宿の一室にいた。部屋に用意されていた前合わせの夜着を身に纏い、ベッドの端に座っている。その表情は浮かない。月の光のように淡い色をした髪と同色のまつ毛が時折震えていた。

 ベッドの端に座ったマイヤは俯き、ベッドルームと続きになった部屋から聞こえる水音に身を固くさせていた。

 あれからマイヤは考えに考え、レジナンドを頼る道を選んだ。それほどまでに、彼女はリュボフとの婚約破棄を強く望んでいた。どうしても、リュボフとは結婚したくない。マイヤは薄い布に包まれた膝をぎゅっと掴む。

 他に依頼料を調達する方法を考えたが、マイヤにはすでに両親はおらず孤独の身で、借金の保証人を立てようにも立てられない。娼婦をやろうにも王城侍女は副業禁止で、しかも若い騎士達にバレてしまう可能性が高い。

 マイヤにはレジナンドを頼る道しか始めから無かったのだ。リュボフがまだ何の権力も持たない市井の人間ならば、まだ他にやりようもあったのだが。

 (いいわ、私はもう処女ではないし)

 マイヤはリュボフと婚約する二年前にも、結婚を約束した別の男がいた。相手に強く請われて身体を許したが、男の実家が彼女との結婚を許さず、別れてしまったが。

 避妊が容易になった昨今は、婚前交渉もごく当たり前になった。よっぽどの大貴族家の娘でないかぎり、純潔を求められることはない。中流以下の貴族の娘達は王城で働き、何人かと付き合った中から結婚するというのが近頃のスタンダードだ。遊びで一夜を共にする若者も普通にいた。

 それでもマイヤはレジナンドと床を共にするのに抵抗感を抱く。リュボフとまだ婚約しているというのもあるが、出会ったばかりの人間と身体を重ねなくてはならないことに不安を覚えるのだ。

 シャワールームへ続く扉が開いた。
 レジナンドは濡れた髪をタオルで拭きながら、マイヤへ気安い笑顔を向けている。彼は腰に大判タオルを巻いただけの姿だった。

「あ~~、良い湯だった。マイヤさん、待たせてごめんね?」
「いいえ、……早くしましょう」

 マイヤは前合わせの夜着の帯をしゅるりと解くと、生まれたままの姿になる。いっそのこと、大胆になった方が良いと彼女は考えた。
 こちらが緊張して縮こまっていては、レジナンドは考えを変えてしまうかもしれない。彼にお金を出して貰わないと困るのだ。

「おっ、清純に見えて大胆とは……いいねえ」

 マイヤの真っ白な肌を目にしたレジナンドは、口許を緩ませた。


 ◆


 ベッドルームに濡れた音が響く。白いシーツが張られたとこの上で、レジナンドは長い脚を投げ出していた。

「っ、マイヤさん、上手いなぁ……」

 彼が熱っぽい瞳で見下ろす先には、淡い金髪があった。マイヤは肩まである髪を時折耳にかけながら、レジナンドの股間に顔を埋めている。

 マイヤが二年前に別れた男は、やたらと彼女に性的な奉仕をさせたがった。その当時のマイヤは父親と死別したばかり。孤独になってしまった彼女は、結婚したい一心で口淫や手淫など、男を悦ばせるありとあらゆる手段を覚えたのだ。
 マイヤはレジナンドへ性的な奉仕をしながら、蜂のようにくびれた腰やまるみのある白い尻を揺らす。レジナンドを官能的に煽る為だ。

 レジナンドの陰茎は大きさ自体は飛び抜けて大きくないものの、硬い。マイヤは無意識に今まで関係を持った男達とレジナンドの一物を比べていた。彼女は安定した家庭をなんとか持ちたくて、言い寄ってきた男の何人かと床を共にしてきた。
 結局、その努力が実を結ぶことは今まで無かったが。

 マイヤは横笛を吹くような要領で、そそり勃つ陰茎に舌をねっとり這わせ、その全体を唾液で濡らしていく。充分肉竿を湿らせたところで、上から丸い亀頭を呑みこんでいった。レジナンドの男根は熱を持っていた。頬をすぼめ咥えこむ彼女の額に汗が浮かぶ。

「うぅ、う、ま、マイヤさん……っ」

 常に余裕顔だったレジナンドの整った顔に焦りが滲む。肉竿はこんなにも硬くなっているのだ。きっと海綿体に血が溜まり、苦しいのだろう。
 
「そろそろ出そうだから、顔上げてぇ……?」

 レジナンドはいかにも遊び人風の男だが、さすがにほぼ初対面の、しかも依頼人の喉に精を吐き出すわけにはいかないと思ったのだろう。焦ったように身を起こし、マイヤの華奢な肩を力を入れないように掴むが、彼女は彼の言葉に従わなかった。
 それどころか、鈴口に舌先をあて、ぐりぐりとそこを抉るように刺激し始める始末。

「うぁっ……あぁぁっ……!」

 レジナンドは低い悲鳴を上げると、喉を晒した。彼はびくびくと細腰を震わせると、マイヤの喉へともったりと重い精を放つ。
 熱い体液が喉へ吐きかけられる。マイヤは頬を窄めると、じゅるじゅると音を立てて最後の一滴まで精液を啜った。青臭いにおいが鼻に抜けるが、彼女は表情を変えない。

 マイヤの攻め手はこれだけでは終わらなかった。
 息をたえだえさせているレジナンドの陰茎を掴むと、その裏をべろべろ舐め出したのだ。彼に見せつけるように。
 もちろんレジナンドは驚く。

「ちょっ、マイヤさん、俺、出したばっかなんだけど……! ひぃぃっ⁉︎」

 焦るレジナンドの言葉を無視し、マイヤは陰茎の根元についた陰嚢を舐め出した。片方の玉袋をまるで円を描くように舐め上げられたレジナンドは叫ぶ。
 マイヤは陰嚢の皺を伸ばすように丁寧に舐めながら、手の動きも止めない。雁首の段差に指の輪が引っかかるように、陰茎を力いっぱい握りしめて前後に扱く。きゅっきゅと皮が擦れる音がベッドルームに響いた。

「あぁぁんっ、はぁっ、だめぇっ、強いからぁ……!」

 レジナンドは女の子のような嬌声をあげて、自身の背面にある大きな枕を掴む。切れ長の目には涙が浮かび、健康的な小麦色の肌には赤みが差す。整った口許からは唾液が一筋滴り落ちていた。

 マイヤの性的な猛攻にレジナンドはすぐに屈服する。唾液でべとべとなった陰嚢をぷっくり膨らませ、陰茎を吃立させると、彼女の手の内へとまた精を放った。
 マイヤは白濁で汚れた手をぺろりと舐めた。
 レジナンドに挑発的な視線を送りながら。


 ◆


「ひぐっ……うぐっ、も、もう止めよ? マイヤさん……」
「どうしてです? これはあなたに依頼料の三分の二を肩代わりしてもらうための行為。言わばお礼です。五回や六回、精を吐き出させるだけでは足りません」
「ひぃぃっ、また、イク……! いくっ!」

 マイヤはレジナンドの引き締まった身体に跨ると、すっかり力を無くした肉竿を陰唇で挟みこみ、腰を前後に振る。いわゆる素股をしていた。

 レジナンドは瞳を潤ませてひぃひぃ叫んでいるが、マイヤは涼しい瞳で彼を見下ろしている。彼女は彼の長い指に自分の指を絡ませると、腰を更にくねらせた。

「うぁっ、あぁっ! で、出る……!」

 亀頭から勢いよく体液が吹き出されるが、さらさらであまり白み掛かっていなかった。ほぼ透明になってしまった精液がレジナンドの割れた腹筋を汚す。
 マイヤは股に挟みこんだ陰茎の柔らかな感触に笑みを溢しながら、涙を流すレジナンドへ囁いた。

「ねえ、レジナンドさん……。そろそろ私もあなたのモノが欲しいです」

 もちろん、本心ではない。彼女は彼に挿入行為をさせる気などさらさら、無い。

「だ、駄目だ……。もう勃たないよう……」
「そんなことを言わないで。ねえ、頑張りましょう?」
「んうぅっ」

 マイヤは前屈みになると、レジナンドの唇を奪った。彼女は綺麗に生え揃った彼の歯に舌先を這わせるも、彼の口からはくぐもった声が漏れるだけで、雄が力を取り戻すことは無かった。
 
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