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十四話 遊園地デート
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家に入る前、皇樹は泣きそうな顔で匠に問いかけた。
「お前も、川中さんと同じ気持ちか?」
「いいえ。僕は皇樹様のものですから」
「怒ってるんじゃないのかよ!?」
「全く怒っていません。けど……りっちゃんを傷付けたら、もう皇樹様の奴隷ではいられません。
それだけは分かってください」
「絶対しない!!」
「りっちゃん以外の人にもしないと約束出来ますか?」
「そうすれば、匠はずっと俺のものでいてくれるのか?」
「ちゃんと僕を奴隷として見てくだされば……」
匠はにっこりと優しい微笑みで頷いた。皇樹は、彼に嫌われたくないという気持ちだけで匠の言いなりだ。
匠の身体が皇樹の物だとすれば、皇樹の心は匠の物だ。それはどんな拘束も敵わない程、頑強な束縛である。
気付いた時には解けない程がんじがらめに縛られてしまったそれは、皇樹には解けないと悟っていた。
翌日。皇樹は匠の家まで迎えに行き、手を繋いで駅へと向かった。
皇樹はショルダーバッグで、匠はパステル色のブルーのリュックだ。女性のようにも見えるファッションも匠に似合っていて、皇樹は内心穏やかではなくなる。
「あ、あのさ、匠……今日は一段と可愛いな」
「えっ? そ、そうですか? 嬉しい……です」
匠は真顔のままだ。嬉しそうにはしていないが、皇樹は気付かずに更に賛辞を重ねる。
「うん。可愛いし、綺麗。匠以上に可愛い人なんていないってくらい……──」
そこまで言ってしまって、自分が恥ずかしい事を言っていると気付いてやめた。匠以上に顔を赤くした皇樹に、匠はフフフと笑っていた。
「皇樹君も可愛いですよ」
「ばか、俺が可愛いとか……ないだろ」
「確かに皇樹君は王子様ですからね。でも、可愛いところもありますよ」
匠の言い方は普通だ。本音を言っているようではないと皇樹は感じて不安になっていた。
最初に向かったのは遊園地だ。
近くにある大型遊園地で、アトラクションが激しい事で有名である。皇樹がたまに行く時は仲間内で「叫んだら罰ゲーム」等をして遊んでいる場だ。
入場料は勿論の事、中で支払う利用料、飲食代も全て皇樹が支払うつもりでいる。
「なぁ、匠はどのアトラクションが好き?」
「好きなのは、船に乗ってゆっくり景色を見れるようなものが好きですが。皇樹君が乗りたいものでいいですよ?」
「いや何言ってんだよ! 匠の誕生日なんだから、お前の行きたい所全部回ろう!」
「じゃ……じゃあ、船に乗りましょう」
皇樹は匠が財布を取り出すのを制止して支払いをした。
「今日は全部俺のおごり。匠は気にしないで」
「え……でも……」
「誕生日だから!」
「でも、そんなにしていただいてしまうと、皇樹君の誕生日の時、お返し出来ません」
「いいってそんなん! 俺の誕生日なんか……」
「そんな事仰らないで下さい。ちゃんとお祝いしましょうね」
俺に任せろと言わんばかりのニッとした笑顔に、男らしさを感じる。
見た目から匠を女性扱いしそうになるが、好みが女性的なものというだけで、中身は結構男性的である。
皇樹はそれを律を襲おうとした時や、昨日皇樹を助けた時に感じていた。
匠の腕を見る。筋肉質ではあるが、太いわけではない細めの腕は確かに誰かを守る強い力がある。
対して自分の腕は……と、自身の匠よりは少し太めな腕を見る。誰かを傷付ける事ばかりに力を奮ってきた腕だ。
そう思うと途端に恥ずかしくなった。学校内でも地位が高く、女性から持て囃されて、教師からの信頼も篤いのに、そんな上辺だけの評価が無意味に思えてくるのだ。
「俺は今まで最低な奴だったな……」
「皇樹君?」
「俺、匠を見習って、せめてまともな人間になるよ」
「そうですか」
心に決めた想いを匠に伝えるが、だが匠の反応は冷めたものだった。
それから色々なアトラクションを回り、匠は満足しているようで、始終機嫌が良かった。
もう日が暮れてそろそろ遊園地も閉園する頃だ。
「あのさ、最後に観覧車乗らないか?」
「? いいですが……」
匠は最後の最後まで観覧車は避けているようだ。もし拒まれたら諦めようと思っていたが、あっさりと肯定した。
匠は皇樹の命令を無理な時はきちんと拒むので、高所恐怖症等ではないらしい事が分かった。
観覧車では二人向かい合って座った。匠は街を指さして「あれ、僕たちの学校ですよ!」とはしゃいでいる。
しばらくして皇樹は緊張の面持ちで匠に話し掛けた。
「なぁ匠、話があるんだ」
「なんですか?」
観覧車はもうすぐ頂上に着く頃だ。
「俺、匠の事が本当に本気で好きになった……みたい、なんだ……」
途中まで堂々と言っていたが、匠がポカンという顔をしているので、段々と自信の無い言い方となってしまった。
「はい」
匠はアッサリと答えたきり、また窓の外を見てしまった。「あれが僕の家で、あっちが皇樹様のご自宅ですね、あ、りっちゃんの家も見つけました! 佐藤と山城の家も発見です~」と、一人で楽しそうにしていた。
想いは伝えた筈なのに何故か釈然としない。ちゃんと伝わっているように思えなかった。
少し微妙な空気になったが、皇樹は遊園地を出た後、匠を連れてラブホテルに入った。
「お前も、川中さんと同じ気持ちか?」
「いいえ。僕は皇樹様のものですから」
「怒ってるんじゃないのかよ!?」
「全く怒っていません。けど……りっちゃんを傷付けたら、もう皇樹様の奴隷ではいられません。
それだけは分かってください」
「絶対しない!!」
「りっちゃん以外の人にもしないと約束出来ますか?」
「そうすれば、匠はずっと俺のものでいてくれるのか?」
「ちゃんと僕を奴隷として見てくだされば……」
匠はにっこりと優しい微笑みで頷いた。皇樹は、彼に嫌われたくないという気持ちだけで匠の言いなりだ。
匠の身体が皇樹の物だとすれば、皇樹の心は匠の物だ。それはどんな拘束も敵わない程、頑強な束縛である。
気付いた時には解けない程がんじがらめに縛られてしまったそれは、皇樹には解けないと悟っていた。
翌日。皇樹は匠の家まで迎えに行き、手を繋いで駅へと向かった。
皇樹はショルダーバッグで、匠はパステル色のブルーのリュックだ。女性のようにも見えるファッションも匠に似合っていて、皇樹は内心穏やかではなくなる。
「あ、あのさ、匠……今日は一段と可愛いな」
「えっ? そ、そうですか? 嬉しい……です」
匠は真顔のままだ。嬉しそうにはしていないが、皇樹は気付かずに更に賛辞を重ねる。
「うん。可愛いし、綺麗。匠以上に可愛い人なんていないってくらい……──」
そこまで言ってしまって、自分が恥ずかしい事を言っていると気付いてやめた。匠以上に顔を赤くした皇樹に、匠はフフフと笑っていた。
「皇樹君も可愛いですよ」
「ばか、俺が可愛いとか……ないだろ」
「確かに皇樹君は王子様ですからね。でも、可愛いところもありますよ」
匠の言い方は普通だ。本音を言っているようではないと皇樹は感じて不安になっていた。
最初に向かったのは遊園地だ。
近くにある大型遊園地で、アトラクションが激しい事で有名である。皇樹がたまに行く時は仲間内で「叫んだら罰ゲーム」等をして遊んでいる場だ。
入場料は勿論の事、中で支払う利用料、飲食代も全て皇樹が支払うつもりでいる。
「なぁ、匠はどのアトラクションが好き?」
「好きなのは、船に乗ってゆっくり景色を見れるようなものが好きですが。皇樹君が乗りたいものでいいですよ?」
「いや何言ってんだよ! 匠の誕生日なんだから、お前の行きたい所全部回ろう!」
「じゃ……じゃあ、船に乗りましょう」
皇樹は匠が財布を取り出すのを制止して支払いをした。
「今日は全部俺のおごり。匠は気にしないで」
「え……でも……」
「誕生日だから!」
「でも、そんなにしていただいてしまうと、皇樹君の誕生日の時、お返し出来ません」
「いいってそんなん! 俺の誕生日なんか……」
「そんな事仰らないで下さい。ちゃんとお祝いしましょうね」
俺に任せろと言わんばかりのニッとした笑顔に、男らしさを感じる。
見た目から匠を女性扱いしそうになるが、好みが女性的なものというだけで、中身は結構男性的である。
皇樹はそれを律を襲おうとした時や、昨日皇樹を助けた時に感じていた。
匠の腕を見る。筋肉質ではあるが、太いわけではない細めの腕は確かに誰かを守る強い力がある。
対して自分の腕は……と、自身の匠よりは少し太めな腕を見る。誰かを傷付ける事ばかりに力を奮ってきた腕だ。
そう思うと途端に恥ずかしくなった。学校内でも地位が高く、女性から持て囃されて、教師からの信頼も篤いのに、そんな上辺だけの評価が無意味に思えてくるのだ。
「俺は今まで最低な奴だったな……」
「皇樹君?」
「俺、匠を見習って、せめてまともな人間になるよ」
「そうですか」
心に決めた想いを匠に伝えるが、だが匠の反応は冷めたものだった。
それから色々なアトラクションを回り、匠は満足しているようで、始終機嫌が良かった。
もう日が暮れてそろそろ遊園地も閉園する頃だ。
「あのさ、最後に観覧車乗らないか?」
「? いいですが……」
匠は最後の最後まで観覧車は避けているようだ。もし拒まれたら諦めようと思っていたが、あっさりと肯定した。
匠は皇樹の命令を無理な時はきちんと拒むので、高所恐怖症等ではないらしい事が分かった。
観覧車では二人向かい合って座った。匠は街を指さして「あれ、僕たちの学校ですよ!」とはしゃいでいる。
しばらくして皇樹は緊張の面持ちで匠に話し掛けた。
「なぁ匠、話があるんだ」
「なんですか?」
観覧車はもうすぐ頂上に着く頃だ。
「俺、匠の事が本当に本気で好きになった……みたい、なんだ……」
途中まで堂々と言っていたが、匠がポカンという顔をしているので、段々と自信の無い言い方となってしまった。
「はい」
匠はアッサリと答えたきり、また窓の外を見てしまった。「あれが僕の家で、あっちが皇樹様のご自宅ですね、あ、りっちゃんの家も見つけました! 佐藤と山城の家も発見です~」と、一人で楽しそうにしていた。
想いは伝えた筈なのに何故か釈然としない。ちゃんと伝わっているように思えなかった。
少し微妙な空気になったが、皇樹は遊園地を出た後、匠を連れてラブホテルに入った。
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