上 下
4 / 34
1夜 初体験は白馬の王子様と

1-4.初体験は白馬の王子様と(4)

しおりを挟む
 フレッドは満足そうににっこりと笑うと、ちゅっとキスをして、背中に回した右手でコルセットの紐を緩め始めた。左手は、ズロースの中に入り込んでくる。そして、私の中に。

「あぁっ」

 快感に身をのけぞらせると、窓から月が見えた。

「あっ、っ、んっ、あ」

 フレッドの胸の中でもがくように身をよじった。彼の汗ばんだ白いシャツと、金髪の襟足と、古めいた木目の天井と、雲一つない夜空に浮かぶ満月と。景色がぐるぐると回転する。

「は、あぁっ」

 コルセットがはがされる。胸元の押さえを失って、私は夜の冷たい空気を一気に肺に吸い込んだ。フレッドは何度目かわからないキスをすると、私の身体をベッドに横たえた。
背中にパリッとした糊をきかせたシーツ感触と柔らかな綿の弾力を感じる。

「きれいだよ」

 フレッドが私を見ていた。青い目が月夜に輝く。
 不意に胸元に窓から吹き込む夜風の冷たさを感じて、私は上半身に何も着ていないことに気づいた。思わず胸を両手で隠す。

「とてもきれいだよ、ソフィー」

 フレッドはシャツを脱ぐと、私の腕を右手は右手で、左手は左手で掴んで広げさせた。
 顔が胸元にうずもれる。金色の柔らかな髪が私の顎にふわふわと触れる。
 彼の舌が胸を吸ったり、舐めたりする度に身体から力が抜けていった。
 そうすると、フレッドは私の腕から手を離した。

 再び、指が私の中に入ってくる。同時に、胸を吸われて、私は今までで一番大きな声を出して、身体をびくんと震わせた。

「気持ちいい?」

 フレッドは私の横に横たわると、髪を撫でながら顔をのぞきこんできた。
 声にならなくて、こくりとうなづくと、またにっこりと笑った。

「ひとつになろう、ソフィー」

 彼は身を起こすと、ベルトを外した。ぱさっと、彼の茶色いズボンがベッドの下に投げられる音を聞く。その手がゆっくりと、私のズロースを脱がせる。
 全身に夜の冷たさと、湖から漂ってくる湿った空気を感じた。

 月夜が彼の裸を照らす。
 12歳のころの男の子の面影はもうない。一緒なのは髪の色と目の色だけ。
 しっかりした胸板にの下にはうっすらと筋肉の陰影が浮かんでいる。
 私は彼の胸からお腹の隆起に指をはわせた。私のものとは違う、今までに触ったことがない、男性のしっかりとした骨の硬さ。

「下も触って」
 
 フレッド私の右手を彼の足の付け根に導いた。つるりとした肌を通りぬけて、さわさわと髪の毛より硬い毛の感覚。そして、何か熱い塊に触れる。
 びくっと離そうとした私の手を上から一回り大きなフレッドの手が包んだ。
 私の手の平の上にフレッドの手が重なり、それを包む。
 フレッドはそのままゆっくりと、さするように私の手を動かした。

「――っ、気持ちいいよ、ソフィー」

 熱い吐息が顔にかかる。彼は紅潮した頬を私の頬に寄せて、耳たぶを吸った。
 両膝を押され、足が開かれる。そこが外に向かって開かれて、お腹の中に冷たい空気が入ってくる。
 フレッドは指で絡まった髪の毛を解くように、優しく私を撫で、その手を、そのまま下におろしていく。胸、おへそ、そして。ぴちゃぴちゃという、自分から発される水音に私は声を全身の毛が逆立つような快感を感じる。

 硬くて、熱いものがその水音の中に沈んでいく。微かな痛みに、私は唇を噛んだ。フレッドが腰をぐっと押した。私の中が彼で満たされる。

「痛くない?」

 私は少し考えて、首を振った。フレッドは微笑むと私の頭の下に枕を差し込む。少し頭を後ろに下げると、ベッドの後ろの開けっ放しになった広い窓から、一面の星空とまん丸の月が見えた。

「星を見ているといいよ」

 自分の根本に、フレッドの足の付け根が触れているのを感じる。それがゆっくりと離れて、また近づいてくる。体の中で何かがゆっくりとうごめく。

 視線を夜空に向けると、星がぐるぐると回って、そのまま降り注いでくるような気がした。

 持ち上げた手をフレッドの手が掴む。指と指を絡ませて、フレッドは動きを速めた。
 ギシギシとベッドが軋む。その度に私は、自分のものと思えない甘い声を夜空に吸わせた。
 彼が腰を引くたび、自分の中がそれを離すまいと吸い付いてひきとめるのを感じる。
 気がつくと、自分も彼に合わせて腰を動かしていることに気づいた。
 フレッドが絡めていた指をはずし、私の膝を持って上体を起こした。
 汗ばんだ額を手の甲で拭って、微笑む。一瞬、その青い目が赤く光った気がした。

 ――もういいや、だって――

 私は、考えることをやめて、ただ体を駆け巡る、未知の快感を感じるだけの物体になった。
 周りの風景が形を失っていく。体の輪郭も溶けていく。フレッドの姿が歪んでいく。
 残ったのは、フレッドを体の中から離すまいと彼に吸いつく、その感覚だけだった。
 身体の中で何かがはじけた。ぶるぶると震えるそれを上へ上へと吸い上げる。
 そこに私の思考はなく、自然に、当然のように身体がそう反応していた。

「あぁぁぁっ」

 私は大きな声で暗闇に叫んだ。
 
 暗闇の中で、長い指の、冷たい大きな手の平が髪をなでるのを感じる。
 耳元で、フレッドのような、別の人のような、低い男の声がささやいた。

「おやすみ、ソフィー。またね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

幼馴染みとの間に子どもをつくった夫に、離縁を言い渡されました。

ふまさ
恋愛
「シンディーのことは、恋愛対象としては見てないよ。それだけは信じてくれ」  夫のランドルは、そう言って笑った。けれどある日、ランドルの幼馴染みであるシンディーが、ランドルの子を妊娠したと知ってしまうセシリア。それを問うと、ランドルは急に激怒した。そして、離縁を言い渡されると同時に、屋敷を追い出されてしまう。  ──数年後。  ランドルの一言にぷつんとキレてしまったセシリアは、殺意を宿した双眸で、ランドルにこう言いはなった。 「あなたの息の根は、わたしが止めます」

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

【完結】塔の悪魔の花嫁

かずえ
BL
国の都の外れの塔には悪魔が封じられていて、王族の血筋の生贄を望んだ。王族の娘を1人、塔に住まわすこと。それは、四百年も続くイズモ王国の決まり事。期限は無い。すぐに出ても良いし、ずっと住んでも良い。必ず一人、悪魔の話し相手がいれば。 時の王妃は娘を差し出すことを拒み、王の側妃が生んだ子を女装させて塔へ放り込んだ。

【完結】寝盗られて離縁しましたが、王子様の婚約者(仮)として溺愛されています!

五月ふう
恋愛
天涯孤独のルネアは、一年前、同僚のリーブスと結婚した。ルネアは国で唯一の女騎士。"女のくせに野蛮だ"と言われ続けたルネアを愛してくれたリーブス。 だが、結婚一周年記念の日。それが全て幻なのだと気付かされた。部屋のドアを開けるとリーブスが美しい女性と裸で抱き合っていて・・・。 「これは浮気では無い。これは"正しい"恋愛だ。むしろ、君に求婚したときの僕がどうかしていたんだ。」 リーブスは悪びれもなく、ルネアに言い放った。ルネアはリーブスを愛していた。悲しみと諦めの感情がルネアを襲う。 「もう君をこれ以上愛するふりはできない!さっさとこの家を出ていってくれ!!」 最小限の荷物を持ち、ルネアは家を出た。だが孤児のルネアには帰る場所どころか頼る宛もない。 職場である騎士団事務所で寝泊りできないかと、城に戻ったルネア。泣きつかれて眠ってしまったルネアは偶然、第二王子ルカと出会う。 黙ってその場を立ち去ろうとするルネアに、ルカは驚きの提案をした。 「婚約者のふりをして、俺を守ってくれないか?」 そうして、女騎士ルネアは第二王子ルカの婚約者(仮)として、日々を過ごすことになったのだ。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~

飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』  ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。 ※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。 ※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

処理中です...