2 / 13
※この道しかない
しおりを挟む※ヒロインが攻め手に回る表現あり
マイヤが王立騎士団特務部隊の戸を叩いた五日後、彼女は王都のとある宿の一室にいた。部屋に用意されていた前合わせの夜着を身に纏い、ベッドの端に座っている。その表情は浮かない。月の光のように淡い色をした髪と同色のまつ毛が時折震えていた。
ベッドの端に座ったマイヤは俯き、ベッドルームと続きになった部屋から聞こえる水音に身を固くさせていた。
あれからマイヤは考えに考え、レジナンドを頼る道を選んだ。それほどまでに、彼女はリュボフとの婚約破棄を強く望んでいた。どうしても、リュボフとは結婚したくない。マイヤは薄い布に包まれた膝をぎゅっと掴む。
他に依頼料を調達する方法を考えたが、マイヤにはすでに両親はおらず孤独の身で、借金の保証人を立てようにも立てられない。娼婦をやろうにも王城侍女は副業禁止で、しかも若い騎士達にバレてしまう可能性が高い。
マイヤにはレジナンドを頼る道しか始めから無かったのだ。リュボフがまだ何の権力も持たない市井の人間ならば、まだ他にやりようもあったのだが。
(いいわ、私はもう処女ではないし)
マイヤはリュボフと婚約する二年前にも、結婚を約束した別の男がいた。相手に強く請われて身体を許したが、男の実家が彼女との結婚を許さず、別れてしまったが。
避妊が容易になった昨今は、婚前交渉もごく当たり前になった。よっぽどの大貴族家の娘でないかぎり、純潔を求められることはない。中流以下の貴族の娘達は王城で働き、何人かと付き合った中から結婚するというのが近頃のスタンダードだ。遊びで一夜を共にする若者も普通にいた。
それでもマイヤはレジナンドと床を共にするのに抵抗感を抱く。リュボフとまだ婚約しているというのもあるが、出会ったばかりの人間と身体を重ねなくてはならないことに不安を覚えるのだ。
シャワールームへ続く扉が開いた。
レジナンドは濡れた髪をタオルで拭きながら、マイヤへ気安い笑顔を向けている。彼は腰に大判タオルを巻いただけの姿だった。
「あ~~、良い湯だった。マイヤさん、待たせてごめんね?」
「いいえ、……早くしましょう」
マイヤは前合わせの夜着の帯をしゅるりと解くと、生まれたままの姿になる。いっそのこと、大胆になった方が良いと彼女は考えた。
こちらが緊張して縮こまっていては、レジナンドは考えを変えてしまうかもしれない。彼にお金を出して貰わないと困るのだ。
「おっ、清純に見えて大胆とは……いいねえ」
マイヤの真っ白な肌を目にしたレジナンドは、口許を緩ませた。
◆
ベッドルームに濡れた音が響く。白いシーツが張られた床の上で、レジナンドは長い脚を投げ出していた。
「っ、マイヤさん、上手いなぁ……」
彼が熱っぽい瞳で見下ろす先には、淡い金髪があった。マイヤは肩まである髪を時折耳にかけながら、レジナンドの股間に顔を埋めている。
マイヤが二年前に別れた男は、やたらと彼女に性的な奉仕をさせたがった。その当時のマイヤは父親と死別したばかり。孤独になってしまった彼女は、結婚したい一心で口淫や手淫など、男を悦ばせるありとあらゆる手段を覚えたのだ。
マイヤはレジナンドへ性的な奉仕をしながら、蜂のようにくびれた腰やまるみのある白い尻を揺らす。レジナンドを官能的に煽る為だ。
レジナンドの陰茎は大きさ自体は飛び抜けて大きくないものの、硬い。マイヤは無意識に今まで関係を持った男達とレジナンドの一物を比べていた。彼女は安定した家庭をなんとか持ちたくて、言い寄ってきた男の何人かと床を共にしてきた。
結局、その努力が実を結ぶことは今まで無かったが。
マイヤは横笛を吹くような要領で、そそり勃つ陰茎に舌をねっとり這わせ、その全体を唾液で濡らしていく。充分肉竿を湿らせたところで、上から丸い亀頭を呑みこんでいった。レジナンドの男根は熱を持っていた。頬をすぼめ咥えこむ彼女の額に汗が浮かぶ。
「うぅ、う、ま、マイヤさん……っ」
常に余裕顔だったレジナンドの整った顔に焦りが滲む。肉竿はこんなにも硬くなっているのだ。きっと海綿体に血が溜まり、苦しいのだろう。
「そろそろ出そうだから、顔上げてぇ……?」
レジナンドはいかにも遊び人風の男だが、さすがにほぼ初対面の、しかも依頼人の喉に精を吐き出すわけにはいかないと思ったのだろう。焦ったように身を起こし、マイヤの華奢な肩を力を入れないように掴むが、彼女は彼の言葉に従わなかった。
それどころか、鈴口に舌先をあて、ぐりぐりとそこを抉るように刺激し始める始末。
「うぁっ……あぁぁっ……!」
レジナンドは低い悲鳴を上げると、喉を晒した。彼はびくびくと細腰を震わせると、マイヤの喉へともったりと重い精を放つ。
熱い体液が喉へ吐きかけられる。マイヤは頬を窄めると、じゅるじゅると音を立てて最後の一滴まで精液を啜った。青臭いにおいが鼻に抜けるが、彼女は表情を変えない。
マイヤの攻め手はこれだけでは終わらなかった。
息をたえだえさせているレジナンドの陰茎を掴むと、その裏をべろべろ舐め出したのだ。彼に見せつけるように。
もちろんレジナンドは驚く。
「ちょっ、マイヤさん、俺、出したばっかなんだけど……! ひぃぃっ⁉︎」
焦るレジナンドの言葉を無視し、マイヤは陰茎の根元についた陰嚢を舐め出した。片方の玉袋をまるで円を描くように舐め上げられたレジナンドは叫ぶ。
マイヤは陰嚢の皺を伸ばすように丁寧に舐めながら、手の動きも止めない。雁首の段差に指の輪が引っかかるように、陰茎を力いっぱい握りしめて前後に扱く。きゅっきゅと皮が擦れる音がベッドルームに響いた。
「あぁぁんっ、はぁっ、だめぇっ、強いからぁ……!」
レジナンドは女の子のような嬌声をあげて、自身の背面にある大きな枕を掴む。切れ長の目には涙が浮かび、健康的な小麦色の肌には赤みが差す。整った口許からは唾液が一筋滴り落ちていた。
マイヤの性的な猛攻にレジナンドはすぐに屈服する。唾液でべとべとなった陰嚢をぷっくり膨らませ、陰茎を吃立させると、彼女の手の内へとまた精を放った。
マイヤは白濁で汚れた手をぺろりと舐めた。
レジナンドに挑発的な視線を送りながら。
◆
「ひぐっ……うぐっ、も、もう止めよ? マイヤさん……」
「どうしてです? これはあなたに依頼料の三分の二を肩代わりしてもらうための行為。言わばお礼です。五回や六回、精を吐き出させるだけでは足りません」
「ひぃぃっ、また、イク……! いくっ!」
マイヤはレジナンドの引き締まった身体に跨ると、すっかり力を無くした肉竿を陰唇で挟みこみ、腰を前後に振る。いわゆる素股をしていた。
レジナンドは瞳を潤ませてひぃひぃ叫んでいるが、マイヤは涼しい瞳で彼を見下ろしている。彼女は彼の長い指に自分の指を絡ませると、腰を更にくねらせた。
「うぁっ、あぁっ! で、出る……!」
亀頭から勢いよく体液が吹き出されるが、さらさらであまり白み掛かっていなかった。ほぼ透明になってしまった精液がレジナンドの割れた腹筋を汚す。
マイヤは股に挟みこんだ陰茎の柔らかな感触に笑みを溢しながら、涙を流すレジナンドへ囁いた。
「ねえ、レジナンドさん……。そろそろ私もあなたのモノが欲しいです」
もちろん、本心ではない。彼女は彼に挿入行為をさせる気などさらさら、無い。
「だ、駄目だ……。もう勃たないよう……」
「そんなことを言わないで。ねえ、頑張りましょう?」
「んうぅっ」
マイヤは前屈みになると、レジナンドの唇を奪った。彼女は綺麗に生え揃った彼の歯に舌先を這わせるも、彼の口からはくぐもった声が漏れるだけで、雄が力を取り戻すことは無かった。
41
お気に入りに追加
893
あなたにおすすめの小説
愛の重めな黒騎士様に猛愛されて今日も幸せです~追放令嬢はあたたかな檻の中~
二階堂まや
恋愛
令嬢オフェリアはラティスラの第二王子ユリウスと恋仲にあったが、悪事を告発された後婚約破棄を言い渡される。
国外追放となった彼女は、監視のためリアードの王太子サルヴァドールに嫁ぐこととなる。予想に反して、結婚後の生活は幸せなものであった。
そしてある日の昼下がり、サルヴァドールに''昼寝''に誘われ、オフェリアは寝室に向かう。激しく愛された後に彼女は眠りに落ちるが、サルヴァドールは密かにオフェリアに対して、狂おしい程の想いを募らせていた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
あなたの1番になりたかった
トモ
恋愛
姉の幼馴染のサムが大好きな、ルナは、小さい頃から、いつも後を着いて行った。
姉とサムは、ルナの5歳年上。
姉のメイジェーンは相手にはしてくれなかったけど、サムはいつも優しく頭を撫でてくれた。
その手がとても心地よくて、大好きだった。
15歳になったルナは、まだサムが好き。
気持ちを伝えると気合いを入れ、いざ告白しにいくとそこには…
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~
二階堂まや
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。
ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。
しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。
そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる