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眠りん

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十話 主従関係

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 それから匠は皇樹を意識するようになってしまった。

「おーい匠ー!」

「は、はいっ」

 呼ばれるだけで胸が飛び上がり、嬉しくなる。皇樹は匠が近付くと、ぐいっと匠の肩を寄せた。
 二人引っ付いて歩いているので、傍から見れば恋人同士にしか見えない。

 皇樹を取り巻いていた女子達も、そんな様子に二人に近寄らなくなっていた。

「早く生徒会室行こうぜ」

「で……でも……」

「大丈夫。最初の一回だけで、後は他の奴に触らせた事もないだろ?」

「生徒会の仕事とかないんですか?」

 完全にヤリ部屋になった生徒会室では、生徒会役員達が何か仕事をしている様子は全くと言っていい程ない。
 行事がないと仕事はないのか、匠の知らないところできちんとしているのか、匠には知らない事だ。

「もしかして、俺が匠に仕事任せようって思ってないよな?」

「……命令ですか?」

「そんな命令しねぇよ。ほんと、奴隷になってから可愛くなったよなぁ」

 可愛いと言われると満更でもなく、匠は少し口元が緩んだ。

「か、可愛い……?」

「うんうん。可愛いよ! エッチするともっと可愛くなるしな。また可愛い顔見せてくれよ」

「はい」

 匠がにこっと微笑むと、皇樹は匠の唇にキスをした。そんな行為も、セックスも、受け入れてしまえば簡単な話で、匠は皇樹とのセックスが幸せだと思えるようになっていた。

「じゃ、職員室呼ばれてるからちょっくら行ってくる! 生徒会室で大人しく待ってろよ」

 頭をなでなでされる。匠は「はい」と従順に頷くと、皇樹は早歩きで職員室へと向かっていった。
 生徒会室に入り、近くの椅子に座っていると、生徒副会長が入ってきた。匠の記憶では高木という名前の男である。

「……なんだ。会長のオナペットか」

「お邪魔してます」

「ふぅん。随分大人しくなっちまって、まー」

 高木は匠の右腕を強引に掴むと、無理矢理立ち上がらせた。

「なー俺も出したいんだけど、使っていいよな?」

「えっ? いや、皇樹様の許可がないと……」

「ぶはっ!! あははははっ。皇樹様って! 様って! そんな呼び方してるの?」

「はい。普段は藤倉君と呼ばせていただいていますが、生徒会室では皇樹様と呼ぶよう仰せつかっています」

「なにその言葉遣い? まぁ、いいや。ヤラせろよ」

 高木の手が匠の制服に掛かる。ボタンを外されて、脱がされる。露わになった胸の突起を指で擦られると、感じやすい為物理的な快感が脳に走ったが……得体の知れない不快感を感じた。

 触られて気持ち悪い──そんな感覚に鳥肌が立つ。

「や、やめてください!」

「なんで? お前は会長のペット、つまり俺らの玩具だよな?」

「違います。確かに僕は皇樹様の物ですが……」

「うるせぇよ!」

 パシン……。軽くだが、高木の手は匠の顔を叩いた。その衝撃で勢いよく右を向かされた匠の視線の先には、ちょうど生徒会室に入ってきた皇樹が見えた。
 目が合う時には、皇樹の顔は怒りに満ちていた。

「おい、テメェ!! 高木!!」

「会長……」

 皇樹の怒声はその場の空気を一瞬にして陰鬱なものへと変えた。それに驚いた高木は、強く掴んでいた匠の手を離して一歩離れた。
 すかさず皇樹が高木を押して匠を抱き寄せると、睨めつけた。

「コイツは俺の物だ。俺の奴隷なんだから勝手に触るな」

「わ、悪かったよ……」

 高木は生徒会室からそそくさと逃げていった。
 一瞬の静寂の後、皇樹はガバッと匠を抱き締めた。力強く抱く腕は震えており、匠を離すまいとしている。

「何された?」

「乳首を触られただけです」

「なんだって!? あの野郎……」

「少しだけだから、大丈夫です」

「もし何かされてたら、アイツを殺すところだったぜ」

「そんな事したら本当に捕まってしまいますよ」

「お前はその方がいいんだろ?」

「そんな事……。僕はもう思ってないですよ」

 匠は皇樹の背に両手を回した。お互い抱き合っている姿は、主人と奴隷というより、恋人同士のようにも見える。

「はは。お前はセックス出来れば誰でもいいんだろ?」

「いいえ。今、高木君に触られて……とても嫌でした。本当は誰にも触られたくないんです」

 匠がそう言った途端、皇樹は匠から手を離した。

「やっぱ、俺も?」

「いいえ。あの、皇樹様……」

「なんだ?」

「僕を誰にも貸さないでくれませんか? 僕は皇樹様のご命令なら拒めません。だから、貸出は自由ですが、僕はそうされるのが一番嫌だという事を、知っていて下さい」

「分かった。誰にも触らせねぇ」

 皇樹は先程より強く匠を抱き締めた。
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